USBコネクタ、着脱回数と定格電流 | 風変わりなPC物語 -スズメさんち-
2015-05-24 14:37:53

USBコネクタ、着脱回数と定格電流

テーマ:PC周辺機器

実は記事中で何度か登場しているネタ
(特に「
USBハブの電源ラインを強化する 」の記事とかぶり多し)なのですが、
散乱していて見づらいこともあり、ここで1箇所にまとめた記事を起こします。



USB。

もともとはPCとその周辺機器を接続するために使われだした規格で、
Intel主導で開発が進んだものですが、規格書そのものを誰もが入手でき
かつ使用に際して特許技術使用料などの費用が不要であることなどから導入されやすく、

普及の一助になったのでしょう。


ぱっとかき集めたUSB機器(?)の集合写真。



今、我々にとって最も身近なインターフェース。
おそらく、USBは1つの答えということができるのではないでしょうか。



今や測定器での結果保存、コントロールにもUSBを使う機器も結構あります。

RS-232/485と比較すると伝送距離が(リピーターなしで)5m程度と非常に短いものの、
通信について面倒な諸設定をあわせる必要がなく、

汎用コネクタ(D-sub他)ではない専用形状を使うことで
機器によるピンアサインの違いがないなどのメリットも
追い風になっているのではないかと個人的には考えます。

小規模機器であれば、電力もUSBケーブルだけで賄えますし。


加えて後に誕生した追加仕様規格、
 「USB Battery Charging」(充電として使うための拡張規格)
 「USB On The Go」(ホスト(親)にもターゲット(子)にもなるUSB機器向けの拡張規格)
によって守備範囲も広くなり、使い勝手はますますよくなります。
(開発する側としては面倒かもしれませんが(爆))



さて、便利になるとつい忘れがちになるのが、USBとして使う上での注意です。
当方のことですし、コネクタやケーブルというハードウェアに着目して書いていきます。



○スタンダードTypeA/Bコネクタの着脱回数は1,500回
どうでもよい話ですが、USBメモリ(もっというと「USBフラッシュメモリ」)のことを

単に「USB」と省略する方がとても増えたように感じます。

そのくらい、USBの恩恵(「USBストレージクラス」による固有ドライバ不要だとか、

「ホットプラグ対応」によるいつでも着脱可能だとか)を受けているのが

USBメモリといえるでしょう。

USBデバイスの中でも、頻繁に着脱するのは、当方もやはりUSBメモリです。


ただ、着脱を繰り返しても大丈夫なものなのでしょうか。

以前の記事でちらっと書きましたが、
USBメモリの販売大手の1つであるバッファローでは

USBメモリのコネクタ挿抜回数について
よくある質問に「約1,500回になります」と公表しています
ちなみに個人的な予想ですが、バッファロー自身が実際に検証したというよりは、
コネクタメーカーの納入仕様書に記載された耐久性の項目を
参照しただけのような気がします(苦笑)


USBメモリに限らず、USBコネクタは多くのメーカーで
1,500回の挿抜を1つの指標として作られています。

USBメモリはいわゆるオス側のコネクタですが、
メス側でも同じく1,500回となっています。

例えばコネクタの大手メーカーであるMolexのUSBコネクタの
製品一例として、48258シリーズをば。
テストレポート によると、「6.8 Durability(耐久性)」のテストにおいて
 試験条件:1時間あたり200回のペースで1,500回挿抜を行う
   ※「per minute」はおそらく誤記。仕様書には「per hour」と記載。
 判定値:(試験後においても)30mΩ以内
となっています。

まさに先ほどのバッファローの値と同じです。


1,500回という数値は、毎日1度の着脱で4年程度。
たとえば測定器-PC間を毎日2往復(4回/日)使えば1年程度です。

USBメモリのフラッシュメモリチップなどの電気的な構成部品はさほど心配ないですが、

コネクタそのものがあまり持たないのです。
そしてまた挿す場所であるPCケースのフロントアクセスのUSBポートにとっても

1,500回は意外とあっという間に到達してしまうかもしれません。
PCケースなんてなかなか交換するものではありませんし、
使用していて使えなくなった、という方も結構多いと思います。


もともとUSBの生い立ちを調べると、PS/2、RS-232C、IEEE1284(パラレルポート)といった
いわゆるレガシーインターフェースに接続された周辺機器を
このUSBに一元化するために策定されたものであり、
頻繁な着脱をするという目線での検討はさほど高くなかったのかもしれません。


もちろん1,500回到達で突然使えなくなるわけではありませんが、
1,500回も着脱すれば、新品からみれば端子の板ばねの力が弱ったり
接点が酸化したりして接触抵抗が増えているはずです。
使用頻度の高いものはコネクタそのものを交換できるような
仕組みにしておくなどの手が必要かもしれません。


リンクスインターナショナル取り扱いのPCケースのうち
特にCORSAIRとAntecに関しては、
こういったポート類の交換パーツといった保守部材品も取り扱いがあります。
Antecであれば、こんな感じ
殆どの代理店は、保守部品の面倒までは

