この夏、ぼくは一番夢中になったコンテンツは、りくりゅうのYoutubeチャンネルでもちいかわの映画でもなく、U-NEXTで8月1日に配信された吉田拓郎のライブ「春だったね2026」のライブ配信だった。今日(8月14日)でもまだ見逃し配信が見られる上に、U-NEXTはへなちょこDAZNと違い、android機種でもバックグランドで流せるので、とにかくひまさえあればずっとつけている(8月16日までだとか。DVD発売待ち遠しい!)。
それでずっと聴きながら合間にアイドルライブに出かけるということをしていたのだけど、そこでふと老害として、失われたものに気づいてしまった。
一応、ぼくの立場を言っておくと、ぼくはあまりJ-popというものは聴かない。お酒を飲みに行ってカラオケで聴くぐらいだったのだけど、そのカラオケも同世代が最新のJ-popを歌うような人が減っているので、きわめて最新のJ-popには疎い。
なので、ぼくがこれから失われたものと感じたものは、もしかしたら現在のJ-popや音楽シーンにはちゃんとあって、単にぼくが聴く機会の多い九州のアイドルの楽曲から失われているだけなのかもしれない。
さて「セカイノシンパシー」なんて曲もあったが、ぼくはいまいちばん、吉田拓郎の時代には強く存在していて、最近よく聴く曲には感じないなと思っているのはこの「シンパシー」である。
もちろん、そこには老害にありがちな世代的な断絶というのは確実にある。
潜在的に人間というものは生意気な面もあって、年上の言うことしか素直に聞けないという性質がある。
音楽に限らず、あなたが影響を受けた小説家、漫画家などの芸術家のほとんどは、あなたよりも年齢が上ではないだろうか?
吉田拓郎でも、吉田拓郎が29歳の時に開催した野外のオールナイトライブは、当時十代の観客が多く押し寄せ、その未成年者が深夜までライブ会場にいることが問題になったりしたらしいが、基本的には、彼の言葉に感動しているのは吉田拓郎より年下の人だと思うし、ぼくに関しては親よりも年上だ。
なので、すでに老害の域に達している不肖・たきびがある意味、最近の若いクリエーターのものにシンパシーを持てないのは老化現象として仕方がないところはある。
それでもあえて言いたいのです。
最近の曲は聴いている人よりも歌っている人が主役になっていないか?
と。
基本的にあまりJ-popを聴かないぼくが良く聞いている新しい邦楽は九州のアイドル曲なので、まあ、そこに限定したことなのかもしれないが、少なくとも、歌っている人が主役になっている曲が多い気がするのだ。
あんまりいま流れまくっている曲を例にあげるとちょっとあれなので、古めの曲で言うとたとえばLinQの「カロリーなんて」なんて、アイドルオタクがシンパシーを持って聴ける曲ではない気がする。ダイエットにチャレンジするLinQのメンバーが主役の曲で、正直、ぼくには歌詞で共感できる部分は一切ない。
もちろん、ももいろクローバーの「行くぜっ!怪盗少女」やAKB48の「Pioneer」みたいな自分たちの自己紹介曲ならばそれでもいいけど、それ以外のところでも、最近のアイドルは自分たちのことを歌いすぎている気がするのだ。
吉田拓郎に限定しなくても、ちょっと前まではJ-popというのはそういうものではなかった気がする。
海外のロックスターはいわゆる大人の作った秩序を乱す存在として「綿畑行きの奴隷船には売られた黒人女が乗り、傷跡のある奴隷商人の親父が夜中に女たちをひっぱたく音が聞こえてくるだろう」なんていうぶっとんだ歌詞の曲が全米、全英チャート1位になったりする。ワールドカップで話題になった世界的名曲の歌詞だって「トミーは港で働いていたが組合がストを起こしてしまった 運が悪い 厳しいよ、人生は」みたいな歌詞なことにZ世代が気づいてちょっとざわついたりしてた。
J-popというのはたとえロックであってもそこまで秩序を乱すのではない。でも気持ちを表現するものではあったとは思う。そして、聴く人はそのロックスターの表現する気持ちにシンパシーを感じていたのだ。ロックスターが歌う「愛してる」という言葉は、聴いている人が耳にした瞬間、その歌の世界の主人公は聴いている人になって、聴いている人が思いのある人に「愛している」気持ちを昇華させる、きっかけになるようなものだったと思う。
