1級技能士・成田の印刷技術 -14ページ目

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

フィーダーの続きを書くと言っておきながら、
全く更新出来ずに、申し訳有りません。

コロナではないんですが、強烈に体調を
崩してしまいまして、伏せっております。
来週には復活出来る予定でおりますので、
また、その際には宜しくお願い致します。

さてと、昨日の続きです。

例えば、このブログを読んで下さっている方達が、機長さんだったとして、

新人のフィーダーマン(給紙係さん)を育てる時って、どんな感じで教育を

されているでしょうか。・・・私が新米のフィーダーマンだった時、どうやって

調整したら良いのか分からないので、当時の機長さんに訊いたんですよ、

「これ、どう調整したらイイんですか?」 すると機長さん、「そんなもんなぁ、

簡単だ、止まらんように調整すればイイだけだッ!」 ・・・エエッ!

 

まぁねぇ、「やり方は見て覚えろ!技術は盗め!」 ってな時代でしたから、

まともに教えてくれるワケが無いんですが、今、思えば当時の機長さんも、

まともなフィーダー理論なんて事を教えてもらってなかったんでしょうね。

 

「紙出しは理論だ!」 って思い、あれこれ考え出したのは私が18歳の頃

でした。誰も教えてくれないので、まずは、何で紙(給紙)が止まってしまう

のか、その原因を探り出したんです。それが、昨日書いたヤツです。

二枚差し、給紙ミス、曲がり、オーバーランの4つでしたね。

 

私が機長に成って新人のフィーダーマンを育成する時、まずは基本的な

セッティングを教えますが、それを教えても簡単に身に付くワケじゃないん

ですよ。昨日も書いた様に、技術は、失敗した時、うまく行かなかった時、

そんなダメな状態を、克服したり、改善したりする事で伸びて行きます。

 

順調に給紙が出来ていて、トラブル無く印刷が進行していた。そんな時に、

突然、給紙が停止した。その時、機長の私は、フィーダーマン君に必ず、

その原因を問いただします。「なんで止まったの?」・・・未熟な人の場合、

その回答は、要領を得ません。「えっと、紙が引っ掛かって・・・」

 

そうじゃなくてさ、給紙が停止する原因は、4つだったでしょう。その4つの

原因の内、どれで止まったと思う? ・・・「分かりません」 そうなんですよ、

今の今まで調子良く出てたワケですから、シッカリ見てないですもんね。

見てもいないのに、その原因が何かなんて、分からなくて当り前ですわ。

 

分かった、じゃあさぁ、このままのセッティングで何も変えずに、もう一度、

スタートしてみよう。またすぐ止まってしまうかも知れんけど、今度は絶対、

目を離さずにシッカリ見て、どの原因で止まったかを突き止めてみてよ。

 

これもね、1回で原因が分かる人は、マレです。2度、3度とやってあげて、

「あッ!紙曲がりですッ!」って、ようやく分かってくれるんですわ。 あッ!

そう言えば、紙の積み方が悪くて、紙端が折れてて、給紙が止まったって

事が有りました。つ~事は、4つの原因以外に、「紙積み不良」って言うの

も入れなきゃアカンですかねぇ。  と成ると、5つか~(笑)。

 

とにかく、他人にモノを教えるって言うのは、非常に手間が掛かりますね。

本人が自分で理解出来るまで、何度も何度も、その不具合の状態を再現

してあげて、本人自身に、その原因を発見させてあげる事が大切なんです。

 

ええッ!そんなヒマ無いよ~。予備紙も少ないから、そんな頻繁に給紙を

止められたら、紙が足らなく成っちゃうよ~。 ・・・本当に、そうですよね。

でもね、ワケが分からないまま、1年も2年も、ダラダラと半人前の給紙を

やらせるより、1ヶ月間、ビッシリ仕込んで、早く一人前のフィーダーマンに

成ってもらう方がイイと思いません?

