40年前の国産材の運動の縁が、今に。part・2 | スズキ建築設計

スズキ建築設計

スタッフの日頃感じていること

part・2です。

先般、高知県木材協会の関東駐在所長の方が訪問され、話をしていると、以前の勤務先が、丸宇木材市売株式会社という話になり、以前、私が山崎社長にお世話になったという話で、縁を感じ、当時の山崎社長から、原稿を渡されていたことを思い出し、アメブロに掲載いたします。

この原稿は、1982年ごろから木造住宅づくりの啓蒙活動の一環として、住宅建築の木材のことを消費者により知ってもらうために、地元の木材業者や木材組合などに、「消費者に木材のことや流通などを教えてほしい。」とお願いしたところ、「消費者に木材のことを教えてなになる。」と言われ、断られているときに、丸宇木材市売株式会社の当時の代表の山崎様が、「東京・小岩の木材市場を使って勉強会をしてください。」と、手を差し伸べてくれました。

山崎社長は、東京・小岩の木材市場を開放して、市場長の方が、同じ寸法の柱でも樹種の違い、等級の違いや挽き立て回数、木材の流通経路、建築部位による木材の樹種などを丁寧に説明をしていただき、参加者の一般ユーザーは、もちろん参加した建築業者も納得するような勉強会を開催することが出来ました。

その時に木造住宅に最も近い木材業者が、一般ユーザーの方を見ないで、木材業界の発展はないと言っていたことが印象的でした。

 

*丸宇木材市売株式会社・小岩市場で開催された勉強会

 

**丸宇木材市売株式会社・小岩市場で、木材の説明。

 

私を気に入っていただき、代表の山崎様の「わが歩きたる道」を贈呈していただき、さらに、自筆の「日本の山と木」、「日本の山林」の原稿を渡され、当時、私どもでは、「木の住まいを創る会」を主宰し、毎月「木族」という会報誌を発行ていましたので、機会があれば掲載してくださいと渡されました。

 

*わが歩きたる道

丸宇木材市売株式会社・代表取締役 山崎常作様

 

縁を感じ資料を探したところ、この原稿が出てきましたので、当時を思い出し、40年以上経過していて、木造住宅は、プレカットが主流となり、木材の流通経路も変わってきていて、現在の時代背景とは異なる部分がります。

part・2の今回は、「日本の山林」を掲載します。

 

*日本の山林・原稿・原本

 

日本の山林  山崎 常作

日本の山林は、国有林、都道府県林、市町村林、部落林*1、民有林から成り立っている。

その分布は北は北海道、南は九州、四国の本土その付随する小さな島々まで植林、成長している。

その樹種は多様に渡り、広葉樹(桂(かつら)、梻(しきみ)、栃(とち)、栓(せん)、ブナ、欅(けやき)、栗、樫(かし))針葉樹(桧、杉、ヒバ、サワラ、ネズコ杉)等、種類は非常に多い(落葉系にもエゾ、トドマツがある。)

主として一般建築材に使用されているのは針葉樹であるが、一部広葉樹も建築用材として使用されているものもある。

例えばケヤキは高級木造建築、他の樹種は家具あるいは加工されてベニヤ板にも使用されている。

観光地の土産物製品はほとんどこの広葉樹である。

この広葉樹はさて置き、一般建築材に使用されている針葉樹の特徴をあげてみると次のとおりである。

木材の特質性

1.サワラ

防水性があり、水が漏れない。

ポリ容器が普及する以前の浴槽、水桶類は総てこのサワラ材が使用されていた。

戦国時代、戦場を駆け廻った武士、旅をした農民が使用した水筒はサワラか竹筒であった。

 

2.ネズコ杉

防音性にとみ、現在、伊賀上野に残る忍者屋敷の床板、天井、羽目板はこのネズコ杉が使用されている。

夫婦の寝室、ラブホテルの部屋に適すが現在は一部の地方だけに残る材となってしまった。

 

3.赤松

吸湿性、光沢にとみ、武家屋敷の床の間(とこのま)材、長押(なげし)などに使用され、刀、槍などのサビを防いだ。

関東、東北では、特に高級化粧、造作、建具材用に用いられている。

 

