早いもので
もう12月・・師走になりました。
この時期になると
私は思い出す人がいるんです。
それは
まだ新婚だった頃の
私の「師」だった人の一人
編み物の先生です。
当時の私は
編み物を習っていました。
小さな編み物教室の先生は
60代後半の女性で
ご主人は私の夫と同じ仕事を
していたということでした。
そんなことも縁となり
私は先生が着る
セーターなどを請け負うほど
一生懸命に毛糸と奮闘していたのです。
でも・・
この時期・・
お歳暮シーズンが近づくと
先生の話は毎回毎回
お歳暮の話ばかりになりました。
（年末だけではありません。
夏のお中元の時もでした）
以前はアシスタントを
雇っていたんだけど
その人を生徒さん達は
先生だと思っていて
お歳暮が
みんなその人のところに
行ってしまっていた・・とか
自分では買えない物を
（お歳暮で）くれた生徒さんは
よく気が付く人だったとか
同じお歳暮でも
スーパーで売っている物より
デパートで扱っている物の方が
品質が良くみえる・・とか
1～２時間のお教室時間は
お歳暮の話ばかりです。
私は「へえ～」とか
「そうですね～」とか
そんな相づちを打つしかありません。
ただ、ひたすらに
黙々と作品を編んでいた
そんな、ある日
「昨日、踏み台から落っこちたのよ」と
黒板を拭いていた先生が
私を振り返りました。
すると
その顔が
先生の顔が
一瞬、キツネに見えたのです
え！！・・と
声を上げたのは
「そうなのよ～。
ここにお尻からドンって落ちて
痛かった～～」という話に
びっくりしたからではありません。
私はちょっとうろたえて
「大丈夫ですか？」と言いながら
（今のは何？）と
心臓はバクバクしています
「まあね、大丈夫だったけどね。
でも・・なんかね
後ろから誰かに
襟を引っ張られたっていうかね。
引き落とされた感じだったというか」
・・・キツネだ。
この人、
もしかしたら
よくないキツネが憑いてるのかも
そこで
私は編み物の先生の顔が
キツネに見えたことを言わずに
先生の名前を書いて
こういう人に編み物を習っている・・と
臨死体験をして霊能者になった
真言宗の住職さんに渡したのです。
すると
住職さんは
先生の名前を霊視して
「キツネが憑いとる。野弧やな」
と、言うではありませんか。
やっぱり
実は
その先生の顔がキツネに見えたんです。
私はどうしたらいいですか
すると住職さんは
「あんまり出入りせん方がいいやろうな」
フン・・という感じで
興味なさ気に
そう言ったのでした
野弧(やこ)
神様として祀られている狐でも
神様のお使い（ご眷属様）として
働かれている狐でもなく
どちらかというと妖怪っぽい扱い
それが「野弧」です。
でも、
お不動さん（住職さん）に言わせると
野弧がどうとか
そういうことはどうでもよくて
野弧がどうして
編み物の先生に憑いているのか
それを考えるのが大事なのだそう。
先生の欲は
野弧にとって格好のものだった
先生の欲深さが野弧を憑けた
「そんなのに憑かれんようにせな」
事もなげにそう言う住職さんでしたが
教室に通っているのは私でしょ？
緊張しないわけがありません
もちろん
平静を装って
何を贈ったか覚えていないけれど
とりあえずお歳暮は贈りましたよ。
ただ
「あっら～ 
こんな気を遣わなくていいのに～
よく、これが欲しいって分かりましたね
私、これ欲しいなんて言いましたっけ～」
と、喜ばれたことは覚えています。
（え。。よく言うよ。。）と
思ったのも覚えています。
その編み物教室では
時々誰もいないところで
トントン、カタン・・と音がしていました。
そして、先生はその後も
後ろから何かに”どつかれる”
なんて言っていましたっけ
それが野弧の仕業なら。。。
そんなことがあった次の春
転勤になった私は
喜んで編み物教室をやめました。
編み物の先生と野弧の話
でも、決して
野弧だけが悪いわけではないと知った
お歳暮の季節の話なのでした。
・・・・・
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