作中において、ベジータもまた、戦闘力530,000のフリーザに対抗するために、無理なパワーアップを義務付けられたキャラクターだったといえます。
本考察においてもそれは同様で、通説ほどではないにしても、ベジータには通常以上の急激なパワーアップをさせざるを得ません。
しかし、そのパワーアップに何か納得できる理由付けをしたいと思うのです。

本考察では、サイヤ人の瀕死からの超回復のパワーアップ率を1.25倍としました。
ベジータは地球での瀕死も含めると、フリーザ最終形態との闘いまでのごく短期間のうちに、4回死にかけ、4回超回復しています。これはいかに戦闘民族サイヤ人といえども、なかなか起こりえない異常事態と言えるのではないでしょうか。
先程、サイヤ人の超回復は戦闘民族の生存本能が起こす特殊能力と言いましたが、この過酷すぎる事態に際して、サイヤ人の生理メカニズムはさらなる超回復を呼び覚ますと考えてみます。
すなわちサイヤ人の超回復は、短期間における度重なる超回復に際しては、成長率が1.25倍の累乗で増大していくものとします。

1回目超回復:1.25倍
2回目超回復:1.56倍(=1.25×1.25)
3回目超回復:1.95倍(=1.25×1.25×1.25)
4回目超回復:2.44倍(=1.25×1.25×1.25×1.25)

この成長率の指数関数的増加は、本考察においては、ひとまずベジータだけが持つ特殊能力ということにします。(悟空や悟飯には適用されません。)

以上の設定をもっともらしくするために、ムリヤリ理屈を考えてみます。

例えば…


「超回復時、サイヤ人の体内では特殊な物質が分泌され、これが肉体と反応することによってパワーアップが実現する。この物質は、超回復後もしばらく体内に残留する。残留している間に再び超回復が起こると、新たに分泌された物質と残留物質とがそれぞれ個別の超回復反応を起こす。これが、超回復の成長率が増大する理由である。
物質が体内に残留する期間は個人差があるが、多くの場合、数時間から数日以内に消えてしまう。しかしベジータは、残留期間が数十日に及ぶ特異体質の持ち主だったので、ベジータだけが成長率の指数関数的増加を達成することができた。」


…といった理屈でしたら、一応筋は通っているでしょうか。
以降の考察では、この成長によりベジータの作中での戦いがどのように解釈されるかを見ていきたいと思います。

と、その前に、ベジータは反逆に際して、フリーザやギニューの最大戦闘力を知っていたのかどうかを考察しておきたいと思います。
これは、作中のベジータの言動を鑑みれば、ほぼ確実に知らなかったと思われます。おそらく、フリーザやギニューの最大戦闘力は最高機密情報で、幹部以外には厳重に秘匿されていたのでしょう。知られてしまえば対策されてしまいますからね。
しかもベジータ(というかサイヤ人)に支給されていたスカウターは、私の予想では旧型の探索特化型であった可能性が高いので、彼らの戦闘力をスカウターで測定しようとしても測定上限値に引っかかってしまいます。
気を読むということを知らなかった地球襲来前のベジータには、彼らの戦闘力を正確に知るすべはなかったはずです。

 

  キュイ戦~ザーボン戦のベジータ(NOR.20,000/MAX.25,000)

まず最初に断っておきたいのは、本考察においては、地球襲来時のベジータの戦闘力は「MAX.20,000」まであったということです。
これはドドリアが発した「(ベジータの戦闘力は)18,000がやっとだった」というセリフと矛盾するように思えますが、このドドリアの発言は一体いつの時点のベジータを指しているのでしょうか?(作中での描写を見る限り、二人は長い間会っていないように思われます。)
ベジータはキュイ戦の時に次のように述べています。

そう、ベジータは常に実戦を経験することで己を鍛えていたのです。当然、地球襲来前にも経験を積んでおり、すでに「MAX.18,000」を超えていたのです。
そして、地球での瀕死状態からの超回復でベジータはさらに1.25倍のパワーアップを果たし、ナメック星到着時には「MAX.25,000」まで戦闘力を増大させていたのでした。

 

 VS.キュイ(NOR.15,200/MAX.19,000)