 

フィーダーに「勘」は要りません。「理論」が有れば紙は出せます。

勘を正しく教えるのは、かなり難しいですが、理論を正しく教える為には、

教える側の根気さえ有れば、こりゃ充分ですよね。だったら教える側が

頑張るしか無いですよね(笑)。

 

来週、もう少し、フィーダーの話を書きたいと思っています。

「もう飽きた~」とかの、ご意見が有ればコメント下さい(笑)。

「オフセット印刷を制するのはフィーダー技術である」 なんて話をよく書いて

いますが、本当にねぇ、どんなに素晴らしい湿し水制御技術を持っていても、

どれほど優れた色調再現能力を持っていても、紙が1枚も出て来なければ、

こりゃ何も出来ない。本当に、宝の持ち腐れに成ってしまいますよね。

 

でもね、こんなに大切な、フィーダー(給紙)技術なのに、その専門書が有る

とか、「給紙技術セミナー」が開催されてるとかってのは、無いですよね。

「専門書とか、セミナーだとか、そんな事をするほど難しい技術じゃないよ~」

って声も聞こえて来そうですが、今一度、フィーダー技術ってのをシッカリと

考えてみませんか。

 

フィーダーを担当してるのは、若手さんとか、新人さんとかって場合が多いかと

思います。言い方を変えれば、まだまだ、印刷技術ってヤツを、あまり深く理解

出来ていない方が、フィーダーの担当に成る事が多いかと思うんですよ。

でもね、最初に書いた通り、フィーダー技術ってヤツは、オフセット印刷を制する

ってほど、大切な技術ですから、ここの教育はシッカリしたいですよね。

 

オフセット印刷は、「物理」ではなく「科学」だ!な~んて話を、よく書きますが、

フィーダーってヤツもね、シッカリとした理論の上に成り立っている「科学」だと

思うんですよ。まぁ、世の中は広いですから、何も教わらずに、勘だけを駆使

して、紙を出してしまう人も居るかも知れませんが、「勘」ってのを後輩に伝授

するのは、難しいですよね。やっぱり理論が有った方が伝授しやすいです。

 

印刷に限らず、技術ってヤツは、失敗した時、うまく行かなかった時、そんな

ダメな状態を克服したり、改善したりする事によって伸びて行く事が多いです

よね。フィーダーも同じだと思うんですよ。調子良く順調に紙が出ている時に、

あれこれ考える人は少ないですよね。紙を1枚も出す事が出来ない。または

調子良く出ていたのに、急に出なく成ってしまった。そうした不調な時にその

原因をシッカリ考えて、調整して行く事で、技術が伸びて行きます。

 

そこでまずは、なぜ調子良く給紙が出来ないのか、その原因は何かって事を

考えてみましょう。私が思うに、給紙停止の原因って、4つだと思うんですよ。

① 二枚差し ② 給紙ミス ③ 紙の曲がり ④ オーバーラン(行き過ぎ)

 

二枚差しってのは、読んで字のごとくってヤツですが、給紙ミスって言うのは、

第一サッカーが、うまく紙を吸い上げられなかったって場合です。その原因と

しては、長靴(吹き足)の踏み込みが深過ぎるとか、紙押さえベロの掛け過ぎ

とか、サバキエアーの不適正、第1サッカーの不具合など、様々です。

 

・・・これを書き出すと、メチャ長い話に成ってしまうんですが、とにかく給紙が

うまく行かない、突然止まってしまったって場合、必ずこの4つの原因の内の

どれかに当てはまると思うんですわ。ですからね、まず第一段階としてはね、

給紙が、止まってしまった場合、この4つの原因の内、どれで止まったかを

明確にするって事が大切なんですよ。停止の原因が分からなければ、どう

調整(補正)するのか?などの、対処の方法が分からないですもんね。

 

長く成りそうなので、続きを、また明日書きま~す。

最近は、ブログを連続して書いて行く事が難しく成ってしまいました。

文章を書くってのは、もう30年近くも、月刊誌(印刷センター)の連載を

やってますから、それを億劫だとか、イヤだとか思った事は無いんですが、

何しろ、時間が無いんですよね~。

 

例えばですよ、出張に行って、帰りの新幹線の中で書くとかすればイイん

だろうと思うんですが、もうね、ヘバッてしまってて、そんな体力も気力も、

全く残っていません~。・・・ん?って事は、時間が無くて書けないんじゃ

なくて、年寄りで、体力が無いから書けないって事か~(笑)。

 