音楽に限らず、小説や漫画、またわかる人には絵画もそうだろうが、ぼくらが悩むようにアーティストも悩む。その誰もが持っている悩みを、普遍的なものとして表現し、その悩みを作品を通じて聴いている人に主人公として体験させ、シンパシーを得ることで、芸術は感動が生まれるものだとぼくは思っている。
それでちょっと前までのJ-popはまだ、それが残っていたと思う。
たとえば、ぼくはめちゃくちゃ嫌いな曲だけど、西野カナの「トリセツ」という曲がある。この曲を聴いてぼくのような弱者男性は虫唾が走るのはやはりそこに普遍的なものとして表現している共感性があるのだろうし、女性が聴くと「わたしもこんな風に大切にしてくれる人と結婚したい」ともろにシンパシーを感じる曲なんだと思う。ウィキペディアによると吉田拓郎はこの曲を「(女性たちの)こんな努力を気づいてほしいっていう歌なのでは?」と、この曲を弱者男性と同じように「うぜー」と怒り狂っている堂本光一に言い聞かせるようにコメントしている。
ただ、たとえ男性は嫌悪感を持ったとしても、普遍的なものを聴いている人が主人公として体験できる楽曲ではあるのである。ましてや女性にとっては、自分の気持ちを言葉にしてくれた代弁者のように感じる人もいたと思う。
ただ、その聴いている人が主人公になって共感できる世界がいま、九州のアイドルシーンだけなのか、それともJ-pop全体からなのかもしれないけど、失われている傾向が最近のトレンドのようだ。
ぼくが大好きな推しグループだから言えるけど、少なくともRe:fiveはデビュー曲の「君とRestart」から「ツインテール似合ってる?」、最新曲の「Shin on me」、どれもぼくはすごく大好きな曲なのだけど、どの曲もRe:fiveのメンバーが主役の歌であり、老害のおじさんが吉田拓郎を聴いた時のように「この歌詞、メモしておこう」と思うような歌詞は正直ない。おニャン子クラブの「かたつむりサンバ」の「ゆっくりでいい、ゆっくりでいい、私のハートを迎えに来てほしい」という歌声に、勘違いしてお富さんを迎えに行こうとする主人公になれる妄想に浸る、聴いている人が主人公なれる感覚が、Re:fiveからは感じられないのである。高橋由美子が「臆病だったイエスタデイ 思いっきり泣きたいよ」と歌っているのを聴いて、自分自身に起こったつらい出来事を乗り越えるような元気も沸いてこないのである。
これが時代の流れというものかもしれない。もちろん、Re:fiveだけでなく、こういう歌詞の世界のグループが最近周りに多い。
もちろん、それでファンが評価しているのだから、それが流行であり、正しいのだろう。
ただ、吉田拓郎を神として育った老害としては、ちょっと寂しいなと思ってしまう。
7月12日のひぜんりささんのXに言葉を失った人は多かっただろう。
【佐賀のアイドル、人生最大のピンチ】
と見出しのついたそのポストでは「足の靱帯を痛めて踊れなくなってしまいました」とピンチの内容が書かれ、足に包帯を巻いたひぜんさんの画像も貼られていた。
ただし、葛藤もあったが7月20日の9周年ライブは開催すると続けられ、「試練が待ち受けていようと、悲しみや哀れみではなく、奇跡を、喜びを起こしてみせる」と力強く気持ちを書かれていた。
ぼくはこの時点ですでにライブのチケットの予約をしていたが、まあ、ひぜんりさなら、大した問題じゃないよなと思った。
むしろ、大きな飛躍のきっかけの目撃者になれるかもしれないと、良いことではないけどまさに怪我の功名のような気分になっていた。
それはすでに一年とちょっと前に、「夜明け前が一番暗い」ことをひぜんりささんが見せつけていたからだ。
一年と四か月前の昨年の3月、3月30日に生誕祭を控えていたひぜんりささんだったが、Xのポスト上では3月25日、実際はそれより以前から。過労などをきっかけに目眩などを生じて歩けないほど体調を崩していることが発表された。
この時の生誕祭は、今回の周年とは違いたくさんのアイドルをゲストで呼んでいたため、とても中止できるような事情ではなかったのもあり、ほとんど歩けない、座っている状態で主役のひぜんりささんがステージを行うというライブになった。
しかし、このライブで発表された新曲がのちのキラーチューンになる「セカイノシンパシー」だった。
そしてこのライブが終わってからのひぜんりささんの勢いはすごかった。
