あんまり期待はしていなかったのですが。

ファーストのデキは素晴らしかったけれど、その後の展開が読めなかったから。
デジタルビート中心に戻るというウワサも一時期あったし、彼独自のエレクトロニックミュージックが展開され続けることへの疑問があったから。
バクゼンとですけどね。

自分の想像力の欠如というか、彼の才能を甘く見ていたというか。

James Blake のセカンドアルバム、"Overgrown"

Overgrown/Republic

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ファーストのリリース後、彼の歌へのフォーカス記事をよく見ました。
それこそエレクトロニック・ソウルだと言わんばかりのものもあったし、この歌が素晴らしいんだという論調も多かった。

ジャケットのように意識的にフォーカスをずらした歌。
エフェクトが強くかかった声。
ファーストでの彼の歌は、歌唱としての歌ではなく、彼の音楽を構成する音のひとつとして見るべきだろうと思います。
ヴォコーダーとまでは言わないけれど、そんな存在として。

ところが今作。
ファースト以上にフィーチャーされた彼の歌。
前作での歌よりも、しっかりとしたメロディを持ち、エフェクトも薄くなってクリアに生っぽく彼の声を感じることができる歌。

聴いた瞬間に、彼の音楽における歌のポジションが進化した、と確信しました。

歌い方やメロディのつなぎ方には、相変わらず意識的なあいまいな感触を持たせていて、とても特徴的だけれど、存在感が突き抜けています。

そして彼の創り出すサウンドは、強制的なデジタルビートやコード進行という「枠」に頼らず、移ろいゆく時を描き出すデジタルサウンド。
音の奥行き感と、無音までもが音楽となり、音量の減衰・強弱感をうまく使ってます。
まったく性質の違う音たちが、自分たちの好き勝手に鳴り始め、音程を奏で、消えて行く。

結果的に、それらが共鳴して不思議なアナログ感のあるサウンドスケープが創り出されていて、これは彼ならではの素晴らしい仕事。

そして彼の歌は、このアナログ的な深さと広がりと時間軸を持つデジタルサウンドに融け込んで、これまでにない有機的なデジタルミュージックとでもいうべき、新たな感触をもたらしてくれています。

柔らかく曖昧な感触の歌と、精緻で冷やかな感触のサウンドスケープの融合。





こちらはイーノとの共作。


言葉でこの音楽の素晴らしさを語る限界を強く感じてしまいます。

音楽のカタチはまったく違うけれど、 Atoms For Peace のアルバムを聴いた時に感じる感覚とどこか似ているような気がします。
まだ見ぬ音楽の姿を具現化しようとする意思、進み過ぎた(Overgrown)音楽であってもそこを目指そうとする意思、から生まれた音楽。

この2枚に浸るのが、至福。
今年リリースされた中で今のところ傑出したアルバムたちだと思いますね。