イメージ 1
 松葉蟹が解禁されました.日本海の味覚です.美味しいですよ.
 今日は山邊先生から早速「松葉蟹・タグ付き」の差し入れがありました.いただく前にブログ用写真を1枚.その後,皆で美味しくいただきました.気節を肌で感じ,舌でも感じられる但馬地方です.是非おいで下さい.

 今日は診療以外のブログも書いてみました.

本日のドクターヘリ(小林,番匠谷先生,米田看護師)
1件目 くも膜下出血疑い
 「割れるような頭痛.」 くも膜下出血が疑われヘリ要請です.この地域,脳外科対応の病院が限られており,ヘリによる搬送時間の短縮と医師による現場トリアージ(病院選定)が必要とされています.救急車内で番匠谷先生は診療を行い,小生は家族から病歴など含め情報収集です.どうやら緊急性はなさそうですが,やはり念のため脳外科対応可能な病院へ搬送とします.ヘリにて約10分.いつもお世話になっている先生が応需してくださいました.
 いつもいつもありがとうございます.今後ともよろしくお願い申し上げます.
イメージ 1
 本日は朝から霧・・・でも但馬空港は晴れているらしい.運航管理室でライブカメラを確認.まあ,そのうち病院ヘリポートも霧が晴れるか,なんて思ってた矢先です・・・

本日のドクターヘリ(小林,岡本先生,林田看護師)
1件目 水難事故(結果キャンセル)
 運航管理質から連絡です.「水難事故のようです.船は港に9時到着予定.それに合わせてドクヘリ要請です.今から車で但馬空港に行けば十分に間に合います.行ってください!」
 というわけで,小生の車に資機材を積み込み但馬空港へ安全運転で出発!緊急走行は出来ません.法定速度を守って但馬空港へ到着.すると空港職員の方が,「こちらへ車を入れて下さい!」 案内されるがまま行くと,なんといつも給油をしているエプロン.ヘリに車を横付けし資機材搬入です.ありがとうございます.感謝,感謝です.多くの方々の温かい協力を得て,短時間で離陸です.上空からエプロン脇に駐車されている我が愛車.不思議な光景です.
 本事案は離陸後,キャンセルとなりました.

2件目 失神発作
 「葬儀中に突然の意識消失.」にて要請です.いつもの海岸沿いのランデブーポイントへ着陸(写真).天気が良いと海と芝生が綺麗です.しばらくして救急車到着.患者さんを診察します.今は意識も回復.低血糖なし.12誘導心電図問題なし.症状もはっきりしたものはなさそうです.ちょっと気になるのは徐脈傾向にあること.この状態ならかかりつけの病院でも対応可能と判断します.
 ヘリでかかりつけ病院近くのヘリポートまで搬送.そこからはヘリの要請消防とは違う消防の救急車に同乗して搬送となります.いつもいつもご協力をいただき感謝申し上げます.ヘリは離陸.すると別事案の要請が.ならばこの患者さんは岡本先生だけで搬送を担当し,搬送後は自力で帰院してもらう段取りとします.ヘリポート着陸.エンジンカットせず患者さんを救急車に乗せかえ,岡本先生だけを降ろしたヘリは再離陸です.
 
3件目 意識障害 低体温
 「自宅ベッドの横で倒れて意識無し.低体温.」との情報.ヘリと救急車はほぼ同時にランデブーポイントへ到着.小生は救急車内で診察を開始.低体温,循環不全の状態.今にも心臓が止まりそうな勢いです!輸液全開!!保温!!素早くヘリへ乗せかえTECCMCへ.
 初療搬入直後やはり心停止へ.体温20度前半.復温しなければどうしようもありません.初療担当の三浦先生は手を尽くしますが・・・

4件目 一過性意識消失
 岡本先生が無事帰院したのを待っていたかのように要請が入ります.「トイレで倒れて右半身麻痺.」 10分程度でランデブーポイントへ着陸,程なく救急車がやってきます.車内で岡本先生が診察を行います.幸い意識も回復,右半身麻痺は元々あったとのこと.小生はご家族にお話しを聞き,方針などにつき説明,承諾をとります.現場に医者が2人いると分担作業で段取りが早く,現場滞在時間の短縮につながります.
 患者さんの状態,既往などよりかかりつけ病院へ救急隊のみでの搬送とします.このあたりの現場トリアージはフライトドクターの大きな役目の1つとなります.