2025年の7月に史上最大規模の佐賀美術館ホールでの8周年ライブを成功させた。
Re:fiveのファンのぼくからしたら、2025年の9月にその8周年ライブで発表された「はちぱれーしょん」を引っ提げて、天草に数十人のオタクを連れてういたんさいにやってきた頼もしさは半端じゃなかった。
年末年始も熊本で爪痕を残しまくっていたし、その間に毎週行われていたもくむつライブも、例年なら客足の減る冬でもこの年の冬は盛況だったらしい。
そしてRe:fiveのファンであるぼくが「これはすごすぎる」と目を丸くしたのが、先月、2026年6月28日の熊本アイドル4グループ合同ツアーin佐賀だった。
昨年の熊本アイドル合同ツアーはフロアも一緒にツアーしている感じで、ゲストにその地元のアイドルは登場するけれど、フロアは熊本の雰囲気がそのまま他県に移動している感じだった。昨年は佐賀の656広場で開催されたが、あの656広場でも、フロアの雰囲気は熊本の雰囲気がやってきた印象だった。
それが今年は会場がライブハウスのGEILSだったのに、それこそ656広場で開催されるサガンプロの生誕祭やもくむつライブのように、会場は佐賀のファンの姿がたくさん見えた。佐賀だから当たり前といえばそうなのかもしれないが、昨年はフロアまでいかにも熊本がやってきたという感じのライブだったから、その昨年よりも佐賀の空気が強い印象を肌で感じて、これがいまのひぜんりさの勢いなのかとぼくは思った。
その佐賀のファンを引っ張るように、オールスタンディングだった1部からガンガンに会場を盛り上げたひぜんりささんのステージは、誰にもまねできないオリジナリティの世界観、安定した歌唱力、飛び跳ねるようなダンス、そしてファンを引っ張るあおりにMCと、素晴らしいものだった。パフォーマンス力も相変わらず高いサガンプロで、サガンプロの三人(ひぜんりさ、園田有由美、ちゃだ)でカバーした「なんてんまんてん」のクオリティは異常に高すぎて、Re:fiveが冗談半分に「わたしたちのなんてんまんてんを封印しようか」と話すほどだった。
こんな素晴らしいステージを見せるひぜんりささんが、主催の自分の周年ライブでどんなステージをやるか見てみたい、周年ライブは生誕ライブと違ってゲストもサガンプロだけだからこそ、他のアイドルのステージを盛り上げようとする気遣いをすることなく、サガンプロに全力を向けるひぜんりささんを見てみたい、とぼくは思っていた。
そこにやってきたのが7月12日の【佐賀のアイドル、人生最大のピンチ】のポストである。
しかし、2025年の生誕祭でも一番暗い夜明け前を乗り越えたひぜんりささんを見ていたから、今回の周年は、その、これからの夜明けを見せてくれるきっかけになるんじゃないかとぼくは期待していた。
サガンプロ以外のゲストのいないライブ、しかも656広場での有料ライブということで、佐賀のオタクさんでも客入りは少ないと予想していた人もいたようだが、真夏の656広場は、その暑い中、100人を超える観客で埋め尽くされていた。
7周年が「りさちーなんなーランド」、8周年が「はちぱれーしょん」と恒例化している周年ライブのタイトルとタイトル曲が9周年の今年は「きゅ~とばっキュン♡」。しかも今年の「きゅ~とばっキュン♡」は、これまでの作詞だけでなく作曲もひぜんりささんがやるというSSWなチャレンジも行われていて、常に前に進むひぜんりささんらしくて素敵だと感じた。
開演前の会場にはこの「きゅ~とばっキュン♡」と新しいOvertureが流れていた。
9年ぶりに更新されたOverture。
表向きは新しく刷新されたものだから、ひぜんりささんという前向きなスタイルのアイドルということもあって手放しに「新しくなってよかった」という顔をしているオタクの人も多かったけど、現場の空気としてはこのOvertureについては意見が二つに割れている気がした。
これは当然なことで、9年間変えられなかったシンセサウンドのファンファーレのようなOvertureが、ひぜんりささんの名刺代わりのように耳に染みついていることがひとつと、原色のポップな色合いの衣装が多いひぜんりささんとそのOvertureのシンセサウンドのエレクトロ感がうまくマッチしていたこと、そしてなによりもこれまではサウンドだけのOvertureだったので、その日のライブごとにひぜんりささんがOvertureに乗せてアドリブで影アナのようにOvertureからフロアを盛り上げてくれるのが好きだったという人が多く、その影アナ的盛り上げが完全にOvertureからひぜんりさワールドのひとつとして定番化していたため、それがなくなるのに抵抗がある人が多いようなのだ。
