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1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

私が20歳代の頃、私が勤めていた印刷工場は、環境がメッチャ悪くて、

特に冬は最悪でした。暖房は家庭用のダルマストーブのみ。隙間風が

あらゆる所から吹き込んで来るような状態で、午前中は、自分の吐く

息が、白く成るような工場だったんです。

 

工場内の室温は、おそらく10℃以下だったでしょうね。こんな工場なのに

パウダーで白く成るのがイヤだからと、強力な換気扇をガンガン回すので、

外気がどんどん入って来て、昼過ぎでも、超寒いくらいの環境でした。

頭に来て、換気扇の配線を、全部、切ってやりましたわ~(笑)。

 

でもね、その当時(40年前)の印刷工場って、どこでもこんな感じでした。

まぁ当然のように、連続給水ではなく、モルトンの時代ですから、さほど

シビアなわけでもなく、適当にやってれば、それなりに出来上がるってな、

そんなアバウトな時代だったんですよ。

 

ですからね、当時の資材系も結構アバウトな物が多かったんですわ~。

インキは、コンパウンドやレジューサ等で軟らかくして使う事を前提に

作られてるんじゃないのか?って思うくらいに硬くて、ダルマストーブの

周りに、インキ缶を並べて、暖めながら使ってました。

 

でも、もっとイイ加減だったのが、エッチ液なんですよ。なんやワケの

分からん、効いてるのか効いてないのか、全く分からんような、メッチャ

イイ加減なエッチ液を、エッチ液が入ったボトルの、「キャップ2杯分を

入れてご使用下さい」って、・・・なんじゃそりゃ!って感じでしたわ~。

 

こうした事が一変したのが、連続給水システムの登場だったんですよ。

連続給水は、モルトンの20分の1の水量で制御していると言われて

います。・・・超アバウトだった水の量が、一気に20分の1の少なさに

成ってしまったんですから、こりゃ、本当に凄まじい事なんですわ。

 

20:1 これまで20で制御していた物が、1に成ってしまう。こりゃね、

当然のように、メチャクチャ緻密な精度が求められる事と成りますよね。

エッチ液もキャップ2杯分なんて、イイ加減な事を言ってられませんし、

インキの方も、20分の1の水で汚れないような性能が求められる。

 

そして、何より重要だったのが、工場環境なんですわ。ダバダバに多い

湿し水で刷ってる時なら適当で良かったんですが、20分の1で制御

する為には、温度、湿度等の管理が、とても重要に成るのです。

 

逆に考えるならば、今時の印刷システムは、とてもシビアな環境下で

なければ、その真価を発揮する事が出来ない。ってワケなのですよ。

それに伴ってインキ、エッチ液なんて言う資材も、シビアな環境の下で

ないと、その本当の能力が発揮出来ないような作りに成ってるんです。

 

こうしたシビアな現状の中でも、未だにダルマストーブの暖房のみとか、

輪転機だと、上胴の周辺温度が50℃を越えるような環境下で印刷を

している工場さんが、まだまだ沢山有りますが、こりゃアカンですわ~。

40年前は、それでも何とか成ったんですが、今時は何とも成りません。

 

環境が悪い中で、今時の高性能な資材等を使えば、その適正使用の

領域を越えてしまって、まともな印刷が出来ないどころか、トラブルを

招いてしまう事も多々有ります。

 

「いや~、ウチは工場環境、悪いけど、まともな印刷が出来てるでぇ~」

・・・あなたにとっての「まともな印刷」が、世間的には、どんなレベルに

いる物なのか。そうした点をシッカリ見据えて、常に向上を考えて行か

ないと、いつか、全ての仕事が無く成ってしまうハメに成るかもですよ。

季節が、がらりと変わって、けっこう気温が低く成って来ましたね~。

二交替などで、24時間、印刷機を回されてる所は、工場内の温度が、

さほど変化しないので、まだマシだと思うんですが普通の一直体制で

夜は印刷機が停止するって所は、朝の印刷立上げが大変ですよね。

 