しかし、本当にね、年を取るってのは、恐ろしい事だと思いますわ~。

昔は、スタスタ登っていた階段だったのに、もう今や、息も絶え絶え、

2階まで階段で登るだけで、死ぬんじゃないか?と思うほど呼吸困難。

 

あッ、これね、マスクのせいも有ると思います。昔から、マスクってのが

大嫌いだったのですが、今時は、そんな事も言っておられず、仕方なく

マスクをするんだけどマスクして階段登ったら、そりゃ呼吸困難ですわ~。

 

まぁね、これも、マスクのせいに、しちゃってますけど、もともと階段が

嫌いでしてね。もっと言うなら、歩く事が嫌い、走るなんて飛んでもない!

って言う部類の人間なのですよ~。

 

いや、完全な文系ってワケじゃないんですよ。ソフトボールのピッチャーを、

13年間もやってましたし、その頃は、毎日150球の投げ込みをやって、

走り込みや、筋トレも欠かさずやってました。あとロードレーサーって言う

自転車で、かなり真剣に走ってました~。

 

その頃に、身体を使い過ぎて、ダメに成ってしまったのかなぁ~?

まぁとにかく、身長が160cm しか無いチビですから、どんなスポーツを

やるにしても、デカい人の倍くらいの体力を使ってしまうワケでして・・・。

 

今週末から、連休ですね。明日と、連休明けは、ちょっとドタバタしちゃい

ますので、しばらくの間、ブログの更新が出来ないかと思います。 また、

24日以降は書けると思いますので、宜しくお願い致します~。

私は、科学や化学を理解しようとしない人達の事を、「原始人」と呼んでいます。

印刷現場には、非常に残念な事に、この原始人さん達が、未だに沢山、居るん

ですわ~。・・・なんで勉強しようとしないのかな?なんで理屈を考えようとしない?

 

「輪転は湿し水を上げ気味にしないと、パイリング(ブラン残り)する。」 ・・・ほぉ、

そうなんですか。んで、その理屈は?どうしてそう成るの?どんな理論なんです?

「いや、昔からそうだし、今でもパイリングしない様に、水をタップリ上げてるぞ。」

 

ねぇ原始人さん。湿し水をタップリ上げるのは百歩譲ってヨシとしよう。でもさぁ、

そのお陰で、インキが乳化してしまって、輪転機のカバーとか、ステップとかに、

インキが飛び散ってしまってますよねぇ。 これは、大丈夫なんですか?

「輪転機ってのは、こう言う物だッ!」

 

原始人さんの時代は、それが常識だったかも知れんけど、今時、こんな印刷方法が

正しいと思いますか?こんな状態で、良い印刷品質が出せますか?これが本当に、

輪転機の正しい使い方ですか? そうした事を真剣に考えた事が有りますか?

 

話しは、チョッと変わりますが・・・

私が20歳代の頃、「銀インキは、灯油を混ぜてシャビシャビにして刷ると楽だぞ!」

と、当時の原始人(上司・工場長)から教わりました。 ・・・エエッ、そうなんですか?

でも、こんな夏場に灯油なんて無いから、どうしましょう?「まぁ洗い油でもイイだろ」

でもそれって、どんな理屈なんでしょう? 「そりゃおまえ、昔からの秘伝だッ!」

 

結局、理論も理屈も何も無いんですが、「古(いにしえ)の秘技」を伝授されたワケ

ですから、こりゃ実行しないワケにも行かず、インキ壺に銀インキを入れて、ヘラで

すくえない程タラタラに成るまで灯油(洗い油)を加えて、印刷をしていました。

この方法を1年間、やってみたんですが、特に良い事も無いのでヤメました(笑)。

 

私が20歳代の頃は、こうした原始人さん達が沢山、居ましてね、いわゆる「秘技」

ってヤツをイッパイ伝授して頂きましたわ~。・・・これね、理屈も理論も無いから、

仕方なく「秘技」と呼んでるワケで、もし理論がシッカリしてれば、それは間違いなく

「印刷技術」と呼べるものだったと思います。

 

