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ある在宅ワーカーのつぶやき

みそっかす反訳者が、用字用例辞典(日本速記協会)の表記ルールにおける個人的な解釈についての記事を書いています。2020年4月半ばから新訂対応です。たまにテープ起こしについてのそのほかの話も。文中で引用している辞書はこちら→https://dictionary.goo.ne.jp/jn/

超季節外れで恐縮ですが、昨日一昨日に引き続き、植物の名称の表記についてです。

ただ、こちらはこのたびの改訂でも変更なしのものとなります。

 

以前触れましたが、動植物名は基本片仮名、しかし漢字1文字で書けるものは漢字表記というルールのとおり、「桜」は植物を直接指すときで、「サクラ」は、「芝居などで、ただで見物するかわりに、頼まれて役者に声をかける者。転じて、露店商などの仲間で、客のふりをし、品物を褒めたり買ったりして客に買い気を起こさせる者」(デジタル大辞泉より)であります。

また、今回注例として「オオシマザクラ」が追加されていますが、前のルールにおいても漢字表記するものでも種名なんかは片仮名表記すべきものとされており、例えば「松」は漢字ですが「カラマツ」は片仮名表記でしたから、私は「桜」も同様に「ヒガンザクラ」などは片仮名表記していました。のでそれが今回明確に表記の例外として明記されただけであると考えています。(違うかもしれませんが……)

 

あと、一昨日ちょっと触れました「だいだい色」「ばら色」の関係ですが、「桜」については、「桜」の項の用例で示されておりますが、表記は「桜色」です。また、「小豆」も同様に用例で示されていますが「小豆色」ですので、「動植物名で、用字用例辞典のルール上片仮名表記のもので平仮名表記しても違和感のないもののうち、直接動植物名でないものは平仮名表記する」みたいな少し限定的な裏ルールがあるのかもしれません。全て調べたわけではないのではっきりとは言えませんが。

 

本当にこういうルールをびしっと示してほしいです……。

昨日の記事の関連です。

動植物名を直接指すものは片仮名、そうでないものは平仮名というカテゴリーのものの一つですが、そういう考えに基づくと迷うなと思うのが、これは平仮名表記するのは「かやぶき屋根」のみという点です。

 

「カヤ」という植物でふいた屋根なので「かやぶき屋根」の「かや」も動植物名で片仮名表記かと思いきや、速記協会の新旧対照表には、「かやぶき屋根」の項に「動植物名は「カヤ」」とありますので、「かやぶき屋根」のときの「かや」は植物名ではないというカウントのようです。

辞書を調べると、「茅で屋根を葺くこと。また、その屋根」(デジタル大辞泉より)とありますので、植物のカヤで屋根をふいたものと見ておらず、屋根そのものの名称として扱っているのかもしれません。

 

ということで、ちょっと微妙な感じがするので、昨日の記事とは分けてみました。新訂で日々惑う毎日です。

新訂にて表記を分けるようになったものです。

表題を見ただけではどう分けるのか全く分からないと思いますが、うちの実家にも植えられている果物の場合は片仮名表記、色を示す場合は平仮名表記です。

 

似たようなものをこのブログで取り上げたことがあるのをうっすら覚えている方もおられるかもしれません。そう、「ねずみ色」ですね。あちらはもともと使い分けていたものの一部の表記が変更になったものでしたが、こちらは単純に片仮名表記されていたものが「だいだい色」のみ変わったという違いがありますが、何となく共通点が見えますよね。生き物を直接指す場合は片仮名表記で、そうでないものは平仮名表記という。

 

それで、もしかしてと思って調べてみたところ、速記協会の新旧対照表には「いばらの道(比喩的な意味のとき)」「さばを読む」「しらみ潰し」も、このたびの改訂で片仮名表記が平仮名表記に変更となった旨記載がありました。また、新旧対照表には載っていませんが、「ばら色」も表記変更になっていました。

全部ではないでしょうが、動植物名を用いた慣用句等、生き物を直接指さない意味のものは、特に気をつけておいたほうがよい気がします。

個人的な話で恐縮ですが、私は理系なんですが物理が全く駄目で、高校の物理で先生は同じ日本語を話しているはずなのに外国語を聞いているように全く理解できず、初めての中間テストで100点満点中24点を取ってしまいまして、物理を捨てました。

