田窪一世 独白ノート -14ページ目

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。

 

私たちの回りにある様々なストレス。こうしたストレスを受けると、脳の中にある恐怖や不安を感じる扁桃体が活動を始めます。すると脳から体に指令が出されて、副腎から様々な物質がぶんんぴつされます。ストレスホルモンです。ストレスホルモンは心拍数を増やし血圧を上げるなど、ストレス反応と呼ばれる様々な反応を体に起こします。このストレスホルモンの中で今注目されているのがコルチゾールです。コルチゾールは脳にたどり着き吸収されますが、一定の量を越えて増え続けると脳の一部を破壊することがわかって来たのです。

 

太古の昔、私たちの祖先が猛獣に襲われるなどのストレスを受けたとき体が反応し、ストレスホルモンが分泌されるのは生き残る為に必要な、本来私たちの体に備わっている自然な反応です。ところが天敵がいなくなった現代、仕事や人間関係などが天敵に代わって、私たちに精神的な負担をかけるようになりました。こうした立て続けのストレスに私たちの体は休む間もなく反応し続ける状態になっています。

 

ストレスに立ち向かう最前線の対策にコーピングがあります。究極のストレス職場と呼ばれる宇宙。宇宙では一瞬の事故が宇宙飛行士たちの命を奪います。しかも莫大な時間と予算をかけたミッション。ミスは許されません。日本で十人ほどしかいない宇宙航空医師、緒方克彦さん。緒方医師は宇宙飛行士のストレス対策としてコーピングを研究しています。

 

まずストレスがかかったときに、どんな気晴らしをすれば気分があがるのかあらかじめリストアップしておきます。たとえば音楽を聞く、読書するなど些細なことでかまいません。大切なのはなるべく数多くリストアップすることです。そして色々なストレスがかかるたびにそのストレスに見合った気晴らしを行います。その結果ストレスが減ったかどうかを自分で判断します。まだストレスを感じていたら、さらに気晴らしを続けたり、別の気晴らしに切り替えたりします。このように自らのストレスの観察や対策を意識的に徹底的に繰り返す。これがコーピングです。これが五つのストレス対策の㈭番目の方法なのです。

 

 

▶︎銀座

 

 

 

 

 

 

今から数万年前、私たちの祖先が狩猟をして暮らしていたころ、当時回りには獰猛な動物などの天敵だらけ。必死に戦ったり逃げたりしなければ生き延びることは出来ませんでした。そのとき威力を発揮したのがストレス反応でした。

 

心拍数が増加したり血圧が高くなるのは瞬時に体を動かせるよう、全身の血の巡りをよくするための仕組みです。血液が固まりやすくなるのは、怪我をしたとき素早く血を止めるためだと考えられています。ストレス反応は私たちの祖先が命を繋ぐために進化させた大切な体の機能だったのです。

 

天敵がいなくなった現代、もはやライオンなどに襲われ命の危険に晒される心配はありません。ところが体の中には恐怖や不安を感じると反応する仕組みが残ったまま。天敵相手に働いていたこの仕組みが、精神的な重圧を感じたときに働くようになりました。これが私たち現代人の体の中で起こっているストレス反応なのです。

 

最新の研究ではひとつではなく複数のストレスが重なったとき、単なるストレスが命をも奪うキラーストレスへと変貌することがわかって来ました。いったいそのとき体の中で何が起こっているのか。見えて来たのは極めて危険なストレス反応の暴走です。

 

ストレスがかかってもひとつの原因だけなら、ストレス反応はすぐに収まります。しかし複数のストレスが重なると副腎から分泌されるストレスホルモンが止めどなく溢れ、体の中に大量に蓄積されます。すると心拍数が増加。血圧が異常に高い状態に陥ります。血圧の上昇に耐えられず、もし大動脈が破裂すれば死に直結します。血管の破裂が脳で起こると脳出血に陥るのです。

 