5件目 岩場で転倒.頭部外傷
 「岩場で転倒.意識悪い.現在救助中.」 救急隊が患者さんに接触してからの要請ですが,救助に時間を要することから適切なタイミングでの要請です.ヘリは10分で現場上空へ.岩場から運び上げたところを確認しランデブーポイントへ着陸します.ランデブーポイントで待つこと8分,救急車が到着.外傷初期診療の開始です.「わかりますか?」岡本先生が問いかけます.幸い意識レベル清明,呼吸,循環も安定です.しかし,転倒時の意識障害が気になります.外傷はTECCMCへ.搬送し精査しましょう.何もなければそれで良しです.

 本日も日没直前まで仕事させていただきました.ありがとうございました.小生はこのまま24時間勤務なので,愛車は但馬空港にお泊まり.明日お迎えに行きましょう.
イメージ 1
 「秋」:Wikipediaより 「気候がよく過ごしやすいことから,秋祭りや運動会などの行事も多く開かれ,たいへん賑やかな季節でもある.「食欲の」「スポーツの」「読書の」「芸術の」などさまざまな言葉が冠される.」
 皆様はどのような秋をお過ごしなのでしょうか.但馬の秋も趣があってよろしいですよ.本日の写真は,ヘリが雲の上を飛ぶ「ON TOP」時のものと,紅葉の始まりの写真です.雲が低く,切れ目も見えていたのでランデブーポイントに向かう途中のものです.滅多に見られる光景ではありません.また但馬の山々では紅葉が始まりました.日に日に赤みを帯びて行っています.

本日のドクターヘリ(小林,三浦先生,福本看護師)
1件目 脳梗塞
 朝のカンファレンス前に要請です.「急に倒れて意識が悪い.」 ヘリは夜間駐機の但馬空港から雲の隙間を見計らってやってきます.医療クルーは資機材と共に素早く乗り込み出動です.8分でランデブーポイントに到着.救急車内で診療開始.CPSS 3項目陽性,発症時間もはっきりしています.TECCMCへ搬送し,ヘリポートからのdirect CTです.発症から1時間以内に診断がつきました.
 血栓溶解療法の適応を考えたヘリ要請が有用性を発揮しています.

2件目 呼吸不全
 救急隊現着後要請です.「搬送中に急変のリスクが高い.特に呼吸停止.」との適切な判断です.救急隊はランデブーポイントまで補助換気でやってきます.ヘリは9分でランデブーポイントへ.と同時に救急車もランデブーポイントへやってきます.救急車内で診療開始.幸い救急隊の処置が良く,意識状態,呼吸状態も安定してきました.これならば気管挿管なしでヘリ搬送可能です.ヘリは現場滞在時間10分以内でTECCMCへ離陸します.

3件目 交通外傷(バイク VS 乗用車)
 「交通事故.バイクの運転手,意識無し.」 重症外傷のようです.福本看護師は何も言わずとも黙々と準備を進めます.ヘリは10分でランデブーポイントに着陸.同時に救急車も到着.救急覚知から20分で救急医による外傷初期診療の開始です.救急車のストレッチャーを動かし,患者さんの左側にも入れるようにします.三浦先生と小生の同時に診療開始です.胸部外傷による外傷性心肺停止.皮下気腫,胸郭動揺もあり.三浦先生は気道確保に,小生は迷わず開胸を,福本看護師は急速輸液と薬剤投与.各々が救急隊と協力しながら診療・治療を行います.出血の制御さえ可能であれば望みがあるかもしれません.しかし,三浦先生から,「口腔内吐物で溢れ,次々に逆流してきます.喉頭展開不能!輪状甲状靭帯切開を行います!!」 福本看護師は素早く反応し必要物品が出てきます.緊張しつつも三浦先生は確実に気道を確保します.心拍の再開は得られていませんが,ヘリに収容してTECCMCへ搬送です.機内収容・・・蘇生不可能と判断.III型の心破裂が判明しました.残念です・・・お力になれず申し訳ありません.
 わずかでも可能性があれば全力を尽くしたいと思います.それが病院前救急診療を担う医師の役目であります.