特に今回のOvertureは最初からひぜんりささんのセリフが入っていて、毎回まったく同じ感じであおるように設計されている。これからどうなるかはわからないが、ライブで一回見ただけでは、いままでの影アナのようなアドリブであおりを入れる余白はないようにぼくは感じた。
ただ、今後さらにひぜんりささんのライブを、誰もが盛り上がれるようなライブにしたいと考えているオタクの人たちにとっては、あえてアドリブを廃して、毎回定型化したことで、たまにしか来ない人でも前回と同じだということですぐに盛り上がれるし、なによりオイ! オイ!のコールからハミングとその定型化した盛り上がりがよく練られているので、数か月もして定番のようになると絶対楽しくなるという意見も聞いた。
おそらく、ぼくとしては後者のように盛り上がることになるようになると思う。もちろん前者のように以前の定番化したOvertureが聴けなくなるのが寂しいのも本音としてわかるが。
そしてなによりもこの新しいOvertureが、そのセリフが特に、いかにもひぜんりささんらしい世界観で作られていることに感心している。
「りさちーのライブ始まるよ」
なんて、Overtureで言えるところに、この時点でどんなライブでもフロアがひぜんりささんの世界になるとぼくは感じた。
とはいえ、この日のライブの一部はそのOvertureはなく、園田有由美さんの司会でスタートした。
ひぜんりささんは奥のDJ卓で曲を流し、フロントではサガンプロのメンバーが歌うというステージだった。
ピンキースカイをはじめ、園田有由美さんのソロ曲、そしてひぜんりささんの曲が流れたかと思うと、J-POPにアニメソング、アイドル曲もノンストップで流れ、それぞれの曲でそれぞれのサガンプロのメンバーが歌う。
出演者としてフライヤーに書かれたサガンプロのメンバーがゲストとしてひとりずつが持ち時間でパフォーマンスするのではなく、こうやってオールスターで主役のDJにノッてステージをやるのもいいなとぼくは感じた。ふいに園田有由美さんがピンキースカイの曲をやって「おおっ」とどよめくのもの楽しかったし、若いメンバーは若いメンバーで盛り上げようとしている必死さが、それぞれに歌割があるからこそ伝わった。
グループアイドルのようにいつもみんなでやっているわけではなく、この日だけの、しかもひぜんりさ9周年ライブという重みのあるイベントだからこそ伝わる必死さ。
真夏の立っているだけでも汗が噴き出す656広場でこの熱気はすごかった。そのまま熱いDJタイムは1時間ほどノンストップで続いた。
そしていよいよ新しいOvertureが会場に流れ、ひぜんりささんのステージが始まった。
だが、いきなりトラブルに見舞われる。
PA卓が熱暴走したらしく、「くりてぃかる」の途中で演奏が途切れてしまったのだ。
それでもやめずにアカペラでひぜんりささんは歌い続けると、どこからともなく伴奏を歌う声が。なんと園田有由美さんが伴奏を歌っていたのだ。
不運が重なった偶然だが、その姿に、フロアは大喜び。ひぜんりささんも手ごたえを感じたようで「動画に撮っている人がいたらあげてね」と言われていた。
さて早速オーバーヒートでこれからのライブどうなるのかと不安だったのもつかの間、PAは復活して、本格的にステージは佳境に入る。
2025年の生誕ではほとんど座ってのライブだったが、この日のひぜんりささんは、華麗に車椅子でステージを右に左にと元気良く動いていた。この車椅子の動きについては、園田有由美さんが「りさちゃんはバスケットボールをしているような音を出して、めちゃくちゃ練習していた」と言われていたが、怪我をしてもファンのために自分を甘やかさないスタイルが、その車椅子の動きで伝わった。いつもできる範囲で最大限の準備をしているひぜんりささんのステージの普段からのクオリティの高さの理由が、その車椅子の動きで、改めて見せてくれたとぼくは思った。
そして更にいいなと感じたのが、その目眩で座ってでのパフォーマンスしかできなかった生誕祭を経験しているからの余裕ともいえる、夜明け前が一番暗いことを知っている人の、夜明けを前にその暗い気持ちさえ楽しむような前向きさだった。
