陸上自衛隊におけるレンジャー(Ranger)は、陸上自衛官の中でレンジャー課程を修了し、レンジャー徽章を有する者。
徽章の意匠は、「勝利」の象徴・月桂冠に囲まれた、「堅固な意思」の象徴・ダイヤモンド。
陸上自衛隊における正式な課程教育としては、陸上自衛隊富士学校の「幹部レンジャー課程」及び空挺教育隊の「幹部/陸曹空挺レンジャー課程」がある。
これらを修了すると、付加特技「r(レンジャー)」及び「レンジャーき章」が付与される。
これらの教育課程を一定基準以上の成績で修了し、相当とする成績を収めた者は、「教官適任証」が与えられる。
なお、幹部レンジャー課程卒業者及び教官「適任証保有者」は徽章が金色となる。
ドキュメンタリー映画「RANGER」は、幹部レンジャー課程を描いている。
27人のレンジャー訓練学生と11人の指導部の真剣勝負!
【8月24日】まだまだ残暑というこの日。
全国の駐屯地から27名の隊員が幹部レンジャー訓練学生として陸上自衛隊富士学校に集まった。
その中の一人、奥田2尉は、所属小隊の陸曹がレンジャー出身ということもあり、訓練への挑戦を決意したと言う。
しかし初日から預託すべき教室のカギを預けず、教官の怒りを買い、学生全員に反省の腕立て伏せをさせてしまうことに。
この教官こそが冷静で厳格な主任教官・長尾1尉。装備品、居室等の点検でも、僅かな手入れの不行き届き、乱れも許さない。
91日に及ぶ訓練が開始された。
レンジャーという用語そのものは、陸上自衛隊の資格(特技)の一種であり、特殊部隊員ないし特殊部隊を意味しない。
レンジャー有資格者のみで構成されている部隊として、「富士学校普通科部レンジャー班」と、西部方面普通科連隊の各中隊に編成されている「レンジャー小隊」の二つが存在する。
各師団・旅団等でも部隊の精強化策の一環として集合教育「部隊レンジャー」を実施しており、前述の教官適任証を持つ幹部または上曹が主任教官となって、幹部の一部や陸曹・陸士を対象として教育している。
これらは、正式な課程教育ではないが修了者には付加特技「r」が付与される。
平成15年頃までは、主に防大出身の幹部も「部隊レンジャー」を受講していたが、現在幹部のレンジャー教育は富士学校の幹部レンジャーに一本化されている。
これらの「部隊レンジャー」の教育内容や卒業生の練度の不斉一さなどが指摘されているが、その地方の特性に合った遊撃活動のエキスパートを育てるという意味では適しているとも言える。第13普通科連隊の「山岳レンジャー」などはその好例である。
訓練の進行区分としては、「幹部レンジャー課程」及び「部隊レンジャー」が9コ想定、「空挺レンジャー課程」が6コ想定(空挺隊員であるため、体力向上運動や一部の基礎訓練が免除)で構成される。
いずれの訓練も筆舌に尽くし難いほど過酷なことで知られている。
訓練期間中、学生は、教官からのあらゆる指示には絶対服従であり、一切反論せず「レンジャー!」とのみ応える。
陸上自衛官約14万人のうち、約8%の隊員がレンジャー資格を持つ。なお、レンジャー隊員になっても、手当が増額するなど、直接的な待遇面での優遇は無い。
例外として、西普連レンジャー小隊に所属する隊員に関しては「特殊作戦隊員手当」が支給されている。
陸上自衛隊の特殊部隊である特殊作戦群では、空挺基本降下課程、もしくは空挺基本降下課程と特殊作戦課程両方の履修が必須とされているが、レンジャー資格については特に書かれていない。