 春に診療を開始したTECCMCとドクターヘリ.夏を過ごし秋になっています.沢山の患者さんを診察させていただいております.嬉しい思い,残念な思い,いろいろあります.救急医はその1つ1つを糧に成長しております.
イメージ 1
 今日はフライトスタッフ会議を行いました.月に1度,フライトドクター,フライトナース,運航会社スタッフが集まり,報告事項,協議事項の検討,症例検討などをワイワイとやっています.ここで出た意見を今後の活動に役立てたいと思います.

本日のドクターヘリ(小林,山邊先生,藤巻看護師)
1件目 意識障害
 朝のカンファレンス中に出動要請です.「突然の意識消失.」との情報.ヘリは約7分でランデブーポイントに着陸,同時に滑り込んできた救急車内に飛び込みます.幸い意識レベルも改善されています.病歴,内服内容などを確認すると,どうやら徐脈傾向が原因かもしれません.かかりつけの病院へヘリ搬送とします.隣の消防本部にご協力をいただき(いつも本当にありがとうございます),ヘリポートから医師,看護師同乗で搬送です.

2件目 施設間搬送(脳内出血)
 1件目の救急車同乗は山邊先生,藤巻看護師に任せ,小生はヘリポートで別事案の要請に備えます.別事案出動時は小生1人で行くか,TECCMCにフライトナースをピックアップしに行くかは飛行経路などで判断です.ちなみに別事案に出動した場合,山邊先生,藤巻看護師は自力でTECCMCまで帰ってきてもらいます.
 そんな中,別事案の要請です.他病院からTECCMCへの施設間搬送.救急車であれば50分近くかかります.ここからなら10分少々で向かえます.病院搬送に行っている山邊先生に情報を入れると,こちらに戻ってきている途中とのこと.あと数分で到着の予定です.ならばエンジンスタートしておきましょう.エンジンも暖まり,離陸可能と同時に山邊先生,藤巻看護師が走ってやってきます.間に合いました.
 JA822H・ドクターヘリは2件目のランデブーポイントへ10分で到着,程なく到着した救急車内で患者さんを引き継ぎます.脳内出血,脳室穿破.幸いにも気道,呼吸は問題ありません.しかし血圧コントロールが・・・急いで降圧治療を開始しながらTECCMCへ帰ります.
 帰院後,待ち構えていた脳外科チームによって緊急手術.後の集中治療は引き継ぎます.

3件目 心肺停止蘇生後
 「急に倒れて意識無し.」 救急覚知同時要請.いつも通り救急隊の現着前に離陸です.これだからこそ,本当の早期医療介入が実現出来ているのです.10分後,ランデブーポイントへ到着.救急車を待ちます.飛行中の情報では意識回復とのこと.数分後,救急車到着.「買い物中に突然倒れ,近くの開業医によって心停止確認.BLS施行によって約3分後に心拍再開(体動あり).AEDは未装着.」との申し送りです.患者さんは・・・「大丈夫ですよ.何ともない.」意識清明,呼吸,循環も安定.12誘導心電図問題なし,心エコー問題なし.しかし,皮膚は若干湿潤があり,何か起こったことは間違いなさそうです.精査目的にTECCMC搬送とします.
 早期医療介入も重要ですが,やはりbystander CPRはより重要であることを認識させられました.