この日もひぜんりささんは「学校や仕事などのつらいことがあっても、ライブを楽しんでくれることが、人生を楽しむきっかけになってほしい」ということを言われていたが、まさにその生きることを楽しむきっかけを与える立場として、大事な場面でのひぜんりささんいわく「馬鹿をやっての」怪我でも、これが夜明けの来る前兆だと、つらいことがあったからこれからは良いことがきっとあるんだと言い聞かせるように楽しんでいる姿が素敵だった。
新曲「きゅ~とばっキュン♡」のハートを胸で作ってからの、弓で打ち抜くような印象的なダンスも、車椅子から見せてくれた。
いつものひぜんりささんらしく、車椅子ごとフロアに下りて、フロアを車椅子で走りながら歌う姿も見せてくれた。
そしてアンコール。
周年の有志委員の声に乗せて、途中からひぜんりささんも参加する展開。まあ、車椅子だったので、ステージを降りたりするのも大変だったのもあるだろうけれど、この楽しいライブをもっと見たいのはフロアのオタクだけじゃなくて、ひぜんりささんももっと続けたいと言っているようですごくいいシーンだった。
そしてアンコールでこの日2回目の「きゅ~とばっキュン♡」が演じられ、そこからの最後の最後の曲が、その2025年の生誕祭で座ったまま初披露になった「セカイノシンパシー」だった。
かわいい世界だけではないひぜんりささんの新境地を見せたこの曲は、ぼくの周りでも非常に好きだという人が多く、かくいうぼく自身もひぜんりささんの曲の中で一番といっていいぐらい好きな曲だ。
この曲は何度も言うが、目眩で座ってしかパフォーマンスできない2025年の生誕祭で座ったまま、初披露された。
ただ、その体調万全で生誕祭を迎えられなかったという不運がその後のひぜんりささんの活躍やファン層の拡大という夜明け前の一番暗い姿だったとぼくは思う。
だから、ぼくはこの車椅子でうたうひぜんりささんの「セカイノシンパシー」を聴きながら、今回も足の靱帯を痛めたという不運の中で周年ライブが行われたからこそ、またこれから近いうちにひぜんりささんが素晴らしい夜明けの姿をぼくらに見せてくれるのではないかと信じている。
少なくとも、この日の、足を怪我しても車椅子で、灼熱の656広場で動き回ってフロアを興奮させていたひぜんりささんは、たくさんの人の胸を打つ奇跡を起こし、喜びを生んでいた。夜明けを起こす天は、そのような人の味方をするものだとぼくは思う。
去年はお盆の最終日に656広場で開催された熊本アイドル合同ツアーの佐賀編。
今年は去年とは違い、6月末に、会場もガイルス、熊本アイドルも4グループ、しかも準備運動からの二部制とパワーアップされて開催された。
更に今年は佐賀がツアー初日。
去年の合同ツアーでは、ファンの大多数はいつも熊本でも見かける熊本勢でも、会場が違うだけでライブの空気が違うのを強く感じた。
どのグループもこのツアー用に仕上げていて、いつもの熊本とは違う特別なステージを、九州各地でこのツアーで熊本のグループは作り上げていたように感じた。
今年のツアーでも熊本アイドルグループのその試みはたしかに見えた。
主催のSunny Honeyは新曲を披露して一部も二部もトリを務めていた。
熊本Flavorは全メンバーが研修生も含めて全曲参加するステージで、セットリストもキラーチューンの「コイマチ」をはじめ、「Alice」「Love∞無限大」、そしてかなり久しぶりに「ロストジェネレーション」をやって会場を一体にしていた。
Re:fiveも昨年の佐賀ツアーでもやった「ツインテール似合ってる?」に「Shin on me」と新しい魅力を見せ、今年から主催側に回った煌~KIRA~は、去年とは違いオープニングアクトがない構成のライブの早めの時間からステージを盛り上げてくれていた。
そういう意味では、去年のツアーと変わらない熱量で熊本アイドルは熱く盛り上げていたとは思う。
ただ、熊本のアイドルのファンのひとりとして感じてたのは、去年よりも熊本アイドルの熱量の印象が強く残らず、むしろキャリアの違いもあるがゲスト出演した園田有由美さんとひぜんりささんとの圧倒的な実力差と、福岡アイドルCutiVの理屈抜きでわかりやすい盛り上げ方という、ゲストに熊本にはない良さを見せつけられたライブになったように感じた。
