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君が好き

アイドルの話でもしようず。

7月26日にパリ五輪が開幕し、早速、日本選手団のメダルラッシュで盛り上がっている。

そんな7月28日、日本代表に選ばれなかった男たちは、代わりに汗を流すべく熊本県荒尾市の万田炭鉱館に集った。

おれたちのパリ五輪こと「炭坑大運動会」に参加するためだ。

名前からもわかるように「炭坑大運動会」は、荒尾市のアイドル・炭坑ガールズの主催イベントである。

 

「炭坑ガールズの荒尾での主催イベントは行った方がいい」

 

熊本でヲタ活しているとたまに耳にする言葉である。

たとえば、ぼくは行ったことがないのだが、炭坑ガールズにはセッション撮影会というものがあるらしい。これは事前にメンバーの枠を取ってその時間だけメンバーを撮影できる一般的な撮影会と違い、カメラを持ったファンの前にずらりとメンバーが並ぶ。んで、時間内は、他のファンとの譲り合いは必要だけど、声をかけての撮影はし放題という仕組みらしい。このような仕組みがあることをぼくは炭坑ガールズで初めて知った。

このように一般的なアイドルとは違うイベントが用意されていて、楽しめることが多いというのだ。

炭坑ガールズは、もともとはMJKというご当地アイドルからスタートしたグループだったが、MJKから炭坑ガールズへと進化する過程で、万田坑を中心とした荒尾を盛り上げようというエキスが非常に強くなっていったようだ。そのため炭坑ガールズにとって、主催イベントにやってくるファンというのは、一般的なアイドルとファンとの関係だけではなく、炭坑ガールズと一緒に荒尾を盛り上げてくれるゲストのような迎えられかたをしている印象を受けるのだ。

実際、ぼくが唯一これまで参加したことのある炭坑ガールズ主催イベントでは、人が多すぎて実現はしなかったものの、アンコール後に出演アイドルだけでなく、会場のファンも一緒にステージに上がって「KURO★DAIYA」を歌いませんかというアナウンスがあったほどだった。

そんな炭坑ガールズが主催する大運動会。

これは楽しいに決まっている。

競技に参加するかしないかも申し込み時点で選べたのだが、楽しいに決まっているという強い期待から、せっかくならば参加することにぼくはした。

 

会場の万田炭鉱館のホールは、真夏のイベントとはいえ冷房が行き届いていて快適だった。

競技参加者は開場の15分前にそのホールに集合が掛かっていた。

中に入るとすでに赤や黄色のハチマキを巻いた炭坑ガールズ、Re:five、熊本Flavorがいた。

どうやら各アイドルをシャッフルして二組に分け、それが赤団、黄団となり、ぼくらファンは炭坑ガールズの保護者さんとともに炭団というチームになるらしい。

そのチームの中で誰がどの種目に出るのかの話し合いがあった。

種目は午前の部が「お尻歩き競走」「パン喰い競走」「借り物競走」、午後からは「綱引き」「五人六脚」「リレー」となっていた。

不肖たきびははじめてで、なんでも経験したかったこともあり、午前中の「お尻歩き競走」と午後の三つの競技に参加させていただいた。

こういう運動会的なオフ会は別のグループで何度か参加したことがあったが、体力勝負のモネリンピックと比べ、誰がやってもそこそこの結果になる種目が多いため、アイドルにハンデがなくても男性と戦えるのがいいなと感じた。また、勝敗度外視で和気あいあいと楽しもうというくると運動会よりも、アイドル自身が赤団、黄団と分けられているために勝敗についてはアイドルの本気度が高いように感じた。

それぞれのイベントにそれぞれの良さがあり、そもそもアイドルと運動会という企画自体が神イベなので、他のイベントももちろん楽しかったが、アイドルとファンが同じ土俵でハンデなく戦い、その中でアイドルさんたちが勝敗に本気になっているというバランスが炭坑大運動会は本当に優れているように感じた。

 

最初の種目は「お尻歩き競走」だった。ぼくの炭坑大運動会デビュー戦。周りはすべてアイドルを含め女性だったので、このメンバーなら余裕だろうとスタートラインに並んだ。三人先には推しの東雲ういさんもいた。実は知り合いの方から、ぼくが東雲推しだから、「(東雲)ういちゃんが優勝めざすぞーとXでポストしてますよ」と言われ、それに対しぼくは「東雲は口だけだから大丈夫」と答えて余裕をかましていた。しかし、完走がやっとの最下位という結果に沈んだ。東雲さんにも負けるという有様だった。東雲さん、なめて申し訳ありませんでした。そんななか、まるで日本記録ではないかという速さで炭坑ガールズのリーダー・ゆいさんが他を圧倒していた。ホームの力を見せつけていた。

パン喰い競走では同時にゴールしたように見えたアイドル数名を、ゲストのRe:fiveと熊本Flavorの運営さんが携帯で撮影していたVAR(ビデオアシスタントレフリー)で着順が決まるというファインプレーもあった。

「借り物競走」ではハズレのお題もあり、笑わせていただいた。

競技中の写真撮影は自由ということで、カメラを持ったファンの方が会場を熱心に見守り、アイドルはチームごとに分かれて座り、みんなでひとつの競技が行われているのを見守り楽しんでいるのがすごくよかった。

借り物競争が終わったものの、時間が予定よりも巻いたため、ここで突如面白企画が誕生。

まずは炭坑ガールズの保護者と炭坑ガールズとの綱引き、そのあと司会をされていた代表の炭坑レッドさんにファンのほうからリクエストして、こだまだいきくんひとりと炭坑キッズ10人との綱引きも見せていただいた。さすがのこだまくんも10人には敵わず、負けていたがおもしろかった。