 本日の写真は雲の合間から差し込む光とドクターヘリです.
イメージ 1
 何だかも木曜日は初療が大繁盛です.救急車,ドクターヘリの搬入がひっきりなし.これは誰のせい?

 睡魔に勝てず,途中になっていたブログの更新・編集です.日々の活動記録ですからね.

本日のドクターヘリ(小林,幸部先生,濱看護師)
1件目 交通外傷
朝の回診中に要請です.3階から階段を幸部先生と駆け下ります.JA822H・ドクターヘリはエンジンスタート.「軽乗用車と自動車の衝突事故.傷病者は1名.」との情報.ヘリは10分もかからず現場上空に到着.事故の状況を確認,救急車がランデブーポイントに向け出発するのも確認します.ヘリはそのままランデブーポイントへ着陸し救急車とタイムラグなくドッキングします.救急車内で外傷初期診療開始.救急覚知から20分,早期医療介入の実現です.10分もかからずヘリへ収容,頭部外傷を疑いTECCMCへ搬送です.

2件目 背部痛(解離疑い)
救急隊現着後の要請です.突然の背部痛と血圧の左右差を認め,救急隊は大動脈解離を疑いヘリを要請します.10分少々でヘリはランデブーポイントへ到着,救急車とドッキングです.患者さんは背部痛を訴えます.血圧は高め.12誘導心電図は有意所見なし.心エコーでも心嚢液貯留なし.診断に悩みますが,やはり解離は否定しきれません.であれば病院選定は手術対応可能な施設となります.先日もお世話になり,患者さんを救命してくださった救命救急センターへお願いします.快く応需してくださり,ヘリで搬送です.
いつもいつもJターンを受けていただきありがとうございます.

3件目 目撃あり心肺停止
2件目からの帰投中に要請がかかります.そんな予感もしてました.「洗車中に突然倒れて呼吸なし.」ヘリは南へ進路をとります.10分もかからずランデブーポイントへ到着,そこからはいつも通り支援車で現場に向かいます.2分後,現場到着.ちょうど患者さんは救急車内へ収容されたところでした.車内に乗り込み診療開始.救急隊から情報を聞きながらBIGで骨髄輸液路を確保,薬剤投与を行います.救急覚知から17分での医療介入,都市型ドクターカーなみの活動です.目撃あり,bystander
CPRあり,なんとかなるかもしれません.救急車をランデブーポイントに走らせながら治療を続けます.ランデブーポイント到着.機内では有効な胸骨圧迫は期待できません・・・だから「オートパルス装着!」
ヘリは静かに離陸,TECCMCへ.,飛行中も懸命な治療が続きます.

4件目 交通外傷
 乗用車同士の事故.救急隊現着後の要請です.「傷病者1名.胸部外傷の疑い.」
ヘリは10分でランデブーポイントへ着陸.同時に救急車もやってきます.救急車内で外傷初期診療の開始.確かに右胸郭に動揺と圧痛があります.皮下気腫はなし.FASTの陰性です.循環も安定しておりこれならこのまま搬送可能です.速やかにヘリへ乗せかえTECCMCへ搬送とします.
 搬入後,やはり多発肋骨骨折などが見つかりました.

5件目 意識障害(くも膜下出血)
 覚知同時要請です.ヘリクルーは4件目の患者さんを初療に搬入中.急いで引き継ぎを行って出動です.情報では意識障害,かなりやばい感じです.ヘリは5分でランデブーポイントへ着陸.そこに救急車がタイミング良く滑り込んできます.「現着時,呼吸停止!頸動脈は触知可能.LTで気道確保し換気を施行.その後から自発呼吸再開,橈骨動脈も触知!!」 救命士さんからの申し送りです.心停止寸前で救急隊により救われた命です.我々が引き継ぎます.病歴から頭蓋内病変が考えられ,今後の治療と搬送中の安定化を考えると十分な鎮静,鎮痛下に気管挿管へ入れ替えです.その後に機内収容,TECCMCへ搬送です.救急覚知から17分で気道,呼吸,循環の安定化が得られ,30分後には診断がつきました.
 後の治療方針は脳外科チームと相談,手術の上集中治療管理です.

