Animal Collective の最新作、 "Centipede HZ"

Centipede Hz/Domino

¥1,325
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このアルバムで聴くことができるのは、実に猥雑なポップミュージック。

実に多種多様な音のアイデアがあり、それらを生き生きと重ねている。
音楽の構成のベースにはリフレインがありながらも、決して定型にはまらず、退屈に繰り返さずアメーバのように姿を変えて行く。
ブラウン運動(懐かし!)のように飛び跳ねている不定形なポップミュージック。

猥雑性。

猥雑性といっても、Of Montreal のような猥雑性とはどこか違う。
頭の中から生まれた猥雑性。
プログラミングされ、コントロールされた猥雑性。
理性で創られた猥雑なエレクトロニック・ミュージック。
それなのに不思議と強い生身感を感じます。
混沌としたいかがわしさ。

ありきたりのエレクトロニカなどよりは遥か存在感があって聴き応えがあるし、前作のように電子音の波に飲み込まれて窒息しそうな気になることもない。
音の種類や量は今作の方が遥かに多いのに、不思議だな。
リズムがはっきりしてきたし、前作では抜けていたメンバーがひとり戻ってきたらしいので、その影響も大きいのかもしれない。

楽曲の幅も広いし。









彼らは自分達に、まずポップであることを課しているのでしょうね。
パンダベアのメロディラインは好きだけど、彼らのメロディセンスは全般的にそれほど秀逸なものでもない。
それでも何度も聴きたくなるのは、やはりこのポップで猥雑なサウンドスケープがあるから。
パンダベアがメロディラインでリードを取って、今回のバンドサウンドを創りだすのが理想かな。

それでも、もう少しカオスが欲しい気がしますね。
もっと突き抜けた猥雑な電子音楽が、彼らには創れるはずだから。

まったく意味不明なタイトルですが、これがこの音楽のイメージ。
先日ご紹介した The Mountain Goats の最新作と並んで、自分のブログ冬眠を覚ましてくれたのが、このアルバムです。

パリを拠点に活動する女性のマルチインストゥルメンタリスト兼シンガーソングライター Melody Pochet が、Tame Impala の Kevin Parker とともに創ったプロジェクトです。

Melody's Echo Chamber

Melody’s Echo Chamber/Fat Possum Records

¥1,159
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Tame Impala と聴くだけである種のノイジーでサイケな期待感が大きく膨らんでしまうし、フランス人の女性ボーカリストとなれば頭の中にある種の音像が浮かんでしまいます。
そのふたつの組み合わせって、どうなるんだろう。

イメージどおりでありながら、化学反応による想像以上の部分もあって、実にニンマリ。

基本はドリーミーでポップ。
どころが、ノイズとエコーがこれでもかというくらいに、出しゃばってくれて、異次元のサイケポップに変身。
ノイズが脳みそをかき回し、エコーが頭がい骨内で響き渡り、とてもドラッギーな感触に浸れます。

アルバム冒頭のこの曲など、それこそ一見王道ドリームポップ。
ところが2分50秒あたりから素晴らしきギターが出現して表情が変わります。




徐々に彼らの世界が深化し、広がりを見せて行きます。




まあなんというか、比較的万人受けしそうでいて、好きな人には更にたまらなく感じるタイプのロック。
ボーカル自体は、特別ウマいわけでも、存在感があるわけでもないけど、逆にそれが素材としていいのかも。

自分独自の世界観を強烈にもっている女性ボーカルとしては、あの Lana Del Ray も音楽性はまったく違うけど、自分の中では同じところにカテゴライズされています。
無意識のうちに求めていた、聴きたかった音楽の形を具体的に実現してくれたミュージシャンとして。

どちらも突然その世界に浸りたくなって再生することになるので、累積再生回数が多くなるタイプ。歌い手としては Lana Del Ray の方が明らかに上(少なくともレコーディングされたものでは)だけど、Melody は世界観の広がりと壊れ方が魅力。

この中毒性は、要注意。
最近、電子音で固められた音楽を好みません。
電子的なリズム、シンセで創られた厚み、プログラミングで制御された全体構成。

その昔、YMOがプロフェットなどでシンセ独特のサウンドスケープを創り始めた時はかなりシンセが創りだす音楽に入れ込んだものですが、音源がアナログからデジタルに変わり、すべてがプログラミングされシーケンスされるようになってから、面白くなくなってきた。