季節が変わり工場内の朝の温度が低く成った時の、朝一の水目盛り

ってヤツが、実はメッチャ大切なんですよ。「ええッ、刷り出して11時

くらいには水目盛りを上げてやらんとアカンから、最初っから多目の

目盛りにしとけばエエんとちゃうの?」  ・・・ちゃいます(笑)。

 

例えば、11時頃には、水目盛りが「20」まで上がるとしましょうか。

ならば、朝の8時半から20でスタートしてイイのか?って言うと、これは

絶対にアカンのですわ。 「湿し水は極限まで絞る」 ってのが基本です。

この基本に反すれば、必ず様々なトラブルが発生しちゃいます。

 

寒い日の朝ってね、湿し水が上がりやすいんですよ。って事はですねぇ、

暖まって来た11時の基準である水目盛り20ってのは、朝一にとっては

明らかに水が多過ぎる状態って事なんですわ。この20の状態でインキ

を盛って行っても、なかなか適正濃度にまで、濃く成ってくれません。

 

この時、濃く成ってくれないからと言って、インキをドンドン盛って行って

しまうってのが一番アカン事なんですよ。まず、インキを少な目に出して

おいて、その状態で、少しだけ汚れが出る所まで、徹底的に水目盛りを

下げて行ってやるんですわ。そうすると、20だった目盛りが10まで絞れ

るかも知れません。

 

「少し汚れが出てるけど、まだ濃度が足らない」

この状態が朝一番のスタート地点です。・・・今現在、水目盛り10で少し

汚れが出てて、しかも濃度が足らない訳ですから水の量もインキの量も、

当然のように、多くして行かなくてはアカンですよね。

 

ここから、インキも水も少しづつ多くして、適正な濃度を作って行く訳です。

・・・チョッと面倒な作業に思えるかも知れませんが、少しだけ考えてみて

下さい。出し過ぎて、濃く成り過ぎてしまったインキを淡くして行くのって、

こりゃ大変ですよね。淡い物を徐々に濃くして行く方が絶対に簡単です。

 

と言うより、淡い物を徐々に濃くして行く方がトラブルが起き難いんですわ。

一番アカン状態は、多過ぎるインキと多過ぎる湿し水の組み合わせです。

こう成ると、インキの乾燥が一気に落ちてしまって、裏移りや乾燥不良の

原因に成りますし、網点が太ったり、インキが乳化したりと、散々です。

 

絶対に、多過ぎるインキと、多過ぎる湿し水の組み合わせを作らないように、

朝一番の時だけでイイですから、慎重に慎重に、少ないインキと、少ない

湿し水のバランスを探してみて下さい。この状態が朝一番で作り上げられる

とね、その日、その後の印刷が、一日中、メッチャ楽に成るんですわ。

 

急に寒く成った時は、こうした点に注意して、気を付けて立ち上げてみて

下さい。・・・「寒く成って乾燥が悪いから、裏移りが起き易くて困るわ~」

と言う声を、よく聞きますが、実はそうではなく、朝一の立ち上げ方が雑過ぎ

てしまって、多過ぎるインキと、多過ぎる湿し水の組み合わせを作っている

からトラブルが発生しているってケースが、とても多いんですよ。

 

「朝一だけ慎重に立ち上げる」これだけで、印刷は凄く楽に成ります。(^^)v

もう、ずっと昔の話、先輩が4色機を使ってて、その当時は私も他の印刷機の

機長をやっていました。「先輩、これ、湿し水多過ぎですよ~」 版面が水で、

ベタベタに成ってたので、そう指摘すると、「そんなもん、ギリギリまで絞ったら、

いつ汚れるか分からんから抜き取り検査ばかりしなきゃ成らんだろう。余裕を

持ってチョッと水を上げ気味にしといた方が楽だろうがッ!」

 

まぁ先輩と言っても、私より後に入社して来た年配者さんなんですけどね。

私よりも印刷経験は長いので、便宜上、先輩と呼んでいたようなワケです。

 

「余裕を持って上げ気味にしておいた方が楽」 そんな考え方なんですねぇ。

でもね先輩、それってオフセット印刷の基本から外れた刷り方ですよねぇ。

それに先輩の仕事を見てると刷った後で、その刷り物の検品をいつもやって

ますよねぇ。印刷時間と同じ位の時間を使って検品してるから、仕事が全く

進みませんわねぇ。それって「楽」なんですか?それとも残業稼ぎですか?

