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1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

何年か前にも書いたんですが・・・。

 

機械部品のパーツカタログみたいなのを印刷したんですよ。その表紙に、

シルバー(銀色)の、機械部品のアップの写真が、デカデカと有りましてね。

印刷して納めたら、「色が違う!」って、大クレームだったんですわ~。

 

表紙のシルバーの機械部品の色が、赤過ぎる!って、おっしゃるんです。

それを担当の営業さんが、印刷工場に持って来て、「なんでこんなに赤く

刷っちゃったんですかッ!」って、納めた印刷物と、色見本を印刷機の、

色見台の所で、広げたワケですよ~。

 

ん??? なんで、これが色調クレームに成るの?  このシルバーの色、

ほぼ同じと言うか、バッチリOKなんじゃない?・・・文句を言いに来たはずの

営業さんも、「あれ?本当にバッチリですねぇ。おかしいなぁ・・・」

 

この時、私は印刷オペレータではなく、管理責任者でしたので冷静な判断で

「多分、照明の問題だと思うよ。ウチの色見台は、全て演色性にコダワって

セッティングしてあるから大丈夫だと思うけど、お客さんの所の照明に問題が

有って、違う色に見えちゃったんじゃないのかなぁ」

 

・・・ですよねぇ。とか言いながら、色調見本のインクジェットを左手に持って、

右手には、印刷物を持ったまま、視線は、その両方を比較しながら、工場を

出て行こうとしたんです。「ん? んん?? んんん??」ナニ、どうしたの?

 

色見台の照明から外れた瞬間、印刷物のシルバー部分が、色調見本よりも、

赤く見えたんだそうです。「やっぱり赤いか~」と思いつつ、そのまま少しだけ

暗い場所に入ると、今度は印刷物の方が青く見え、工場から外に出てて、

軒下の、日陰部分で見たら、またまた赤く見えてしまった。

 

こりゃ、何を信じればイイんですか?・・・いろいろ調べてみたら、この時に

使っていたインクジェットの方に問題があったようです。確かにね、色調って

ヤツは、光源によって、メチャメチャ、見え方が変わってしまいますよね。

 

同じ色調を、蛍光灯の光で見るか、白熱球の光で見るか、太陽光で見るか

では、全て色が変わります。・・・デジカメに、ホワイトバランスってのが有って、

まぁ、「自動(オート)」にしておけばイイんですが、本当は各光源によって、

ホワイトバランスってのを、変えてやらなきゃ成らないんですわ~。

 

今回の場合、印刷物よりも、インクジェットの方が、光源の違いによる色の

見え方の変化が大き過ぎて、大変な事に成ってしまったんですが、とにかく、

お客さんがクレームを、おっしゃっておられる訳ですから、私としては、直ぐ

にでも刷り直しをしたいのです。しかし、問題は、どんなシルバーに仕上げ

れば、ご満足頂けるのかが、分からないんですよ。

 

そこで担当の営業さんに、「インクジェットは、もう無視して今回の印刷物を

基準に考えて、それより赤くしたいのか、青くしたいのか、青くするのならば、

どの程度、青くすればいいのかを相談して来て~。」 と、お願いしました。

 

そしたら、さすがはベテラン営業マンですよね~、全てをお客さんに話して、

インクジェットを無視し、この印刷物に対しての色指示を頂ければ、すぐに

刷り直しをします!って言ったワケですよ。こりゃね、お客さんも悩みますよ。

 

インクジェットって言う比較物が有るから、「赤い!」ってクレームに成ったん

ですが、刷り上げられた印刷物だけを見ていると、これより赤くするのが正解

なのか、青くするのが正解なのかが、正直なところ判別が付かないんですわ。

 

「まぁ、この印刷物だけ見てると、別にこれでイイかって思うんだよね~。まぁ

刷り直しも大変だろうから、このままでヨシとしましょう!」と言う事で一件落着。

 

刷る方も、判断する方も、この4色重なったシルバー系とか、グレー系とかの

色調では苦労する事が多いです。例えばね、見本と刷り物を並べて比較して、

右側に置いた刷り物の方が、チョッと赤い!と言う判断に成ったとしましょう。

この時にね、そのまま、右と左を入れ替えてみて下さい。

 

右側の「刷り物」の方が赤いと判断したはずなのに、左右を入れ替えると、

入れ替えて右側に来た、「見本」の方が赤く見えてしまう事が有るんです。

人間の、右目と左目の見え方の差、とか言われてますが、微妙な色調の、

茶色系などでも、この現象はケッコウ起こります。

 

こんな場合、私は、刷ってる方の物を、問題の絵柄の部分で、ハサミ等で

カットして、見本の絵柄の同じ所に、キッチリと当てがって、比較するように

していました。まぁ、分光光度計でLabで計測比較してやればイイのかも

ですが、人の見た目を納得させるには、数値よりも、カットした現物合わせ

の方が、私としては説得力が有って、楽でした。

私のセミナーで、「ボール紙」は、なぜ、ボール紙って呼ぶのか?って言う話を

よくします。・・・「ボール」ってねぇ、野球のボールとか、料理で使うボールとか、

球か、器か、って話に成るじゃないですか。ボール紙は、球でも器でもないのに、

「ボール紙」と呼ばれている。・・・なんで?