これには理由があって、たしかにゲストにはない良さが熊本4グループにもあって、それをゲストのステージを見に来られたファンの方に見せることはできていた部分もあったにしても、一番の理由はここ数か月、遠征やグループの周年やメンバーの生誕などの特別なステージが熊本4グループにはあまりにも多すぎて、改めてツアーなどでメンバーが気合を入れて臨んでも、ちょっとやそっとじゃ感動できないほど熊本のオタクの目が肥えてしまったのが原因なのかなとは感じた。
サッカーの日本代表チームが、28年前ならばワールドカップのアジア予選で出場権を手にしただけで日本中がひっくり返るような大騒ぎになっていたのに、現在ではアジア予選を勝ち抜いてもそこまで喜ばなくなっているのと同じぜいたくな悩みである。
それに引き換え、これまで熊本アイドル主催の周年イベントや生誕祭で出演しては、主役のグループやアイドルを盛り上げようとしていた園田有由美さんやひぜんりささんは、この日の佐賀ツアーでは明らかに自分たちの力を見せつける特別なステージを行った。
去年の佐賀ツアーでは「熊本のオタク最高!」と熊本の沸き文化に敬意を表していたのが印象的だった園田有由美さんは、今年はしっとりと「越えてゆけ」を歌い上げ、これまで佐賀で熱心に応援しているファンまで泣かせるステージを見せていた。佐賀でいつも見ているファンまで感動するパフォーマンスなので、当然熊本のオタクは圧倒された。
熊本ではメドレーでやっていた「かぐや」「くりてぃかる」のひぜんりさワールドの曲をフルで歌い上げていたひぜんりささんは、合間に「セカイのシンパシー」を挟み、幅広い世界観を見せつけていた。
そして圧巻はその園田有由美さんとひぜんりささんに売り出し中のサガンプロのちゃださんを加えた三人で、Re:fiveの「なんてんまんてん」をカバーしたことである。
園田有由美さんがPinkySkyに在籍していた頃、それこそPinkySky初の主催アイドルイベント「ピンスカコラボ祭り」からやっている、共演者の曲をカバーする得意技を、久しぶりに、それもぼくの大好きなRe:fiveの曲で見せてくれた。ライブ後のXでひぜんりささんは「頑張ったけどさ、やっぱり本家だよね」とRe:fiveをリスペクトしたようなポストをしていたけれど、Re:fiveとは違う魅力、特にハーモニーや歌唱力などでその実力を見せつけてくれて、個人的にはこの佐賀ツアーでは一番フロアが熱くなった瞬間は、熊本の楽曲を佐賀のアイドルが歌って、熊本アイドルツアーin佐賀を盛り上げたこの場面だったのではないかとぼくは感じた。
翌週の福岡ツアーでも出演するCutiVもこのサガンプロに負けず劣らず、熊本アイドルのファンを魅了していた。
盛り上がれる王道アイドル的な楽曲に、その楽曲中のレスによってフロアとステージの距離を縮める技術で佐賀でもたくさんファンを作っている勢いのまま、熊本でもファンを増やしそうな力を見せつけていたのだ。実際「熊本でもCutiVいけるんじゃない」という声も聞こえていた。
昨年の熊本アイドル合同ツアーは、熊本のアイドルの勢いを、熱く盛り上がっている熊本のオタクと一緒に九州を回ろうというコンセプトだったように感じた。
ただ、去年と違い今年は、どのグループも去年よりも成長したからこその遠征や周年、生誕祭など特別なステージをこなす機会が増えたおかげで、ぜいたくな悩みではあるが、去年と同じ程度の特別感では、ファンは去年ほどの感動が感じられなくなっているのは事実である。
そのため、今年のツアーは、特別にゲストとして出演するアイドルのほうが、準備も気合いも上回り、また地元だから動員も多く、特別感のステージに慣れた熊本のアイドルやファンを圧倒する場面が増えそうな気がする。
ただし、それは間違いなく熊本4グループにはいいことであり、その刺激を前向きに受け止め、熊本で昇華させることで更なるグループの発展につながるのではないかと感じた。
特に出演順のあやもあるのだろうが、佐賀では上段の関係者エリアで、今回ホスト側としてツアー初出演の煌~KIRA~のメンバーが、他のグループのステージに熱心に視線を送っていたのが印象的だった。
まだまだ伸び盛りの若いメンバーの多い熊本アイドル4グループ。学ぶことはいっぱいある。
このツアーが終わったとき、その4グループが更なる成長をしているのも楽しみだし、ツアーでその過程を感じられるのも楽しみだ。
