印刷技術 バランス | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

今回、体調を崩してしまった最初の症状は、胃腸系の不具合でした。

まぁ胃腸薬を飲んでおけば治るだろうと、軽く考えていたのですが、

異常なくらい息切れがして、めまいや立ち眩みで、動けませんでした。

 

熱は微熱だったのですが、そんな時に健康診断が有ったんですよ。

いつもは絶対にバリウム検査をしないんですが胃の調子が悪い事も

有ったので10年ぶり以上で、バリウムを飲んだんですわ~。

 

胃腸の調子が悪い時のバリウムと、その後の下剤で、体力を奪われ、

ヘロヘロ状態で食事も出来ず、8kg も痩せてしまいました。・・・実は、

その時の血液検査で、鉄分不足による貧血が検出されたのです。

エエッ貧血ッ!貧血なんて、61年の人生で、初めての事だぞぉ・・・。

 

今現在、腸の検査が済んでいませんが、貧血によって、身体の中へ

充分な養分を供給する事が出来なく成り、各部が炎症を起こしてしまい、

様々な不具合を発生させてしまったようです。とても辛い1ヵ月間でした。

(男性で貧血だと、まず、癌など、内臓からの出血を疑われます)

 

でも、こうして考えてみると、人間の身体も、印刷機も、同じですよね。

「インキを出し過ぎている」と言う不具合が最初に有る。その状態でも

汚れないように、湿し水も多目にしてしまう。・・・一番最初の始まりは、

「インキを出し過ぎている」と言う、たったそれだけなんですよ。 でも、

それに伴う、湿し水の出し過ぎは多くの災いをもたらします。

 

「インキが多過ぎる」⇒「汚れが止まらなく成る」⇒「湿し水を多くする」

乾燥が悪く裏移りする。網点が太ってしまって色調再現が出来ない。

インキが乳化してしまって、まともな印刷が出来ない等々、様々な

トラブルが発生してしまいます。

 

そんなトラブルが続いても、何とか印刷を続けてしまっていると、大幅な

湿し水の劣化が始まります。「多過ぎるインキ」の為に、湿し水も多目と

成り、乳化したインキが湿し水中に浮遊したり、溶け込んだりするんです。

こう成ると、もう、まともな湿し水ではありませんよね。

 

劣化してしまった湿し水では、多目、多目にしてやらないと、まともに刷る

ことが出来ず、またまた、湿し水が多く成ってしまう。湿し水が多く成れば、

インキの濃度が下がるので、もっともっとインキを盛る事に成ってしまう。

完全に、悪循環のスパイラルですわね~。

 

先日、エッチ液濃度 4.8% で刷ってる人を見ました。何でこんな高濃度で

エッチ液を入れてるの?「いや、汚れが出るから、汚れないようにエッチ液

を増やして行ったら、こう成った。」   ・・・それは考え方が違うよね。

 

「インキを出し過ぎない」って言う基本が出来てないと、全てのバランスが

崩れてしまって、どうにも成らなくなってしまう事が有ります。ヘタをすると、

エッチ液を異常に増やす等、飛んでも無く大間違いな対応を取ってしまう

事にも成りかねないんですわ。

 

インキや湿し水だけに限らず、例えば機械メンテでも、ほんの小さな「基本」

が崩れてしまうと、全ての制御が、間違った方向へと走り出してしまう事が

多々、有ります。技術者って言うのは、進化して行くことも大切なんですが、

いつでも簡単にリセットして、原点(基本)に戻る事が出来るって言う能力も、

とても大切だと思っています。