 

その昔、日本に初めてボール紙が入って来た時、当時の役人さんが、これを

持ち込んだ外国人さんに訊いたのだそうです。「この紙は、何と申すのか?」

「Oh ! This is Board Paper 」 (これは、ボード・ペーパー(板紙)です)と、

答えたワケですよ。「ボード・ペーパー」 これをキッチリ発音すると、「ボード」

の「ド」が、シッカリと聞き取れないんですね。

 

当時のお役人の耳には、「ボール・ペーパー」と聞こえたので、「おお、左様か、

ボール・ペーパーと申すか」・・・それ以来、この板紙に関しては、「ボール紙」

と言う呼称に成ったと言う話です。・・・あんまり信じてないでしょう(笑)。

 

でもね、他にも、こんな話が有るんですよ。ビジネスマンの制服「ワイシャツ」。

これ、なんで「ワイシャツ」って言うのか?・・・その昔、初めてワイシャツが、

日本に入って来た時、当時のお役人が、それを持ち込んだ外国人に訊いた

んですよ。「これは、何と申すか?」

 

その当時、白いワイシャツしか無かったので、その外国人は「White Shirt」

(ホワイト・シャツ)と答えたんです。この「ホワイト」をキッチリ発音するとですね、

最初の「ホ」が、ハッキリ聞こえないんですね。そこで「ワイシャツと申すか!」

と言う事に成り、そこから「ワイシャツ」って名前に成ったってワケです。

これは、最近のクイズ番組でもやってますから、本当の話だと思いますよ。

 

さてさて、そこで、我々が使っている、「オフセット印刷機」の話に成るのですが、

これを、なぜ「オフセット」と、呼ぶのか?・・・ネットで検索してみると、凄く古い

解説が出て来ます。「インキが一度、版からブランにOFFし、紙にSETするので、

このため、オフセット印刷と言う」 なんて話です。

 

何を、ワケの分からん解説してんでしょうねぇ。私ね、この解説は絶対に間違い

である!と、昔から言い続けてるんですよ(笑)。インキが一度オフして、紙に

セットする。そんな言い方したら、凸版だって、凹版だって、みんな一緒ですわ。

インキが、版からOFFして、紙にSETするワケですもんねぇ。そりゃまぁねぇ、

「ブランにOFFして」って所を強調したいんでしょうが、これ、違うと思いますよ。

 

オフセット方式を開発したのは、1904年(1905年説も有ります)、アメリカの

ルーベルさん、と言う人なんですよ。ルーベルさんは、平版印刷屋さんです。

当時の平版印刷と言えば、石版と言う版を使った印刷方式で、これはオフセット

ではなく、湿し水で濡れた版に、紙を直接、接触させて印刷を行っていました。

濡れた版に、紙を直接、付けてしまうワケですから、紙も濡れるし、インキも滲み

ますし、決して高品質とは言えませんわね。

 

ある時、ルーベルさんの所の、印刷職人が、紙を入れずに印刷してしまいました。

こりゃ、いわゆる「胴刷り」ってヤツですわ。圧胴にシッカリ、絵柄が印刷されて

しまったワケです。そして、それに気付かず次の紙を印刷すると、こりゃ両面刷り

に成ってしまいますわね。・・・この時、ルーベルさんは、発見したのです!

 

濡れた版から印刷した画像より、圧胴から印刷した画像の方が、キレイやんか!

こりゃ、アカンでぇ。なんぞ、エエ方法考えたら、こりゃ一儲け出来るでぇ~ (^^)v

まぁ絶対に、関西弁で、そう言ったワケは無いのですが、そこからブランケットと

言う物を開発し、オフセット印刷が始まったワケなのです。

 

歴史的に一番古い印刷方式は、グーテンベルグさんの活版(凸版方式)です。

西暦1445年頃とされています。次いで1460年頃に、凹版(グラビア印刷)の

技法が考案され、1798年に、ゼネフェルダーさん(ドイツ)が、石版印刷術

(平版印刷)を発明しました。もう一つの版様式である、孔版は、ガリ版印刷と

して、1800年代に作られたとされています。(ガリ版、懐かしい~)

 

もともと有った、ゼネフェルダーさんの平版印刷も、他の凸版、凹版、そして、

孔版印刷も、全て、版と紙を直接、密着させて印刷を行う方式だったんです。

それに対して、ルーベルさんのオフセット方式は、ブランケットを介する事で、

「版と紙を、離した(OFFした)状態に、SET」されていたんです。ですから、

「OFF SET 印刷方式」って名称に成ったんですわ~。

 

オフセット方式って言うのは、あくまでも「形式」(フォーマット)の名称であって、

インキがブランにOFFして、紙にSETする。などと言う、「方法」(メソッド)の

名称ではない。と言うのが私の考え方なんですよ。

 

平版以外に、凸版でも、オフセット方式を使った物が有ります。レターセットと

言う名称で呼ばれていましたが、今は実際に使われているのかなぁ???

あっ、レターセット印刷でネット検索すると「手紙のセット」みたいな話がイッパイ

出て来ますが、それとは無関係です。・・・オフセット印刷機の版胴に樹脂凸版

を貼り付けて、ブランを介して印刷するって感じで、イメージして下さい。

 

「インキをブランに OFFして、紙に SETする」 これは昔、日本印刷技術協会でも

採用していた解釈で、技能検定試験の学科問題にも出題されていた事が有った

んですが、今は出題されなく成りました。・・・だってねぇ何かさぁ、幼稚な解釈だと

思いません? それより、版と紙が OFFに SETされた機構である!って言う方が

絶対カッコいいじゃないですか~。

 

オフセット印刷機が、初めて日本に入って来た時、当時のお役人さんが、「これは

何と申すか?」と、訊いたんですよ。 「オオッ、コレは、ここにインキがオフして、

ここに有る紙に、セットするんじゃわぁ」とか、当時の外国人さんが、説明したので、

そんな話が、語り継がれてしまったのかなぁ?(あ、これは全くの冗談です)