 

以上で午前の競技が終わり、昼食。

会場内でパンや片手で食べられるのり弁、アイスコーヒーなどが販売され、それぞれが購入して会場内でお昼休み。まず、うれしかったのが飲食類の価格が「野球場ならこの倍は取られるな」というほどリーズナブル、というか普通の価格だったこと。そしてぼくは炭坑レッドさんのおすすめという「白身魚の挟まったパン」と「メロンパン」をいただいたが、本格的なパン屋さんのパンで、パンの焼いている匂いが生地からあふれていて美味だった。

「お尻歩き競走」の疲労を癒しながらそのパンを食べていたが、ある意味戸惑ったのは、各アイドルも同じ空間で昼食を取っていたことだ。

雰囲気的には本当に運動会の昼休み、といった懐かしい感じの空気が流れ、特にアイドルさんにがっつくヲタクもいなく、と言いながらも距離があるわけでもなく、途中で炭坑ガールズからみたらし団子までいただいて、まったりしながらもそこにアイドルがいるというぜいたくな時間を過ごさせていただいた。

 

知り合いのフォロワーの筑紫大弐さんはこの日の「炭坑大運動会」を「一回で三回おいしいイベント」と評していたが、昼休みが終了すると、運動会以外の二回も三回もおいしいイベントが始まる。

さっきまで競技していたホールの真ん中にシートが敷かれステージが設営されてのライブステージ。各グループ20分間も持ち時間のある、普通の対バンイベントと変わらない時間のステージが見られた。

しかも衣装ではなく、さっきまで大運動会に参加していた服装というレアなステージ。

ステージのトップバッターはRe:five。

まだ生誕祭を行ったことのないひなさんは私服だったものの、他の三人のメンバーは生誕祭のときに製作されたなぬきはなのさんイラストの生誕Tシャツを着ていた。いきなり「なんてんまんてん」で会場の熱気を最高潮に上げてくれた。MCで柊わかばさんが「はなちゃんお誕生日おめでとう」と誕生祭である雰囲気を盛り上げてた。それからはラストの「朝からカツカレー」まで、ジャージと体育館シューズという動きやすい服装で激しいダンスを魅せてくれた。

熊本Flavorは先週のKMFのラストで披露された合同ユニットのさしよりカレーTシャツで揃えていた。こちらも最近ライブの一曲目に定着しつつある「OMG」から会場を盛り上げていた。ラストは、Xなどでイヤホンチャレンジが話題の「コイマチ」。この日はいつもと違う荷物が多く、イヤホンをちゃんと持ってきたファンはふたりと、熊本Flavor運営のみゆ先生はご立腹だったが、怒られたファンたちは「エアーで」と口々に言い訳しながら、指先だけでイヤホンチャレンジする絵もなかなか楽しかった。

オフィシャルのTシャツで揃えた炭坑ガールズは「GATA☆GO TRAIN」からスタート。何度見ても間奏のときに後方に下がるゆいさんのバック転が圧巻。先週のKMFでもこの「GATA☆GO TRAIN」と「KURO★DAIYA」でバック転を見せるたびに、初見と思われる人からどよめきが起こっていたが、ゆるい空気でオフ会やMCをこなしながらも、ステージでは他のアイドルがあまりやらないアクロバットを見せつける。さすがの世界だった。ラストは荒尾のイベントでしかあまりやらないらしい「ラララDANCE」。炭坑レッドさんが「この曲はファンの方もカメラを置いて肩を組みましょう」と言われ、ステージのメンバーと同じようにフロア全体も肩を組んで一体となった。ファンはもちろん、炭坑ガールズの保護者の方やゲストグループのアイドル、運営までも肩を組み、ステージの炭坑ガールズと同じように身体を左右に揺らし、手を振る。その一体感はまさにアットホームな荒尾市を盛り上げようとしている炭坑ガールズの世界感があり、非常に良かった。

炭坑ガールズのステージの後は、メンバーのはなさんの誕生会。「HAPPY BIRTHDAY」と書かれた風船を中心に飾り付けられたステージをバックに、弱冠八歳のはなさんがソロ曲を歌われていた。このような年齢の幅の広さもこのグループの奥の深さだと感じた。

 

午後の競技は綱引きからだった。

さすがに綱引きは、ファンを中心に結成された炭団とアイドルとはハンデが必要で、炭団の男性三人対赤団のアイドル六人だった。しかし、人数を半分にしても、大人げないおじさんたちのパワーで炭団の圧勝だった。さすがにこれでは盛り上がらないと司会をされている炭坑レッドさんが「次の(炭団と黄団の対決は)炭団は二人で行きましょうか?」と提案するも、すでに炭団三人に敗北している赤団から「それはフェアじゃない」と猛抗議が起こり、結局おじさん三人がアイドル六人に勝ってしまうという誰も得しない展開になっていて面白かった。

そのあとは五人六脚。二人三脚まではやることがあっても、なかなかここまでの足の数はやることはない。それでもなんとかぼくは形になって出れたつもりだったが、このあとにこの日MVPのゆいさんの物販に行ったら「パパの横のたきびさん、足引っ張ってた」と言われてしまった。

更にリレーも走るのは二人で他にはジャンプやハイハイ、目隠しと一筋縄ではいかない方法が考えられていた。リレーはぼくは目隠しで出場したが、ただただ怖かった。なかなか大人になって目隠しすることないのもあってビビったし、なんだか懐かしかった。

