田窪一世 独白ノート -18ページ目

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。

 

大阪なおみ選手がインタビューでこう言っています。「セリーナが左へ動いていたので、私は右へ走ってぎりぎりを狙った」しかし、実はこれは逆で、彼女が無意識に動いたことを、のちのち脳が記憶していて、それを言葉にして喋ったのです。

 

何故ならば、200キロ近いスピードのボールを脳で判断して体が動いてラケットを振るまでなんと1秒かかるのです。短距離走で10秒と9、9秒では体ひとつ分の差が出るわけなので、スポーツの世界で1秒というのは重大なタイミングの遅れなのです。だから体の方に宿っている無意識が私たちを動かしているというのはスポーツの世界ではすでに常識なのです。

 

無意識に力いっぱい打ち返したあとで「いい球だったなあ」と思い出すのです。

 

つまり心が体を動かすのではなく、体が心を動かしているというのが正しいのです。その体でも、どこがもっともその役割を担っているか、それが「腸」なのです。そう言えば絶妙な言い方として、日本の武道でよく使われる言葉に「丹田」があります。この丹田説が実は当たっているのではないかということが最近の研究でわかってきました。そして体に込められた情動というのは。私たちの気分を司っています。怒り、喜び、悲しみ、これらはすべて内蔵の気分なのではないか。

 

朝起きて「今日はなんだか体が重いな」と感じたり、「あの人のことが好きだ」と思うのはすべて内蔵の気分なのではないか。「虫が好かない」「腹を割って話す」「腹が座っている」「腹を探る」「腹が立つ」「腹の底から笑う」これらは内蔵の表情であって顔の表情ではないのです。

 

 

▶︎日吉

 

 

 

 

 

 

ずいぶんと暖かくなって来ましたね。みなさんお元気ですか?

 

座キューピーマジック第70回公演

「ハムレットのための特別席」

2019年5月29日(水)~6月2日(日)

下北沢劇小劇場

 

29日水曜日19時

30日木曜日14時&19時

31日金曜日19時

01日土曜日14時&19時

02日日曜日12時&16時

 

前売3800円

当日4000円

 

主人公、篠田圭介はかつて将来を嘱望された舞台俳優でしたが、現在は場末の喫茶店の雇われ店長として、娘のくるみと世間から身を隠すように暮らしていました。ある朝、まるで示し合わせたのように、家庭を放ったらかして家出して来た姉、失恋したゲイの友人、ファンだと名乗る田舎娘、12年前に別れた妻までが現れて賑やかだが問題の多い同居が始まります。市井の人々を優しい視点で描いたダーク・ヒューマンコメディーです。最近、人間関係に少し疲れたと感じていたら、ぜひ劇場のドアをノックしてみてください。

 

今回、僕自身が主演の篠田圭介を演じるのはなんと15年ぶりになります。そして自分の年齢を考えると多分最期の圭介役になりそうです。自分の俳優人生と重なる部分も多く愛着もひとしおの物語。悔いの残らないよう懸命に演じたいと思います。なお今回、長年の仲間であり安心して舞台を託せる岡野佐多子と鶴屋紅子がシングルキャストで参加してくれます。その他、僕の演技観に懸命に取り組んでくれている若者たち。ぜひ下北沢劇小劇場までお越しください。

 

★チケットのお申込みは、氏名、郵便番号、住所、電話番号、希望日時、枚数を明記して以下のメールアドレスまで。

cupid-magic@au.com

 

 

 

 

 

 

 

 

かつての企業はスピードとコストでした。より早くより安く商品を作れた会社が世界企業に成長出来ました。客の欲望、社会の展望をサイエンスで分析し評価し、次にクラフト(技術)で生産していく。戦後日本はこの二つで経済成長を成し遂げて来ました。このサイエンスとクラフトによる成長は現在は中国によってさらに磨かれています。

 

サイエンスとクラフト、これはアカンタビリティ(言語化)によって支えられています。つまりその計画、結果を言葉で説明出来る、説明責任を果たせなければいけないのです。面白い発言としてイチロー選手の次のような言葉があります。「僕は天才ではありません。なぜならば、どうしてヒットが打てるのか説明出来るからです」張本さん曰く「王は失投をホームランにするが、長島は打てないだろうという玉をホームランに出来る」これが両者の違いなのです。そして、このイチローの言葉が実は江戸時代の武芸の達人の言葉の中にそっくりなものがあると野村監督がおっしゃっていたそうです。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」経営においても同じで、経営はアートとサイエンスなのです。

 

スティーブ・ジョブスの言葉にこういうのがあります。「インドの田舎の人は直感で生きている。僕は知力よりも直感を持つ彼らこそがパワフルだと思う」ジョブスは一時期凶器の経営者と言われ人心が離れてアップルを追放されたことがあります。ジョン・スカイリーなる人物が経営権を奪取し経営権を取り上げました。株価はその日のうちに7%も跳ね上がったと言います。ああ、これでアップルも儲かる企業になったと社内でも経済界でもが思う中で、アメリカの経済新聞のインタビューでただひとり、ノーラン・ブッシュネルという経済人がアップルに対して不吉な予言をしました。「ジョブズを追放したって?じゃあ、アップルはモノを作っていくインスピレーションを無くしたんだ。これからアップルは落ちて行きますよみなさん」そして本当にアップルはここから急激に業績を落としていくことになるのです。そして数年後に呼び戻されたジョブスがiMacで勝負して見事に返り咲いたのは周知の事実です。

