あんまり期待はしていなかったのですが。

ファーストのデキは素晴らしかったけれど、その後の展開が読めなかったから。
デジタルビート中心に戻るというウワサも一時期あったし、彼独自のエレクトロニックミュージックが展開され続けることへの疑問があったから。
バクゼンとですけどね。

自分の想像力の欠如というか、彼の才能を甘く見ていたというか。

James Blake のセカンドアルバム、"Overgrown"

Overgrown/Republic

¥2,025
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ファーストのリリース後、彼の歌へのフォーカス記事をよく見ました。
それこそエレクトロニック・ソウルだと言わんばかりのものもあったし、この歌が素晴らしいんだという論調も多かった。

ジャケットのように意識的にフォーカスをずらした歌。
エフェクトが強くかかった声。
ファーストでの彼の歌は、歌唱としての歌ではなく、彼の音楽を構成する音のひとつとして見るべきだろうと思います。
ヴォコーダーとまでは言わないけれど、そんな存在として。

ところが今作。
ファースト以上にフィーチャーされた彼の歌。
前作での歌よりも、しっかりとしたメロディを持ち、エフェクトも薄くなってクリアに生っぽく彼の声を感じることができる歌。

聴いた瞬間に、彼の音楽における歌のポジションが進化した、と確信しました。

歌い方やメロディのつなぎ方には、相変わらず意識的なあいまいな感触を持たせていて、とても特徴的だけれど、存在感が突き抜けています。

そして彼の創り出すサウンドは、強制的なデジタルビートやコード進行という「枠」に頼らず、移ろいゆく時を描き出すデジタルサウンド。
音の奥行き感と、無音までもが音楽となり、音量の減衰・強弱感をうまく使ってます。
まったく性質の違う音たちが、自分たちの好き勝手に鳴り始め、音程を奏で、消えて行く。

結果的に、それらが共鳴して不思議なアナログ感のあるサウンドスケープが創り出されていて、これは彼ならではの素晴らしい仕事。

そして彼の歌は、このアナログ的な深さと広がりと時間軸を持つデジタルサウンドに融け込んで、これまでにない有機的なデジタルミュージックとでもいうべき、新たな感触をもたらしてくれています。

柔らかく曖昧な感触の歌と、精緻で冷やかな感触のサウンドスケープの融合。





こちらはイーノとの共作。


言葉でこの音楽の素晴らしさを語る限界を強く感じてしまいます。

音楽のカタチはまったく違うけれど、 Atoms For Peace のアルバムを聴いた時に感じる感覚とどこか似ているような気がします。
まだ見ぬ音楽の姿を具現化しようとする意思、進み過ぎた(Overgrown)音楽であってもそこを目指そうとする意思、から生まれた音楽。

この2枚に浸るのが、至福。
今年リリースされた中で今のところ傑出したアルバムたちだと思いますね。



日常、音楽聴くのはほとんどが携帯音楽プレーヤー+イヤホンです。
次に、アンプダイレクトのヘッドホン。

スピーカーでしっかりと音を鳴らして聴くのが一番いいに決まっているけれど、住宅事情がそれを許してくれません。

自分は携帯音楽プレーヤーに SONY Walkman X1060 、イヤホンに MDR-EX1000 を使っているのだけれど、この組み合わせはけっこうな実力を持ち、音の抜け感では逆にスピーカーにも勝ちます。
逆にまったく敵わないのが、やはり低音と音の広がり、定位感、表現力。
時々無性にスピーカーの表現力が欲しくなり、ボリューム絞って聴いてます。

製造中止になって久しいけれど、 Walkman X1060 は名機だと思いますね。
しっかりとした小型のダイキャストボディに、物理的操作ボタンもしっかり。
音も優れたデジタルアンプ搭載で、非常にフラットな再生力。
モノとしての魅力がたっぷりです。

そんな Walkman X1060 から左の音声がいきなり出なくなりました。
自分の力ではどうにもならないとわかった時点で、すぐにビックカメラに修理出し。

しかし最低でもメーカーでのイヤホンコネクタの交換だろうから、手元にない時間が2週間程度はいくはず。
これじゃあ、一日の大半の時間でまともに音楽を聴くことができません。
それも2週間。
焦りましたね。

