専門用語の調べ方 | ある在宅ワーカーのつぶやき

ある在宅ワーカーのつぶやき

みそっかす反訳者が、用字用例辞典(日本速記協会)の表記ルールにおける個人的な解釈についての記事を書いています。2020年4月半ばから新訂対応です。たまにテープ起こしについてのそのほかの話も。文中で引用している辞書はこちら→https://dictionary.goo.ne.jp/jn/

個人的な話で恐縮ですが、私は理系なんですが物理が全く駄目で、高校の物理で先生は同じ日本語を話しているはずなのに外国語を聞いているように全く理解できず、初めての中間テストで100点満点中24点を取ってしまいまして、物理を捨てました。

 

そんな物理が壊滅的な私ですが、現在受けている仕事は、自治体系の仕事のほかには、物理系の技術的な話が非常に多いです。研究者の先生方が技術的な問題について話し合うもので、おおむね、素人には全く理解できない、聞いたこともないような言葉が飛び交う会議です。しかも、会議が白熱してくると、皆さん早口になって聞き取りづらくなる上に、資料に載っていない、しかしその世界では当然の知識である専門用語がばんばん出てきます。

 

この場合に困るのが、これは前も多分このブログで触れたことがあると思うんですが、「人の脳は聞こえた音声を聞き慣れた言葉に勝手に変換してしまう」ということです。トリックアートが実際そこにあるものと違って見えるのと同じ現象です。

例えば最近では、どう聞いても「テルサキの式」としか聞こえない言葉が出てきました。ですが、表記を確認するために検索しても、「テルサキの式」というものはどうにもヒットしません。いろいろ工夫して検索したところ、正解は「テルツァギー(Terzaghi)の式」でありました。
 

では具体的に、どうやってそういう表記の見当もつかない、むしろ聞き間違えているようなものを調べるかというと、検索キーワードの追加と完全一致検索の組合せです。

 

例えば上記で挙げた「テルツァギーの式」では、前後の文脈から「応力」「剪断」「支持力」というキーワードを抽出して、さらに、「テルサキ」の部分は怪しいと判断し、完全一致検索といって、「の式」の部分だけ必ず一致したものが含まれるように「""」で囲んで検索しました。検索に使ったキーワードそのまま転記すると、「応力 剪断 支持力 "の式"」です。

こうやって検索すると、私のいつも使っている検索サイトでは上から2番目に「テルツァギの式」という言葉が含まれたページがヒットしました。さらに、この内容を確かめるために「テルツァギの式」で検索すると「テルツァギーの式」という言葉が多くヒットしましたし、改めて該当部分を聞き直すと「テルツァギーの式」と聞こえたため、これは「テルツァギーの式」と表記すればよいだろうということになるわけです。

 

「そこまでして調べなくても、表記不明ということで片仮名表記しておけばいいじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、こういう専門用語をきちんと表記することで、お客様からのよい評価がいただけ、ひいては、会社からの評価も上がって、回してもらえる仕事も増えるし作業単価も上がります。(会社によるかもしれませんが)

 

また、これも会社によるかもしれませんが、そういうよい評価をいただいた会議については、同じシリーズのものが再度回ってくることが結構あるように思います。私はそういう、依頼時に「いつものやつです」と言われるような、半ば担当者と化しているような会議が幾つかありますが、そういうものだと、内容が完全に理解できないにしてもおおまかな流れや用語は大体分かるので、全く未知のものをやるのに比べて非常に楽です。当然、調べ物が減るので、作業がさくさく進んで早く納品できます。

 

正確で早いならまた評価は上がりますよね? ちょっと手間をかけて調べることで、このようなよい循環が生まれます。技術的なものに限らず、やってみる価値はあると私は考えています。