 

「印刷物は、刷った後で検品するのが基本だ!そんな事、当り前だろう!」

そうですよね、印刷中の抜き取り検査を、ほとんどしない先輩にとっては、

印刷後の検査は当たり前かも知れんですよね。でもね先輩、オレが刷った

物は、オレ一切、検品しないですよね。それでもクレームに成った事なんて

一度も無い。それに対して先輩は、検品してるのにクレームだらけだ。

 

そんな議論をしていた数日後、ユポの印刷が先輩の印刷機に入りました。

湿し水を絞れない人ですから、ユポなど刷れるはずがありませんわね~。

「なんだコレ!全くインキが乗らんぞッ!」・・・そりゃそうです。ユポは紙と

違って水を吸い込みませんから、水が多いと、ユポの表面に水が残って

しまって、次の胴のインキが、ほとんど着肉しなく成るんです。

 

それでも無理して、インキをコッテリ盛って、メチャクチャな色調で何とか、

印刷を終えたのですが、4日経っても乾かなくて断裁が出来ないんです。

納期が迫ってるので営業からクレームが来たのですが、「ユポってのは

こう言うもんだ。もう少し納期を伸ばしてもらえ。刷った次の日に断裁が

出来ると思ったら大間違いだ。UVでもあるまいし、普通の油性でユポを

刷って、次の日に断裁が出来るような、そんな刷りが出来るオペレータが

もし居たら、オレは、いつでも引退してやるわッ!」

 

あらら先輩、言っちゃいましたねぇ(喜)。・・・営業さん、この先輩が刷った

ヤツさぁ、多分1週間経っても断裁が出来ないだろうし、このコッテコテの

色調じゃ納められないでしょう。オレが今日刷るから、悪いけど新品の

ユポを、もう一度、大至急注文してよ。大丈夫、オレが刷れば、絶対に、

明日には断裁出来るようにするからさ。 (^^)v

 

ユポの印刷は大好きですから、バッチリの色調で刷って、次の日には、

当然のように断裁もOK。無事に納品する事が出来たのですが・・・。

さて先輩。どうしましょうかね。引退されるとか豪語されてましたよねぇ~。

 

ユポ印刷、大得意のオレが居るのに、なんで、わざわざ先輩に刷らせた

のか?チョッと疑問だったのですが、印刷クレームが多過ぎる先輩に、

営業も経営陣も、かなりイライラしていたようで、チョッと「お灸」のつもり

で、あえてユポを刷らせたようです。

 

先輩の刷り方は基本が間違ってるんですよ。正しくない刷り方をしている。

でも今更、後輩のオレから基本を学ぶ気は無いでしょう。でもね、先輩の

刷り方をしてたら、クレームだらけで、お客さんから、そっぽを向かれて、

仕事が無くなってしまう。それでは会社の全員が困ってしまうんですよ。

 

オレに叱られながら、基本からやり直すか、印刷機を離れ他の部署に

行くか、それとも会社を辞めるか。よく考えて、どれかを選んで下さい。

・・・結局、その先輩は辞めました。でも、他所の印刷現場で工場長に

就任されたのだとか。その現場の若手さん達、大変だったでしょうね。

今回、体調を崩してしまった最初の症状は、胃腸系の不具合でした。

まぁ胃腸薬を飲んでおけば治るだろうと、軽く考えていたのですが、

異常なくらい息切れがして、めまいや立ち眩みで、動けませんでした。

 