「お尻歩き競走」でも異次元の速さを見せたゆいさんが、超絶速いスピードのハイハイで周りを唖然とさせ、赤団の優勝の原動力になっていた。

 

綱引きの炭団の人数の赤団の抗議でもわかるように、物見遊山で参加するだけでもしあわせなぼくのようなファンと違い、アイドルさんは本気で勝ちたがっていたからこそ、すごくスリリングなイベントだった。

また何度も言っているように、荒尾に来てくれたのだから、ファンに対して運営さんやメンバーの「一緒に荒尾を盛り上げてくれるゲスト」という態度が終始あらわれていたから、居心地もよかった。

イベント終了後、炭坑メンバーは会場の片づけを行っていて、そういえば荒尾シティーモールでもそうだったなと、その姿も印象的だった。

当たり前だけど、そんな炭坑ガールズでも、市外や主催じゃないアイドルイベントでは、一般的なアイドルとファンの関係だ。

だが、ホーム荒尾でファンを迎えたとき、「一緒に荒尾を盛り上げてくれるゲスト」として心からのおもてなしをしてくれる。

それこそが「炭坑ガールズの荒尾での主催イベントは行った方がいい」と言われる所以であり、その主催イベントの運動会だから、強烈に楽しかった。

オリンピックは四年に一回だが、炭坑大運動会は毎年やっているらしい。

ぜひ来年も参加したい。

 

 

 

初めて天草にアイドルを見に行ったのは、2015年の7月12日だった。第一回の天草アイドルフェスタが開催されたときだ。
2013年の冬、当時九州のアイドルシーンを引っ張っていたグループが多数出演する大分のChimo主催のイベントに行ったぼくは、そこで熊本から唯一出演していたくまCanに心奪われた。
そして気づいた。
熊本のアイドルシーンは面白い。
2012年に熊本県初のご当地アイドルとしてデビューしたSENSEは、他の九州のアイドルと同じように、一番身近にある大都市・福岡のアイドルの影響を強く受けたスタイルだった。しかし、その後現れた熊本のアイドルは九州第二の都市という県民性が表に現れ、2013年末頃には熊本のアイドルシーンは九州では福岡とは違う独自のスタイルで進化していた。
更に、福岡の場合は、熊本が福岡の文化を素直に受け入れられないように、東京の文化を素直に受け入れない県民性があるのだが、逆に熊本は東京の文化は素直に受け入れるため、独自の進化をしているもののセンスは、かなり洗練されているように感じた。いわゆる九州人あるあるで「福岡よりも熊本の人のほうがおしゃれな人が多い」と言われることがあるが、これは東京の真似をするのが嫌という地方大都市のアイデンティティを持っている福岡よりも、東京で流行っているものを熊本の人は素直に受け入れているからだとぼくは考えている。その県民性が地域のアイドルシーンにも反映されているように見えた。
そうやって2013年末から熊本のアイドルシーンにどっぷりつかり、当たり前のようの熊本に通ってた2015年、天草でアイドルフェスタが開催された。なんでも天草でMONECCO5というアイドルが生まれ、その一周年を記念したイベントだという。出演アイドルは、そのMONECCO5をはじめ、ぼくの推してたくまCan、熊本クリアーズ、Airy☆SENSEという熊本のアイドルグループに、佐賀からピンキースカイ、長崎からミルクセーキという顔ぶれだった。
会場の五和町コミュニティセンターは名前こそ地域の公民館みたいだが、着いてみると立派なコンサートホールだった。来場者も三百人近くいたと思う。ロコドルのイベントにしてはかなり多い来客数だ。しかもテレビ放送があるらしく、天草のケーブルテレビのカメラまで入っていた。司会者も天草のケーブルテレビのアナウンサーだったと思う。
「ロコドルでこんなイベントができるとは!」
ぼくはその環境に感動した。
失礼な言い方になるが、MONECCO5をはじめ、出演アイドルはどのグループも当時は一部の熱狂的なファンはいたけれど、一般的にはほぼ無名の存在だった。それなのに、ホールでこれだけ人を集めてライブができることに感動した。
その後、天草アイドルフェスタは六回開催された。回を重ねるごとに大都市福岡のアイドルも出演するようになり、コロナ禍前最後の開催になった2020年には、福岡空港と天草空港を結んでいる天草エアラインを使ってのJTBの観戦ツアーまで用意されたほどだった。
ただし、2020年末より世界的にコロナ禍に突入し、2020年12月にMONECCO5が解散したこともあり、それ以来天草アイドルフェスタは過去のものになってしまった。
コロナ禍が本格化した2021年頃には、国が「人をあまり集めるな」と言ってるような入場者規制を主催者に強いて、アイドルグループは無邪気に新規獲得に動くわけにはいかず、既存のファンへのサービスだけで手いっぱいになっていた。結果的に、ヲタクは好きなアイドルしか見れないという偏った現象になり、熊本のアイドルシーンも、もはやシーンという存在は消え、それぞれのグループが少人数のファンを対象に単独イベントを打つしかない状況だった。結果的にそれぞれのグループのそれぞれのファンがいつものアイドルを見るだけのガラパコス化した状態になってしまった。

そのような状態に熊本で風穴を開けたのが2022年6月13日に初開催された「LIKE!」である。
Re:fiveが初回から出演していたこともあり、ぼくは結構通わせてもらった。ほぼほぼ毎月定期的にやるということが大きかった。
同時期に熊本のBe-9でものちに熊本のアイドルシーンを支える「ネバスト。」もスタートしていたが、こちらは2022年の11月までは熊本のアイドルの出演はなかったので、当時の熊本のアイドルシーンへの影響は少なかった。

