フルートとハープの為の協奏曲
仕事の後普段よく行く居酒屋に行った。
体調壊しがちな店主に「御身お大切に」と告げて店を出たあと、
中央線で自宅最寄り駅へ。
しこたま飲んで、食って、あったまったはずが、
駅改札を出てくるころには体が冷えて、もう一軒行きたくなった。
駅前飲み屋街の一角に立ち寄った。
接客に来た女の子が、ビートたけしばりに肩を動か私を見かねてか、
肩をもんでくれた。
「正月は何をしていたんですか?」
と聞かれて、年賀状書きと寝正月と、答えると話は何処からか楽器の話。
音大に合格したが、学費を払い忘れて、入学の期を逃し、今はコレとのこと。
こういうずっこけた輩は親近感が沸く。
フルートをやっていたが、何か楽器は?と訊かれ、苦し紛れに
「いい加減なラッパなら・・・」と、答えたら音楽の話に。
彼女はモーツアルトのこの協奏曲が好きらしい。
口三味線で旋律を歌ったら、
「ぴったり調性もあっている」とよろこんでいた。
話した事イロイロ。
フルートはCで鳴るらしくて、ラッパのBと違って移調する必要が無いらしいこと。
音大の試験はモーツアルトかバッハが中心とのこと。
私は、モーツアルトなら、ピアノ協奏曲が一番評価されているらしいが、
バイオリンソナタや歌劇で使われている三連符の使い方が好きだの、
偉い音楽家の大作より、
ほとんど誰も知らない、瀬戸口藤吉の付点リズムだけで作ったような
ト長調の行進曲がすきだのと(帰宅した今、繊細な2拍子を楽しんでいる。行進曲;敷島艦)、
一年に一度も話すことの無い話題にのめり込み、ささやかな高揚感を覚えた。
場末の飲み屋の時間としては上出来、
銀座や赤坂だって、詩歌・管弦の話題なんてほとんど出てこない。
「自分はもしかして、結構好きなのか」
とも思ったが、
こんな話、ニホンのオジサンには、たま~に、が相応しい、とも思った。
会話そのものよりも、少し音をとるのに躊躇したが、ハ長調の協奏曲が、
ハ長調のまま口から出て来たのが、何ともに嬉しかった。
残念ながら、普段はまったく縁がないシロモノだ。
