2013/4/19
ニューギニアの森には、鳥の餌となる果実が一年中実り、あちこち
に昆虫もいます。
声明を脅かすような天敵はほとんどいません。サルやリスと餌を奪
い合う必要もなく、ネコの餌食になるおそれもありません。
その結果、ニューギニアは鳥たちの楽園となり、現在では700種もの
鳥類が生息するようになりました。
餌の心配をしたり捕食者から身を守ったりする必要のない鳥たちは、
異性をとりこにする魅力をひたすら競い合うようになりました。
より魅惑的な特徴は遺伝で受け継がれ、年月とともに華やかさを増
したのです。
こうした環境の中で極楽鳥(Birds of paradise)は進化してきました。
オスはきらびやかな羽でできた“派手な舞台衣装”を身にまとって
います。
小粋なマントに、つややかな胸当てを光らせ、赤・青・黄のカラフ
ルな飾り羽で、細くしなやかな頭を目立たせています。
極楽鳥のオスは、メスに向かってビロードのマントのような羽を逆
立て、淡い色の脇腹を見せながら優雅にステップを踏みます。
ふいに動きを止め、メスの心を引きつけてから、激しいダンスを踊
り出し、頭を上下に振って、飾り羽を弾ませます。飛び跳ねたり体
を揺らしたり、休む間もありません。
この一心不乱の求愛ダンスに魅了されたメスは、身を震わせてオス
を誘うのです・・・。
食べることに精一杯の生活を送っている間は、男も女も身形など気
にしません。
男は無精ひげに目やにをつけて手鼻をかみ、女はすっぴんにパーマ
の緩んだ髪を振り乱して特売のタイムセールに殺到するのです。
都会で無造作に生ごみを捨てようものなら、あっという間にカラス
が殺到してきて食い散らしてしまいます。
実はカラスは、極楽鳥にもっとも近縁な鳥なのです。
黒光りで愛想もなく不気味な気配を漂わせるフォルム。絶えず隙を
狙っているかのような鋭い目つき。
カラスのどこをとっても、極楽鳥の優雅さの片鱗すら見つけること
はできません。
もちろん、カラスが求愛ダンスを踊るなどとは聞いたこともありま
せん。
同種の仲間として出発しながら、一方は豊富な餌と安全な環境に守
られて絢爛たる極楽鳥に変身しました。
しかし別の道を選んだカラスは、ただ、飢えずに生きしのいでいく
だけで精一杯という環境でもまれ、ついには黒ずくめで不気味な姿
に身をやつしてしまいました。
よほど日本には餌が乏しく確保するのが大変だったのでしょうか。
日本が生きとし生けるものすべてにとっての楽園となり、のんびり
と暮らせるような環境の国になれば、カラスだって極楽鳥のように
優雅な衣装を身に纏うことができることでしょう。