浅葱の語源 | 食べ物歳時記

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日本の食べ物今昔事始めエピソード。

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眼下怒涛の岩浅葱は静かに掘る  知世子


今は家庭で調理する事も少なくなり、

浅葱の名前をご存じの方も、

細い葱のイメージが強いと思います。


たまに並ぶ店頭でも葉葱の若採りしたものを

浅葱として売っている事もあります。


浅葱はネギ属ですが、

分葱と同じで種子を結ばず、

地下にもぐっている鱗茎を植え付けて

栽培するそうです。


今浅葱の利用はほとんどが薬味として

利用されます。


特に河豚料理には欠かせません。

ポン酢、紅葉おろしに添えられている刻み葱も、

河豚さしに添えられている

三センチほどに切ってある葱も浅葱です。


和漢三才図会(寺島良安 正徳2年 1712年)に、

『二、三寸にて針の如くなるを生にして

膾に加えてこれを食ふ。甚だ佳し。

煮るによろしからず』


料理物語(寛永20年 1643年)にも、

『浅葱 なます。さしみ』 とあります。


江戸の頃は膾にして愛用していたようです。


『雛さへあさつきをいかんとも解せぬ也』(柳多留41)


『あさつきのなますしんぜて首をぬき』(万句合 明和2年)


江戸時代は三月四日の雛を仕舞う日に、

浅葱は浅利と酢味噌に和えて

食べる習慣がありました。


『浅葱を下女泣き泣き替えて喰ひ』(万句合 明和7年)


またこの日は奉公人の出代わりの日です。


浅葱の語源は、

物類称呼(越谷青山 安永4年 1705年)に、

『分葱は分ち取る葱、漢葱は刈り取る葱、

糸葱は根浅き葱で、根深葱に対して名づけられたるなり』


和訓栞(谷川士清 安永6年~ 1777年~)は、

『浅ツ葱(キ)の義。臭気が浅いところから』


東雅(新井白石 享保4年 1719年)には、

『ヒル(にんにく)に対してアサのしゃれ』


その他には、

浅葱はヒルツキ(にんにくの古名)に対して、

匂いの弱いところから大蒜が陽で浅葱が陰、

大蒜をヒル(昼)とすれば浅葱はアサ(朝)

とする説等多く見られます。