本来、アナログ音には倍音があってより深みや雑みがでるように、リズムも微妙なズレや音量差で独特のグルーブ感が出てくるんですけどね。

もちろん、シンセがないと生まれ出なかった画期的で刺激的な音楽はたくさんあるし、シンセも倍音や揺らぎもコントロールできるから意識的であろうとするミュージシャンには期待するところも大きいけれど、安易なその他大勢が多過ぎてね。

安易な大量消費型音楽の隆盛に、プログラミング音楽は一役もふた役もかっているでしょう。

だからというわけじゃないけど、シンセが固まりで鳴るだけで、強制的なデジタルビートがピコピコ鳴っているだけで、その音楽から条件反射的にちょっと距離を置いてしまうようになりました。
風邪が流行ってる時期に、咳をしている人からはちょっと距離を置くのに、似てるかも。
罹患したくないんだろうな。

おそらくは、このグループも一見そのカテゴリーにはまってしまうのだろうけど。

Hot Chip

In Our Heads/Domino

¥1,242
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前作 "One Life Stand" はジャケットがダサかったけれど、なかなか良いアルバムでした。
このバンド、ボーカルを除き、基本的にはシーケンスされたリズムセクションとシンセ、ピコピコ系の音が集まっていて、自分好みじゃありません。
それでも、そこを超えて不思議と心魅かれてしまうところがあるのがこのバンド。

ひとつにはボーカルの存在感が大きい。
一見女性的とも思える男性ボーカルですが、実に滑らかな独特の柔らかい声質を持っています。
そんな有機質的なボーカルが、ノスタルジックスパイスのかかったメロディを歌います。

バッキングのデジタル楽器群も、それぞれはデジタルビートで明らかにピコピコしているのだけれど、どことなく柔らかく、全体として無機質が集まってなんとか有機的であろうとするような(?)不思議な暖かさを奏でてくれます。

それらが相まって、柔らかで人間臭いデジタル感とでも言うような、独特のサウンドスケープを産み出しています。
それがこのグループの生命線。

最新アルバム、 "In Our Heads" でもそれは変わるところがなく、アルバム全体の完成度はさらに磨かれた印象。







なかなかにキャッチーで、グッドメロディの曲たち。
しかし先端のエレクトロニカにはほど遠いし、本当にこのジャンルが好きな人からは、人間臭さがゆるさ、野暮ったさに感じられてしまうかもしれません。
ヘタしたら、けっこう立ち位置の難しいロックなのかも。

たしかに今の自分にとっては、デジタル系の割には楽しめるし好きだけど、やはり心から聴きたくなるのはもっとシンプルにアナログに寄った、ギターやピアノや人の声がフィーチャーされたロックです。

いつもと違う傾向の音楽を聴きたくなる時のロック。
今はそれ以上のものでもそれ以下でもなく、ヘビロテまでは行きにくいのは確か。

最高にシンプルで、最高にうまいもの。

例えば、ビールと枝豆。
しっかりと塩をまぶされたゆでたての天狗豆をつまみに、ぐっと冷えたビールをグビグビ飲む。

赤ワインとフランスパンとチーズ。
うまいと評判のベーカリーで焼き立てで売ってるバゲットを買ってきて、それほどはクセの強くないチーズとともに、カベルネかメルローもしくはシラーズあたりの赤ワインを味わいながら飲む。

とてもシンプルな組み合わせだけど、それぞれはどこにもある素材だけど、極上のアイテムが揃ってそれらがハーモニーを奏でた瞬間、他に何もいらないほどの至福となります。

なんでこいつらこんなにうまいんだろ、それぞれのうまさを消すことがなく、さらに相手のうまさを引き立てる。
そしていつの間にか、ベロベロに。

The Mountain Goats

昨年、自分にとってもっとも大切なアルバムの1枚に "The Eternals Deck" を選んだミュージシャンです。
USインディにカテゴライズされるけど、20年以上に渡ってアルバムをすでに20枚近く発表しているベテラン。

彼らの音楽は自分にとって、そんな食材たちの奏でるハーモニーのような音楽。
とてもシンプルなロックです。
まったく奇をてらわないバンド構成。

中心は、ジョン・ダーニエルのボーカルとアコースティックギター、ピアノ。
それらが極上のメロディを中心としたアンサンブルを創り出す。
特別なサウンドスケープを持っているわけでも、特徴的な味付けがあるわけでもない。