なかなか手が回っていないのが現状ですから、
こういった取り組みは個人的にはすごいと感心します。
このあたり、もっと販促の材料として訴求してもよいのではないかと感じます。



○MiniBは5,000回、MicroB&TypeCの10,000回の着脱回数
小型のストレージ機器(ポータブルHDDやカードリーダー)を中心に
着脱回数が増えてきたもの、できるだけ小さく作りたいものについて
3年くらい前まで普及していたのが、MiniB端子です。




着脱回数5,000回を規定としており、従来比3倍と強力なものです。


そしてスマホといった薄型で、かつ充電兼用で用いられることの多いMicroUSB端子は
さらに着脱回数が多くなることを予見して作られたもの。
というわけで、耐久性や電気特性をさらに見直されたものが採用されました。


小タイトルどおり、MicroB、TypeC各コネクタの着脱回数は

メーカーで10,000回を規定として設計しています。



○スタンダードTypeAの電流定格は1.5A程度
USBは2.0時代までは概ね1Aが定格のコネクタが多かったのですが
3.0の台頭、そしてBattery Charging Specificationの登場によって
標準サイズのTypeAでも定格1.5Aを謳うメーカーも増えてきました。
MicroUSBでは(電力線で)定格1.8A、メーカーによっては2A以上のコネクタもあります。


ちなみに従来のUSB typeAでは、基本的に1.5Aまでの対応です。
これはBattery Charging Specificationで規定された
CDPおよびDCPの充電電流が最大1.5Aであるためです。
MolexのUSBコネクタのラインナップではほぼすべてが1.5Aとなります。


先ほどのMolex 48258シリーズの製品仕様書 には
AC250V、1.5Aを流した際の温度上昇は規格上30℃との記載が。
ちなみにテストレポート によれば、5個以上のサンプル数で
AC250V、1.5A時の温度上昇は平均9.2℃、最大10.4℃とあります。
 ※ほとんどのメーカーがAC,DC30Vの定格電圧を謳いますが、
  なぜかMolex 48258シリーズは定格電圧がAC250V。


放熱条件(実装基板やパターン幅、周辺カバーの有無等)にもよりますが、
一応の温度上昇目安(ロス)としては電流の二乗で増えるものですので、
1.5Aで最大10.4℃であれば、単純に近似的な方程式を作れば

(xを電流、yを温度として) y=4.622x^2 で表現されます。
 (実際は温度上昇とともに抵抗値は上がり(同じ電流なら)発熱が若干増え、
  逆に周温との温度差が開いて放射による放熱は促進される傾向ですが
  ここではせいぜい周囲温度+30℃程度の考察ですのでどちらも無視します)、


2A時の推定は最大約18.5℃であり、
一応温度上昇値としては30℃を超えない範囲となります。

以前、2Aの試験負荷を作った際、2Aという数値を決めたのは
実はこの計算が元になっています。

2Aはコネクタの定格仕様違反ですが、
それでもテストレポートから推定する温度上昇が30℃を超えない
(事実、20℃程度の雰囲気中で55℃の示温紙が変色しなかった)ため、
自己責任で取り扱えるものであろうということで2Aとしました。


ちなみに3A流してしまうと近似式によれば40℃以上の上昇となり
最悪はやけどや発火発煙、そうでなくても著しい寿命低下などの
弊害が考えられます。
条件によっては危険ですからやめましょう。
どうしても行いたいのであれば、実証試験を実施すべきでしょう。



○ケーブル長は5mまで、TypeCを除きケーブル両端はAとB
基本的にUSBはツリー型構造というバストポロジーを採用しているため、
頂点にホスト、その下に(ハブを含め)ターゲットがぶら下がります。


大抵、PC本体のダウンストリームポートにTypeAメスが使われますから、
USBケーブルとしては片方はTypeAオスが来るようになります。
そしてもう一方、周辺機器側(プリンターや外付けHDDなど)のポートは
TypeBメスが用意されますので、ケーブルのもう一方はTypeBオスとなるはずです。
そう、ケーブルはTypeA-TypeBの形が大前提なのです。



また、長さは機器間で最長5mと定められています。
これは当方が思うに、主に2点の理由が。


①通信品質の劣化防止
あまりケーブルを長くしてしまうとノイズなどの影響でHとLが曖昧になりやすく、
伝送ミスや訂正が増加します。

一定以上になると、そもそも通信として成り立たなくなってしまいます。

②電力線のロス(=電圧降下)の増大
バッファローのFAQにおいて
 「DVDドライブでUSB延長ケーブルを使用してもよいか ?」
というものが載っており、その回答に
 「利用可能だがケーブルの長さや仕様で電源不足になり動作が安定しない可能性がある」
と記載されています。