なにか自分のカラダの一部の大事な器官が失われたような感覚です。
是非もなく、代替 Walkman を購入。
32MBがいっぱいになってきていたので、64MBの機種を選択。
しかし、音楽聴くだけなのに、アンドロイドOSが入ってますよ。
もっと音質だけにこだわったシンプルな再生機は、ないものでしょうか。

でも背に腹は代えられないので、購入。
すぐに自宅でパソコンからインポート。
不思議とインポート不可のアルバムが何枚も出たけれど、とりあえず無事に、新Walkman で音楽生活に戻れてます。

修理を終えたと連絡があった X1060 。
なんとイヤホンジャックの交換だけで、12000円ですと。
法外ではあるけれど、大事な自分のカラダの一部だもんね。
無事に戻ってくれば、満足です。

これからは、新人といっしょに、シーンに応じて使い分けよう。

最近増加傾向にある気がします。
比較的キレイめでゆったりとしたリズムのエレクトロの中で、歌が主役となって構成される音楽。

そりゃチルウェイブだろ、と言われても、それとも違う。
エレクトロニックソウル、と呼ぶ人もいるけれど、それもピンとこない。

だってソウルは本来黒人由来の音楽で、基本的には黒くなければならないはず。
ところが、黒さはほとんど感じられない。
R&B志向、くらいは言えるんだろうけど。

ソウルが主役みたいな、インディソウルというカテゴライズもかんべん。

人の声の暖かみをエレクトロに加えて新たな感触を得ようという動きとして捉えておきたいところ。

Autre Ne Veut(オート・ヌ・ヴ)"Anxiety"
Anxiety/melting bot / Software

¥1,680
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NYはブルックリンのミュージシャンです。
音楽としてのトーンと音の感触は気に入ってます。
でもアルバム全体通して、ピコピコがちょっと多いかなあ。



ジャケットの空白の額縁の中には、ムンクの叫びがはめ込まれていたそうです。
YouTubeのようにね。
ムンクの叫びは世界的には著作権切れているけれど、本国のノルウェーでは継続しているらしいので、その関係なんでしょうが、ヘタに意味をこの額縁の中に込めるよりもこれでよかったのかもしれません。



Rhye "Woman"
Woman/Republic

¥1,088
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LA在住のカナダ人ボーカルとデンマーク人のデュオユニットによる作品。
より音数を絞り、静謐感が醸し出され、 The XX のような感触を得ることができます。
なんとこのボーカルは、女性じゃなくこのふたりのうちのひとりで、男性です。



2枚とも、いずれも魅力的なサウンドスケープ。
個人的には、Rhye の方が好み。
でも、のめり込むほどには好きになるにはどこか物足りません。

やっぱり軽いんだよな。
キレイで聴きやすい分だけ流れてしまう。

R&B風というだけあって、やはり歌が弱い。
とはいえ歌に存在感があり過ぎるとバランス崩しちゃうんだろうし。

何かしながら聴くにはもってこいなんだけど。
なかなか良いじゃないですか、イギリスからの話題の新人、 Palma Violets

今後のブリティッシュロックを背負って立つと言われるニューフェイスのデビューアルバム。

今年のブリティッシュは彼らだけ聴いていればいいという意見もあったり、いや彼らはただのハイプだという発言もあったりで、正体は自分の耳で聴いてみないとわからんとということで、聴き始めました。

ということで、Palma Violets "180"

180/Rough Trade Us

¥1,491
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隙だらけで、構成もだれるところもあったりで、完成度が十分に高いアルバムとはいえないかもしれません。
最近聴いているアルバムの中では、アルバム全体の完成度で、デビッド・ボウイの新譜方が上でしょう。

しかし、ロックに求める根源的なエネルギー感や音楽としての刺激は、こっちが遥かに上。

自分たちが演りたいから、創りたいから、出てきたロック。
音楽が寄り添ってくるのではなく、音楽に引きずり込まれる。
基本的な立ち姿がピッとしてていて、隙だらけだけど、緩んでいません。
音数が絞られ、音に緊張感があります。

しっかりとしたメロディラインとボーカル。
キーボードの響きも印象的で、彼らのアイデンティティを固める武器になっていますね。

どことなくフランツフランツフェルディナンドを彷彿とさせるエグさも感じさせる時もあったり、パンクのノリもあったり、イギリス的な要素がちりばめられながらもこなれきっていないところは、むしろ今後の可能性として期待できるところと感じます。

