4.パチンコ企業就職編(9)
【目次リンク】
1.はじめてのパチンコ編(1989年~)
https://ameblo.jp/tencyou7777/entry-12396112976.html
2.上京パチンコ編(1989年~)
https://ameblo.jp/tencyou7777/entry-12396833601.html
3.パチンコ攻略編(1991年~)
https://ameblo.jp/tencyou7777/entry-12397911333.html
4.パチンコ企業就職編(1994年~)
https://ameblo.jp/tencyou7777/entry-12400413287.html
電話帳を開いて就職したホール企業の最初のN店勤務も1年がすぎた。
1996年。私は副主任に昇格し、管理者養成学校など様々な経験をした後、私に辞令がおりた。
-M店へ異動-
新規オープンした巨大店舗への異動である。その規模からして会社にとっては重要な位置づけの店だ。
オープン時は声がかからなかったが、今回ついに呼ばれた。
やってやる!
M店は何もかもが輝いていた。景品カウンター前には普通はありえない設備があり、業界内でも話題になったと思う。
(※今後の展開を考慮し、店名バレしないよう必死に濁させて頂く)
1000台クラスの巨大店舗のホールである。
新たなホール、経験したことがない広いホールでもやることは同じ。
意気揚々と、いや気合にみなぎっていた私は烈火のごとくホールの仕事をした。
この辺りからの私は鬼だ。
朝礼で覇気が感じられない者には名指しで帰れと怒鳴りつける。
実際に帰った者もいた。このケースの場合は大抵即退社だ。
覇気とは目つき、声量、姿勢から見て取れるやる気である。
信じられないかもしれないがやる気がなければ即退場。そういう世界なのだ。
ホール巡回ではインカムを使ってスタッフに指示や激を飛ばす。
ある時、全体のやる気の足りなさに激昂してしまい、5割稼働はあるのにかかわらず
「お前ら全員いらねえ!全員帰れ!俺一人で十分なんだよ!!」とキレたことがあった。
やる気があれば人間の限界なんぞ超えられる。
数十分間一人で対応したが、その後すぐスタッフは戻ってきた。正直な所、全員帰らなくてよかった。
やる気が全て。この頃の時代はめちゃくちゃに大きな声を出してキビキビ走っていれば誰でも出世できたような気がする。
常に怒っているばかりの万年沸騰状態であったが、逆に甘い話もあった。
期待されて他店舗から異動してきた役職者ということで女性社員には多少注目された気がする。
一人の女性社員と交際を始めた。実は異動前の店舗でもそのようなことはあった。
そんな私を店長が呼び出して言った。
「また女関係で噂になりやがって!昇進の話もあったが全部白紙だ。おまえは当面昇進なし!次やったらアソコを切ってやる」
何故なのだ。二股だとか不倫などの不義理はしていないのだが。
単に二度の浮いた話が引っかかったらしい。今後の出世の道が絶たれてしまった。
実際、同一店舗で十数名の女性と関係をもって店内をぐちゃぐちゃにして追放された主任職が現れたりしたので、この辺は敏感なのであろう。
店舗勤務同士が交際を始る時は二人揃って店長の元へ赴き、「この度○○さんとお付き合いさせて頂くことになりました!」と報告するといった、
店舗の風紀乱れを抑制するに効果的な風習があったのを思い出す。
さて、この頃設置されていた機種はパチスロはフリッパー、CCエンジェル、ジョーカー、ビーキッズクラブなどのノーマルタイプ。
パチンコはCR球界王、CR黄門ちゃま、CRモンスターハウスなど歴代の爆裂確変機である。
この頃は確変中に閉店を迎えた場合、状態そのままでの翌日予約が可能であった。
尚、遊技機は今の性能と異なり、電源をOFFにするだけでいわゆるラムクリ状態となった。
閉店後に確変予約の台番号を記載したメモを見ながら遊技機の関わる配電盤のブレーカーを島ごとに落とす。
その時、まれに絶叫が響き渡る。
ミスして確変予約の台の電源を落としてしまうのだ。当然確変状態は消滅。
深夜0時から特定台で確変に入るまでスタートチャッカーに玉を入れ続ける地獄が始まる。
大当り確率1/400程で確変突入確率は1/3なのだ。簡単に入る訳が無い。
大抵は朝4時、5時頃まで頑張ることになる。
翌日早番予定で7時までには出勤などであれば尚更地獄なのだ。
そこで私は一つ裏技を閃いた。対象台の両側の遊技台の電源コンセントを表側で通し、電源を入れたまま中央に移動する荒技だ。
これにより確変台を作る効率が3倍に跳ね上がる。俺は天才だ!