熱は微熱だったのですが、そんな時に健康診断が有ったんですよ。

いつもは絶対にバリウム検査をしないんですが胃の調子が悪い事も

有ったので10年ぶり以上で、バリウムを飲んだんですわ~。

 

胃腸の調子が悪い時のバリウムと、その後の下剤で、体力を奪われ、

ヘロヘロ状態で食事も出来ず、8kg も痩せてしまいました。・・・実は、

その時の血液検査で、鉄分不足による貧血が検出されたのです。

エエッ貧血ッ!貧血なんて、61年の人生で、初めての事だぞぉ・・・。

 

今現在、腸の検査が済んでいませんが、貧血によって、身体の中へ

充分な養分を供給する事が出来なく成り、各部が炎症を起こしてしまい、

様々な不具合を発生させてしまったようです。とても辛い1ヵ月間でした。

(男性で貧血だと、まず、癌など、内臓からの出血を疑われます)

 

でも、こうして考えてみると、人間の身体も、印刷機も、同じですよね。

「インキを出し過ぎている」と言う不具合が最初に有る。その状態でも

汚れないように、湿し水も多目にしてしまう。・・・一番最初の始まりは、

「インキを出し過ぎている」と言う、たったそれだけなんですよ。 でも、

それに伴う、湿し水の出し過ぎは多くの災いをもたらします。

 

「インキが多過ぎる」⇒「汚れが止まらなく成る」⇒「湿し水を多くする」

乾燥が悪く裏移りする。網点が太ってしまって色調再現が出来ない。

インキが乳化してしまって、まともな印刷が出来ない等々、様々な

トラブルが発生してしまいます。

 

そんなトラブルが続いても、何とか印刷を続けてしまっていると、大幅な

湿し水の劣化が始まります。「多過ぎるインキ」の為に、湿し水も多目と

成り、乳化したインキが湿し水中に浮遊したり、溶け込んだりするんです。

こう成ると、もう、まともな湿し水ではありませんよね。

 

劣化してしまった湿し水では、多目、多目にしてやらないと、まともに刷る

ことが出来ず、またまた、湿し水が多く成ってしまう。湿し水が多く成れば、

インキの濃度が下がるので、もっともっとインキを盛る事に成ってしまう。

完全に、悪循環のスパイラルですわね~。

 

先日、エッチ液濃度 4.8% で刷ってる人を見ました。何でこんな高濃度で

エッチ液を入れてるの?「いや、汚れが出るから、汚れないようにエッチ液

を増やして行ったら、こう成った。」   ・・・それは考え方が違うよね。

 

「インキを出し過ぎない」って言う基本が出来てないと、全てのバランスが

崩れてしまって、どうにも成らなくなってしまう事が有ります。ヘタをすると、

エッチ液を異常に増やす等、飛んでも無く大間違いな対応を取ってしまう

事にも成りかねないんですわ。

 

インキや湿し水だけに限らず、例えば機械メンテでも、ほんの小さな「基本」

が崩れてしまうと、全ての制御が、間違った方向へと走り出してしまう事が

多々、有ります。技術者って言うのは、進化して行くことも大切なんですが、

いつでも簡単にリセットして、原点(基本)に戻る事が出来るって言う能力も、

とても大切だと思っています。

ようやく、会社に復帰する事が出来ました~。

 

まだまだ本調子とは行きませんが、何とか

やって行けそうです。

 

コメント、LINE、メール等で沢山のお見舞いを

頂き、心より感謝申し上げます。

 

また、明日から、印刷技術ブログを再開させて

頂きますので、何卒宜しくお願い致します。

 

成田

 

更新もしていないのに、毎日毎日、
沢山のアクセスを頂き、心より
感謝申し上げます。

現在、病気治療中です。
当初はガンも疑われたのですが、
それは何とか回避出来ました。

1日も早く健康を取り戻し、
また、ブログを再開させて頂きます。
今しばらくの休養を頂きますが、
何卒、今後とも宜しくお願い致します。

成田祐司

普通の、4色カラーの印刷の場合、刷り出すまでに最も時間が掛かってしまう

工程って、何ですか?と訊いてみると、「ウチの印刷機は、オンボロだからさ、

見当が、なかなか入らないから、見当合わせに一番、時間が掛かるわぁ~」

なんて言う人も、たまに居るんですが、普通の場合は、色合わせって作業に、

一番、時間が掛かってしまうってのが、多いんじゃないでしょうか。

 

