ライターじゃない、アイドルだ -11ページ目

4.パチンコ企業就職編(3)

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早番終了時、100万円分の特殊景品がマイナスになった。

 

大景品がそっくり100万円分足りないのだという。

 

間違えてお客様に100万円分多く渡して渡してしまったのか。それはあまり考えられない。

 

一体どこに行ったのだ? 従業員総出で探すことになった。

 

私と数人は店舗の駐車場へ出て周囲を調べまわった。

 

植え込みにも首を突っ込んで探す。

 

冷静に考えれば駐車場の植え込みに有ることはなさそうだが、大金の紛失事件に冷静さを失っている。

 

2時間程が経過して皆へとへとに疲れたが、それでも100万円分の特殊景品が見つかることはなかった。

 

 

正確な事実は知らない。

 

ただ後日、役職者の男性とカウンター係の女性社員が1名ずつ店舗から消えた。

 

共謀して盗んだという噂を耳にした。

 

内部不正は身近で起きるのだということを、私は実体験として身にしみた。

 

 

やがて勤務先の店舗に初めてのCR機が入ることになった。

 

今となってはあまりに有名すぎる、CR大工の源さん(三洋)だ。

 

大当りの当選図柄が1/3で揃う1.3.5.7などであれば、確率変動に突入して以後2回の当りが約束される。

 

今風に考えると残り2回転のSTで確率変動図柄で当ればST再セットとなり、ずっと確率変動が続くモンスタースペックだ。

 

島の状況を見ていると、大ハマリもあれば、ドル箱を10箱、15箱と積み上げている様子が伺える。

 

ここ最近にはなかった爆発スペック。いや正確には爆発スペックは存在した。

 

アレジン、エキサイトなどのアレパチだ。

 

大負けか大勝かといったアレパチの島はいつも独特で普通の人は近寄りがたいものだった。

 

CR機の登場により、比較的平和にセブン機を楽しんでいた人まで爆発スペックを打ち始めている。

 

今までハネモノ、セブン機、権利物、アレパチと住み分けがされていた店内だが、全体が鉄火場の雰囲気になり始めたと私は感じた。

 

 

冒頭に内部不正の話をしたが今度は外部不正、いわゆるゴト師の話をしたい。

 

CR機の「CR」とはカードリーダーの略で、券売機で専用のカードを予め購入して遊技をする。

 

その利用情報、つまり売上情報が店舗以外の第3者の会社においても管理されることにより、脱税防止になるという名目だ。

 

皮肉なことに勤務先の店舗が映画マルサの女のモデルになった店舗だと後に知ることになる。

 

そのカードは複数の発行会社があるのだが、勤務先はパッキーカードであった。

 

このパッキーカードの偽造品が出回っていると聞き、私達従業員は笑顔の裏で目を光らせていた。

 

「笑顔の裏で」というのは、ちょうどこの辺りからパチンコ店の従業員が単なる作業員兼見張り役からサービススタッフへと変化を遂げていったのだ。

 

「客」を「お客様」と呼ぶようになり、大当りの際ドル箱を持って行って「おめでとうございます!」

 

今まででは信じられないような変化であった。

 

ゆえに通常は笑顔でニコニコ。しかしその裏ではゴト師などの異常を察知するべく意識していた。

 

とある日、CR大工の源さんの島を巡回していた私の視界に妙な形のパッキーカードが見えた。

 

と同時にそのパッキーカードをCRユニットに挿入しようとした腕を咄嗟に掴んだ。

 

おい!

 

穴だらけ?目の前に異様な形のカードが表れ私は青ざめた。

 

カードの下半分がほとんどない妙な加工がされたカードだ。

 

間違いない。これは偽造パッキーだ。

 

そう思った瞬間、パッキーカードの持ち主が席を立ち猛スピードで逃げる。

 

追いかけようとしたが、ゴト師対応は自分自身の身の安全も守らなければならない。

 

いきなり刃物を出して抵抗という事例もあることから、結局深追いはせずに逃げられてしまった。

 

恐らく相手はアジア系の外国人だったと思う。

 

この偽造パッキーカードの不正利用のおかげで、しばらく神経をすり減らしながら警戒してホール巡回するのは骨が折れた。

 

 

厳しい規律、やる気にあふれたスタッフ、内部不正、外部不正、サービス業への転換。

 