「需要と供給」って、言葉が有りますよね。

 

印刷絵柄が多い印刷物なら沢山のインキが必要(インキの需要が多い)なので、

インキも多く出す(供給する)事と成りますよね。・・・実はね、この状態が、イイん

ですよ。インキを沢山出してても、絵柄が多いからインキを沢山、消費してくれる。

 

この状態だと、常にフレッシュなインキで刷る事が出来ますよね。どんどんインキを

出して、ジャンジャン消費してくれる。ローラー上のインキは、常にフレッシュ!(^^)v

それに対して、絵柄が少なくて、通し枚数が多い!なんて言うのはイヤですよね~。

インキ壺からインキを出す量は少ないんだけど、絵柄も少ないので、消費する量が

少ないワケですから、劣化してしまったインキで、ローラーが満たされてしまう。

 

劣化したインキは、乳化しやすいとか、汚れやすいとか、乾燥し辛いとか、着肉が

悪いとか、イイ所が全く無いんですわ。そこで、印刷面の外に、「捨てベタ」なんて

言うのを付けて、インキの消費量を、わざわざ多くし、少しでもフレッシュなインキが

使えるようにする。  な~んて言う工夫をされている所も有りますね。

 

チョッと話は変わりますが、例えばですよ、印刷絵柄が欲しているインキ量(需要)

よりも、多目にインキを出してしまったら、インキの供給量が多過ぎて、こりゃ目標

よりも、濃い印刷物に成ってしまいますよね。・・・ただ、濃く成ってしまうだけなら、

まだ罪は軽いんですよ。濃ければ、インキ壺を絞って、インキの供給量を減らせば

イイってだけの話ですもんね。

 

問題なのはね、インキの量が多ければ、汚れが出やすい!って事なんですわ~。

インキの量が少なければ、湿し水の量を少なくしても、簡単には汚れませんが、

インキの量が多くて、汚れが出てしまうと、大半の人は、湿し水の量を上げて

しまうんですよ。・・・本当の原因はインキが多過ぎて汚れてしまってるんですから、

正しい対応としては、ローラー上のインキの量を減らすべきなんですが・・・。

 

インキの量を減らす事無く、湿し水の量を多くして、汚れを解消しようとしてしまう。

これ、アカンですよね。多過ぎるインキと、多過ぎる湿し水の組み合わせは様々な

トラブルの原因と成るばかりで、まともな印刷には成りません。

 

日本全国、様々な印刷会社さんへ、お邪魔に行かせて頂いてるんですが、指導を

させて頂いていて、一番、出来ないのがココなんですよ。「版面がテカテカ光ってて、

明らかに湿し水が多いから、水を3目盛り絞って下さい」・・・いやいや絞ったら汚れる。

 

「今、現状は湿し水がダバダバに多い状態です。ここまで水を上げないと汚れるって

言うのは、インキが多過ぎるか、ローラーニップが悪いって証拠ですよ!」・・・いや、

でも、これ以上、水を絞ったら汚れるから。

 

頑固なやっちゃなぁ~ッ!オレが、3目盛り絞れって言ってんだからサッサと絞れ(笑)

・・・そこまで言って、ようやく1目盛り絞ってくれます。 オイオイ、小学校で算数っての

習った事が無いのか?3目盛りつってんのに、何で1目盛りなのッ!数字を数える事も

出来んヤツが、印刷オペレータなんて出来んぞッ!

 

こんな会話に成ってしまうのは、ある程度の経験年数が有るベテランさんが多いです。

自分が、何年も、何十年もやって来た技術を、変えるって言うのは、難しいものです。

でもね、それが「間違った技術だ」と、教えられたのなら、挑戦してみるべきなのです。

 

若手のオペレータさんはね、水目盛りを3つ絞って!って言えば、「はいッ!」って、

即座に 3目盛り絞ってくれて、「アッ、こっちの方が断然、キレイですねッ!」なんて

分かってくれるんですよ。

 

・・・印刷業界が、どんどん厳しく成っている時代ですよね。成長するために、挑戦する。

より良い物を求めて、変える、変わる。それが出来ないと、生き残れない時代なのだと、

痛切に感じます。今まで通りではなく、より高度な事、より難しい事に挑戦する。 我々、

技術屋にとって、それが最も重要な時代なのだと考えています。

印刷オペレータには、それぞれ個性が有りまして、例えば、軟らかいインキが

好きな人も居れば、私のように、出来るだけ硬いインキが好きな人も居ます。

軟らかいインキが好きな人は、レジューサとかコンパウンドだとかをインキに

混ぜ込んででも、とにかく軟らかくして、使われてますよね。

 

それじゃ、軟らかいインキと、硬いインキとでは、何がどう違うのかを、考えて

みましょう。まずは、乾燥性の問題です。・・・インキが、インキ缶に入っている

状態で、インキは「液体」か「固体」か?って言ったら、こりゃ液体ですよね。

インキ缶の蓋を開けて、缶を傾けてやれば、インキがダラダラと流れ出します。

 

ダラダラと流れる。つまり「流動性」を持っているって事です。ですから、これは、

「液体」なんですよ。このインキを使って印刷を行った。インキは紙に着いて、

乾燥して行きます。乾燥した後、この印刷された紙を傾けたとしても、インキは

ダラダラと流れたりしません。・・・なぜか? 紙に印刷されたインキが、固体に

変化したからなんですよ。

 