「ネバスト。」に熊本のアイドルが出演するようになり、少しずつコロナ禍にも人が慣れだした2023年の4月に、天草でRe:fiveの橘かえでさんの卒業公演として、天草アイドルフェスタの主催者が主催する「TACHIBANA IDOL FESTA」が開かれた。
この「TACHIBANA IDOL FESTA」が動員、出演アイドル数を考えても2023年の熊本のローカルアイドルでは最大のイベントだったと思う。
ただし、「TACHIBANA IDOL FESTA」は長年MONECCO5、Re:fiveで活躍した橘かえでさんの卒業イベントだった。卒業イベントのもう橘かえでさんには会えないかもしれないという気持ちを抱えたイベントだったので、楽しくもあったが悲しくもあった。
そんな複雑な気持ちの中でも、またこのくらいの大きなイベントがあるといいなとぼくは漠然と思っていた。結局、橘さんとはその後何度も会えたので、その思いも大きくなっていた。

そんな思いを叶えてくれたのが2024年7月21日に開催された「KUMAMOTO MUSIC FESTIVAL」である。
主催はコロナ禍の中で熊本のシーンを盛り上げてくれたLIKE!の主催者の天海さんを、天草アイドルフェスタを支えていた現Sunny Honeyプロデューサーの紫谷さんがサポートするという布陣。
出演アイドルもMONECCO5の後継グループ・Re:fiveに始まり、ミルクセーキ、パピマシェ、ルナリウム、えくれあエクレットと過去に天草アイドルフェスタに出演したグループが県外から集まった。熊本勢もchemLiLy、POTION、炭坑ガールズ、熊本Flavor、Sunny HoneyとLIKE!常連のグループが出演し、更には#SSSG、AQUA PLANET、UMATENAと話題のグループも登場。
チケット発売日に、熊本のヲタクたちはこのイベントが、自分たちが思っている以上に注目されていることに度肝を抜かれた。
6月20日の20時に予約開始がされたのだが、いつものLIKE!ぐらいの感覚で、特に20時に身構えていなかった熊本のヲタクはいざ予約をすると驚いた。
ぼくの話をすると、ぼくは20時に予約開始は知っていたが、20時に予約をする準備などしていなく、20時10分ごろに「あ、そういえば」と思って、予約をした。そしてそのときのチケット整理番号がすでに「65番」だったのだ。
大イベントのチケ発みたいに時間に構えているヲタさんがいることが不覚だったし、10分で64枚も売れている事実にも驚いた。
同じことを思った人がぼくの周りにはだいぶいて「数分遅れただけなのに30番だった」「75番だった」「80番だった」といった声が聞こえていた。
熊本のヲタク以上にこのイベントに期待している人もいる。
熊本のヲタクはこのチケットの整理番号が遅いのを逆にポジティブにとらえ、イベント当日までは「駐車場がなくなるかもしれないから相乗りして行こう」などと前向きな相談をしていた。

そしてイベント当日。
快晴だった。それも午前八時すぎに一度通り雨が降ったため、湿度も高く、暑かった。
ただ、冷房の効いている管理事務所に入れたり、お祭り広場の上には木陰で休めるスペースがあったので、まったく逃げ場のないようなイベントではなかったのは救いだった。
そのため、推しのグループ以外は木陰に避難して見ることが多く、ステージ前には熱心なファンしか集まらず見た目には寂しかったかもしれないが、木陰のある山手からゆっくりステージを見ている人は結構な数がいたように思う。もちろんぼくも「二階席も見えてるよーと言って」と言いながら、木陰から見ていた。そうしないと体力が持たなかった。
そうやっていつも見ているグループは炎天下で楽しみ、普段あまり見れないグループは山手から見せていただいたが、普段あまり見れないグループが見れたことはすごくよかった。特に話題のUMATENAのIt's a Green Dreamを生で聴けたのはよかったし、久しぶりのパピマシェのロコモーションは名曲だし、ミルクセーキのわらふぁん、Say it!、DEJIMAラプソディーのヲタク殺しのセトリはさすがだった。
いつも見ている熊本のグループはどのグループも本当に良かった。

単純なパフォーマンスの質で言えば、暑さでコンディションが万全ではなかったり、野外でモニターが拾えなかったりと、慣れている天海などのステージのほうが質は高かったかもしれない。しかし、どのグループもこのイベントに賭ける思いが感じられ、気持ちのこもったステージをやっていた。
それはこのイベントが、どのグループも初めてだったからなんだとぼくは思った。
慣れてないステージに立つことはやはり大事だなとぼくは感じた。
慣れは怖い。
同じこと、似たようなことを何度でもやっていれば、いずれ力の抜きどころもわかってくる。
「次もうまくいくだろう」と楽観的に考えてしまい、アイドルが手を抜いたとき、敏感なヲタクは意外と気づいてしまうものだ。
それとは逆に、慣れてないステージ、あまり知らない客席を前にしたとき、アイドルは成長する。
だからこそ、めったにできないこの日のような大きなイベントのステージは楽しく、素敵なのだと思った。
ぜひとも来年も開催してほしい。
暑かったけど本当に楽しかった。
ヲタクはいつもと違う空気に羽を伸ばし、アイドルはいつもと違うからこそ素敵なパフォーマンスを見せる。