ナメック星に到着したキュイはベジータをスカウターで捕捉し、決着をつけるべく追跡を開始します。
実力は互角とされるベジータとの闘いです。激しい闘いが予想されるにもかかわらず、このときのキュイには深刻さが全くありませんでした。
おそらくキュイもまた、彼独自に訓練を行っていて「MAX.19,000」くらいまで戦闘力を上げており、ベジータに勝利する自信があったのでしょう。
それに加え、この時ベジータはおそらくキュイをおびき寄せるために、戦闘力のコントロールにより自身の戦闘力を抑えていました。(おそらく「NOR.12,000/MAX.15,000」まで抑えていたのでしょう。)
キュイはその数値を見て「ベジータは衰えている」と判断しました。まんまとベジータの策略に踊らされてしまったのです。
キュイと対峙したベジータは気を開放し、戦闘力を24,000まで上昇させます。
この数字は、キュイにとっては自身の戦闘力の1.25倍以上であり、本考察においては完敗レベルの戦闘力差です。この時のベジータの本当の最大戦闘力は25,000でしたが、キュイを倒すには24,000で十分だったのです。

 

 VS.ドドリア(NOR.18,000/MAX.22,500)

ドドリアとザーボンは、最大戦闘力24,000未満であることは作中に描写されています。

一方で、彼らは「18,000がやっとだった」というかつてのベジータを格下扱いしていました。「MAX.18,000」に完勝できる実力ということで、1.25倍法則により、ドドリアの戦闘力は「MAX.22,500(=18,000×1.25)」としました。
対するベジータは「MAX.25,000」です。戦闘力差は1.11倍であり、キュイの時のような圧倒的な差ではありません。しかし、ドドリアは長らくフリーザのもとで格下との戦闘しか行っておらず、完全に腕がなまっていました。本人もそのことをわかっていたので、ベジータに対してあれほど激しく狼狽したのでしょう。
ドドリアは本来の実力を出せないまま、あえなくベジータに敗れました。

 

 VS.変身前ザーボン(NOR.18,400/MAX.23,000)

変身前ザーボンの戦闘力は、ドドリアとほぼ同等の「MAX.23,000」としました。
しかしこれまたドドリアと同様、ザーボンも実戦感覚を失っており、ベジータに対して戦闘力差以上の劣勢を強いられます。
しかしザーボンには、「変身」という奥の手があったのでした。

 

 VS.変身後ザーボン(NOR.27,600/MAX.34,500)

変身後のザーボンの戦闘力は、変身前の1.5倍としました。ベジータの戦闘力を大きく上回り、その差は実に1.38倍にもなります。
最後はザーボンの潔癖症により一命をとりとめたベジータでしたが、本当なら殺されていた闘いでした。
原作の描写を見て「戦闘力差1.38倍の割にはベジータは善戦したように見える」とおっしゃる方がいるかもしれませんが、そこはやはり、ザーボンの実戦感覚がまだ完全に戻っていなかったからということにしたいと思います。

 

  ザーボン再戦~リクーム戦のベジータ(NOR.31,300/MAX.39,100)

地球襲来以来、2度目の瀕死状態に陥ったベジータは、フリーザの宇宙船のメディカルマシンによって傷を回復します。
ここから超回復を超える超回復、成長率の指数関数的増加が始まります。この時の成長率は1.56倍(=1.25の2乗倍)で、「MAX.39,100」まで戦闘力をアップさせました。

 

 VS.変身後ザーボン(NOR.27,600/MAX.34,500)

ザーボンとの再戦。戦闘力は一戦目と入れ替わってベジータが上回っています。

とはいえ、その差は1.13倍。まだまだ勝利確実といえるような戦闘力差ではありませんでしたが、ザーボンの油断も相まって、この闘いはベジータの圧勝に終わりました。
ちなみに、再戦前のベジータの超回復が普段通り1.25倍どまりだったとすると、この時のベジータの戦闘力は「MAX.31,300」で、まだザーボンに及ばなかったんですね。それを考えると、異常事態に際して発動した「超回復を超える超回復」が功を奏した闘いでした。

(後編に続く)