印刷技術 モノに頼らない | 1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

以前にも紹介したと思いますが、ある印刷工場で、巨大扇風機が置いて

あるのを見ました。印刷が始まると、各ユニット間に、その巨大扇風機を

置いて(4色機ですから4台の扇風機ですわね)インキローラーへ目がけ、

強風を吹き付けながら印刷して行くんですわ~。

 

何してんですか?「いや、こうやって強風で、余分な水を飛ばしてやらんと、

まともな印刷が出来んのですわ」・・・いやいやいや、そんな事をしてるのは、

私が知る限り、日本中でも、ここだけですよ。他では、そんな事をしなくても

普通に、まともな印刷が出来ています。

 

こんな話を聞けば、普通のオペレータさんなら「扇風機!アホやな、そいつ」

って思うのが常識ですよね。「水を絞る」って言う、一番最初の基本が出来て

ないから、扇風機なんて物で、ごまかして印刷しているってわけです。

多過ぎる水を扇風機で飛ばす等と言う、ごまかしの方法を考えるよりも、

なぜ水が多く成ってしまうのか?多い水を少なくする為には、どうするのか?

って言う、基本的な改善方法を考えるのが常識ですよね。

 

その根本の原因を改善す為に、自分の技術の何が足らないのかを考え、

試行錯誤し改善を試みるからこそ、技術力が向上して行きます。それを

扇風機で余分な水を飛ばす等と言う、基本から外れた手法に頼るようでは、

技術の向上なんて、望めるわけも有りませんよね。

 

まぁ、こんなのは、あまりにもレベルが低過ぎる話なんですが、実は先日も、

「版面の乾燥防止の為に、湿し水の中に、ガムを入れている」って話を聞き

ました。・・・湿し水にガム! そりゃ40年も前の、私が若かった頃の手法

だぜ~。今時の、連続給水、超高速印刷の世界では湿し水にガムを入れ

たって、何の役にも立たんだろうが~。

 

何で、版面の乾燥防止なんて事を考えたの?「いやそれは印刷停止後の

再スタートの時、地汚れ等で困るから」・・・だからさ、何でそんなに、モノに

頼ろうとするの。再スタートで地汚れが頻繁に出るとしたら、インキも水も、

多過ぎるって証拠じゃん。もっと水を絞るっていう基本を極めなよ~。そう

したら、ガムなんぞ入れんでも、地汚れなんて出ないんだからさぁ。

 

「ガムを入れたらヒッキーが激しく成ってしまったので、最近はガムを止め

硝酸アンモニウムを入れてます」・・・あんた、歳、ナンボ?オレより歳上?

硝酸アンモなんて、40年以上昔のエッチ液に入れてたヤツでしょうが~。

そんな物、今時の湿し水に入れてイイ訳が無いじゃんか~。

 

「水を絞る」って言う、一番の基本に立ち返れば、ガムだとか、硝酸アンモ

だとか、そんなモノに頼らなくても、普通に印刷が出来るんだよ。「いやでも、

水を絞ったら汚れるし~」 だからさ、インキが多過ぎるんだって、インキを

もっと少なくしてみ、必ず水も絞れるから。「インキ絞ると淡く成ってしまう」

 

だからさ、その究極のバランスを極めるのが、技術者としての本当の仕事

なんじゃないのかい。それを、ガムや硝酸アンモで、ごまかしたって、君の

技術力は何も向上しないだろ。まず、基本を極めてこその技術だろうがッ!

 

基本を極め技術力がアップして行くと、余分な物は、どんどん不要に成って

行きます。例えば、プレートクリーナー。地汚れが頻繁に出るからとか言って、

しょっちゅう、プレートクリーナーで版面をゴシゴシやってた人が基本を極め、

水とインキの究極のバランスが出来るように成るとね、プレートクリーナー

なんてヤツは、全く不要に成るんですよ~。

 

そう言う意味で言えば、パウダーレスインキなんてのも、全く無意味と言うか、

技術向上の為には、完全に不必要な物だと思っています。だってさ、普通の、

プロセスカラーインキの方が、性能がイイに決まってるじゃん。基本技術を、

シッカリ極めれば、パウダーレスインキよりも、圧倒的に、綺麗に刷れるし、

乾燥性とかだって、遜色無いはずだよ。

 

基本を極めてないから、あれこれ、余分な物が必要に成ってしまい、自分の

技術を磨く事が出来なく成ってしまう。「水を極限まで絞る」・・・超シンプルで

単純な事だけど、これを実現するには、機械メンテやローラーメンテ等々、

これまた、超基本的な部分が重要に成って来る。

 

何もかもが、基本からのスタートなんですわ~。印刷技術の勉強も、まずは、

一番基本的な「水を極限まで絞る」って事を徹底的にマスターせんとアカンの

ですわ。その基本が出来てないのに印刷機を使ってしまうから、あれこれと、

ゴマカシのテクニックばかりを覚えてしまう。それが一番アカン事なんですよ。