空豆かれん生誕祭2026、あの場面で背筋が凍り付いたのはぼくだけではないだろう。
広い会場でも、いつものように他のメンバーが座って、主役が真ん中で話す伝統的なRe:fiveの生誕セレモニー。
ただこの日は、冒頭から雲行きが怪しかった。
空豆かれんさんの生誕祭といえば、2023年から一貫して天海で開催されていた。
空豆さんもそのことは承知されていたようで「今年の生誕祭も去年と同じ場所でやるって決めていたんですけど……」というところから話が始まる。
なおこの日の会場は先々週に五周年ライブを行った場所と同じ天明ホール。
実はRe:fiveでは初のホールでの生誕祭だったのだ。
Re:fiveでは過去に橘かえでさんや柊わかばさんが卒業のときにホールを使っていたが、Re:fiveとしては初めてのホールでの生誕祭。
これはなにかあるのではないか、と邪推するのがオタクというものである。
ステージでは「高三になると想像以上に大変なことも多い」と空豆さんは私生活の厳しさを語られている。嫌な予感しかしない。
そこから「今年は受験生じゃん、一応。だけどわたしはRe:fiveにずっといたい……」とまで話したところで、空豆さんが声を詰まらせたのだ。
ぼくは背筋が凍った。
Re:five初のホールでの生誕祭というフラグ。
受験生の厳しさを語る。
そして声を詰まらせて「Re:fiveにずっといたい……」。
そのあとは声のトーンを戻して、「想像以上にアイドルが大好きだったんですよ。みんなにハッピーハッピーって(Xに)投稿したら、自分にも言い聞かせているところがあって、自分もハッピーハッピーになれるかなと思っている」などといい話が続いていた。
それを聞きながらぼくは身構えていた。
たぶん、受験を前に活動休止されるのだろう。
まあ、それはしかたない。春まで休止しても、進路が決まったらその後続けてくれるならばありがたい。
それでも寂しいがそれが空豆さんの人生だから仕方ない。
しかし、もしかしたら……と悪い方向にばかり考えが進んでいた。
そして改めて考える。
いま、空豆かれんが抜けるとRe:fiveはどうなるんだと。
昨年の大みそかにスタートした三人体制は、少なくともファンの数で言ったら、これまでのRe:fiveでいちばん多い状態になっている。
それはもちろんこれまでOGが培ってきた財産もあるのだろうが、それ以上の今の三人のメンバーがたくさんの人に愛されやすいからなのだ。
東雲ういさん、白鳥ひなさんももちろん素敵なアイドルだ。
だけどこの二人を支えるには、またかわいい以外の要素をグループから生み出すには、空豆かれんは必要不可欠なのは間違いない。
だからもしもそんなことになったらとハラハラしながらぼくは、ステージ上で生誕ドレスに着飾り、花束を持った空豆かれんさんを見ていた。
しかし、そんな話はまったくなく「まだまだたくさんたくさん、挑戦して、Re:fiveも熊本(アイドル)も大きくしたい」とめちゃくちゃ前向きな話をしていた。
つまり、ここでぼくの予測はまったくの邪推だったのである。どうも、空豆さんはこれからもRe:fiveにいてくれるみたいなのだ。
そして「これからも笑顔を忘れずに、どんなときも笑顔でいられますか?」とファンに問いかける。
空豆かれんさんはぼくはファンに対して優しいアイドルだと感じている。
アイドルというのは普通は見てもらうのが仕事だ。そして見てもらうときに笑顔になってもらうために自分を磨く。それが普通だが、空豆さんはファンに向かって「笑顔になってほしい」「元気になってほしい」と口に出すのだ。
その優しさをこんな形で見せてくれてさすがだなと思わせたところで、生誕のあいさつは終わった。
こっちとしては一度不安になった空豆かれんさんが、まだまだRe:fiveに居続けてくれるとわかっただけでうれしかった。
てなわけでまったく空豆さんに悪気はなかったのかもしれないが、一杯食わされた感が強かった空豆かれん生誕祭2026。
本当にオタクが病的に邪推する生き物だとご存じなく、思いのまま空豆さんは語ってくれたのだろうが、結果的には空豆かれんさんのRe:fiveに与えている影響を改めて考えさせてくれて、まあ生誕祭としてはよかったとぼくは思った。