液体だったインキが固体に変化する。これを「乾燥」って呼んでるってワケです。

ダラダラに軟らかいインキと、カチカチに硬いインキ。どっちが、より速く固体に

変化しやすいか?って考えると、ダラダラが固体に成るよりも、カチカチが固体

に成る方が、断然速いです。だってカチカチの方が、より固体に近いですもんね。

変化の幅が少ない方が、固体化が速いって、簡単に想像が着きますよね。

 

また、汚れの問題に関しても、硬いインキの方が優位なんですよ。ダラダラに

軟らかいインキは、フローが大きいワケですから、広がりやすいってワケです。

版面上でも、余分な所にまで広がってしまうので、非画線部にまで広がって、

それが汚れに成ります。この汚れを消すために、湿し水の量を多くする。

 

それに対して、硬いインキは、流れ難いわけですから、非画線部へ広がる

ってのも、軟らかいインキに比べて少ないわけで、汚れ難いから、湿し水も、

極限まで絞ってやる事が可能に成るワケです。・・・また、インキってのはね、

湿し水を含んでしまう事で、より一層、軟らかく成ってしまいます。

 

軟らかいインキは汚れやすい ⇒ 水を上げ気味にする ⇒ またまたインキが

軟らかく成る ⇒ またまた汚れやすく成る ⇒ またまた水を上げる。 と言う、

悪循環の中に、はまり込んでしまいやすいんですわ。

 

インキは硬い方が良い!って話を書いて来ましたが、硬い事による障害は

無いのか?・・・当然、有りますよね。その代表選手が「ピッキング」ですわ。

紙の表面強度が低い(表面が弱い)場合、インキが硬過ぎると、紙の表面を

ムシってしまって、ピッキング(紙剥け)が発生しますよね。

 

ですから、インキの硬さの選択ってのは、その紙でピッキングが起きない

って事を前提として、「ピッキングが起きない中の最も硬いインキ」ってのが、

一つの選択基準に成るってワケです。・・・ただしね、紙の表面強度ってのは

紙表面の湿度で、ずい分変わります。湿し水が多いと紙の表面は濡れます。

濡れれば、紙表面の強度が落ちて、ピッキングが起き易く成りますよね。

 

硬いインキを使って、極限まで湿し水を絞る。これが基本だと思います。

印刷物は、何の為に有るのか?・・・私のセミナーでは、この質問を

よくしますし、このブログでも、何度か書いて来た事柄だと思います。

 

「印刷物は、それを発注して下さった、お客さんが儲けるために有る」

これが私の、いつもの回答なんですが・・・、 例えばね、魚屋さんが、

自分の店の「特売セールのチラシ」を作りたいとしましょう。

 

高い印刷料金を出して、ケッコウな額の、新聞折り込み料金を払って、

それでもチラシ(印刷物)を作りたいのは、なぜか?・・・チラシを出す

ことによって、一人でも多くのお客さんに来店してもらって、1匹でも

多く魚を売りたい。要するに、魚屋さんが儲けるためですよね。

 

帳票類(伝票)や、商品ラベル、商品のパッケージ、書籍、テキスト類、

そうした印刷物の一つ一つに関しても、その印刷品質の良し悪しに

よって集客性や販売実績などが変わって来るってのが私の考えです。

(まぁ、詳しくは、私のセミナーを聞いてやって下さい(笑))

 

印刷品質って言うのを、そう言う観点から考えた場合、より良い印刷品質

ってのは、「お客さんが儲かる品質」って事に成りますよね。魚屋さんの

チラシの魚の写真が、まぁ見事なくらいに、美味しそうに見えてて、こりゃ

今夜は、この魚を是非とも食べたいから、早速、買いに行こうッ!なんて

思える様な品質のチラシが、もっともイイってわけです。

 

印刷物を発注して下さった、お客さんが儲かる品質が、最も良い品質!

そう考えた場合、「ドットゲインとか、ベタ濃度とか、網点の素抜けだとか、

ダブリだとか、汚れだとか、そんな物、ど~でもイイじゃん。それらが、良い

状態じゃなかったとしても、要は、お客さんが儲かればイイんだろう。」

 

極論すれば、その通りだと思います。要は最終的に、お客さんが儲かれば、

それが一番良い印刷物なんですよ。でもね、多くの場合、人は、より良い物

を求めますよね。「ああ~、そのマグロの赤身はさぁ、もう少し赤くしてよ~。

アジはさぁ、胴体がキラキラしてて、活きが良く見える方がイイなぁ。」

 

そんな、お客さんからのリクエストに応えようとした場合は、写真データ等に、

補正を掛ける事に成るんですが、基本的な印刷品質がメチャクチャだったら、

どんな補正を掛けたらイイのか分からんですよね。例えば、ダブリが出て、

濃く成ってしまってる所を指して、「ここ、もう少しスッキリさせてよ。」って言わ

れたら、印刷機の爪を調整したりして、ダブリを確実に取るって言うのが、

最も正しい対応方法ですよね。

 

ダブリが出てしまってる事に気付かず、インキの盛りを抑えて明るくスッキリ

させようとしたら、ベタ部分や、シャドーの濃い部分が、メッチャ淡く成ってし

まって、メリハリの無い、非常に眠たい印刷物に成ってしまいます。

 