今時の最新鋭印刷機は、見当合わせなんて、ほぼ一発ですよね。色合わせ

ってヤツも、Cip4なんてのの、絵柄データーを入れてやれば、微調整程度で

充分に良い色が、簡単に出てしまいますわね。こりゃ本当に便利な時代です。

 

でもね、私が訪問する現場さんでは「やっぱ、色合わせに時間が掛かる~」

って言う機長さんが、圧倒的に多いんですよ。・・・自分では、バッチリの色が

出せたな!と思っても、刷り出す前に、上司の許可を取らなくては成らない。

また、その上司が、なかなか見付からず、ようやく来たかと思ったら、今度は、

時間を掛けて、悩みに悩んだ挙句、「ここ、もう少し赤い方がいいんじゃない」

とか言われて、まぁ本当に、色合わせがメッチャ面倒じゃ~! なんてね。

 

それとね、色調見本に成っているのが、「非常に粗悪な物」の場合が多いん

ですわ。インクジェットか、トナープリンターで出力された、ゴテゴテの画像が

見本に成ってて、しかもそれらの出力装置の調整状態が最悪で、まともな

色調再現に成ってないんですよ。そんなゴミのような出力紙に、お客さんと

担当営業が、印を押してて、「色調見本」 なんて書いてあったりします。

 

これって、こんな色には成らないですよねぇ。「ああ、そんなもん絶対に合う

わけが無い。だから適当な所まで、色調を合わせればOKだ~」とか言って、

全然、違う色で刷り出してしまうんですよ。・・・お客さんは、この出力紙の色

を見てOKを出してるんですよねぇ。こんなに違った色で刷って、クレームに

成らないんですか?「まぁ、営業が、何とか納めてるんじゃねぇの」

 

う~ん、これではアカンですよ~。良い物を作ろう!と言う意識が、現場にも

営業にも無い。と言う事は、管理者から、経営者まで含めて、会社全体に、

良い物を作る!って言う意識が欠如してしまっているのです。これじゃ~ね、

生き残って行けないです。こんなレベルの印刷会社に、印刷物を依頼する

よりも、圧倒的に安くて速い、印刷通販さんに出した方がイイですよね。

 

問題はね、社内のコミュニケーションなんですよ。「あんなボロい色調見本」

とか言って愚痴ってる前に、営業や管理者と、シッカリお互いに納得が行く

まで話し合いをしなくちゃアカンですわ。本当にデジタルプルーフの色再現

が悪いのであれば、調整し直す。調整が出来ない様な物なら、買い替えを

検討しなきゃ成らないかも知れない。また、採算が取れる仕事なら、本機で

校正刷りを作るなど、改善策は、いくらでも有りますよ。

 

色合わせって言う作業は、現場、営業、お客さんを結ぶ連携作業なんです。

この三者のコミュニケーションがバッチリだと、本当に楽なんですわ。例えば、

お客さんから「ほぼOKだけど、この商品だけ、少し赤くしといて~」って言う、

変更指示が出されたとしましょう。この「少し赤く」って言うニュアンス。人に

よって、その「少し」って言う度合が違いますよね。

 

でもね、現場と営業と、お客さんのコミュニケーションがシッカリ出来ていれば、

その微妙なニュアンスが、全てイコールに成るんですよ。全てイコールなら、

何も迷う事は無いですよね。「色合わせ」なんて言う作業がチョチョイのチョイ

で完璧に完了出来てしまいますわ。

 