印刷は、「科学」です。 そして湿し水ってヤツは、「化学」なんですよ。

もうこれはね、原始人が、ワケの分からん迷信みたいな手法で、制御出来得る

領域のモノでは無いんですわ。理屈が有るからこそ、正しい手法(やり方)が

確立する。理論が有るからこそ、その技術が正しいと、確信を持つ事が出来る。

 

今、あなたがやっている手法(やり方)、それは何故、そう言うやり方をしている

のですか?もしも、「昔から、こうやってるから」とか、「先輩から教わった」って

言うだけで、そのやり方をやっているのなら、一度、真剣に考えてみて下さい。

 

このやり方は、本当に正しいのか?このやり方の理屈は?理論は? どんな

理由や意味が有って、このやり方に成っているのだろう?そうやって、少しだけ

考えてみると、そのやり方の無駄や、無意味さに気付く事が有ります。そうした

無駄や無意味な事を直して行く事を、「改善」と呼んでいます。

 

技術者はね、常に絶え間なく、小さな改善を積み重ねて行く事が大切なんです。

知らぬ間に原始人に成ってしまわないよう、常に考え、常に改善して行くことが、

技術者の道なのだと思っています。

京都に住み出してから買った愛車が3年目に
成り初めての車検です~。マツダのアクセラ
ってのを新車で3台、乗り継いでるのですが
これがねぇ~マツダ3 とかって名前に変わっ
てしまって、アクセラと言う車名が無く
成ってしまいました~(涙)。

今回、代車で、そのマツダ3 を貸して頂いた
のですが、これがねぇ異常な程、窓が狭いん
ですよ。つまり窓の高さが低いんですわ~。

私らの世代は、車をバックさせる時には、
窓から顔を出して確認しながらバックせよ!
と教習所で教わってましてね、それが癖に
成ってしまっているので、雨の日でもね、
頭を濡らしながら窓から顔を出してます(笑)

このマツダ3 窓が狭くて、窓から顔を出す
ことが出来ないのですよ~。これはアカン!
窓から顔を出さずにバックしたら、教習所の
先生に叱られてしまう~ッ!

って、私が運転免許を取ったのが19歳の時で
もう42年も前だから、その当時の教習所の
先生達は、すでに天に召されてますわね。

今時は、私のアクセラもそうなんですが、
バックモニターとか、上から車を見た画像
なんてのが、カーナビの画面で表示される
ので、顔を出してバックせんでもイイん
ですが、長年染み付いた癖って言うのは、
本当に直らないです。

最近は車を持たない、運転免許も取らない
って言う若い人達が増えているそうですが、
私の世代は、車=命!って言う世代でして
車が無いと生きて行けません~。

車の改造とか、簡単な整備とかは、自分で
やってましたから、それを通してスパナや
工具類の使い方なんかを覚えて行きました。
ある意味、楽しい時代だったと思います(^_^)v

出張のため、しばらくの間、ブログの更新が出来ませんでした~。

 

今回は、印刷技術の話しではなく、出張先のホテルでの話なんですよ~。

私ら出張族は年間、かなりの数のホテルに泊まるのですが、こんなホテルも

有るんだ~ッ!って言う、まぁ、ほとんど愚痴のような話なんですが、もしも

宜しかったら、読んでやって下さいませ。

 

千葉県のJRの駅に隣接したホテルです。「JR東日本・・・」から始まる名前を

持ったホテルですから、決して、そこらの寂れた安ホテルではありませんです。

普段この辺りに行く時は、〇横インを利用しているのですが、値段が高い、狭い、

ベットが硬い等の不満が積もり、今回はこのホテルに初めて泊まってみました。

 

とても良いホテルなんです。駅からすぐに行けるし、部屋も広く、清潔感も充分で

値段も安い。レストラン等の設備もビル内、隣接の駅構内に充実しており今まで

宿泊した中では、最高に気に入ったホテルだったんですよ~。

 

・・・なのです が、問題は3泊目の夜中に始まりました。「外壁工事の為、昼夜を

問わず騒音が出る場合が有ります」との書面が部屋に配布されていたのですが、

夜中の12時に凄まじく大きな騒音が鳴り出したんですよ。隣接のJR駅で、何か

工事をしているのか?と、部屋の窓を開けてみると、この窓は二重ガラスで完璧な

防音が施されています。と言う事は、この騒音が案内されていた外壁工事の音か?