ある日、この手順で隣の台を移動して確変台を準備した。
すると朝一来たおばちゃんに台が違う!とすぐさま指摘された。
毎日同じ台で遊んでいる常連様は知っているのだ。自分の台の細かな傷の位置を。汚れ具合を!
常連のおばちゃんの観察眼には恐れ入った。
それとは別に開店時にパチスロの一部がボーナス成立状態サービスの「モーニング」は依然としてあった。
但し、少し前とは違って自動で作業をする打ち込み機はない。ある時期に全て捨てろと命を受けた。
よって遅番スタッフ総出で手打ちでボーナスを成立させる。
しかもREGではない、BIG限定だ。
疲れた状態でボーと打っているといきなりBIG図柄を揃えてしまう。
液晶搭載初号機「ゲゲゲの鬼太郎」の登場はまだ先だ。
今やノーマルタイプの覇権を握るジャグラーも登場前だ。告知ランプなどない、全てリーチ目がメインだ。
定期的にBIG揃えの絶叫が響きながら深夜の作業を行う。
ここでも私は裏技を開発した。
裏技といっても単純に3台同時にフルウエイトで打つだけだ。
これのおかげで今でも3台同時遊技できるはずである。結構疲れるが。
このように体力勝負の作業をこなしながら日々の勤務をした。
4.パチンコ企業就職編(8)
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新卒社員の受け入れから半年程が経過し、皆一人前に育ってきた。
私の目を盗んであおりマイク中に
「コンチネンタルルルゥッスタアアアアアトォォォォォーーーー!!」
などと、当時めちゃくちゃに気合の入っていた新宿グリンピースのマネをしている。
ウチの店にコンチはないのだ。やめろ。
そんなある日、私に外部研修に参加するようにと命令が出た。
管理者養成学校-基礎コース-
富士宮市の山中で実施される、12泊13日補講最大3日の通称「地獄の訓練」である。
これから参加する方がいるやもしれないので詳細を書くのは控えるが、
何かを全力で読んだり、あり得ない動作でラジオ体操したり、駅前で一人で全力歌唱したり、班員と40km山中夜間歩行したり、
多くの課題があり、それぞれの審査に合格して全てクリアしなければ卒業できない地獄なのだ。
これにより強靭な精神力をもった軍人が育成されると私は考える。
本気で本音で本腰でぶつからなければ13日で卒業することはできない。
13日で卒業するのはよほどのことで、普通は数日の補講で卒業する。
しかし一部では途中で逃げ出したり、卒業できなかったりする者もいる。
我が社から派遣された社員で卒業しなかったものはほぼいない。卒業必須なのだ。
富士宮駅から山奥の管理者養成学校に到着し、白い上着と紺色のズボンを渡される。
まるで宗教団体のような格好になる。
大部屋に100名程の受講生が入れられ、一人ずつの自己紹介が管理者養成学校の流儀で行われた。
これはまだ審査ではないので軽いジャブだ。
その後、一班13名ほどに分けられて寝泊りする部屋に連れて行かれる。
まずはこの13名の中でトップに立たねばならない。私は株式会社○○○の人間なのだ。誰に負けるか。
ライバルは佐川急便から派遣されたAさんだ。
噂に聞いていたが佐川の人間は気合が入り方が違う。宿敵佐川Aさんには負けてはならない。
班長は班員の投票制で決められた。
佐川Aさんが班長、私が副班長。負けてしまった。
だが班長になれなかったなどと感傷に浸る余裕もない程の訓練が始まった。
訓練項目には苦戦したものがあった。途中、送ってこられた店舗スタッフからの手紙を手にトイレにこもって嗚咽したこともあった。
結局、私は13日で卒業することは叶わなかった。
何が何でも帰ると自分にムチ打って、どうにか補講1日の14日で卒業した。
流した汗と涙の量は結構なものだった。
会社から迎えの車が来て、久方ぶりに見る街の明かりが異様に眩しかったのを覚えている。
しかしこれで終わりではない。この後最大の関門が控えてる。
会社に戻っての報告式だ。
本社入口には店長をはじめ幹部らが整列して迎える。皆黒か紺のスーツなのでまるで裏稼業のような景色だ。
本社フロアに入ると店舗スタッフらが一斉に整列している。
そこで上長に対面して、全力で卒業証書を読み上げ、己の決意を述べる。
全力の声、動作、涙も構わず出てくる。
熱が伝わらなければ何度でもやり直し、場合によっては1人あたり1時間も要する儀式なのだ。
どう変わってきたのかとわざわざ店舗から本社に集合したスタッフも緊張している。
私の出番となり、卒業証書の読み上げ途中に、いちいち紙なんぞ読みながら伝えられるか!と卒業証書を無視してぶっぱなした。