 本日もお疲れ様でした.
イメージ 1
 24時間勤務明けのヘリ当番(いつもですが).夜間のICUはそれなりに動きがありました.皆さん,昨日よりは良くなられましたか?

 今日の写真は「DOUBLE RAINBOW」.虹が二つ並んでいます.今日のドクターヘリミッションはまさに「DOUBLE RAINBOW」でした.

本日のドクターヘリ(小林,倉橋先生,森田看護師)
1・2件目 小児の転落外傷と脳梗塞
 2件同時にヘリ要請です.北と南.「小児が川に転落した.」と「70代男性.脳梗塞疑い.」.両事案ともに覚知同時要請です.詳細な情報はありません.事案の発生場所はTECCMCを中間に南北に離れています.どんなミッションを選択する!?
・小児外傷に対応し,脳梗塞はキャンセル.
・血栓溶解療法を考慮し脳梗塞に対応,小児外傷はキャンセル.

 小生は両事案の対応を選択です.両ランデブーポイント間はヘリで約15分.両事案とも陸送なら40~50分かかる地域.両事案ともに覚知同時要請なので救急車がランデブーポイントに到着するまでに10~15分は今からかかります.血栓溶解療法は発症から3時間以内までOK.外傷は重症であった場合,1分1秒が生死を分けることになります.様々なことを考え,離陸までの数分で決断です.「まず小児事案に行ってから,脳卒中事案に向かいます.ミッション方法は各情報を聞いてから判断します.」

 離陸から5分強.小児事案の現場上空に到着.と同時に聞き慣れた救命士さんの声.「初期評価,全身観察に異常なし.しかし高所から川へ転落しているため医師の診察を仰ぎたい.」 どうやらLoad & Goではないようです.ならば早期医療介入のみで搬送時間の短縮は必要なさそう.南の地のランデブーポイントに倉橋先生を降ろし,ヘリは離陸,北のランデブーポイントへ急ぎます.救急隊からの的確な患者情報がミッションを動かします.

 南から北へ.飛行中に情報が入ります.CPSS 2項目陽性.発症時間もはっきりとした脳卒中事案です.ヘリは北のランデブーポイントに着陸.救急隊,患者さんをちょっと待たせましたが,発症から1時間以内には病院搬入完了です.もちろんそのためにはランデブーポイント滞在時間は10分以内.TECCMCへ向う機内で小児事案は近隣での受入はダメで,救急車に倉橋先生同乗で安定した状態でTECCMCへ向かって走っているとの情報を得ます.それぞれの事案に応じた早期医療介入,搬送時間の短縮といったドクターヘリの有用性が発揮されました.そのご褒美が「DOUBLE RAINBOW」だったのかもしれませんね.

 フライトドクター2名体制のドクターヘリは様々なミッション方法を選択可能です.今後も柔軟に全ての要請に応えられるよう努力していきたいと思います.また院内では2人目のフライトナースが必要になった場合に備え,岡本先生が調整を行ってくれていました.フライトチームがいろいろなミッションを経験,共有することで自ずと的確な対応が出来るようになってきました.喜ばしいことです!