うまみの中心はエモーション。
聴いていると体の中心がなんとなく熱を持ってくるかのよう。
語りかけるように歌うダーニエルのボーカルがエネルギーを与えてくれます。

しばらく音楽を聴くのが散漫になっていた頃、彼らの新譜が届きました。

"Transcendental Youth"
TRANSCENDENTAL YOUTH/MOORWORKS

¥1,800
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このアルバムには若干ホーンセクションが加わっているけれど、言われたらわかる程度に、いつもの彼らのサウンドに若干の厚みと色気を加えている。
なんとも心にくいプロデュースです。
彼らの音楽の本質をわかっているからこそできる仕事。

しかしギターが鳴っているところにダーニエルの歌がのるだけで、素晴らしい。
ピアノの響きの隙間で彼が声をだすだけで、気持ちいい。








時代は問わず鳴り続ける音楽でしょう。
そこには新しさも古さもない。

しかし電子音で誰でも簡単に音楽を創れる時代に、アコースティックにこだわってスタンダードな上質感を追求するロック。
自然と湧き上がる、ワクワクドキドキ感。
何度も聴き返したくなる中毒性。
1曲1曲が丁寧に創られクオリティが非常に高い。


ようやくレビューを書きたくなるアルバムが登場しました。

ごぶさたです。

ダラダラと毎日を過ごしております。
どうも音楽にのめりこめない日々。

何を聴いてもそれほどには心が高まらず。
昔のを聴いたり、新しいのにも手を伸ばしたり。
なんとなく聴いて、漠然といいなと思って。
聴いているうちに睡眠不足が祟って、すぐ寝てしまう。
音楽との、散漫な付き合い。

それでも少しはブログを書かねばこのまま消滅しかねんと思い、ブログに向かってみるも、文章打つなぞ会社でさんざんやってきたばかりで、すぐに気持ちがなえてしまって。
そもそも書くほどの感想も音楽から湧いてきてないし。

期待ほどには出来が良くなかったアルバムもけっこうありました。
それも大きな要因です。

そんな時だから、本当に楽しみにしていた新譜はあえて聴きません。
Grizzly Bear とか Tame Impala とかね。
聴きたくてしかたがない気持ちになった時まで、開封しません。
今はちゃんと評価してあげられない気がして。

その分、本を良く読んでますね。
むしろ面白い本に会った時の方が、気持ちが高ぶる。
音楽の波が来る時期と、本を読みたい波が来る時期があるとしたら、ここ2~3年は音楽でした。
それが今は本の波。

話は変わるけど、ブロガーさんの中に、新しい音楽はもう聴かない、自分が好きなミュージシャンの昔のアルバムしか聴かない宣言をしたりする人がいます。
ネットで試聴した新しいミュージシャンの感想を「これいい」とツイッターで垂れ流しているだけの人もいます。

音楽に向かう気持ちが散漫になった時でも、そんなことはしたくない。
自分としては、やはりアルバム全体をしっかり真正面から聴きたいし、そのミュージシャンが今リリースした意味をかみしめて、そのアルバムを自分がどう捉えたかをしっかりと書きとめたい。

自分もアップを楽しみにしている人の記事は、新しい音楽をどう聴いたか、今の自分にどう関わってきてるのかをしっかり書いてくれている。

もちろん昔の音楽も素晴らしいものがたくさんあるし、自分も大好きだし、その時代だから生まれたそれらを聴くことを否定する気はまったくないけれど、やはり新しい音楽、今だからこそ生まれ得た音楽を聴くことを否定するのはよくわかりません。
自分よりも明らかに若そうな人が、80~90年代のNew Waveやオルタナが好きだからといって、なぜ今の時代のインディを聴こうとしないのか。

経済的に厳しいのならわかるけど、そういう人に限って高いリマスターシリーズとか、豪華なんとか付き復刻セットみたいなものはしっかり買うんだよな。
すでに持ってるアルバムばかりのセットを1万円で買うよりも、国内盤で4枚、輸入盤にすれば6枚は買える1万円で新譜をなぜ買おうとしないのでしょうね。

まあ、音楽なんて人の好き好きだから目くじら立てるほどのことじゃないんだけど。
でも、ロック好きを標榜するなら、新しい音楽にも目を向けていてほしい。
ネットでさらりと試聴するだけじゃなくて、アルバムを買って聴いてみてほしい。

とりとめもない話しでしたが、そろそろ復帰への準備運動でもしようかなと、書きました。