さて、ライブステージのタイムテーブルはまず20分間、たっぷりRe:fiveがやって、そのあと、煌~KIRA~、熊本Flavor、SunnyHoneyのいわゆる熊本4グループのゲストのステージがあって、そのあとに生誕セレモニーでまたRe:fiveが登場というスケジュールだった。
最初のステージのRe:fiveは、衣装を空豆さんが「いつかは着たい」と言われていて、今年復活した初期衣装だった。実は生誕委員が準備した生誕Tシャツもこの衣装にしているほど、今年の空豆さん界隈には印象深い衣装だ。
その衣装にぴったりな「君とRestart」からスタートしたものの、二曲目が「ラクガキアクセル」、そこから「オトナと僕の。」というちょっぴり変わったセットリストだった。
「ラクガキアクセル」で柊わかばさんから引き継いだオチサビを見事に歌い上げていたから、もしかしたら「オトナと僕の。」のソロダンスは空豆さんかなと期待したものの、そこは通常通り東雲さんが躍るものの、フロアの口上は空豆さんVerで、東雲さんが空豆生誕委員に「ありがとう」とアイコンタクトしてたのが印象的でした。
20分枠にしては五曲(いつもは四曲が多い)と曲が多かったこのステージは、空豆さんらしく、自分を見てほしいというよりも、いま一番自信のあるRe:fiveを見てほしいというメッセージをぼくは感じた。
そのため、最後の曲「Avalon」でまだまだ最初のステージながら燃え尽きるようにRe:fiveの三人がやり切っているのが、気持ちよかった。
そこからゲストのステージを挟み、ソロで生誕ドレスに着替えた空豆かれんさんが登場してソロ曲を歌うところで生誕セレモニーが始まった。
ソロ曲の後に、生誕委員、各グループとプレゼントを渡して、そこから最初に書いた空豆かれんさんの生誕のスピーチが始まる。
結論としては、とりあえず目の前すぐの活動休止はなく、両立しながらアイドルを続けてくれる空豆さんに感謝しかないが、それとともにやっぱりいまのRe:fiveにおける空豆かれんさんの重要性というのは大きいなと改めて感じた。
そんな気分で見ていたから、そこからのステージは最高だった。
花束を置きに袖にハケた空豆さんがタオルをメンバーに配り、「ダンデライオン」のイントロが流れる。
ライブの最後の曲で演じられることが多いこの曲だから、ここでいったんライブが終わるのかなと思ったら、「ダンデライオン」のあとに「まだまだ続きます」と三人になって初めてやるカバー曲が披露される。そのへんの進行を空豆さんがうまく進めていた。
カバー曲を楽しんで、そこから最後にやった新曲の「Shine on me」も、空豆さんの「ラストの曲を楽しんでいきましょう」の曲振りで進んだ。
まだまだ聴く機会が少ない「Shine on me」は、切なく入りながらも少しずつ明るくなりドミナントモーションで心地よい安らぎに戻っているサビと、話題の白鳥ひなさんが一歩ずつ壁を乗り越える決意を叫ぶラップが印象的なこの曲は、王道的な楽曲でありながら、たとえばオチサビがなかったりとアイドルの定番楽曲とはちょっと違う面白い曲だから、ここで新たなRe:fiveのスタイルが見つけられたらとぼくは思っている。
周年ライブでは下りなかった緞帳が下りて、ライブは強制終了。緞帳が下りるときに名残惜しそうにしゃがんで客席を最後まで見るRe:fiveのスタイルが好きだなと思っていたら、生誕委員による熱いアンコールが始まった。
アンコールを受けて、緞帳が上がるとステージには4グループ全員の姿が。
そして出演アイドル全員の「朝からカツカレー」が空豆さんの「今日は本当に本当にありがとうございました」という声から始まる。
歌割も4グループのアイドルに分けられていたが、この歌割も空豆さんが考えたとのこと。
そしてオチサビは久しぶりに空豆かれんさん。
いつもはグループを影ながら支えている印象が強い空豆さん。
しかし、すらりとしたスタイルに素晴らしい歌唱力は、熊本4グループを従えての真ん中でも歌っても輝く、力強い存在感を見せつけてくれた。
まさかの勘違いで休止するかもしれないと不安に勝手になってしまい、改めて、グループ内で必要不可欠なことを感じさせてくれた空豆かれんさん。
そのキャラクターは熊本4グループアイドルを従えてのオチサビでもひたすらに輝いて尊かった。
私生活も大変だと思うけど、やっぱりRe:fiveには空豆かれんさんがいてくれることでみんなが笑顔になれると改めて感じられた生誕祭だった。