何百人も従業員が居るような大企業内で、コミュニケーションを良好にする

って言うのは、なかなか難しいかも知れません。でもね、我々、印刷業界の

ほとんどは中小零細企業です。であるならばね、人数の少ない中小零細の

最大のメリットを、「コミュニケーション力」って事に、しやすいですよね。


中小零細だからこその強味!それは他に何があるのか?そんな事を真剣に

社内全員で話し合うべき時が、既に来ているのだと思いますよ。

昨日でフィーダーの話は終わりにしようと思ったんですが、もう一つだけ。

 

フィーダーは様々なパーツで構成されているって話を書きましたが、これね、

各印刷機メーカーで、パーツの名称が変わってしまうので、解説するのが、

ケッコウ難しいんです~。何とか名称の統一をして頂けると嬉しいのですが。

 

数有るパーツの中で、チョッと軽視されがちなのが「フィーディングローラー」

ってヤツなんですわ。「咥え込みローラー」と呼んでるメーカーさんも有ります。

 

このフィーディングローラーってヤツ、フィーダーの長靴側から印刷機本体を

ながめた場合、「兵隊」よりも、少し向こう側に付いてる、ゴムのタイヤみたい

なヤツです。右と左に一つづつ、一対で付いてて、紙が出て行くタイミングを

取って、小さく上下運動しているってのが、基本的なタイプです。

 

これね、意外なくらい重要なパーツなんですよ。コイツの下には、金属製の

ローラーが回っていて、そのローラーとの間で、圧力を掛けるようにして、

紙を押し出して行きます。フィーディングローラー自体に、その圧力を調整

する機構が付いてましてね、この調整が悪いと紙が曲がって出てしまいます。

 

左右一対で付いてるローラーですから、左と右の圧力が違ってしまってたら、

当然の様に、紙が曲がってしまいますよね。まぁ、最近の印刷機は作りが、

とても良いですから、何事も無ければ、左右で圧力が変わってしまうって言う

のは、あまり無いかも知れませんが、例えば、絵柄の関係で、このローラーの

位置を変更したとか、少し圧力を弱めて使った、なんて場合は要注意です。

 

他にもね、フィーディングローラーに紙粉が付着したとか、パウダーが付いて

しまったとか言う要因で、紙が滑ってしまい、左右均等に紙を送り出す事が

出来なく成ってしまう。なんて言う事も有りますから、清掃も大切ですよね。

 

それとね、このフィーディングローラーはゴムタイヤみたいな物ですからね、

変形してしまうって事も考えなきゃアカンのです。フィーディングローラーは

ゴム製で、それに接する下のローラーは、硬い金属製なんですよ。

 

印刷中はイイんですが、印刷機が停止した時、ゴムと金属が接触して、圧力

が掛かった状態で、長い時間、停止してしまっていたら、こりゃゴムの方が、

凹んで変形してしまう可能性が大ですよね。もしも、ゴムが部分的に凹んで

しまったら、こりゃまた、紙を正確に送り出す事が出来なく成ってしまいます。

 

まぁね、土日の連休くらいならイイのかも知れませんが、盆休みや正月休み、

ゴールデンウィークなんて言う長期休みの場合、私は、ゴムの変形を防ぐ為、

ゴムと金属が接触しないように、圧力調整部分の所に、タイラップバンドを

挟んで、ゴムの方を浮かせて停止させておくようにしていました。

 

安定した給紙って言うのは、オフセット印刷にとって、本当に大切な事です。

それを確実に行うために、チョッとした気遣いを持つって事も大切かと思い

ますので、このフィーディングローラーにも、少しコダワってみて下さいな。

フィーダーの話を続けて来ましたが、もう1回だけ、お付き合い下さいませ。

 

昨日、第一サッカーの話をさせて頂きました。第一サッカーは上下運動して、

紙を吸い付け持ち上げる役目をしている。って話でしたね。持ち上げた紙は、

第二サッカーに受け渡されて、第二サッカーが、紙を前方へ送り出します。

 