自分はいつのまにか、ボウイの新譜よりもこっちを聴く回数がだんぜん多くなっています。





一見耳当たりのいい音楽をなんとなく聴くよりも、なんだかわかりにくいけどカラダに響いてくる、芯に突き刺さってくる音楽を夢中になって聴く。

音楽を、ロックを聴き始めた少年たちが聴くべきは、音楽ビジネスにどっぷりと浸かった大人たちに作られたロックよりも、こういう未分化な部分も持ちながらも音楽に向かうストレートなエネルギーにあふれたロックであってほしいと思います。


その昔、ロッキングオンで架空インタビューというシリーズがありました。

これが好きでね。

ちょっと冗談でボウイ篇を作ってみました。

あくまでも架空ですからね。


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ロッキングオフ編集部(以下、RO)
こんにちは。どうすか、体調は。

デビッド・ボウイ(以下、DB)
クスリも絶って久しいしアルバムも売れてるし最高よ、もう。

RO
いきなりの発表で、こっちはビックリしましたが。

DB
引退したとか音楽への興味ないとか、キミたちもいろいろと言ってたくせに。
何か話題作らないと。ドカンとね。
ジャケットも良かったでしょ。

RO
なんじゃこりゃ、としか思えなかったですけど。
よりによってHeroesだし。
味もそっけもないタイポグラフィだし。
他にやり方なかったんすか。

DB
もう70近いんだからさあ、顔をまんま出すなんて昔みたいなことできないし。
Heroesのジャケットを今の顔でパロることも考えたけど、やめた。

RO
最近、単純明快でシャープな感じのジャケットないでしょ。
Station To Station とか Low みたいなヤツ。
Heathenなんてオカルトだし、ヘタウマイラスト使ってるのもあるし。
音にもそのヘタり感が伝染してる気がするんですけど。

DB
そんなことはない。気のせいである。
トニーも褒めてたの、読んでないの。
ロックの王道そのものよ。
ギターだってギュイギュイ言わせたし、昔のファンだって涙流してるし。
だってiTuneで1位ってことは若いヤツらも興奮してるんでしょ。

RO
あ、ロックの王道だって。
そんな言葉をあなたから聞くなんて。
それにさあ、昔のファンって、Let's Dance でいなくなったんじゃないの。
Tin Machine で絶滅ね。

DB
そういうヤツらはほおっておけばよい。
ヤツらがうざくて Scary Monsters というお別れ状書いて、
Let's Dance という殺虫剤を播いたのだ。

RO
Heroes のB面からすでに違和感感じ始めてたけど、僕なんか。
あそこですでにネタ尽きてたんじゃないの。
Lodger でしまった、と思ったでしょ。

DB
うるさい。

RO
で、Scary Monsters はネタが尽きたことの正当化ね。
今までのは全部ハッタリだよーん、て、ちょっとヒドいんじゃない、今さらだけど。
音だけはそれっぽかったから、騙された。

DB
あの時はあの選択肢しかなかったのだ。

RO
だからって、次が Let's Dance はないでしょ。

DB
だから、キミみたいな人への殺虫剤だってば。
うるさいのははずして新しいファンがたくさんついたから作戦通りなのだ。

RO
わかった。今回のアルバムも Let's Dance だな。

DB
うるさいインタビュワーだな。
もう老後の資金の心配しかしてないのよ。
カミさんがモナコに住みたいって言ってるんでね。


RO

ツアーには出ないの。


DB

なんのために、このアルバムを作ったと思ってんのよ。

キャッチーなフレーズ練って、これだけの曲数作って。

それぞれの曲をちょっと長めに演れば、1時間半計算できる。

昔のヒット曲ちょっと加えて2時間ね。

新旧ファンでスタジアムぎっしり。

でも年だから、アルバムたくさん売れたらやらない。

あんたみたいな思い入れ強いのに、ステージで殺されたらヤだからね。


RO

そんなツアー、行きたかないね。

また10年反省してなさい。

80近くなって思いっきり枯れてから作るアルバムは興味あるけどね。


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あくまでも架空で、冗談、ですからね。

念のため。