 

著者は言います。言葉で説明出来ないような熱いものを胸に抱えていないような人でない限り企業の経営者にはなれませんよ、と。ビジネスにおけるアートとは何か、それは何を選び何を捨てるか。これがはっきりしない人は駄目なんだ。

 

昨年もスキャンダルの多い年でした。企業スキャンダル、スポーツ界スキャンダル、大学スキャンダル。これらすべてに共通するワード、それは「美しくない」こと。彼らのすべてが取材陣のマイクの前で実に朗々と語りました。しかし喋れば喋るほどそのみっともなさ醜さを露呈して行きました。彼らに共通すること、それは責任の自覚はないが説明の能力はある」ということです。将棋の羽生名人は言います。「美しい手を目指せばそれが正しい手になるのです」と。

 

 

▶︎星野珈琲

 

 

 

 

 

 

戦後、天皇制そのものが問われていました。当時、連合国の占領下にあった日本。天皇はそれまでのありかたから大きく変わることを余儀なくされていました。そして新たな憲法で天皇は日本国の「象徴」であると定められます。

 

GHQは天皇を中心とした国のありかたを変え民主化を進めようとしていました。連合国の中には昭和天皇の処罰を求める声もありました。国内の学者からも天皇は退位すべきだという意見が唱えられます。「過去の最高の責任者が、その責任を取ろうとせず、国民もまた責任を取らせようとせず、たがいに曖昧のうちに葬り去るならば、どうして真の民主主義が建設されようか」東京大学法学部教授、横田喜三郎

 

皇太子の教育係りに任命された慶応大学学長の小泉信三は福沢諭吉の「帝室論」を使用して教えました。福沢はまず「皇室は政治から距離を置くべき」と主張します。その上で皇室をある言葉で例えました。「万年の春」皇室は万年の春であって、国民にとって悠然として和やかな気持ちになるような存在であるべきだと述べたのです。慶応義塾福沢研究センター准教授の都倉武之氏は、小泉はここに象徴天皇のヒントを見いだしたのでないかと考えています。「当時、象徴天皇というものを誰もしっかりと見いだせていない。天皇は放り出されて国民の前に立たされている。「万年の春」とは、春のような常に穏やかな存在として国民に寄り添うということを「帝室論」を通じて戦後の日本に根付かせることが出来るんじゃないかと小泉信三は考えたのではないかと思います。

 

小泉は帝室論を解釈し「しからば皇室のご任務はいずこにあるのであろうか。それは実に「日本民心融和の中心にならせらるることである」と説いたのです。長野県短期大学准教授、瀬畑源氏は「天皇を軍国主義の象徴としてというよりも、平和の象徴という形に切り換えていかなければいけない。天皇というものに対して敬意を持つ、そのことによって人々の心をまとめ上げるのだ、というのが福沢の「帝室論」の肝の部分だと思います。その状況をきちんと踏まえた上で皇太子に教育が出来るひとが小泉信三たったのです」

 

敗戦から五年後の1950年、小泉は天皇となるべきものの心構えについて激しい言葉で皇太子に講義します。「責任論から言えば、陛下は大元帥であられますから、開戦について陛下に御責任がないとは申されません。敗戦国においては、民心が王室を離れあるいは怨み、君主制がそこに終わりを告げるのが通則であります。私どもが天皇制の護持ということをいうのは皇室の御ために申すのではなくて、日本という国のために申すのであります」小泉は日本の将来のため天皇となるものは、ふさわしい道徳や教養を身につけなければならないと強調します。「新憲法によって、天皇は政事に関与しないことになっておりますが、しかも何らの発言をなさらずとも、君主の人格、その識見はおのずから国の政治によくも悪くも影響するのであり、殿下のご勉強と修養とは日本の国運を左右するものとご承知ありたし」瀬畑氏曰く「天皇としてだけではなくて、一人の人間として国民から尊敬を集められる人でなければ、国民統合なんてそもそも出来ないんだ、という考えに立っていたと思うんですね。逆に言うと、そうしなければ天皇制は生き残れないわけです」皇太子様は一時間数十分姿勢を正して話を聞かれ、我が責任の重きを知るという意味のお言葉を述べられ、御起立されて「どうもありがとう」とおっしゃいました。

 

 

▶︎日吉

 

 

 

 

 

 

跳び箱を跳ぶ。ボールをシュートする。ボールを打つ。そういう行為を人間は無意識に行います。しかし脳が、跳び箱を跳ぼう、ボールを打とう、と思うのにはどうしても0、5秒かかるということがわかっています。これらの場合、実は飛んでから「飛ぼう」と脳が考えているというのです。

 

たとえば合気道の師範は弟子たちに「考えるな」と教えます。彼らは体験的に脳と体のズレを知っていたわけです。ではなぜ人間は「打とうと思った」「シュートしようと思った」と考えるかというと、これは記憶として残すためなのです。

 

▶︎散歩道