私は様々な経験を経てホールスタッフとして全般的な業務を覚えた。

 

元々このパチンコ店に就職した動機は、収入を得る為に一時的な腰かけのつもりであった。

 

しかし、そんな私に人生最大の転機が訪れる。

4.パチンコ企業就職編(2)

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勤務していたパチンコ店では不思議なこともあった。

 

とある日、2週間程限定で働くという研修生が配属されてきた。

 

ドイツ人だ。

 

日本語は話せないという。

 

困ったことに私が担当して教えることになる。何故なんだ。

 

キャ、キャンユー スピイク イングリッシュ?と質問し、英語なら通じるのが分かったので

 

会話はひとまず英語でやり取りすることにした。

 

営業が始まった店内で留学生を私の後ろにつけてホール巡回をする。

 

お客様の台が大当りしたら当り数字を確認して偶数ならスタート札、奇数ならラッキー札を台上に差すと教えたい。

 

イ、イッツ ビンゴ!イッツ スタートフダ!オア ラッキーあ プ、プレート オン!

 

しどろもどろである。ややこしすぎる。

 

単語を並べた強引な英会話でどうにかホール巡回を終えた。

 

そして勤務終了後、私の寮部屋に招待してコミュニケーションを図ることにした。

 

例によってたどたどしい英語で、お前の腹にはビールが詰まっているのか?と聞いたら大笑いしていた。

 

しかしちょうど開催中のワールドカップアメリカ大会のニュースを持ち出してドイツ敗退の話を振ると、

 

留学生は突然泣き出してしまった。気軽に触れてはならない話題だったのだ。

 

ドイツ人にとってのワールドカップは我々とは重みが違うのだと思った。

 

その後、家スロのコンチネンタルⅠで遊ばしてやると、小役が揃っただけで喜んでいた。

 

ボーナスを引いてさらにゴキゲンだ。

 

すると留学生が来週社長と富士の樹海に行くと教えてくれた。

 

私は樹海の恐ろしさを伝えようとした。

 

手を大きく広げて ビッグ ビッグ ベアー イン ジュカイ・・・!

 

首を絞めるようなジェスチャーでジュカイ イズ マイセルフキル・・・!

 

留学生は恐怖におののいたもよう。

 

すると、それならば樹海には行きたくない!社長と樹海に行くのは辞めると言い出した。

 

これはマズイ。冗談のはずが本気で怖がっている。

 

脅かしたのが私だと知れたら大変なことになってしまう。

 

親指と人差し指を感覚を1cmにして イッツ ベアー ベリーベリースモール!! 

 

必死で本当はそんなに怖くないのだということを説明して事無きを得た。

 

そして予定の研修期間を終えて留学生はドイツに帰っていった。

 

突然パチンコ店研修にやってきた留学生。

 

彼は一体何だったのだろうか。謎のままである。

 

パチンコ店勤務はこうした面白い出来事があれば、思わず凍りつくような出来事もある。

 

 

ある日、開店からの早番勤務を終えた私達に連絡が回ってきた。

 

早番景品カウンターの特殊景品のマイナスの誤差が発生。

 

特殊景品が足りないらしい。

 

額は100万円分だ。

4.パチンコ企業就職編(1)

【目次リンク】

1.はじめてのパチンコ編(1989年~)

https://ameblo.jp/tencyou7777/entry-12396112976.html

2.上京パチンコ編(1989年~)

https://ameblo.jp/tencyou7777/entry-12396833601.html

3.パチンコ攻略編(1991年~)

https://ameblo.jp/tencyou7777/entry-12397911333.html

4.パチンコ企業就職編(1994年~)

https://ameblo.jp/tencyou7777/entry-12400413287.html

5.パチンコ店長編(2000年~)

https://ameblo.jp/tencyou7777/entry-12403314011.html

6.パチンコ起業編(2006年~)

https://ameblo.jp/tencyou7777/entry-12405941148.html

 

 

 

就職を希望したそのお店は数年前に一度寄ったことがある。

 

パチスロは全台アラジン(ニイガタ電子)だった。

 

集中に入るととてつもなくメダルを吐き出すという初代アラジン。

 

どうやったら入るのかも分からないし、そんな恐ろしいパチスロだけの雰囲気に震えあがって店を後にした記憶がある。

 