これはやはりフェスという環境がそうさせてくれたのだ。

疲れたけど楽しかった。

帰りに仲のいいヲタさんは、みんなそう言ってたから間違いない。








2014年に武部政則氏と紫谷星伍氏によって結成されたMONECCO5は熊本県天草市が本拠地のアイドルだった。
当初は「天草の人を楽しませるアイドルだから」と天草の小さなお祭りにも積極的に参加するグループで、むしろ天草以外での活動は少なかったと記憶している。
しかし、オリジナル曲にしっかりしたダンスをするグループということで注目を集め、また天草市内に九州各県のアイドルグループを呼ぶAMAKUSA IDOL FESTAを主催したこともあり、天草外での知名度も向上。基本は県外のヲタクが天草を訪れることが多かったが、九州内はもとより、東京や大阪にも遠征するグループになった。
そのMONECCO5が五年目を迎えた2019年2月、福岡市役所前で初披露された曲が「朝からカツカレー」である。
インパクトのあるタイトルに、ついつい真似したくなる「いただきます」のダンスのこの曲は、またたくまにMONECCO5の代表曲になった。
それまでは「MONECCO5の代表曲は?」とヲタク同士で話しても定番の「なんてんまんてん」やメジャーデビュー曲の「キミを待ってる」、マニアックにレベルが高い「キセキノサキへ」や「Avalon」と、そのヲタクの好き嫌いで意見が別れていたが、この曲が発表されるや、好き嫌いはともかくMONECCO5の代表曲といえば「朝からカツカレー」というふうに認知されるようになった。
そのMONECCO5は2020年12月に解散する。
活動期間は6年半で、そのうち「朝からカツカレー」を歌っていたのは二年弱なのだが、それでも人々の記憶のなかにはMONECCO5=「朝からカツカレー」の印象は強く残っている。
MONECCO5解散後、武部氏、紫谷氏が残ったメンバーと歩みだしたのがRe:fiveである。
Re:fiveのデビュー曲「君とRESTART」には「六年半ありがとう」という歌詞が歌われているが、この二小節でもわかるようにRe:fiveは、拠点を天草市から熊本に移したものの、MONECCO5の後継グループだ。
ちなみにMONECCO5当時はマネージャーという肩書きだった紫谷氏の肩書きがプロデューサーに変わったのもこの頃だったと記憶している。
Re:fiveはコロナ禍の中でも地道に活動を続けていた。
そして、コロナ禍もようやく開けた昨年の11月、紫谷氏がRe:fiveの運営から離れ、熊本で新グループを立ち上げることが発表された。
その新グループがSunny Honeyになる。

4月21日はそんな天草にルーツを持つRe:fiveとSunny Honeyの対バンイベントに行ってきました。
会場はもともとはMONECCO5のために作られた劇場Studio5。
定期的にStudio5でライブをやってるRe:fiveは、柊わかばさん、東雲ういさん、空豆かれんさんと研究生のひなさんの四人のフルメンバーでした。
天草での開催と最年長の責任、そしてやっぱりミクチャ配信の経験もあったんでしょう。柊わかばさんがマスターとして仕切る姿は安定感がありました。
時折、フロアと会話しながらMCを回し、イベントに起承転結のメリハリをつけてた姿はさすがでした。MONECCO5のときはずっと末っ子だったので、控えめなスポーツ少女だったのに、まわりを見ながら、他のメンバーに目配りして、フロアを飽きさせない気配り。複数のアイドルの出るイベントだけじゃなく、こうやって主催ライブで何度も企画も経験してるからこそできる見事さでした。
東雲ういさんは東雲ういさんでした。
Re:fiveがRe:fiveであり続けるのに、いまの東雲さんの自由さは大切なものになってると思います。「St…you」など、メンバー同士でじゃれあう振りも見てる人が楽しくなるほど、めいっぱい楽しんでるように見えて、東雲さんが自由にステージを楽しんでるから見てるフロアも楽しめるいいサイクルが出来上がってるように感じました。
空豆かれんさんは歌唱力がめちゃくちゃ仕上がってて聞き惚れてしまいました。スレンダーな身体に長い手足とモデルさんのようなスタイルでこの歌唱力。同い年ということで東雲さんと比較されることも多く、ヲタク的な印象ではフリーダムな東雲さんと優等生な空豆さんという空気があります。ただ、なぜか最後の曲の「ダンデライオン」で笑い出したりとたまに予想外なことも起こしてくれるそのキャラクターもまた魅力的でした。
研究生のひなさんは、この日は歌割りがなかったのが残念でしたが、デビュー当日からヲタクたちがメロメロになったルックスで輝いてました。

そのRe:fiveに負けじと挑んだSunny Honeyは、ぼくは見たのは二回目だったのですが、一曲目に歌った「Sunny days」からそのダンスの完成度の高さに、一回目の荒尾でも驚いたのですが、更に驚きました。
手慣れたRe:fiveに比べて、初々しいMCも好感が持てました。
そしてうちわを使ってのフリコピと間奏のショルダーシミーが楽しい「太陽的なぼくの彼女」。荒尾のときもこの曲を二回やり、この日も二回やったので、フリコピも含めライブで聴くのに楽しい曲として力を入れてるように感じました。
えくぼと八重歯のかわいいリーダー・花宮かのかさん、おとなしめのルックスなのに歌がめちゃうまの氷織ゆきさん、派手さが目を引くけど仕草のかわいい月城きよかさん、ファッションモデルのようなスタイルのよさなのに幼さの残る笑顔がかわいい星乃きさきさんと、メンバーさんもそれぞれ個性的で、また四人のキャラがまったくかぶってないこともアイドルグループとしての奥の深さを感じさせてくれました。

