湿し水を使うオフセット印刷の中で最も印刷障害が起きやすいのは、そのメンテ、
調整、清掃等を含め、やっぱり、湿し水と関係する部分なんですよ。油性ならば、
乾燥不良、裏移り、油性もUVも含めれば、密着不良、地汚れ、過剰ドットゲイン
による色調不良等々、様々なトラブルの原因が湿し水と密接に関係しています。
・・・だからと言って、汚れやすいからと言う問題だけで、エッチ液濃度を上げたり、
ダバダバに水を上げたりって言うのは、こりゃ基本に反する、一番やっちゃアカン
事なのだと認識して下さい。いつも言うように、インキ量が多過ぎるって言うのも
大きな問題なんですよ。最小限のインキと最小限の水で刷るってのが基本です。
ここまでの基本的な技術力が有ると言う事を前提として考えた場合、湿し水の
ローラー構成の中で、どのローラーが、より重要なのかを、チョッと考えてみて
下さい。そりゃまぁ、どのローラーも大切な事に変わりはないのですが・・・。
湿しシステムの構造って言うのは、各印刷機メーカーで違いが有りますが、
ローラーを構成しているのは、ゴムまたは樹脂ローラーと、クロムローラーです。
ゴムローラーが水舟に浸かっているタイプと、クロムローラーが水舟に浸かって
いるタイプで構造的には大きく分かれるのですが、ゴムローラーの方は印刷後
とか、印刷開始前などに、毎日、必ず手入れをされている事と思います。
まぁねぇ、手入れと言っても、多くの輪転屋さんのように、真っ黒なレンタルの
ウエスに洗い油付けて洗浄する!なんて言うのでは全く話に成りませんわね。
湿しのゴムローラーってのは、水を運ぶ為のローラーですから、そんな大切な
ゴムローラーを、水と反発する油で洗浄してはアカンですよね。ここはやはり、
湿し水ゴムローラー専用の洗浄剤を、白いウエスや、洗浄パット等に着けて、
キレイに洗浄してやるってのが、当たり前の、やり方だと考えて下さい。
そしてね、実は、とても重要なのが、クロムローラーの手入れなんですわ~。
クロムローラーってのは、もともと、水と仲良し(親水性)のローラーですから、
常に水舟に浸かってる方は、あまり汚れも付かないですよね。それに対して
ゴムローラーの間にあるクロムローラー、つまり移しローラーの役目をしてる
クロムローラーの方の手入れってのが、スゴく大切なんですよ。
この「移し」の部分のクロムローラーは、多くの場合、調量ローラーとの間で、
水膜を薄く絞られる部分ですから、非常に薄い水膜を、常に良好に運んで
行かなければ成らないワケです。この部分のクロムローラーが汚れていたり、
親水性が損なわれていると、部分的に水上げが悪くなり、汚れが出ます。
調量の、ゴムローラーの手入れは、当然のように大切なのですが、それと
同じくらいに大切なのが、この部分の、水移しクロムローラーの手入れなん
ですわ。狭いスペースに配置されている場合が多いので、手入れするのも
チョッと大変かと思うんですが、親水保護処理用の洗浄剤で毎日キレイに
してやると、それだけで湿し水の安定性がググッと良く成り、印刷がメッチャ
安定して凄く楽に成りますから、やっていない方は、是非やってみて下さい。