印刷技術 まともな印刷? | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

私が20歳代の頃、私が勤めていた印刷工場は、環境がメッチャ悪くて、

特に冬は最悪でした。暖房は家庭用のダルマストーブのみ。隙間風が

あらゆる所から吹き込んで来るような状態で、午前中は、自分の吐く

息が、白く成るような工場だったんです。

 

工場内の室温は、おそらく10℃以下だったでしょうね。こんな工場なのに

パウダーで白く成るのがイヤだからと、強力な換気扇をガンガン回すので、

外気がどんどん入って来て、昼過ぎでも、超寒いくらいの環境でした。

頭に来て、換気扇の配線を、全部、切ってやりましたわ~(笑)。

 

でもね、その当時(40年前)の印刷工場って、どこでもこんな感じでした。

まぁ当然のように、連続給水ではなく、モルトンの時代ですから、さほど

シビアなわけでもなく、適当にやってれば、それなりに出来上がるってな、

そんなアバウトな時代だったんですよ。

 

ですからね、当時の資材系も結構アバウトな物が多かったんですわ~。

インキは、コンパウンドやレジューサ等で軟らかくして使う事を前提に

作られてるんじゃないのか?って思うくらいに硬くて、ダルマストーブの

周りに、インキ缶を並べて、暖めながら使ってました。

 

でも、もっとイイ加減だったのが、エッチ液なんですよ。なんやワケの

分からん、効いてるのか効いてないのか、全く分からんような、メッチャ

イイ加減なエッチ液を、エッチ液が入ったボトルの、「キャップ2杯分を

入れてご使用下さい」って、・・・なんじゃそりゃ!って感じでしたわ~。

 

こうした事が一変したのが、連続給水システムの登場だったんですよ。

連続給水は、モルトンの20分の1の水量で制御していると言われて

います。・・・超アバウトだった水の量が、一気に20分の1の少なさに

成ってしまったんですから、こりゃ、本当に凄まじい事なんですわ。

 

20:1 これまで20で制御していた物が、1に成ってしまう。こりゃね、

当然のように、メチャクチャ緻密な精度が求められる事と成りますよね。

エッチ液もキャップ2杯分なんて、イイ加減な事を言ってられませんし、

インキの方も、20分の1の水で汚れないような性能が求められる。

 

そして、何より重要だったのが、工場環境なんですわ。ダバダバに多い

湿し水で刷ってる時なら適当で良かったんですが、20分の1で制御

する為には、温度、湿度等の管理が、とても重要に成るのです。

 

逆に考えるならば、今時の印刷システムは、とてもシビアな環境下で

なければ、その真価を発揮する事が出来ない。ってワケなのですよ。

それに伴ってインキ、エッチ液なんて言う資材も、シビアな環境の下で

ないと、その本当の能力が発揮出来ないような作りに成ってるんです。

 

こうしたシビアな現状の中でも、未だにダルマストーブの暖房のみとか、

輪転機だと、上胴の周辺温度が50℃を越えるような環境下で印刷を

している工場さんが、まだまだ沢山有りますが、こりゃアカンですわ~。

40年前は、それでも何とか成ったんですが、今時は何とも成りません。

 

環境が悪い中で、今時の高性能な資材等を使えば、その適正使用の

領域を越えてしまって、まともな印刷が出来ないどころか、トラブルを

招いてしまう事も多々有ります。

 

「いや~、ウチは工場環境、悪いけど、まともな印刷が出来てるでぇ~」

・・・あなたにとっての「まともな印刷」が、世間的には、どんなレベルに

いる物なのか。そうした点をシッカリ見据えて、常に向上を考えて行か

ないと、いつか、全ての仕事が無く成ってしまうハメに成るかもですよ。