そしてなんといってもこの日の最大の見せ場は、Re:fiveとSunny Honeyがコラボして「朝からカツカレー」をやるというものでした。
「オリジナル曲がまだ二曲しかなくて、できる曲を増やしたいのでわたしたちも朝からカツカレーをやらせていただきたい」とフロアに語りかけたSunny Honeyの花宮さん。
フロアにはMONECCO5の時代から「朝からカツカレー」を聴いてきている方も何人もいらっしゃったが、みなさんそれぞれ「この子達の朝からカツカレーも聴いてみたい」とうなづかれていました。
歌割りはRe:fiveしかなかったものの、歌いながら自由な東雲さんを先頭に、Sunny Honeyとの共演を楽しむように歌うRe:fiveの姿はなかなか素敵なものがありました。
同じMONECCO5をルーツに持つこのふたつのグループが、切磋琢磨しながら各地で「朝からカツカレー」を歌うようになれば、それは素敵だなとぼくは思いました。
早くSunny Honeyの歌う「朝からカツカレー」も見たいです。

なお、ライブはそれだけでは終わらず、ラスト前に、マイクが壊れるトラブルというドッキリが運営から仕掛けられ、Re:fiveが歌えない代わりに、速度変化する「君とRESTART」を踊るというおもしろ企画もありました。
途中でRe:fiveとSunny Honeyがクイズ対決するMCコーナーもあり、ただでさえ楽しかったRe:fiveのワンマンライブがSunny Honeyのおかげで更に楽しくなってました。
てなわけで、どのくらいの頻度で開催されるかはわからないけど、Re:fiveとSunny Honeyの対バンはおすすめです。


3月4日から始まり24日まで続くTGCランウェイオーディションに参加しているため、現在、毎日、ミクチャの配信で会うことのできる柊わかばさん。毎日の長時間の配信で柊さんの意外な一面を発見することもできる大変楽しい時間なのだが、ぼくは初めの頃から何度か配信に顔を出して、柊さんの意外な一面に驚いたことがある。

それは「あれ? 柊わかば、意外にアイドル好きなんだ」ということだった。

柊さんがミクチャで流すBGMが、ことごとくアイドル曲でぼくは驚いたのだ。時には鼻歌で歌ったり、一度だけカラオケ配信してくださったこともある。

現役アイドルに対して「意外にアイドル好きなんだ」と感想を抱くのは全く失礼な話とは思うが、率直な感想として、そのくらいアイドルとつながらないイメージをぼくは柊さんに抱いていた。

 

2010年代に日本中を席巻したアイドルブーム、これは今思い返せばアイドルダンスのブームだった。

CDで聴くことが主体だったこともあり、それ以前のアイドルは歌を聴くものであった。踊っている姿といえば、広いコンサートホールで豆粒のような小さい姿を肉眼で見るかオーロラビジョンで見るか、もしくはたまに歌番組で見るかということで、それはそれで特別な体験だったが、もっぱら再生芸術として繰り返しファンに愛されたのはアイドルのダンスより歌だった。好きなアイドルが歌番組に出ても、ヲタクが繰り返し聞くのはCD音源なのが普通だった時代だ。いまでは信じられないが。

それが会いに行けるアイドルが生まれてから、劇場に通えば生のダンスがいつでも見られるようになり、ヲタクがダンスに触れる機会が増えた。インターネットの発達で動画サイトも充実し、ヲタクが再生芸術として繰り返し見るのがCDから動画に変わってきたのもこの頃だ。

そして2010年当時だとメジャーアイドルの劇場公演でもリップシンクするのが普通の時代だった。だからこそ、生でアイドルを見れば、歌を聴くことよりダンスを楽しむことが、ライブでの醍醐味だとヲタクが感じるようになってきていた。

2012年に小学校でのダンスの授業が必修になり、日本国民も義務教育レベルからダンスの底上げが始まった。

2014年に結成されたMONECCO5は明らかにこのアイドルダンスのブームの影響を受け、ダンスに重い比重を置いたグループだった。それは2015年に1周年イベントとして開催された「AMAKUSA IDOL FESTA」のトリで登場したときの一曲目に、メンバーが誰も歌わないダンス曲を持ってきたことでも明確だった。

そんなMONECCO5の最後の新メンバーで、ずっと最年少だった柊わかばさんは、本人の恵まれた身体能力の高さを活かして、ひたすらダンスを魅せるアイドルだった。カメコさんたちに「ばっち(柊さんの愛称)をブレずに撮るのはむつかしい」と言わせるほどのダンスは、ストイックでアスリートのような魅力さえあった。

ご本人もバスケットボールやバレーボールの部活で活躍されていることを公言され、運動会オフ会「モネリンピック」でも大活躍と、スポーツ大好き少女のイメージが強かった。

だからこそ、ぼくは柊さんがアイドルが好きなのは意外に感じられたのだ。

 

昨日はその柊わかばさんの18歳の生誕祭だった。

スタジオ5、新熊本アイドルシアター、天海とここ数年、会場が毎年のように変わっていた柊わかば生誕祭が今年は、天草出身の柊わかばさんの原点ともいえるスタジオ5に帰ってきた。

ステージをパッと見て目を引いたのは、かつてのMONECCO5の生誕祭にようにステージにのぼりが張られていたことだ。それに加え、バルーンスタンドとたくさんのバルーン、パンリーフがステージに並べられ、かつてないほどにぎやかに飾り付けされていて、開演前からぼくの胸が高まった。

