印刷技術 印刷機の音 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

印刷機 = 音デカい、やかましい、うるさい、耳栓欲しい、近くで会話出来ない等々、

とにかく、印刷機ってのは、騒音が大きくて、うるさい物だ!と言う印象の強い人が

多いかと思います。でもこれもね、日本全国の工場によってはケッコウ違うんですわ。

 

騒音がデカい事の原因の一つには、工場内の壁面の作り方の差ってのが有ります。

私が、お邪魔させて頂いた中で、一番静かだったのは、工場の壁と天井に、吸音材

(ベッドのマットレスみたいなの)が、その全面に貼ってある工場さんでした。

 

2台の印刷機が、最高速でフル回転していて、そのすぐ近くで、折り機が稼働して

いるのに、本当に静かで、普通の話し声の大きさで、会話が出来てしまうんです。

壁面や天井に、吸音系の施工をしてやるだけで、こんなにも違うものなのか!と、

心底、驚いた事を鮮明に記憶しています。

 

まぁしかし、こんな贅沢な作りの工場さんは、こりゃやっぱり稀ですわね。普通は、

と言うか多くの工場さんは、波型スレートの屋根と壁で、それに内張がしてあれば

まだマシ。波型スレート剥き出し壁面の工場さんも、決して少なくは有りません。

 

こう言うのって、例えば極寒の地域だと、シッカリされている工場が多いですね。

そりゃそうですよね、冬場、屋根の雪下ろしをしなきゃ成らないような地域だと、

外は氷点下ですから、スレート1枚では、工場内の温度が上がらず、印刷機の

水舟の湿し水が凍ってしまって印刷が出来ないなんて話を聞いた事も有ります。

 

さて話を戻して、この、やかましい印刷機なんですが、何の音が一番デカいか?

って考えた事、有ります?・・・輪転機は別として、普通の枚葉機の場合ですとね、

紙(印刷用紙)を制御するために、多くのブロアーポンプを使っていますよね。

あのブロアーポンプって、ケッコウ大きな音が出るんですよ。

 

例えば、導入したての新台機の場合だと、このブロアーポンプの音が一番デカい

と思うんですわ。これが新台ではなく、年季の入った古い印刷機に成って来ると、

ブロアー系の音よりも、メカニカルノイズ(機械的な騒音)が大きく成って来る。

・・・これって良くない事ですよね。新台の時には、それほど気に成らなかったのに、

機械が古く成るにつれて、機械的な騒音がデカく成ってしまう。

 

つまりは、新台の時と比べて、機械的な部分が劣化してしまっているって事です。

その原因は何か?と考えると、多くの場合、オイル(油)なんじゃないでしょうか。

菊半才以上のサイズの枚葉機の多くは、メインのオイルが、印刷機のギヤなど、

重要な稼働部分に対して、上からシャワーのように降り注がれて循環しています。

 

このオイル、1年に1回位の頻度で、交換する事と成っているかと思うんですが、

循環しているオイルってヤツには、どうしても、エアー(空気)が入り込みます。

空気が入れば、オイルが酸化する。また、空気には水分が含まれていますよね。

結露による、水分の混入も当然、考えられます。

 

そこで、オイル(潤滑油)の中に、どれくらいの水分が入ったら、アカンく成るのか。

水分が、何%までなら、入る事が許容されているのか?って話に成るのですが、

これ、何%くらいだと思います?・・・例えば、10%も入ってしまったら、こりゃ絶対

アカンと思いません? 5%でも、まだチョッとアカンかなぁ?1%ならイイかな?

 

例えば、国産・菊全クラスの4色機だと、100L(リットル)くらいのオイルが循環

している事と思いますが、その10%って言ったら、10Lの水が、オイル内に混入

してしまってるって事ですよね。オイルプール(オイルが溜まってる所)へ、10L、

つまり、バケツ1杯分の水を、ぶち込んでしまったら、こりゃ完全にアウトですわね。

であるならば、1%、1Lの水ならイイのか?

 

実は、これ、潤滑油に対する水分混入の許容範囲って、なんとッ! 0.1%まで!

なのだそうです。それ以上、水分が混入してしまうと錆が発生し、潤滑性能劣化で

機器の寿命を低下させてしまうのだそうです。0.1%って100Lに対して、たったの

100ccって事ですよねぇ。印刷機の場合、それ以上の水分が絶対に入ってるよ~。

なんて、私は考えてしまうんですが、いかがなもんでしょう?

 

最近は、「水分除去フィルター」なんてヤツが付いてて、循環してるオイルの中の

水分を取っているのも有りますが、0.1%って言う許容範囲からすれば、こりゃ、

こうしたフィルターが無いと、かなり厳しいのではないかと思います。

 

潤滑油、オイル、・・・給油するって事は勿論の事ですが、こいつらを大切に扱って

やれば、印刷機の音は、いつまでも新台のままの静かさを保ってくれるんですわ。

印刷中の印刷機から、メカニカルノイズ(機械的な騒音)が出ててはアカンのです。

儲からない時代ですから、そう簡単に印刷機を買い替えたりする事が出来ません。

給油、グリスアップ等を含め、オイルプール内のオイルにも、充分に気を使って、

大切に、印刷機を使ってやって下さい。