終了後、卒業証書無視するやつがいるかと別の上司にめちゃくちゃに叱られた。
うるせえよ。
俺に上司はいらねんだ。全員倒す。
こうして私という、ただ数字を上げるだけのサイボーグが誕生した。
4.パチンコ企業就職編(7)
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春が来て5名の新しい新卒社員がやってきた。
副主任になった私は直属の上司として受け入れ担当となった。
新卒社員はやる気に満ち溢れ、凄まじい勢いでやってくる。
なぜならば店舗配属の前に数日間の宿泊研修により礼儀・礼節を徹底的に叩き込まれているのだ。
新卒店舗配属の初日を迎え、営業事務所に彼らがやって来た。
「入ります!!」
その刹那、新卒より大きな声と気迫でやり返す。
「声が小さい!!やり直し!」
限界まで全力で声を出して入室するまで許さない。ここは厳しい織田軍なのだ。
お前達は研修で何を学んできたのか。やる気がないなら帰れ!と激を飛ばす。場合によってはこの場で追放する心持ちだ。
そうしたウォームアップが終わり、新卒は最初の業務に入ってもらう。
ドア配置だ。
ドア配置とは、単に入口ドアに立って来店、退店されるお客様に挨拶だけをする業務である。
ドア配置だろうが役割をもらった5名の新卒はやる気満々でドアに整列する。
「いらっしゃいませ!!」
意気揚々と突き抜けるような大きくて元気な挨拶を発したが、
しかしまたその刹那、新卒を叱り飛ばす。
「声がデカすぎんだろうが!!お客様怖がってんだろ!何考えてんだ!TPOってモンを知らねえのかおめえらは!」
声が小さければ叱られる。大きすぎても叱られる。
結局何やっても叱りつけるのだ。
こっちは本気だ。全力で来ないなら消えてもらう。向こうも本気。意地でも食らいついて来る。意地と意地のぶつかり合いである。
何せやる気があれば何でも出来る時代なのだ。
売れば売るほど売上になった経済状況下では、決め事を正確に遂行する人手があればあるほど良い。
そんな時代ならではの有効な手法だったと思う。
こうしていちいち無駄なエネルギーを消費しながら、ドア配置、清掃などを覚えてもらう。
その次はホール巡回だ。
私の後ろに一人ずつ新卒をつけて金魚のフン状態でホールを巡回する。
だがここでも地獄をみせてやる。
いきなりトップスピードでホール内を移動、トリッキーな動きも混ぜて翻弄する。
すると新卒は付いてこれなくなる。そしてまた叱りつける。
そんなイジメのような日々を1ヶ月程過ごし、新卒は立派な軍人へと成長する頃に感動のセレモニーがやって来る。
台カギの受け渡しである。
これまでの研修状態のスタッフは台カギを持たされないなかったのだ。
不正にも使える重要な仕事道具なのである。
一人前の証となる台カギをもらった新卒は大喜び、涙ぐむ者もいたような気がする。それは私も同じだ。
思わず皆で夕日に向かって走り出してしまいそうな雰囲気。青春ドラマそのものなのである。
また我々軍人はプライベートでも気が抜けない。
例えば社員寮。ほとんどのスタッフが社員寮に住んでいるのだが、社員寮の周囲はゴミもなく綺麗である。
それは必要に応じて実施される寮清掃があるからだ。
早朝5時に全員集合。公休だろうが関係ない。全員だ。
特に夏の暑い日、真冬の凍える時などは最悪だ。
辛い思いをして寮清掃など二度としたくないと思う。ゆえに再度開催されないよう普段綺麗に使うのだ。
プライベートついでに話すと、仕事が終わって深夜に開催される親睦会も同じだ。
好き勝手に楽しく飲み食いする場所じゃない。
親睦会は上司、同僚のグラスは空になっていないか、つまらなさそうにしている者はいないか、
周囲の観察に集中し、緊張感が張り詰める自己鍛錬の場だ。
もし周囲を気にもかけずに呑気に無駄話をしていようものなら、
「おめえは何しに来てんだよ!!!」と叱られること請け合いだ。
いや別に飲んでるだけなんですが?なんて口が裂けてもいえないのである。
軍人の世界は厳しいのだ。
荒っぽさが目立つ話ばかりだが、紳士的なところもある。
ある時期からスタッフ同士は全員「さん」づけが決められた。
上司が部下を呼ぶ際ももちろんさん付けだ。
また関連業者は「業者様」呼びである。
もし「あの業者から連絡が来なくて」などと言おうものなら、
「てめえは何様のつもだ!ああ!?」と確実に上司に怒鳴られる。
徹底的なスタッフのしつけ。
これにより決め事は100%遂行される。
実施する内容が正しい場合に限り、その組織はとてつもない成果を生み出す軍隊なのだ。