印刷技術 色合わせ | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

普通の、4色カラーの印刷の場合、刷り出すまでに最も時間が掛かってしまう

工程って、何ですか?と訊いてみると、「ウチの印刷機は、オンボロだからさ、

見当が、なかなか入らないから、見当合わせに一番、時間が掛かるわぁ~」

なんて言う人も、たまに居るんですが、普通の場合は、色合わせって作業に、

一番、時間が掛かってしまうってのが、多いんじゃないでしょうか。

 

今時の最新鋭印刷機は、見当合わせなんて、ほぼ一発ですよね。色合わせ

ってヤツも、Cip4なんてのの、絵柄データーを入れてやれば、微調整程度で

充分に良い色が、簡単に出てしまいますわね。こりゃ本当に便利な時代です。

 

でもね、私が訪問する現場さんでは「やっぱ、色合わせに時間が掛かる~」

って言う機長さんが、圧倒的に多いんですよ。・・・自分では、バッチリの色が

出せたな!と思っても、刷り出す前に、上司の許可を取らなくては成らない。

また、その上司が、なかなか見付からず、ようやく来たかと思ったら、今度は、

時間を掛けて、悩みに悩んだ挙句、「ここ、もう少し赤い方がいいんじゃない」

とか言われて、まぁ本当に、色合わせがメッチャ面倒じゃ~! なんてね。

 

それとね、色調見本に成っているのが、「非常に粗悪な物」の場合が多いん

ですわ。インクジェットか、トナープリンターで出力された、ゴテゴテの画像が

見本に成ってて、しかもそれらの出力装置の調整状態が最悪で、まともな

色調再現に成ってないんですよ。そんなゴミのような出力紙に、お客さんと

担当営業が、印を押してて、「色調見本」 なんて書いてあったりします。

 

これって、こんな色には成らないですよねぇ。「ああ、そんなもん絶対に合う

わけが無い。だから適当な所まで、色調を合わせればOKだ~」とか言って、

全然、違う色で刷り出してしまうんですよ。・・・お客さんは、この出力紙の色

を見てOKを出してるんですよねぇ。こんなに違った色で刷って、クレームに

成らないんですか?「まぁ、営業が、何とか納めてるんじゃねぇの」

 

う~ん、これではアカンですよ~。良い物を作ろう!と言う意識が、現場にも

営業にも無い。と言う事は、管理者から、経営者まで含めて、会社全体に、

良い物を作る!って言う意識が欠如してしまっているのです。これじゃ~ね、

生き残って行けないです。こんなレベルの印刷会社に、印刷物を依頼する

よりも、圧倒的に安くて速い、印刷通販さんに出した方がイイですよね。

 

問題はね、社内のコミュニケーションなんですよ。「あんなボロい色調見本」

とか言って愚痴ってる前に、営業や管理者と、シッカリお互いに納得が行く

まで話し合いをしなくちゃアカンですわ。本当にデジタルプルーフの色再現

が悪いのであれば、調整し直す。調整が出来ない様な物なら、買い替えを

検討しなきゃ成らないかも知れない。また、採算が取れる仕事なら、本機で

校正刷りを作るなど、改善策は、いくらでも有りますよ。

 

色合わせって言う作業は、現場、営業、お客さんを結ぶ連携作業なんです。

この三者のコミュニケーションがバッチリだと、本当に楽なんですわ。例えば、

お客さんから「ほぼOKだけど、この商品だけ、少し赤くしといて~」って言う、

変更指示が出されたとしましょう。この「少し赤く」って言うニュアンス。人に

よって、その「少し」って言う度合が違いますよね。

 

でもね、現場と営業と、お客さんのコミュニケーションがシッカリ出来ていれば、

その微妙なニュアンスが、全てイコールに成るんですよ。全てイコールなら、

何も迷う事は無いですよね。「色合わせ」なんて言う作業がチョチョイのチョイ

で完璧に完了出来てしまいますわ。

 

何百人も従業員が居るような大企業内で、コミュニケーションを良好にする

って言うのは、なかなか難しいかも知れません。でもね、我々、印刷業界の

ほとんどは中小零細企業です。であるならばね、人数の少ない中小零細の

最大のメリットを、「コミュニケーション力」って事に、しやすいですよね。


中小零細だからこその強味!それは他に何があるのか?そんな事を真剣に

社内全員で話し合うべき時が、既に来ているのだと思いますよ。