開場が暗転し、本日の主役、柊わかばさんの影アナからライブはスタート。

Re:fiveの生誕祭は衣装もセットリストもこの日主役のメンバーがチョイスするのが恒例になっている。この日、柊さんが選んだのは、ネクタイブレザーの衣装。ラクガキアクセルのCDジャケットにも使われているこの衣装は、全盛期のMONECCO5を象徴するような衣装であり、久々の天草での生誕祭への意気込みを、ぼくはその衣装からも強く感じた。

そして、18歳、新成人ということでこの日、柊わかばさんは、初ヘアカラー、初ピアスのお披露目だった。

ピアスは右耳にふたつ、左耳にひとつがライトに反射して光り、大人っぽさを強調していた。

MONECCO5時代はスポーツ少女のイメージもあってか、ショートカットの時代もあったのに、いつのまにか少女が大人になるように長く伸びた髪は、ピンクの可愛さも交じりながらも大人っぽさも感じさせる上品な赤に仕上げられ、すごく似合っていてエレガントだった。

MONECCO5時代の活発なスポーツ少女時代からは、ほんとうにいつのまにかイメージを一新して、Re;fiveの美人枠は柊わかばさんになったなと感じた。

 

生誕の企画コーナーは「柊わかば年表」。

門外不出の子供の頃の写真なども出しながら、柊さんが生まれ、18歳の誕生日を迎えるまでを年表に書くという、これまでの生誕祭ではなかったまったく新しい企画だった。

 

(写真は萌え豚さんにお借りしました)

 

小学校に入学し、9歳でMONECCO5に加入。人生の半分がアイドルという柊さんの18年間の年表を、柊さんが説明し、それに吉川りおさんと一般人Kさんが笑いを交えながら進行する楽しいイベントだった。柊さんのレアな写真や説明も楽しかったが、こういうイベントに吉川りおさんが司会をしてくれるのがRe:fiveの強さだとも感じた。

 

もちろん、現役のRe:fiveも輝いていた。

この日一番の見せ場は、Re:fiveとしては昨年のバレンタインライブ以来とはいえ、そのときは柊わかばさんと橘かえでさんのふたりで演じられたので、現メンバーとしては初の「Avalon」が披露されたことだった。

MONECCO5史上もっともBPMが早く、ダンス難易度が高いといわれていたこの曲を、MONECCO5時代から歌っていた柊わかばさんが、東雲ういさん、空豆かれんさんを従えて歌う姿は、素晴らしかった。

そしてぼくはこれでやっとRe:fiveがMONECCO5を越えることができたと感じた。

MONECCO5の歴史を引き継ぎ、新たに熊本県のアイドルとして再スタートしたRe:fiveにとって、MONECCO5がやっていた曲が技術的な問題で出来ないというのは大きなコンフリクトだったとぼくは感じていた。もちろん、後継グループとはいっても、過去のことをやるのではなく、新しいことを生み出すほうが大事なので、MONECCO5の曲を無理にやる必要はない。ただ、「やらない」と「できない」は大きく違い、もしかしたら真実はできるけどやらなかっただけなのかもしれないけれど、Re:fiveがMONECCO5のやっていた曲で、できない曲があるかもしれないというのは、その曲の難易度が高い曲であればあるほど、それが「Re:five もいいけど、MONECCO5はもっとすごかったんだよ」と言われかねない無言の足かせのようになっている気がしていた。そしてMONECCO5の曲で、もっとも高難易度と思われていた曲が「Avalon」だったからこそ、この柊わかばさんの生誕祭という特別な日に、しかも天草のスタジオ5でこの曲をやってくれたことは、その足かせが吹っ飛んだようにぼくは感じた。

偉大なる先輩であるMONECCO5を、MONECCO5の元メンバーである柊わかばさんが、新しいアイドルグループRe:fiveとして演じ、天草でMONECCO5を越えてくれたのだ。

昨日は柊わかばさんの生誕祭という特別な日であったのだけど、その特別な日についにRe:fiveがMONECCO5を越えたとぼくは実感できたことが最高だった。それが柊わかばさんからの、この日生誕祭に来たファンへの一番のプレゼントだったと思う。

 

デビューしたばかりで熱狂的な人気を生んでいる研修生のひなさんは、はじめてツインテール以外のヘアスタイルを披露し、またもやファンをメロメロにしていた。

柊さんの生誕祭だからこそ見られる、元MONECCO5の吉川りおさんや一般人Kさんとの絡み、個性的なキャラでRe:fiveを盛り上げる東雲ういさんと空豆かれんさん、そこに熱狂的な人気を生んでいるひなさん、をしっかりまとめあげる柊わかばさん。

運動神経が高く、ダンスがすさまじいので、これまではアスリート的なキャラで見られていたところも強かったが、配信でアイドル好きとあらためて気づかせてくれ、ピアスをあけ、髪を染め、気づいたらすごく美人なお姉さまになってた。

そんな柊わかばさんの生誕祭、終わったあと、ぼくはふとつぶやいた。

 

きれいなお姉さんは好きですか?