我々が扱っている印刷機械ってヤツはね、偶然に出来上がるような、芸術品を

作る機械じゃないですよね。事細かに計算し尽くされて、凄く緻密な制御の基に、

安定した物を大量に作って行く機械なんですよ。 その大前提から考えた場合、

ドットゲイン、ベタ濃度、網点形状、なんて言う、最も基本的な部分が、ウマく

行っているって事は、こりゃ当り前。 それは、絶対条件って事に成るんですよ。

例えばですよ、うなぎが食べたいとしましょう。どこかに食べに行くとして、

どの店に行くかは、ケッコウ悩みますよね。A店はチョッと安いんだけれど、

あまり美味しくはない。B店はチョッと高いけど、ケッコウ美味い。

 

もし、A店とB店の値段が同じだったら、誰だって、美味しい方のB店に行き

ますよね。・・・しかしですよ、うなぎなんて言う高級品、我々庶民が頻繁に

食べに行く物ではないですよね。今日は土用の丑の日だから、奮発して、

うなぎを食べに行くか~ッ!なんて言う価値観の物ではないかと思います。

 

「奮発して、気合を入れて食べに行く」って言う気構えからすれば、チョッと

値段が高くても、ここは贅沢して、散財覚悟の上で、美味しいB店に行こう!

って成るのが、ごく一般的な庶民の考え方ではないだろうかと思います。

 

これね、印刷屋さんも同じような事が言えるんですよ。と言うか印刷屋さん

の方が始末が悪い!と言う事も有ったりしてしまうんです。まずはその値段

って言う部分なんですが、例えば、同じ内容、同じ部数の印刷物の見積もり

を、5社の印刷屋さんに依頼したとしましょう。

 

これがね、印刷物ではなくて、例えば建築物(家)の見積もりだとかですねぇ、

電気工事の見積もりだったりすると、その値段って、5社に見積もりを依頼

しても、それほど大きな差が出ないのが普通なんですよ。ところが印刷物の

場合だと、メチャメチャ大きな、見積り金額の差が出てしまいます。今時の

通販印刷さんまで絡めたら、最高値と最低値では10倍の差が出てしまう

ような事も、ザラに有るのではないでしょうか。

 

さっきの、うなぎ屋さんの場合ならば、値段の高い所は、良質なうなぎを

使っていたり、一流の料理人さんが手間暇掛けて、下ごしらえしてたりして、

値段が高ければ高いほど、その美味しさも上がって行くってのが普通かと

思うんですが、印刷屋さんの場合は、そうは行かないんです。

 

印刷屋さんの見積もり価格は、現場が提供する印刷品質とは無関係な場合

の方が多いんです。つまりね、印刷品質が悪ければ、超安い。品質がメッチャ

良ければ、超高い。とは行かないんですよ。印刷品質がメチャ良いのに、安い

値段の所もザラに有りますし、その逆に、ぜんぜんダメな品質なのに、値段

だけは、ウソのように高いって所もイッパイ有ったりしてしまうんです。

 

うなぎ屋さんの場合でも、同じ値段なら、美味しい店へ行きますよね。まして、

値段が安くて、しかも美味しいとなれば、値段が高くてマズい店の方は誰も

お客さんが来てくれませんから、ツブレてしまいますわね。

 

私が、印刷品質を上げろッ!と言ってるのは、こうした部分なんですよ。

印刷物の値段が高いのに、安い所と比べて品質が悪い。・・・そんな印刷屋に

仕事が集まるワケが無いですよね。「あの印刷屋さん、凄くイイ仕上がりでさ、

しかもメッチャ安いんだよッ!」 なんて言う評判が立ったら、みんな、そっちに

印刷物を発注するように成ってしまうのが当然ですよね。

 

理想はね、うなぎ屋さんと同じです。「あの、うなぎ屋は高いけど超ウマいよ!」

と言われて、お客さんが連日、長蛇の列を作って待ってくれるように成ったら、

こりゃ、バンザイですよね。「あの印刷屋、メッチャ値段が高いんだけど、とにかく

抜群な物を作ってくれるから、もう、あの印刷屋しか考えられんわ~」なんて言う

評判が頂けるように成ったら、最高だと思いません?

 

これからはね、品質に手を抜いたら、仕事が無く成る時代なんですよ。

その、とても重要な「品質」ってヤツの、一番大きなカギを握ってるのが、

現場なんですわ。昨日も書きましたが、今はね、本当に現場の時代なの

です。現場が印刷会社を引っ張って行く時代なんですよ。

初めて訪問させて頂く印刷現場さんに伺う時、「こちらで刷られた、自慢の印刷物、

自信作!ってのを見させて下さい」 なんて言うリクエストをさせて頂く事が有ります。

・・・これってね、その現場さんのレベルを把握するのには、とても良い方法なんです。

 

ある時、「これ、どうですか!」って言うのを厳選して持って来て下さったんですよ。

小さなラベルのような物が多面付された、カラー4色の印刷物でした。それなりに、

キレイな発色をしてはいるんですが、これは、100点満点中、30点!ギリギリで

落第点を免れたって感じなんだけど、本当は落第点にしたいなぁ。

 

何が悪いかが分かってないから、この印刷物を、自慢の一品として出して来たん

だよねぇ。なんで30点なのかが理解出来ないと、いつまで経っても、30点の物を

自慢の一品として自己満足してしまって、それ以上の発展が無いよねぇ~。

 

多面付けされた、咬尻の両端の2丁のラベルを見てごらん。背景の藍の平網が、

他の物よりも、濃く見えるのが分かるかな?・・・「あ、本当ですねぇ」 いやいや、

そんな簡単で、しかも目立つトラブルに気が付いてなかったんだねぇ。この製品は、

もう納めたんでしょう?これでよく納まったねぇ。ケツの両端の平網が濃く成ってし

まってる事に気付いてないから、堂々と納めちゃったんだよね。

 

「何で、このケツの両端だけ、藍が濃く成ってしまってるんですか?」 ・・・それを、

オレに訊くか~。自分で印刷した物でしょう。自分の印刷物の欠陥が分からない

ようでは、いつまで経っても、30点から抜け出す事が出来ないと思わない?