まぁ一連の流れとしては、こんな感じで、ケッコウ簡単そうな動作に見えるん

ですが、実はですねぇ、かなり緻密な事をやっているんですよ~。 例えば、

第一サッカーが吸い上げた紙を、第二サッカーへ受け渡す時、この瞬間って、

第一サッカーが、いつまでも紙を吸い付けてしまっていたら、第二サッカーが、

紙を前方へ送り出す事が出来ませんよねぇ。

 

第二サッカーが紙を送り出そうとしてるのに、第一サッカーが、いつもまでも、

紙を吸い付けたままでは、紙を引っ張り合ってしまって、紙を搬送する流れが

停止してしまいますよね。 って事はです。紙を吸い上げる為の第一サッカー

なんですが、絶妙なタイミングで吸い付けるエアーを、瞬時にOFFにする事が

出来ないと、第一サッカーとしての役目が果たせないってワケなのです。

 

これってね、けっこう凄い事だと思いませんか?例えばですよ、印刷機械が、

1時間当り1万回転で印刷していたとしましょう。 と成れば、当然のように、

フィーダーも、1万回転のスピードで、紙を出しているワケですよねぇ~。

と言う事は、第一サッカーも1万回転のスピードで、紙を吸うエアーのON、

OFFを、正確に繰り返しているって事なんですよ~。

 

このエアーのON、OFFを制御しているのが、バルブです。 多くの場合は、

フィーダーヘッドと呼ばれる部分に内蔵されているのですが、印刷機の回転

スピードと同期して回っているバルブなので、「ロータリーバルブ」なんつって

呼ばれているかと思います。

 

印刷機で、フィルムとかではなく、普通の紙を刷っている人なら分かると思い

ますが、紙からは、埃のような「紙粉」ってヤツが、イッパイ出ますよね。まぁ、

ケッコウ厄介なヤツですわ~。・・・第一サッカーは、紙の表面を吸っています。

って事は、当然のように、この紙粉も吸ってしまっているんですよ。

 

第一サッカーが吸い込んでしまった紙粉は、ロータリーバルブにまで到達し、

とても重要な、バルブの穴に蓄積して行きます。穴に蓄積した紙粉によって

穴の一部が塞がれてしまうと、超高速回転で、エアーをON、OFFしている

タイミングが崩れて、給紙がウマく行かなく成ってしまう事が有ります。

 

紙粉の蓄積によって、サッカーの動きがシブく成ってしまうのを解消するため、

サッカーを時々、分解して清掃されている事と思いますが、この時にですねぇ、

ロータリーバルブの清掃って事も、チョットだけ頭の片隅に置いておいて下さい。

 

私が昔使っていた印刷機は、めっちゃゴッツい金属製のロータリーバルブが

付いてましてね、その分解清掃が、定期メンテの中に組み込まれていたの

ですが、まぁ、分解するだけでも、メッチャ手間の掛かるようなシロモノでして、

非常に苦労しながら、メンテしていた記憶が有ります。

 

この点に関しては、各印刷機メーカーさんで、異なる構造に成っている事と

思いますので、印刷機のマニュアルをシッカリ見て、正確なメンテをする様に

してやって下さいませ。

体調不良で、長く休んでしまいましたが、何とか、今日から

社会復帰です~。  って、チョッとオーバーかな(笑)。

 

さてさて、フィーダーの話しの続きなんですが、「フィーダー操作に 『勘』 は不要!

『理論』 が有れば紙は出せる!」 って話をしたんですが、んじゃ、その理論って

言うのは、どんなもんなのか? って事に成りますよね。

 

チョッと逆に考えてみましょうか。例えばですよ、印刷機メーカーさんがですねぇ、

自社の印刷機械に取り付ける、フィーダーを設計して、作り上げるとしましょう。

その時にね、「まぁ適当に、この辺りに、こんなパーツを付けとけば、なんとか、

紙が出るんじゃねぇの~」 とか言って、適当に、様々なパーツを取付けて行く。

なんて事は、有り得ないですよね。

 