 本日も多くの皆様にお世話になりました.ありがとうございました.
イメージ 1
本日のドクターヘリ(小林,松井先生,清水看護師)
1件目 胸痛・・・結果は・・・
 いつものように救急覚知同時要請事案です.「胸痛.」情報は以上.場所はスキー場近くの山間の町.機内では12誘導,輸液などの準備が行われています.ヘリはランデブーポイント上空に到着.まだ支援車が来ていません.ならば現場直近に着陸可能な場所がないか見に行きましょう!現場はランデブーポイントから少々離れています.上空から救急車を発見.今,現着したようです.遠いなあ,正直な感想.直近に着陸出来そうな場所が見当たりません.そうこうしていると,支援隊がランデブーポイントに到着したようです.であればランデブーポイントに着陸して支援車で現場まで向かうことにしましょう.雨上がりのグラウンドは砂塵を巻き上げません.静かに着陸,我々は支援車に乗り込みます.曲がりくねった山道を駆け上がります.空からだとすぐなのですが.どうやら救急車は現場出発したようです.無線でドッキングポイントを決め,そこで落ち合います.支援車から救急車に乗り込み診療開始.救急車をランデブーポイントへ走らせながらの診療です.胸痛は若干持続.本人は何となくしんどいと.12誘導心電図では虚血を疑わせる所見なし.血圧は?190mmHg以上あります.いつもより高めだそうです.松井先生は病歴を詳しく聞いています.「昨日も胸痛があって,なんだか右上肢が動かしにくかった.今日朝起きたら何ともなくなってた.胸痛はちょっと楽になったよ.昔事故にあってから背中や胸が痛くて開業医に通ってる.」患者さんはしっかりしておられます.心エコーでも心嚢液なし,心機能は大丈夫.小生と松井先生は診断に悩みます.病院選定をどうするか?しかし,二人とも何となくひっかかるところが・・・「これ,大動脈解離じゃないですか?」松井先生と小生の考えは一致していたようです.ならばオーバートリアージでも迅速な対応が可能な病院を選定しなければなりません.山を1つ越えた街の救命救急センターに電話します.いつもの先生.小生の大先輩です.「どうぞ.」いつもの一言.ありがたいです.気流が悪く少々揺れましたが,患者さんは落ち着いた状態で引き継がせていただきました.
 搬送後,お返事をいただきました.「A型解離でした.かなりやばい状況で緊急手術を行い一命を取り留めました.」 現場での救急医の感覚,トリアージ能力が功を奏した事案です.消防の適切なヘリ要請から始まった救命の連鎖が見事につながりました!

2件目 施設間搬送(急性硬膜下血腫)
 TECCMCへの転医依頼です.透析患者さんの硬膜下血腫.急に増大したようです.血液疾患もあり,どうやら慢性硬膜下血腫の急性増悪のようです.緊急手術と術後の集中治療,全身管理が必要な症例.当センターの得意としているところです.陸送であれば40分以上かかりますが,ヘリなら5分.飛行中も救急車ほど揺れないのです.ランデブーポイントで患者さんを引き継ぎ,TECCMCへ急いで帰ります.
 治療方針を脳外科チームと協議,緊急手術と術後管理.翌朝には患者さんの意識はほぼ清明に回復です.

 本日の症例は救急集中治療医として学び深き事案でした.
イメージ 1
 今日は虹をよく見ました.ヘリから見る虹はまた格別です.今日もよく頑張ったJA822H・ドクターヘリと虹のtwo shotを載せておきます.

本日のドクターヘリ(小林,三浦先生,安積看護師)
1件目 施設間搬送(徐脈,ショック)
 脈拍数30~40の徐脈.転医のための救急隊現着時には血圧低下もみられドクターヘリ要請です.機内では経皮ペーシング,12誘導心電図などの用意を行いながらランデブーポイントへ到着です.救急車内で前医の先生より申し送りを受けながら,患者さんを診察します.徐脈ですが,幸いにも循環は安定しています.念のためペーシングパドルを貼りヘリ機内へ収容です.飛行中も血圧はしっかり測定可能.5分でTECCMCのヘリポートに到着です.
 搬入後は救急医による初期診療を行い,循環器科の先生に引き継ぎになりました.