さらにキラーストレスが心臓に深刻なダメージをもたらす新たなメカニズムも明らかになって来ました。エモリー大学では過去に心臓発作を起こした人で、ストレスが起こったときの心臓の状態を調べました。計測したのは心臓を動かしている筋肉の血液量です。注目したのは左心室を流れる血液の量です。多くの血液が流れ心臓の筋肉を動かしています。ところがストレスを感じると、ある部分だけ血液が滞ってしまいます。血液が途絶えると心臓は動けなくなってしまいます。

 

これには自律神経の異常が関係していると考えられています。あまりにも複数のストレスが重なると、末端の血管を締め上げる自律神経が興奮状態に陥り、誤って心臓の筋肉の血管までギュッと締め上げてしまいます。そしてストレスホルモンが心拍数を増やすよう働き、自律神経は心臓の筋肉の血管を締め上げてしまう。この真逆の反応が同時に起こったとき、心不全を引き起こす可能性が明らかになりました。

 

キラーストレスが人の命を奪うのは、心臓や脳の病気だけではありません。日本人の死亡原因第一位の癌。ストレスがかかったとき、癌が急速に進行するメカニズムが始めて明らかになって来ました。オハイオ州立大学のハイ教授が注目したのは、ストレスホルモンによって働き始める遺伝子です。

 

ATF3遺伝子、免疫に関わる遺伝子です。乳ガンの患者で、この遺伝子と生存率の関係を調べました。その結果、この遺伝子が働いていない人の生存率は85%という高い生存率でした。一方、この遺伝子が働いている人たちの生存率はわずか45%に低下していました。何が起こっているのでしょうか。

 

鍵を握っているのは免疫細胞です。癌細胞を攻撃し、増殖を食い止める働きがあります。ATF3遺伝子はこの免疫細胞の中で普段はスイッチが切れた状態で眠っています。ところがストレスホルモンが増え、免疫細胞を刺激すると、免疫細胞の中のATF3遺伝子のスイッチが入ります。すると何故か免疫細胞は癌細胞への攻撃をやめてしっまいます。ストレスホルモンが減ればATF3遺伝子のスイッチが切れ再び癌を攻撃します。慢性的にストレスを抱えていると、免疫そのものの質が変わり、癌を悪化させる引き金となるのです。

 

 

▶︎銀座

 

 

 

 

 

 

3歳の子供が部屋の中でひとりで喋りながら遊んでいます。そこへ大人が入ってくると、子供は黙ります。わずか3歳の子供が、この空間を独り占めしてはいけないと気兼ねするのです。これが「空間のシェア」です。

 

 

▶︎代々木

 

 

 

 

 

 

 

これを演技に当てはめてみましょう。これまでは、たとえば「怒り」の演技をする場合、「怒ろう怒ろう」と意識してから「怒る(アクション)」するというふうに、意識(感情)から始めて、のちに「行動」するという順序で演技することが一般的でした。しかし「脳の指令」から演技を考えるならば、まず「怒る」というアクションをすれば「意識」は自然に生じるということになります。つまり俳優は演技をする場合に感情や意識は必要ないということになります。

 

では、演技を行う場合の「脳の指令」に当たるものはなんでしょうか。僕はこれこそが「台本」だと考えます。台本には、ここで怒れ、笑え、泣け、喋れ、と指示が書いてあります。つまりその指示に従ってアクションすれば良いのです。

 

 

▶︎代々木

 

 

 

 

 

 

 

たとえば、ペットボトルを掴むとか、じゃんけんで何を出すかとかは、その物事を意識する7、8秒前に脳は決めていると言います。

 

これまでは意思があって、次に行動があると考えられていました。つまり「水が飲みたい」とまず考えて、そのあとにコップに手を出す、という順序だということです。しかし、これが本当は逆で、人間はまずコップに手を出したあとに「水が飲みたい」と意識するというのです。つまり行動が先で意識はあとなのです。

 

ある脳波を使った研究があります。被験者に「これから何かをやってください」と指示します。そして被験者が「いま○○に決めました」と報告させます。すると報告させたタイミングよりももっと先に脳波は変化しているということがわかりました。

 

別の研究で「意識」が出てくるためには約5万個の神経細胞の活動が必要だということもわかっています。つまり7秒前に脳が指令しなければ「意識」は生まれないわけです。

 

 

▶︎多摩川