USBケーブルにはある程度見た目の太いタイプのもので
電源用、データ線用ともにAWG28のUL1007が多用されます。



写真はMicroUSBケーブルの切断例で、IDピン用も含め5本あります。


電線の抵抗分は5mあたり1.17Ω程度(例:品川電線@20℃、最大)。
先ほどのとおり、USBコネクタの接触抵抗は最大でも30mΩ程度ですから

合成抵抗は片道あたり1.2Ω(往復2.4Ω)

ということは、500mA流した際の電圧降下は

  V=R×I=2.4×0.5=1.2[V]

となり、ターゲット側の供給電圧は(ポートから5Vきっちり出ていても)5-1.2=3.8[V]。

4.4V以上と規定したUSB規格を逸脱してしまいますので、

電圧不足で動作しない可能性は充分に考えられます。

ついでに500mAの電流を流したところで伝送ロスは
  P=R×I^2=2.4×0.5^2=0.6[W]
という、割と大きな消費電力になってしまいます。



なお、「コネクタはA-Bの形」「長さは5mまで」という制約を守らせるため、
延長ケーブルやA-A変換コネクタなどは規格上禁止されています。
USB2.0の規格書 の「6.4.4 Prohibited Cable Assemblies」には、
・Extension cable assembly(延長ケーブル)
・Cable assembly that violates USB topology rules(トポロジー違反のアセンブリ)
が書かれているほどです。



(写真はAメス同士のジェンダーチェンジャー、これも規格NG品ということに)


とはいえ、数多のUSB延長ケーブルが売られていますし、
当方も随所で使用しているのも事実。
どんなリスクがあり、どのようなことに気をつけなければよいかを踏まえて
ユーザーが運用することができれば、“とりあえず”はよいのでしょう。


ちなみに当方の記事でも何度か登場している、時限消去機能付きHDDケースJIGENは、

HDDケース側にもUSB3.0 StandardAコネクタが搭載されています。

おそらく、USB3.0のStandardB端子は従来よりもさらに高背な構造となってしまい

敬遠したのでしょうが、USB規格上はNGとなるはずです。



○TypeCポート
昨年末あたりから流通が始まったTypeCポートは
制約を大きく変革させて登場した、非常に特徴的なポートです。


・「リバーシブルコネクタ」
点対称な形状を採用したことで上下を気にすることなく使用できる
リバーシブル形状であることが、ユーザービリティからすれば大きな点。


・ケーブルの向きも自由
先ほどケーブルは「A-B」の対でなければならない旨を書きましたが、
アップストリーム/ダウンストリームともにこの形状を採用し、
ケーブルの方向さえも、どちらでもOKなようにできています。


・電流は3A~5A対応
TypeCには以下の2種類が策定されています。
  「標準ケーブル」:最大3A
  「Power Delivery対応ケーブル」:最大5A
コネクタそのものは5A対応となります。


Power Deliveryに関しては当方もあまり深く調べていないのですが、
環境が対応していれば+5Vだけでなく、+12Vや+20Vに電源電圧を上げ、
+20V、5A(=100W)という驚異的な電力供給能力を
得ることもできるようになるようです。


ちなみにコネクタやケーブルに温度上昇についての規定がある模様で、
5Aを流しても温度上昇は30℃以内となっているようですね。

あの大きさで5Aというのはなかなかインパクトがありますね...(^^;)



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先週、チチブデンキ が店舗営業を終了されました。



チチブデンキといえば、長らく東芝ノートPCの保守部品の入手先として知られ、

個人的には特に小型シリーズ「Libretto」に長けた印象がありました。

残念ながら当方は東芝製のノートPCそのものに触れる機会が少なく、

ましてや保守部品を伴うメンテナンスは未経験ですので

ここでパーツの買い物をしたことはないのですが...


おでん缶を直接店頭で購入したことは何度もありますし、

空ダンボールをもらったこともあります(爆)


写真は1週間前の様子。

すでに昨日時点で窓の文字はありませんでした。


チチブデンキ自体は今後も通信販売で運営を継続され

(ただし電話かFAXのみでの取引となる模様)、

自社ビルはそのまま残りますし、今後もおでん缶は自販機販売が続きますが、

また1つ、秋葉原らしい灯火が潰えてしまったことに...



せめてもの朗報はZOAの跡地 にPCパーツ店が入ってくれたことでしょうか。

PC-NETがテナント入りするとのことです。

「秋葉原で2番目に安い店」の看板を“正式に”引き継がれたようですね(笑)



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非常に個人的なこと(爆)で小ネタ。

昨日、ボウリングでハイスコアとなる235をマーク。



いつも、ハイスコアを出すときは全体が低調なのですが

この日はローゲームでも自身のアベレージ160弱を超える165。

1ゲーム中のミスも最高3止まりと、個人的には出来過ぎな内容でした。


実はこの中で一番よかったと思うスコアは5ゲーム目。

1ミス、ノーダブルの181。

多くがストライクでもよさそうな当たりだったので悔しさは残るものの、

フックボールを投げ(られ)ない当方はストライクの連続は運による部分もありますので

こういったことは起こりうるんですよね(^^;)

これをできるだけ9スペを連続してつなぐ形は当方には理想的なのです(苦笑)