と思い、しばらくは我慢したのですが、大きな切削音が断続的に続くので、夜中の

12時半頃、フロントに電話し聞いてみたんですわ~。

 

スゲェ騒音なんだけど、そんな事、夜中にやらずに、昼間にやってくれんかなぁ~。

「大変、申し訳有りません。工事業者によりますと、昼間は歩行者等の危険を配慮し、

夜中に工事をしています。」との事。しかもこの騒音が、なんと!朝の4時まで続くと

言うんですよ~。もし、これが住宅地であるならば、夜中にこれだけの騒音を出したら、

即座に苦情が入るか、警察に通報される等の処置を受ける事だろうと思います。

 

私は普段、単身赴任のアパート暮らしですが、そのアパートでも、夜の10時以降は、

洗濯機と掃除機の稼動を禁止しています。騒音、安眠妨害に対する対応と言うのは、

それ位の気を使うのが普通だと思うんですよ。そんな常識的な配慮がこのホテルでは

出来ていないって事なんですよね。

 

我々、宿泊客は、このホテルで寝る為に金を払っているのです。そうした我々、宿泊客の

意向を無視して真夜中に、盛大な、工事騒音を発するホテル。あまりにも常識を逸脱し

過ぎて、理解が出来ないですよね。ホテルにとって、宿泊客ってのが最も大切だと思うの

であればね、この12月まで続く工事、しかも夜中にしか工事作業が出来ないと言う、

この外壁工事期間中は、ホテルを休業として、宿泊客を泊めない事にするべきなんじゃ

ないのでしょうか。安心して眠れないホテルなんて、ホテルじゃないですよね。

 

この工事の件に関しては「良識」と言うより、「常識」を疑わざるを得ない状態ですよね。

せっかく良いホテルを見付けたと喜んでいたのですが、こんな一般的な常識を考慮する

事も出来ない!なんて言う経営体制、経営者の考え方ってのはね、おそらくこの後も、

何らかの形で、宿泊客に不快な思いをさせる事でしょうね。

非常に不愉快なホテルでありました~。

その昔(30年以上前)、私が勤めていた印刷現場に、年配の機長が居ました。

毎晩、夜中の2時まで仕事をしている人でした。・・・違うな。 毎晩、夜中の2時

まで職場に居る人でした。まぁ、簡単に言えば残業稼ぎの、セコい、オヤジです。

夜中の2時まで掛かっても、定時で帰る私の半分しか印刷出来てないんです。

 

会社側は、「あいつは毎晩、夜中まで頑張っている。」と好評価でした。 まぁね、

そう言う時代だったんです。生産高など細かくチェックする訳でもなく毎晩、仕事

をしているフリをしてでも、夜遅くまで居るヤツが偉いッ!って評価される時代

だったんです。だから、このオヤジは、とても優秀なサラリーマンなんです(笑)

 

このオヤジの悪口は、これくらいにして問題はね、私が定時までで仕上げる物、

その半分の量を、夜中の2時まで掛けてやっているって部分です。当然の事

ながら、印刷速度は超低速です。版替えから刷り出しまでの時間も、メッチャ

長いですわね。そして、何事も、モタモタやる癖が、付いてしまっている。

 

水を使うオフセット印刷ってヤツはね、インキと水って言う、相反する2種類の

液体を制御する技術なんですよ。液体ってヤツは、流れます。モタモタやって

ると、どんどん状況が変化(劣化)して行ってしまって、まともな制御が出来なく

成ってしまうんですよ。モタモタすればするほど、何も出来なく成ってしまう。

 

そして、版。・・・これもね、水とインキって言う、相反する二つの液体を制御する

と言う本当に繊細な部分ですわね。モタモタして停止時間が長く成ってしまうと

地汚れ、酸化汚れ、着肉不良など、様々なトラブルが発生してしまいます。

 