2件目 目撃あり心肺停止
 救急覚知同時要請です.「呼びかけに反応なし.」 ヘリは雲が低いため迂回しながらランデブーポイントへ向かいます.ランデブーポイント着陸直前に「目撃あり心肺停止,救急隊現場活動中.」との情報.であれば着陸後,支援車で現場に向かいましょう.トーマスバッグ,オートパルスなどを持って乗り込みます.5分程度走ったでしょうか,支援車が停車.雨の中を患者さん宅までダッシュです.すでに救急隊により気道確保済み.PEAの状態.三浦先生は虚脱した血管を探すよりはBIGによる骨髄輸液路確保を行います.ものの数秒で輸液路確保,薬剤投与です.しかし心拍再開は得られません.PEA継続.現場での原因検索,対応には限界があります.搬送中の有効な胸骨圧迫を行うためにオートパルス装着です.これで狭隘な搬出経路であっても胸骨圧迫の継続が可能になります.皆で自宅から救急車に搬出.医療クルーも救急車に乗り込みます.ランデブーポイントへ出発前に脈の確認です.「心拍再開!」三浦先生は叫びます.ヘリの待つランデブーポイントへ向かいながら,かかりつけの病院に併設された救命救急センターへ受け入れ依頼を行います.いつも通り快く応需してくださいました.ありがとうございます.
 幸い飛行中も循環は安定したままヘリポートに到着です.陸送であれば40~50分かけて病院搬送する地域.同時要請と医師の現場投入により,医療介入までの時間短縮は1/3以下になっています.

3件目 心不全
 救急覚知同時要請です.「胸痛,呼吸困難.」との情報.機内ではいつものごとく準備を行います.ランデブーポイント上空到着,救急車が現場出発するのを確認します.無線での情報,「胸痛持続,呼吸苦持続.かかりつけは○○病院.」 ヘリは一足先にランデブーポイントに着陸,救急車を待ちます.数分後,救急車到着.車内で診察を行います.呼吸は?循環は?胸痛の程度は?12誘導心電図は?やはり急性冠症候群,心不全が疑われます.今までの病歴などをうかがい,TECCMCよりはかかりつけの病院への搬送がBESTと判断します.かかりつけの病院まで陸送で10分程度.三浦先生,安積看護師同乗で治療を継続しながら搬送です.小生は次事案の要請があればいつでも飛べるようにランデブーポイントに待機します.フライトドクター2名体制はこのような柔軟な対応が可能です.えっ,要請があったらフライとナースはどうするか?TECCMCが経路途中にあれば別のフライトナースをピックアップします.それから,今搬送を担当している三浦先生,安積看護師は任務終了後にTECCMCまで自力で帰ってきてもらうことになります.
 幸い別事案の要請もなく,三浦先生たちの到着を待って離陸となりました.ランデブーポイントで待機中に,ランデブーポイントの管理者の方や近所の方にドクターヘリについての説明と見学をしてもらいました.こんな機会も大切なヘリ事業です.

 最近はTECCMCもちょっと落ち着いています.今日は早く帰って自宅のMACをメンテナンスです.他の先生方も早々に帰宅です.たまにはこんな日もありでしょう.お疲れさまでした.
イメージ 1
今月のドクターヘリ
・要請件数 94件
・出動件数 73件(内,施設間搬送 14件)
・累計出動件数 511件(4月17日~)

 今月に入り天候が安定しなくなりました.天候不良でのキャンセル,但馬空港から来られずのキャンセルなどがありました.全ての要請にお応え出来ず本当に申し訳ありません.

 これからドクターヘリを導入される地域,病院の方へ.基地病院内に駐機設備(格納庫など),給油設備は必須です.事業開始の時点で完備されることをお勧めします.当ドクターヘリは夜間駐機設備,給油設備が完備されていません(今年度中に完成予定).それに伴う弊害が少なからず発生します.病院ヘリポートは視程十分にもかかわらず,但馬空港の視程悪く離陸許可がおりず要請に応えられないことが発生しています.要請に応えられない時の現場スタッフのストレスは相当なものです.ヘリの有用性が発揮されればされるほど,このような問題が浮上してきます.上手くいっている面だけではなく,このような改善点,問題点をお知らせするのも我々の役目であると考えております.