 

そんな物理が壊滅的な私ですが、現在受けている仕事は、自治体系の仕事のほかには、物理系の技術的な話が非常に多いです。研究者の先生方が技術的な問題について話し合うもので、おおむね、素人には全く理解できない、聞いたこともないような言葉が飛び交う会議です。しかも、会議が白熱してくると、皆さん早口になって聞き取りづらくなる上に、資料に載っていない、しかしその世界では当然の知識である専門用語がばんばん出てきます。

 

この場合に困るのが、これは前も多分このブログで触れたことがあると思うんですが、「人の脳は聞こえた音声を聞き慣れた言葉に勝手に変換してしまう」ということです。トリックアートが実際そこにあるものと違って見えるのと同じ現象です。

例えば最近では、どう聞いても「テルサキの式」としか聞こえない言葉が出てきました。ですが、表記を確認するために検索しても、「テルサキの式」というものはどうにもヒットしません。いろいろ工夫して検索したところ、正解は「テルツァギー(Terzaghi)の式」でありました。
 

では具体的に、どうやってそういう表記の見当もつかない、むしろ聞き間違えているようなものを調べるかというと、検索キーワードの追加と完全一致検索の組合せです。

 

例えば上記で挙げた「テルツァギーの式」では、前後の文脈から「応力」「剪断」「支持力」というキーワードを抽出して、さらに、「テルサキ」の部分は怪しいと判断し、完全一致検索といって、「の式」の部分だけ必ず一致したものが含まれるように「""」で囲んで検索しました。検索に使ったキーワードそのまま転記すると、「応力 剪断 支持力 "の式"」です。

こうやって検索すると、私のいつも使っている検索サイトでは上から2番目に「テルツァギの式」という言葉が含まれたページがヒットしました。さらに、この内容を確かめるために「テルツァギの式」で検索すると「テルツァギーの式」という言葉が多くヒットしましたし、改めて該当部分を聞き直すと「テルツァギーの式」と聞こえたため、これは「テルツァギーの式」と表記すればよいだろうということになるわけです。

 

「そこまでして調べなくても、表記不明ということで片仮名表記しておけばいいじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、こういう専門用語をきちんと表記することで、お客様からのよい評価がいただけ、ひいては、会社からの評価も上がって、回してもらえる仕事も増えるし作業単価も上がります。(会社によるかもしれませんが)

 

また、これも会社によるかもしれませんが、そういうよい評価をいただいた会議については、同じシリーズのものが再度回ってくることが結構あるように思います。私はそういう、依頼時に「いつものやつです」と言われるような、半ば担当者と化しているような会議が幾つかありますが、そういうものだと、内容が完全に理解できないにしてもおおまかな流れや用語は大体分かるので、全く未知のものをやるのに比べて非常に楽です。当然、調べ物が減るので、作業がさくさく進んで早く納品できます。

 

正確で早いならまた評価は上がりますよね? ちょっと手間をかけて調べることで、このようなよい循環が生まれます。技術的なものに限らず、やってみる価値はあると私は考えています。

一つ前の記事と異なり、明らかに表記がシンプルになった言葉です。

前のルールでは、基本的に「駄」は漢字表記で、その表記の例外として「だだ」「だめ」が示されておりまして、「だめもと」「だだっ子」などはついつい漢字に変換してしまうため非常に困っていたんですが、このたびの改訂にて、その例外がなくなり――というか「駄」単独の項目がなくなって、「駄目」と、「子供などが甘えてわがままを言うこと」(デジタル大辞泉より)の意の「駄々」は漢字表記に変更となりました。

なお、上記で触れている「だめもと」は、「もと」も今回表記が漢字に変わったため、「駄目元」となったものと思われます。

 

ただ、じゃあこれで「駄」は全て漢字表記になったのかと思いきや、旧ルールで表記の例外で示されていなかった「じだんだ」「げた」「いだてん」なんかは引き続き平仮名表記ですので、勘違い注意です。

また、旧ルールから表記は変わっていないのですが、「駄じゃれ」もついつい間違ってしまいそうな気がするので、これも注意が必要でしょう。