そのオヤジも、しょっちゅう地汚れと闘ってました。地汚れが出たからと言っては、

強力な、プレートクリーナーで版をゴシゴシと擦る。私はクリーナー類の様な強い

溶剤系は好きではないので、一切使わないのですが、このオヤジの、クリーナー

の消費量は、尋常じゃないくらいに多かったですわ。

 

・・・分かりますか。 技術の未熟さをカバーする為に、普通なら不必要な溶剤が

必要に成ってしまう。しかも大量に。このオヤジは、ブラン回復剤(ジクロロメタン)

も大好きで、異常な程、大量に使ってましたね。

 

溶剤屋さんとか、私ら機材メーカーとかにとって、こうした、ヘタクソさんってのは、

大お得意様です。・・・「最近さぁ、湿し水がメッチャ汚れるんだよ~」  エエッ?

でもウチの濾過器使ってもらってますよねぇ。「あれじゃ追っ付かんのだわぁ」

 

それでしたらね、イイのが有りますよ。新開発の濾過装置なんですけどね、これを

付ければ一発で解消出来ます!「オオッ、そんな物が有るなら、すぐ持って来て」

あッ、それと、この溶剤を湿し水に添加するとバッチリですよ。チョッと値段は高い

ですけどね。「それじゃそれも頼むわ!」   毎度あり~ッ (^^)v

 

機材メーカーの人間である私が、こんな事を書いたら、私はクビに成りそうですが、

私ね、こんな低レベルな次元で悩んで欲しくないんですわ。湿し水が異常に汚れる

って言う原因には、必ず何か大きな問題が有ります。その根本的な原因を改善して

やる事が最も重要な最優先事項なんですよ。それを直さず、余分な濾過器やら、

添加剤に頼るってのは、残業稼ぎのヘタクソオヤジと同じレベルだと思いませんか。

 

トラブルが発生 ⇒ 何か良い溶剤や機材を探す。 そんな事をしていたら、いつまで

経っても、自分の技術力が上がりません。トラブル発生 ⇒ 自分のやり方に何か問題

が有るのではないか? ⇒ ならば別の方法を試してみよう ⇒ 少しはマシに成った

⇒ もっと良好にする方法は無いか? そうやって暗中模索して、悩みに悩んで何か

新しい物をつかんで行く。そこにこそ技術上達の道が有るんですわ。

 

印刷資材、印刷機材ってヤツは、オペレータの手抜きをカバーする為にも使えます。

でもね、それじゃツマランですよ。オペレータさん達の技術力が上がり、より良い物を

より効率良く生産したい。そう考えてもらえた時、資材や機材を開発している我々も、

本当に良い物を造り上げ、ご提供させて頂く事が出来る。私は、そう考えています。

印刷機 = 音デカい、やかましい、うるさい、耳栓欲しい、近くで会話出来ない等々、

とにかく、印刷機ってのは、騒音が大きくて、うるさい物だ!と言う印象の強い人が

多いかと思います。でもこれもね、日本全国の工場によってはケッコウ違うんですわ。

 

騒音がデカい事の原因の一つには、工場内の壁面の作り方の差ってのが有ります。

私が、お邪魔させて頂いた中で、一番静かだったのは、工場の壁と天井に、吸音材

(ベッドのマットレスみたいなの)が、その全面に貼ってある工場さんでした。

 

2台の印刷機が、最高速でフル回転していて、そのすぐ近くで、折り機が稼働して

いるのに、本当に静かで、普通の話し声の大きさで、会話が出来てしまうんです。

壁面や天井に、吸音系の施工をしてやるだけで、こんなにも違うものなのか!と、

心底、驚いた事を鮮明に記憶しています。

 

まぁしかし、こんな贅沢な作りの工場さんは、こりゃやっぱり稀ですわね。普通は、

と言うか多くの工場さんは、波型スレートの屋根と壁で、それに内張がしてあれば

まだマシ。波型スレート剥き出し壁面の工場さんも、決して少なくは有りません。

 

こう言うのって、例えば極寒の地域だと、シッカリされている工場が多いですね。

そりゃそうですよね、冬場、屋根の雪下ろしをしなきゃ成らないような地域だと、

外は氷点下ですから、スレート1枚では、工場内の温度が上がらず、印刷機の

水舟の湿し水が凍ってしまって印刷が出来ないなんて話を聞いた事も有ります。

 

さて話を戻して、この、やかましい印刷機なんですが、何の音が一番デカいか?