 岡先生の膝の状態も改善傾向にあり,今日は三浦先生とICUで「診断的腹腔洗浄」を行っていました.小手術ですが,うちのICUスタッフも慣れてきたようです.

本日のドクターヘリ(小林,番匠谷先生,米田看護師)
1件目 急性腹症
 救急隊現場到着後の要請です.「急性腹症.腹膜刺激徴候あり.」 救急隊現着後の観察結果から緊急手術の可能性ありと判断された要請です.要請基準に含んでいますが,500件を越えて初めての要請内容です.緊急手術対応の出来る病院が少なく,搬送に時間を要する地域です.このようなしっかりとした救急隊の観察,評価,判断が患者さんの予後を決める場合も少なくありません.雨の中,学校グラウンドのランデブーポイントにヘリ,救急車が到着します(写真).患者さんはストレッチャー上でうずくまっておられます.心配そうなご家族.番匠谷先生が診察,小生はご家族にお話しを聞きます.やはり急性腹症が疑われます.陸送であれば40~50分かかるでしょう.ヘリなら5分少々.搬送中の揺れも穏やかです.速やかにヘリに乗せかえTECCMCへ搬送です.
 搬入後は初療担当の幸部先生,岡先生に託します.

 これから日本海側は冬型の気候に変わっていきます.どのような形の病院前救急診療体制がこの地域にあっているか各気節を経験し検証したいと思います.

 皆様,今月もありがとうございました.来月も引き続きよろしくお願い申し上げます.
イメージ 1
 初療状況をまず電子カルテで確認します.するとどこかで見た名前が.あれれ,岡先生?その直後カンファレンスルームに足を引きづりながら登場する岡先生.原因不明の膝痛のようです.早く治してくださいね,野山を駆け回るのですから.

 今日は夕方から合同医学会.それまではヘリ勤務の予定が,緊急手術が入ります.ヘリは岡本先生単独,小生と番匠谷先生で手術,もうちょっと落ち着かないICUは幸部先生,膝が痛くて手術に入れない岡先生と三浦先生が初療対応.がんばりましょう.

本日のドクターヘリ(岡本先生,福本看護師,記録から抜粋)
1件目 意識障害
 お昼前に要請です.救急覚知同時要請.自宅前で倒れているとの情報.現場は直近病院までかなり時間のかかる地域です.ヘリはランデブーポイントに着陸,救急車を待ちます(写真).ほどなく救急車到着.意識レベルIII桁,頭蓋内病変ありと診断します.岡本先生は十分な鎮静,鎮痛下に気管挿管を実施,二次性脳損傷を防ぎながらTECCMCへ搬送とします.
 救急覚知から30分以内に診療開始,1時間で診断がついています.ヘリでなければこの倍以上の時間を要していたでしょう.適切なヘリ要請をありがとうございます.

2件目 施設間搬送(くも膜下出血)
 搬送中の安定,時間短縮をはかるためにもヘリ搬送が最善です.ランデブーポイントで引き継ぎ.ここから救急医による初期診療が始まります.鎮静,降圧で再破裂を防ぎます.ヘリは滑らかに,静かにTECCMCへ向かいます.

3件目 気道異物による呼吸困難
 救急覚知同時要請です.麺類をのどにつめたとの情報.救急隊の観察では口腔内異物なし.しかし,まだ本人の訴えは続きます.ランデブーポイントで岡本先生が喉頭展開,と同時に咳き込みがありチャーシューが見えます!マギール鉗子でチャーシューを除去,呼吸状態の安定化を確認しかかりつけの病院へヘリ搬送です.
 早期医療介入が窒息を防いだ事案です.また搬送に祭し,ご協力いただいた近隣の消防本部の皆様,いつもありがとうございます.

 台風は通過しました.幸いこちらでは大きな影響はありませんでした.院内に台風が吹き荒れないように祈りながら24時間勤務に入ります.