 

 

ひぜんりささんは、はじめから5erに大きなインパクトを与えていた。

2017年のAMAKUSAアイドルフェスタ、天草市民センター大ホールにつめかけた250人の前にほぼ無名の状態でトップバッターを務めたのがひぜんりささんだった。

福岡からくるーず、長崎からミルクセーキ、佐賀からひぜんさんの先輩であるピンキースカイ、熊本はホストのMONECCO5にAiry SENSE、熊本クリアーズとそうそうたるメンツのライブだった。

たしか直前になってゲスト出演が決まったんだったと思う。

ほぼ無名、名前を知っている人もピンキースカイの事務所の新人だから知っているだけで見たことはない、そのような状態で大ホールのステージにひとりぼっちで立ったひぜんりささんは、パンダのポーチを身に着け、いまのステージの片りんを感じさせるパワフルでキュートなステージを見せ、5erを魅了した。駆け出しだったのでチェキがたしか500円で撮れたこともあったろうが、物販もびっくりするほど混雑したのを覚えている。

当時、ひぜんりささんは弱冠17歳。

 

昨日はそんなひぜんりささんの656広場で行われた生誕祭に行ってきた。

ステージの下には生誕委員さんに飾り付けらたバルーンは「24」の数字だった。

去年「23」の数字を見ていたはずなのに、もうあのAMAKUSAアイドルフェスタから7年も経つのかと、つい冒頭に書いたような昔のことを思い出してしまった。

ぼくは11時過ぎに会場に着いたのだが、その時間にはすでに前物販が始まっていた。

その物販とリハーサルの合間を見ては、ひぜんりささんがマイクを持って、会場周辺を散策されている方を呼び込んだり、出店の紹介をしていた。

主役自らイベントを盛り上げようと、そうやって動いている姿は、イベントスタッフとして仕事をすることもあるサガンプロ所属のタレントらしいなと感じたし、さすがだなと思った。

 

この日のゲストは、福岡から博多ORIHIMEと熊本からRe:five、そして事務所の先輩の園田有由美さんだった。

HR時代から、HRのあの狭い劇場でもステージを降りてフロアを走り回るパフォーマンスを見せていた白石ありささん率いる博多ORIHIMEは、やはり656広場との相性がかなりいい。この日、1部はトップバッターで登場し、会場を暖めた。日が陰りかけた2部ではさらに暖めるように一曲目の「にわか」から全開。優れた楽曲にレベルの高いパフォーマンスはライブハウスで見てももちろん楽しいのだが、656広場のような開放感のある屋外スペースではライブハウスとはまた違う一体感が感じられて素晴らしかった。

Re:fiveは大黒柱の柊わかばさんが欠席で、話題の研究生・ひなちゃんも歌割があるというレアなステージだった。遠征とはいえ、一番多い遠征先である佐賀ということもあって、遠征の緊張感と慣れたステージの安定感の入り混じるステージだった。去年のひぜんりさ生誕祭でもやったように、最後の曲、「朝からカツカレー」のオチサビでは、沸きエリアの最前にカツカレーを持ったひぜんりささんが登場。ひぜんりささんも盛り上げての熱いステージだった。この日Re:five以外の出演者はみなさん二十歳を過ぎている完成度の高い方たちの中だった。だからこそ、中学生三人というアイドル性の高さも見せてくれたと思う。

ルナソレイユがコロナで残念ながら出演がキャンセルになったため、園田有由美さんは1部2ステージ、2部2ステージと計4ステージの出演になった。もともとはルナソレイユの枠だった各部の一枠目は、ひぜんりささんに憧れてアイドルになったひぜんぴざという設定で登場。1部も2部も初期のピンキースカイがカバーしていた曲を一曲目にやって、いつもとちょっぴり違う特別感で楽しませてくれた。ひぜんぴざ、園田有由美さん、両ステージともひぜんりささんをステージに呼び、軽妙なトークと圧倒的な歌唱力で、かつて木むつのような佐賀の盛り上がりをほうふつとさせていた。両部とも「君に届け」をやってくれたし、一部では「一番後ろの君に」、二部では「Only You For me」とピンスカ曲を連発。圧倒的な歌唱力があるので園田さん本人の気持ちのこもったシンガー曲を歌うのも新しい園田さんの魅力とは思うが、ようやく木むつが復活したぐらいで、656広場ではしゃぐのに飢えていた心にはこのような選曲はうれしかった。

 

一部、 二部共に登場したひぜんりささん。

一部でも相変わらずパワフルに魅せ、二部では衣装に羽根を生やし、バルーンスタンドの風船を持つという遊び心の中、シャボン玉も浮かぶステージで、やはりパワフルなステージで、656広場を魅了していた。

7年前のAMAKUSAアイドルフェスタでは、度胸のすごい少女だなという印象を鮮明と覚えているが、いまのひぜんりささんは、7年前にぼくらを驚かせてくれた度胸などもう普通にこなしているので、今更驚くことのない安定感の高いステージだった。

小さい身体をアンヴィヴァレントに大きく動かし、ステージを元気よく走り回る。沸きエリアはもちろん、撮影しているファンが多いエリア、遠巻きに見ている人にも一瞬でコミュニケーションをまなざしで取るレス力。もはやそんな姿をいま見ても「度胸があるなあ」という感想ではなく、「さすがだなあ」と感想が変わるほどの安定感を見せつけてくれた。

そして評価すべきは歌だけでなく、その間のMC。途中で園田さんと一緒に話すところもあったけれど、おひとりでも抜群のトーク力とファン思いの暖かさでステージを飽きさせないのは、さすがサガンプロだなと感じた。これは木むつライブという毎週行われる無銭ライブで鍛えられたキャリアと思うのだが、何度見ても舌を巻くほどのうまさを感じた。

伝説のピンキースカイの後輩でありながら、ピンスカのいい部分を取り入れつつも、ひぜんりさらしさを大切に完全に自分のスタイルを完成させている。

7年前からそんな自分のスタイルを作っていたひぜんりささんだったが、7年も経つとそれがかなりすごみを増したなと感じました。