フィーダーって、スゴく多種類のパーツで構成されていますよね。そんな中の、

どんな小さなパーツにしても、その一つ一つに役割が有り、その役割を正確に

遂行するための配置が有り、形が有り、強度が有り等々、緻密に計算されて、

作られています。つまり、給紙を確実に行う為の 『理論』 に基づいて設計され、

作られているって事なんですよ。

 

例えば 「第一サッカー」 って言うパーツが有ります。 ・・・これね、自社内の、

若手フィーダーマン君に質問してみて下さい。「第一サッカーって、どれの事で、

どんな仕事をしてる物だ?」・・・まずね、第一サッカーって言うパーツが、どれ

なのかが分からない人。これは、かなりヤバいんですが、でも、そんな簡単な

事すら分からないって言うのは、その若手君が悪いんじゃなく、しっかり教育を

していない、上司さんが悪い!って、話ですよね~(笑)。

 

問題は、「どんな仕事をしている物か?」ってところなんです。これをシッカリと

把握出来てるかどうかで、フィーダーを「勘」だけで調整しているのか、または

正確に、「理論」で制御しているのかが分かります。

 

第一サッカーは、上下運動して、紙を持ち上げる仕事をしている。

たったこれだけです。第二サッカーは、前後運動して紙を送り出す仕事をして

いますが、第一サッカーは、上下運動をしているだけ。「チョッと待て、紙を持ち

上げる。と言っているが正確には、紙を1枚だけ持ち上げる。と言うべきだろう」

 

・・・これ、違いますね。第一サッカーに、紙1枚だけを制御する力は有りません。

他に何のパーツも無ければ、第一サッカーは、一気に、紙を3枚でも、5枚でも

持ち上げてしまう力を持ってしまっています。これを1枚だけ持ち上げるように

制御しているパーツが、「さばきエアー」、「押さえベロ」、「ブラシ」、「長靴」なん

てヤツらですよね。(印刷機メーカーによって、パーツの名称は異なります)

 

こうして考えてみると、「なるほど、各パーツに全て役割と理論が有るんだなぁ」

ってチョッとだけ分かってもらえるかと思います。例えば、さっきの第二サッカー、

あれは前後運動をして紙を送り出しているって言いましたが、第二サッカーって、

脚がシュパッと言うか、ニョキッと出て、第一サッカーが持ち上げた紙を拾いに、

と言うか、受け取りに行く動作をする事が有りますよね。

 

これねぇ、チョッと考えてみて下さい。第二サッカーって、左右に有りますよね。

例えば、原動側の方は脚がシュパッと出る事無く、紙を前方に運ぶ事が出来て

いた。それに対して、操作側の第二サッカーは、脚が、シュパッシュパッ出て、

紙を拾いに行く動作をしてしまっていた。 ・・・これって良くないですよね。

 

脚を出していない原動側と、脚を出して紙を拾っている操作側では、紙を送り

出すタイミングが変わってしまいます。つまり脚を出している分、操作側の方が、

紙を送り出すタイミングが少し遅れるんですわ。  ・・・操作側の方が遅く出る、

原動側の方が速く出る。これで、給紙停止原因の一つである、「紙曲がり」が

完成してしまうってワケですよね。

 

紙曲がりは、その後の「フィーディングローラー(咥え込みローラー)」との兼ね

合いも大きいんですが、とりあえず、第二サッカーの脚が、シュパッと大きく出て、

紙を拾いに行く動作をしているようなら、第二サッカーの高さを下げるとか、その

第二サッカーの下辺りに、エアーを大きく入れて、紙の高さを稼いでやる等の

調整を行うべきでしょう。

 

どうですか。チョッとだけですけど、フィーダーを理論で考えると、結構、面白いと

思いませんか?一つ一つのパーツの役割と動きを理解する事。そしてそれらの

動きを妨げる事無く、正確に動作してくれるように調整する事。 ・・・暇な時にね、

機長さんと、フィーダーマン君が、印刷機の給紙部分に座り込んで、「このパーツ

はなぁ・・・」なんて言う、座談会を開いてみて下さい。一気にフィーダーマン君の

レベルが向上すると思いますよ。(^^)v