そんな恐怖を感じたお店に、他のお店にはない威厳のようなものを感じたのか。

 

 

1994年5月 私は23歳となり、電話帳で神奈川県某市のパチンコ店の電話番号を調べて面接にありついた。

 

馴れないスーツを着た私は、店長室へ通され店長と初対面。

 

恰幅が良く、とてつもなく貫録のある人だ。

 

何を話したかは覚えていない。

 

ただ最後に部屋を出る際に「おまえベルト上下が逆やぞ」と指摘されて恥ずかしく思ったのと、

 

大雑把な印象であったのに、実は細かな所を見ているお人だと驚いたことが印象に残っている。

 

 

実際の現場仕事ではG店長代理が仕切りをしていた。なんと歳は私と同じ。若きエースだ。

 

その部下として主任、副主任がいて、我々一般社員がいる。

 

数週間勤務してみて、過去勤務したパチンコ店との違いを感じる。

 

朝礼の形式からしてしっかりしていて厳格である。従業員がやる気に満ち溢れてる。特に元気なのが新卒社員。

 

大学を卒業して私より1ヵ月早く新卒として入社したらしい。

 

バカだと思った。

 

わざわざ大学を出てまで来る所なのか?このパチンコ店は。俺は電話帳めくってやって来たんだ。

 

新卒連中は何かにつけ、その仕事私がやります!他に仕事はありませんか!と異常なまでのやる気をみせる。

 

就業時間が終わっても自発的に何らかの仕事をしている。

 

仕事っていうのは定時になったら終わって帰るもんなんだよ!

 

私はそんな彼らを白い目で見ながら定時で職場を後にし、近頃仲良くなった一部従業員とバンドの練習をして遊んだ。

 

楽器初心者だったがベースを担当した。ボーカルがおらず何故か私が兼任した。音痴なのに。

 

よって、それはもう酷いミスチルのクロスロードが奏でられていた。

 

 

この頃の新台入替というものは年に一度、もしくは二度。

 

パチンコ店にとっては一大イベントであり、遊技客にとっても期待に心踊らせるものだった。

 

いわゆる出玉イベントは存在しない。

 

勤務した店では月に一度、第三者主催名義で開催される商品抽選会がある程度だ。

 

ゆえに新台入替に対する熱意は相当なもので、新台入替作業は異常な緊張感のある世界だった。

 

新台入替作業当日。営業時間を短縮して閉店し、作業開始前に従業員が集合して全体中礼を行う。

 

私達は機敏な動作で軍隊のごとく横一列の隊列を作る。

 

そこに表れたG店長代理から雷のような一言が発せられる。

 

「お前達は目が死んでいる!そんな目じゃ今日の新台入替は失敗する!」

 

え?意味が分からない。一瞬耳を疑った。

 

だがどうにか理解しようと努めた。

 

とりあえず目のことだから相手を睨みつけるようにすれば良いのではないかと思い、私は眉間と上まぶたに力を込めた。

 

こうか?こうやって睨みつければいいのか!?

 

大事なのはやる気。やる気が全て。それは声の大きさ、動作の早さで判断されるようだ。

 

周囲のペースを乱さぬように、見よう見まねで各種入替作業に取り掛かった。

 

 

その他、趣味としてのパチンコ遊技はそれなりに楽しかった。

 

一度当選すれば複数回の当りが約束される3回権利物ミルキーバー(ニューギン)

 

そして衝撃だったのがギンギラパラダイス(三洋)だ。

 

ゲーム姓はさることながら、マリンちゃんというキャラクターを見て度肝を抜かれた。

 

なんて可愛いキャラなんだ。ここまで可愛い女の子は見たことがない!

 

そんな平和に時代に変化の波がやって来ていた。

 

パチンコはCR機というものになるらしい。設定付きで大当り確率が平均1/400くらいになるらしい。

 

なんだって?セブン機は1/240くらいではないのか。3回権利物でさえ1/300という荒くて困る大当り確率なのに。

 

1/400の世界などは簡単に確率が収束せずに、とんでもない博打台になってしまう。

 

ああ、終わってしまった。

 

これで私の大好きなパチンコはこれで終わってしまった・・・。

 

夜の星空を仰ぎならがら私は呟いた。