ダブリだよ、ダブリ。ルーペで網点を覗いてごらん。「あッ!二重に成ってる~」

 

今回、君が自信作として私に見せたのが、このダブった印刷物だ。こんな初歩的な

トラブルすら見付ける事が出来ていない。これじゃ、プロのオペレータとして失格だ。

もっと言うなら、20%以下の網点を見てごらん。網点の中心が白抜けに成ってて、

ドーナッツのような網点に成ってしまってるのが分かるかな。 「あ、本当だ」

 

これは、素抜けと言って湿し水が多過ぎるって言う証拠なんだよ。網点のエッジの

切れも非常に悪い。墨の文字に至っては、かなり太く成ってしまってる。墨インキを

出し過ぎて乳化させてしまってるんだよ。君にとって、これは自信作かも知れんけど、

私にとっては、こりゃ、ゴミだ。 30点から、20点へ降格やね。

 

厳しい事を言うが、こんなレベルの印刷現場なんてね、もう要らないんだよ。

会社が印刷現場を維持するために、どれほどの資金が必要に成るか分かるかな?

印刷機を設置しておく広大な場所代、印刷機の修繕費、資材代、そして君達の給料、

年金や健康保険などの人件費までを考えたら、凄い料金が毎月掛かっているんだよ。

 

そこまでして、資金を投入してるのに、この品質の印刷物しか出来ないのであれば、

そんな現場は、全て破棄してしまった方がいい。印刷機を売り払って、空いた場所を

有効に使って、現場の人間を全てリストラして、印刷物は通販さんや、他の外注さん

へお願いすれば、どれほど儲かる事か。

 

分かるか? オレが過ごして来たような、中小・零細の印刷現場ってのはね、品質

ってヤツでは、絶対に他に負けてはアカンのだよ。20点しか取れない現場に無駄な

資金を使うより、そんな現場は全て破棄して、50点以上をキープしてくれる外注さん

で印刷してもらう方が、本当に、どれほど儲かるか分からんのだよ。

 

品質の良し悪しを、正確に見極められる眼を作る事。より良い品質を再現する為には、

何をどうしたら良いのか、死にもの狂いで勉強する事。「いや、ウチは機械が古いから」

などと言う言い訳は、どこの現場でも同じだ。「そうか、印刷機が古いから、もうアカン

のか~。しかし当社には、新しい印刷機を買うだけの余力が無いから、この際、現場は

破棄してしまおう」 なんて事に成ってしまう時代なんだよ。

 

これからの印刷会社は、現場が引っ張る!現場の力こそが、印刷会社の力である!

ってのが、最近の私のスローガンです。今、本当に現場の力が必要な時代なのです。

現場の諸君、どうか、頑張って下さい。これからの印刷会社は、あなた達の努力こそが

本当に、必要不可欠なのですから。

4色カラー印刷の場合、普通は何らかの、色調見本が付いて来ますよね。

それが、インクジェットだったり、トナープリンターの物だったり、あるいは

前回の刷り物だったりと様々だと思うんですが、この色調見本のために、

苦労してしまっている印刷現場が、意外にも多いんですよ。

 

私の場合、最後に現役オペレータとして刷っていたのが、化粧品系の仕事

でしたので、色調的にはメッチャ厳しかったですから、インクジェットなどで

お客さんからOKが頂けるワケも無く、実際に本刷りを行う自分の印刷機で、

全ての印刷物を、本機校正して、色調見本を作っていました。

 

化粧品系ですから、例えば、女性モデルさんの写真とかが、数人並んで

いる様なパンフ等が主流です。モデルさんが、Aさん~Gさんまで並んで

いたとして、例えば、初校でAさんとCさんとDさんがOKに成って、他の

4名に関しては、色修正が入ったとしましょう。

 

製版で4名の色直しをして、自分の印刷機で、再校正(2校)と成るワケです。

この再校正の時、A、C、Dさんに関しては既にOKを頂いている状態ですから、

初校と再校で、この三名の色調が変わってしまっては話に成りませんわね。

・・・簡単そうに書いてますが、これ、ケッコウ難しいんですよ。こんなシビアな

校正刷りが、最大で4校くらいまで入ったりしてました。

 

正直なところ、初校から4校までを、連続して毎日やって行くって言う場合は、

それほど苦労せずに色調を再現する事が出来るんですが、例えば2校から

3校に至るまでに、2~3週間位の間が空いてしまう、なんて事もケッコウ有り

ましてね。これが正直、キツイんですよ~。

 

毎日のように、その校正刷りをやってれば、印刷機のコンディションも、さほど

大きく変化はしないんですが、2~3週間の間、ってのは季節的変動が入って

来たりしてしまうと、シビアな色調が、なかなか安定してくれなかったりします。

まぁ、こんなシビアな色校正は、さておき、普通の場合はインクジェット出力や、

トナープリンター系の色調見本が多いのだろうと思います。

 

先日ある工場で、印刷の色合わせ作業を見ていたら、なんか知らんけど、やたら、

藍をメッチャ濃く盛るんですよ。ベタパッチを見たら、1.70を越えていそうな感じ。

この藍は盛り過ぎでしょう。と言うと「濃度がいくつとか言われても、よ~分からん

のやけど、ウチの色調見本に合わせる為には、これくらい盛らんとアカンのや~」

 