って考えた事、有ります?・・・輪転機は別として、普通の枚葉機の場合ですとね、

紙(印刷用紙)を制御するために、多くのブロアーポンプを使っていますよね。

あのブロアーポンプって、ケッコウ大きな音が出るんですよ。

 

例えば、導入したての新台機の場合だと、このブロアーポンプの音が一番デカい

と思うんですわ。これが新台ではなく、年季の入った古い印刷機に成って来ると、

ブロアー系の音よりも、メカニカルノイズ(機械的な騒音)が大きく成って来る。

・・・これって良くない事ですよね。新台の時には、それほど気に成らなかったのに、

機械が古く成るにつれて、機械的な騒音がデカく成ってしまう。

 

つまりは、新台の時と比べて、機械的な部分が劣化してしまっているって事です。

その原因は何か?と考えると、多くの場合、オイル(油)なんじゃないでしょうか。

菊半才以上のサイズの枚葉機の多くは、メインのオイルが、印刷機のギヤなど、

重要な稼働部分に対して、上からシャワーのように降り注がれて循環しています。

 

このオイル、1年に1回位の頻度で、交換する事と成っているかと思うんですが、

循環しているオイルってヤツには、どうしても、エアー(空気)が入り込みます。

空気が入れば、オイルが酸化する。また、空気には水分が含まれていますよね。

結露による、水分の混入も当然、考えられます。

 

そこで、オイル(潤滑油)の中に、どれくらいの水分が入ったら、アカンく成るのか。

水分が、何%までなら、入る事が許容されているのか?って話に成るのですが、

これ、何%くらいだと思います?・・・例えば、10%も入ってしまったら、こりゃ絶対

アカンと思いません? 5%でも、まだチョッとアカンかなぁ?1%ならイイかな?

 

例えば、国産・菊全クラスの4色機だと、100L(リットル)くらいのオイルが循環

している事と思いますが、その10%って言ったら、10Lの水が、オイル内に混入

してしまってるって事ですよね。オイルプール(オイルが溜まってる所)へ、10L、

つまり、バケツ1杯分の水を、ぶち込んでしまったら、こりゃ完全にアウトですわね。

であるならば、1%、1Lの水ならイイのか?

 

実は、これ、潤滑油に対する水分混入の許容範囲って、なんとッ! 0.1%まで!

なのだそうです。それ以上、水分が混入してしまうと錆が発生し、潤滑性能劣化で

機器の寿命を低下させてしまうのだそうです。0.1%って100Lに対して、たったの

100ccって事ですよねぇ。印刷機の場合、それ以上の水分が絶対に入ってるよ~。

なんて、私は考えてしまうんですが、いかがなもんでしょう?

 

最近は、「水分除去フィルター」なんてヤツが付いてて、循環してるオイルの中の

水分を取っているのも有りますが、0.1%って言う許容範囲からすれば、こりゃ、

こうしたフィルターが無いと、かなり厳しいのではないかと思います。

 

潤滑油、オイル、・・・給油するって事は勿論の事ですが、こいつらを大切に扱って

やれば、印刷機の音は、いつまでも新台のままの静かさを保ってくれるんですわ。

印刷中の印刷機から、メカニカルノイズ(機械的な騒音)が出ててはアカンのです。

儲からない時代ですから、そう簡単に印刷機を買い替えたりする事が出来ません。

給油、グリスアップ等を含め、オイルプール内のオイルにも、充分に気を使って、

大切に、印刷機を使ってやって下さい。

人ってのは、「このやり方って、絶対に間違ってるよなぁ~」とか思いながら、

それでも継続して、延々とやり続けるってのは、こりゃなかなか、無いだろう

と思います。チョッとでも「間違ってるかな?」と思えば、誰かに相談するとか、

何か他の方法を試してみるとか、って事に成るのが普通ですよね。

 

