世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。

 

かつての企業はスピードとコストでした。より早くより安く商品を作れた会社が世界企業に成長出来ました。客の欲望、社会の展望をサイエンスで分析し評価し、次にクラフト(技術)で生産していく。戦後日本はこの二つで経済成長を成し遂げて来ました。このサイエンスとクラフトによる成長は現在は中国によってさらに磨かれています。

 

サイエンスとクラフト、これはアカンタビリティ(言語化)によって支えられています。つまりその計画、結果を言葉で説明出来る、説明責任を果たせなければいけないのです。面白い発言としてイチロー選手の次のような言葉があります。「僕は天才ではありません。なぜならば、どうしてヒットが打てるのか説明出来るからです」張本さん曰く「王は失投をホームランにするが、長島は打てないだろうという玉をホームランに出来る」これが両者の違いなのです。そして、このイチローの言葉が実は江戸時代の武芸の達人の言葉の中にそっくりなものがあると野村監督がおっしゃっていたそうです。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」経営においても同じで、経営はアートとサイエンスなのです。

 

スティーブ・ジョブスの言葉にこういうのがあります。「インドの田舎の人は直感で生きている。僕は知力よりも直感を持つ彼らこそがパワフルだと思う」ジョブスは一時期凶器の経営者と言われ人心が離れてアップルを追放されたことがあります。ジョン・スカイリーなる人物が経営権を奪取し経営権を取り上げました。株価はその日のうちに7%も跳ね上がったと言います。ああ、これでアップルも儲かる企業になったと社内でも経済界でもが思う中で、アメリカの経済新聞のインタビューでただひとり、ノーラン・ブッシュネルという経済人がアップルに対して不吉な予言をしました。「ジョブズを追放したって?じゃあ、アップルはモノを作っていくインスピレーションを無くしたんだ。これからアップルは落ちて行きますよみなさん」そして本当にアップルはここから急激に業績を落としていくことになるのです。そして数年後に呼び戻されたジョブスがiMacで勝負して見事に返り咲いたのは周知の事実です。

 

著者は言います。言葉で説明出来ないような熱いものを胸に抱えていないような人でない限り企業の経営者にはなれませんよ、と。ビジネスにおけるアートとは何か、それは何を選び何を捨てるか。これがはっきりしない人は駄目なんだ。

 

昨年もスキャンダルの多い年でした。企業スキャンダル、スポーツ界スキャンダル、大学スキャンダル。これらすべてに共通するワード、それは「美しくない」こと。彼らのすべてが取材陣のマイクの前で実に朗々と語りました。しかし喋れば喋るほどそのみっともなさ醜さを露呈して行きました。彼らに共通すること、それは責任の自覚はないが説明の能力はある」ということです。将棋の羽生名人は言います。「美しい手を目指せばそれが正しい手になるのです」と。

 

 

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