いやいや、今時、濃度の数値とかが分からんようでは、オペレータやっちゃアカン

でしょう。まぁイイから、チョッと色調見本、見せてよ~。・・・トナープリンター系の

色調見本でした。パンフの中の、グレーの商品が、真っ青なグレーで表現されて

いたので、オペレータは、その、超青っぽいグレーの再現を目指していたようです。

 

このグレーの商品さぁ、いくら藍を盛っても、こんな青いグレーには成らんよ~。

「でも、この色調見本を客先に見せて、OKをもらってるから、こっちは藍を盛って

刷らなきゃ仕方ないからなぁ」・・・あのさぁ、藍をこんなメチャメチャ盛ってるのに、

そのグレーの商品、ちっとも青く成ってないじゃん。色調見本と全然違ってるのに

これで刷り出すの?「最大限の努力はしたけど、出んものは仕方ないわな。」

 

いやいやいやいや、何で勝手な判断で仕事を進めてしまうの?工場長さんとか、

担当の営業さんとかに相談する気は無いの?「こっちはやるだけの事は、やった」

・・・そうじゃなくてさ、報連相だろうが。 最大限に藍を盛っても、これが限界で、

とても色調見本のグレーには成らないと現場責任者に報告し、そこから営業とか

客先に連絡して、どう対応するべきかを相談せにゃアカンやろ。

 

社会人1年生でもあるまいに、何でベテランの、あんたに、そんな初歩的な事が

出来んのか?ベテランのあんたが、そう言う情報を発信すれば、こりゃウチの

色調見本の出し方を、徹底的に検討せにゃアカンなぁ。と言う事にも成るだろう。

愚痴ばかり言ってないで、前向きな気持ちで、常に改善を進めて行かないと、

こんな超厳しい時代は、会社自体、生き残って行く事が出来んよ。他の皆んなや、

若手達が、楽に仕事が出来るように頑張るのが、ベテランの本当の仕事やろ。

版胴、ブラン胴、圧胴の配列が、「くの字」なのか、「逆くの字」なのかで、印刷機の

様々な部分が、ケッコウ変わって来ます。 まぁ、胴の配列が違ってるんですから、

その周りの構造なんかも、当然のように変わって来ますわね。

 

そんな中でも、私が一番思うのは、スイングの違いなんですよ。スイングってのは、

・・・紙がフィーダーから出て来て印刷機に入ろうとする時、紙は、前アテに当たって、

一旦停止します。例えば、1万回転で刷っていたとしたら、フィーダーも、1万回転で

用紙を印刷機に送り込むワケですが、フィーダーボード上を、1万回転のスピードで

流れて来た紙は、前アテに当たり、横針で引かれます。この瞬間に、紙は完全に、

一旦停止して、流れるスピードは完璧に、ゼロに成るんですわ。

 

んでも、印刷機は1万回転で回ってるワケですから、一旦停止してしまった用紙を、

もう一度、1万回転にまで、スピードアップしてやらなきゃ成らないワケでして~。

この速度ゼロから、1万回転にまで、一気に加速させてるのが、スイングってヤツ

の役目なのです。スイング=日本語では「昇速機」 って呼ばれてますよね。

 

「逆くの字配列」の場合、スイングは、フィーダーボードよりも下側に有り、非常に

シンプルな動きで、印刷機に渡して行きます。これを通称、下スイングと呼びます。

これに対して、「くの字配列」の場合、スイングはフィーダーボードより上に有って、

かなり複雑な動きで、印刷機に渡す事と成ります。

 

ここまで読むと、ありゃ、逆くの字の、下スイングって抜群にイイじゃん!ってな

話に成るのですが、残念ながら、その次が問題なんです。くの字の上スイングは、

このまま、第1胴目の圧胴に紙を渡す事と成るのですが、逆くの字・下スイングは

圧胴の前に、「第一中間胴」ってのを設けて、それに紙を渡すんですわ。

 

つまり、逆くの字・下スイングだと、胴が一つ、余分に必要に成ってしまうんですよ。

この第一中間胴ってのが、ケッコウなクセモノでね。・・・他の圧胴や、他の中間胴が

「倍胴型式」なのに対して、この第一中間胴は、倍胴ではなく「単胴」なんですよ。

 

倍胴ってヤツは、一つの胴にA面とB面が有って、紙をつかむ爪も、2セット有るん

です。つまりね、1万枚、印刷したら倍胴の爪が、紙をつかむ仕事は、A面の爪と、

B面の爪、それぞれが、半分の5千回で済むって事なんです。これに対して単胴の

第一中間胴は、1万枚刷るんなら1万回、紙をつかむ仕事をせにゃ成らんワケです。

 

要するに、この第一中間胴の爪の消耗は、他の胴の倍って事なんですよ。そして、

汚れ方も倍って事に成りますし、油切れの可能性も、倍って事に成るってワケです。

 

最近、お邪魔させて頂いた印刷現場さん2社では、この第一中間胴のメンテが全く

されていませんでした。油性機でしたから、当然、パウダーを使いますよね。先刷り

の面で吹かれたパウダーが、仕上げ面を刷る時に、第一中間胴の爪の周辺にね、

コッテリと残ってしまって、そこに紙粉も混ざってしまって、もう真っ白な状態。

 