問題はね、「これ、間違ってるかな?」って言う、一番肝心な、その要の部分に

気付かない場合なんですよ。 本当は、大間違いな、やり方なのに、本人は、

何の疑いも無く、延々とそのやり方を続けてしまう。

 

実はね、印刷現場、印刷技術ってヤツにはケッコウ、このケースが多いんです。

私らベテランが見ると、「エエッ!何でそんな間違った、やり方をしてるのッ!」

と、ビックリするケースに出会う事が、しばしば有ります。

 

まぁね、これって半分以上は仕方が無い事なのかも知れません。印刷技術って

学校では教えてくれませんよね。最近は技術セミナーなんてのも無く成ってしま

いましたから、いよいよ、教わる(勉強する)場所が有りません。

 

んじゃ、印刷技術って、どうやって覚えるの? ・・・多くの場合、自分の会社の

先輩や上司から教わる事に成りますよね。その先輩や上司の方達も、それぞれ

自分の先輩や上司から教わったワケですよね。ふと考えてみれば、今、自分が

やっている技術は、先輩の、そのまた上の先輩から受け継がれた、30年前の

技術だったりしてしまうって事も有るんですわ。

 

30年前と、今では何が違うか? まず、インキの性能が圧倒的に違います。

今のインキは本当にスゴイですよ。濃度も有り、乾燥も速く、しかも水幅が広い。

こんな高性能なインキに慣れてしまってる人に、30年前のインキを渡してね、

「これで刷ってごらん」と言っても、こりゃ多分、刷れないと思いますよ。

 

あとね、30年前と今とでは、エッチ液の性能も、格段に違います。ローラーや

ブランケット等、ゴム製品の性能も、メッチャ良く成っています。こうした高性能に

成った資材の性能を充分に引き出して、有効に使ってやる為には、30年前の

技術ではアカンですよね。30年前の技術ってのはね、こうした物達の、性能の

悪さを、何とかカバーする為に作り上げられた技術なんですよ。

 

どの時代の技術者も、皆んな、常に悩んで、改善を積み重ねて行ったんですよ。

特に30年前と言えば、連続給水システムが出始めた時代。壺ネジから、分割の

インキ壺へと発展した、激動の時代です。特に連続給水システムなんてのはね、

誰も、その正しい使い方を教えてくれない。と言うか、誰も分かっていない時代

だったんですよ。「調子が悪ければ IPA を10%以上、入れな~」なんて事が、

当り前のように言われて、当たり前のように実行されていた時代です。

 

技術者は、常に「現状」と闘わなければ成らない。これは師匠から教わった言葉

です。・・・師匠って、今は亡き鎌野先生ですが、この先生「湿し水の権威」とまで

言われて、その著書も素晴らしい物が有ります。でもね、先生の理論は、私には、

すでに古過ぎる理論だったんです。「先生、ノンアルコールエッチ液のセミナーを

是非、やりましょう!」と、私が言うと・・・

 

それは、おまえ達の「現状」だろう。おまえ達の現状は、おまえ達自身で闘って、

打開し、発展させて行くものだ。技術の継承と言うのは、古い技術を言い伝える

ことではない。闘い方、発展のさせ方を伝授して行く事こそが、本当の技術継承

だと、オレは考えている。

 

アフリカの奥地に、日本の援助隊が行き、井戸を掘って来る。原住民達は皆んな

大喜びで井戸水を使う。しかし、数年後に行ってみると、その井戸が壊れてしまっ

ていて、原住民達は、再び日本の援助隊が来るのを、延々と待っている。

 

原住民達に、闘い方、発展のさせ方を教えていないから、こう言う事に成るのだ。

井戸を作って来るのではなく、「井戸の作り方を教えて来る」そうすれば、井戸が

壊れても、井戸が枯れて水が出なく成っても、自分達で作り出す事が出来る。

技術の継承とは、そう言うものだ。

 

私自身が60歳を超え、自分自身の技術や理論が、ああ~、こりゃ既に古いな~。

と感じ始めた時、この師匠の言葉が分かるように成りました。「井戸の作り方を

教える」 これを印刷技術に置き換えた時、どうしたら一番良いのか?これこそが、

私自身の「現状」であり、私自身が、打開、発展させるべきものだと思っています。