大阪なおみ選手がインタビューでこう言っています。「セリーナが左へ動いていたので、私は右へ走ってぎりぎりを狙った」しかし、実はこれは逆で、彼女が無意識に動いたことを、のちのち脳が記憶していて、それを言葉にして喋ったのです。
何故ならば、200キロ近いスピードのボールを脳で判断して体が動いてラケットを振るまでなんと1秒かかるのです。短距離走で10秒と9、9秒では体ひとつ分の差が出るわけなので、スポーツの世界で1秒というのは重大なタイミングの遅れなのです。だから体の方に宿っている無意識が私たちを動かしているというのはスポーツの世界ではすでに常識なのです。
無意識に力いっぱい打ち返したあとで「いい球だったなあ」と思い出すのです。
つまり心が体を動かすのではなく、体が心を動かしているというのが正しいのです。その体でも、どこがもっともその役割を担っているか、それが「腸」なのです。そう言えば絶妙な言い方として、日本の武道でよく使われる言葉に「丹田」があります。この丹田説が実は当たっているのではないかということが最近の研究でわかってきました。そして体に込められた情動というのは。私たちの気分を司っています。怒り、喜び、悲しみ、これらはすべて内蔵の気分なのではないか。
朝起きて「今日はなんだか体が重いな」と感じたり、「あの人のことが好きだ」と思うのはすべて内蔵の気分なのではないか。「虫が好かない」「腹を割って話す」「腹が座っている」「腹を探る」「腹が立つ」「腹の底から笑う」これらは内蔵の表情であって顔の表情ではないのです。
▶︎日吉