こりゃ、ダブリが出てるだろうなぁと、印刷物を見たら、案の定、シッカリ、ダブって

ました。そして、それより問題なのが、この第一中間胴、延々と放置しておくとね、

ケッコウな油汚れが付着するんですよ。ローラー洗浄時の、洗い油の飛沫とか、

グリスが飛び散ったヤツとかで、真っ黒に汚れてしまいます。

 

印刷用紙が入って来て、一番最初に巻き付く胴ですから、その胴が汚れていたら、

こりゃヒッキー(ゴミ乗り)の原因に成りますわね。お邪魔した2社さんでも「これって

結構ゴミが乗るでしょう?」と聞くと、「エエ、乗ります!」って、自慢げに言われてし

まいました(笑)。その第一中間胴を指先で触ってみると、指先がゴミがイッパイ。

チョッと触っただけで、こんなにゴミが付くようでは、印刷物にも当然、付くよね~。

 

普通、1胴目と2胴目の間の中間胴なんて、あまり掃除しないですよね。でもね、

第一中間胴は、単胴なんですよ。倍胴と比べたら、その倍、汚れてしまう胴です。

毎日とは言いませんが、せめて1週間に1回とかは、キレイに掃除して爪周りも

清掃してやって下さい。それと、給油がメッチャ大切なんです。

 

単胴の第一中間胴は、爪の動きも、カムフロアー(カムコロ)の稼動状態も他の

倍胴と比べたら、倍の量の仕事をしています。つまり、消耗度合いも倍なんです。

つ~事は、給油も清掃もメンテも、他の倍胴の倍の頻度でしてやらなきゃアカン

って事ですよね。ここの手を抜くと簡単に焼け付きを起こしますから要注意です。

 

皆さん明日から、お盆休みかと思いますが、休み前か、休み後でもイイですから、

この第一中間胴をキレイに掃除して、爪のメンテもして、給油もしてやって下さい。

さてさて、前回の続きです。自分の印刷機が、「くの字配列」か「逆くの字配列」か、

理解出来てます?・・・簡単に言うと、ブランを手で洗浄しようとする時、ブラン胴が

手前に出てるのが「くの字配列」、奥の方に引っ込んでいるのが「逆くの字配列」

って言う区別に成ります。ブラン交換をする時などは、手前に出てる「くの字配列」

の方が、やりやすいですよね。「逆くの字」は、ブラン周辺が狭くて辛いです。

 

ブラン交換時には、狭くて作業性が悪い「逆くの字」なんですが、一番の利点は、

咬替えのタイミングなんですよ。・・・枚葉機での印刷ってのは、圧胴や中間胴の

爪が、印刷用紙を受け渡ししながら進行して行きますよね。圧胴の爪が用紙を

つかんでいる状態で、ブランと用紙に圧力を掛けて印刷を行います。

 

「くの字配列」の場合ですとね、ブランと用紙に圧力が掛かって、印刷をしている

真っ最中に、圧胴爪⇒ 中間胴爪へと、咬替えが発生してしまうんです。それに

対して、「逆くの字配列」の場合は、圧胴爪が用紙をつかんで、ブランとの間で、

咬尻までの印刷が、全て終了してから、中間胴爪への咬替えと成るんですわ。

 

どっちがイイか?・・・非常に簡単な話です。印刷が全て終了してから咬替えを

行う方が圧倒的に良いですよね。印刷してる真っ最中に、他の爪に受け渡しを

するなんてのは、こりゃ、一つもイイ事が無いんじゃないのか?って思います。

 

私の場合、先に使ったのが「逆くの字」でした。その後「くの字」の印刷機を使う

事と成ったのですが、出来るだけ硬めのインキを使いたい私にとっては、この

「くの字」は最悪でした。印刷中に咬替えをしますから、例えば、刷り出し等で、

少し汚れが出てたりすると、中間胴の爪が、インキのタックに負けてしまって、

用紙を持って来る事が出来ず、ブランに紙が貼り付いてしまうんです。

 

ブランに紙が貼り付いて、例えば紙が折れ曲がったりすると、ブランが一発で

凹んでしまいますわね。「くの字配列」しか知らなければ、軟らかいインキを使う

など、それなりの対応が出来たのですが、「逆くの字」で慣れてしまってたので、

「何じゃこりゃ、こんな事くらいでブランに紙が貼り付くのかよぉ~(怒)。こんな

印刷機、使っとれんぞッ!」などと、毎日、苛立ってましたわ~(笑)。

 

少し話は変わりますが、連続給水のシステムって、未だに、各印刷機メーカー、

全て独自の物を使ってますよね。小森さんのコモリマチック。 三菱さんだと、

ダイヤマチック。リョービさんも独自のダンプニングシステムで、ハイデルさんは、

あの有名な、アルカラーって言うシステムを採用してますよね。

 

何で、各メーカー、バラバラなのか?・・・これはあくまでも、私の個人的な考え

ですが、要するに全てのシステムが、どれもこれも一長一短で、決定的に良い!

と言える給水システムが無い。って事の証しなのだと思います。各メーカーさん、

そのシステムに特許を取っておられるかと思うんですが、本当に良いシステムで

あるならば、特許料を支払ってでも採用しますよね。でも、そうではない。

 

それに対して、「逆くの字配列」ってのは、ほとんどの国産機に採用されています。

以前は「くの字」の方が良い!と豪語してたメーカーさんも、今は「逆くの字」です。

この事を考えただけでも「逆くの字配列」の優位性が伺えるのではないでしょうか。

 

あれ?逆くの字配列の問題点を書くはずだったのに、こりゃチョッと長く成り過ぎて

アカンですねぇ。んでは、次回、逆くの字の問題点と、付き合い方の話を書きます。