4.ヒバ

堅牢無比、腐敗しがたく、光沢、木の香りが良く、殺虫要素もった油性を有し、平泉の金色堂(九百年)の建築物として余りにも有名である。

又その木からとれる油が女性の髪油として(髪の素)現在でも生産されている。

津軽、南部、越前の各藩では御留木と称して称してお城建築以外は使用を禁止されていた。

 

5.唐松(からまつ)

ヒバ材ほどの強度はないが腐敗しにくく水分のある所ほど、強い特徴をもっている。

土台に適し、杭丸太には最適、百年以上の年数を経た大木は天唐(天然唐松)と称し、廊下の板、造作、応接間用材の高級材として使用されている。

紀ノ国屋文左衛門は好んで天唐(天然唐松)を使用していた。

 

6.杉

学術的には松科、杉属と言われ、松の分かれとされているが、柔軟性、弾力性にとみ、木質が素直で細工がしやすく最も使用されている。

御神木と言われるのは大抵この杉であり生命力が最も長い。

杉で有名なのは、屋久杉(樹齢三千年)、秋田杉(百五十年~三百年)、土佐杉(二百年以上)がある。

ほかに吉野杉があるが、年数の割に目が詰み光沢があり柱、造作材の高級品である。

 

7.桧

木曽桧で名高く、お伊勢様二十年毎の建築材はこの木曽桧が使用される。

木造建築物で最古の法隆寺は桧材である(一部杉)光沢もあり香りも高いのが桧材の特徴であるが、このほかに建築用材としては吉野、高知、東濃(とうのう)*2、西川(都下)、静岡、野州、九州材とあるが柱、造作、建具材としては吉野、東濃、土佐、西川、野州、静岡、九州の順となっているが最近、植林手当の発達から吉野、東濃材並みの桧材が各地で生産されるようになってきた。

桧普請*3と言われ高級建築の代名詞となっているが、価格水準の高いのが難点。

 

次に、外材(がいざい)*4であるが、一般に、内地材(ないちざい)*5より弱いとされているがこれは、誤りである。

何故なら米材(べいざい)*6(カナダ材を含む)と一般に言われる樹種に内地材と同じく栂、桧、ヒバ、松、杉(国外輸出を禁止されている)材等、いずれも樹齢二百年を超え、実際は耐久性、腐敗性とも内地材に劣らぬ材質程度を持っている。

弾力性、狂い等も内地材に準じているのは、林業試験場の調査でも明らかにされている。

 

次に北洋材(ソ連材)であるが、欧州赤松と言われる材は内地松製品が年々減少してることから造作類に使用され、強度は地松に劣るが、材の素直さはこの方が上、光沢もある。

唐松は日本唐松より、むしろ強度があり、年数から言って天唐(天然唐松)に近い材質を持っている。

土台には最適、一般に多く普及しているエゾ材*7は材質が柔らかで細工がしやすい材であるが木材としては釘もちが悪いこと、腐敗強度が一番弱いと言われている。

しかし使用される場所、湯気の少ないところ、あるいは地域によっては影響が少ない、湿気の無い(梅雨のない)北海道では土台を含めた構造材に使用されている。

 

ほかにアラスカ産のスプールス、ノーブルがあるが、美麗なこと、材質が柔らかいことから建具用に多く使用されている。

 

ご承知の南洋材(ラワン)は化粧、ベニヤ板用材として使用されているが、一時騒がれた虫害も殺虫を義務付けられており、使用する場合、殺虫済みの刷込をした製品を購入することが望ましい。

 

流通経路:

国有林あるいは民有林から払い下げ購入した材(官公、市町村林は公入札)を、各地域の製材所において農林規格寸法に製材され、消費需要地の市売り市場あるいは問屋に出荷

市売り市場においては公用入札、問屋は相対取引により小売屋に配送、更に施主の要望により、材種、寸法、数量が工務店の手に渡り建築が行われるのが流通段階である。

この場合、国有林及び公有林の入札資格を持ったものが入札に参加できるが、登録されない製材業者は参加できないのが実状(法的にはだれでも参加できる)

市売市場も登録されない。小売業者は参加できない。(これは魚市場、野菜、果実市場も同じである。)登録された業者の同道によって参観することはできる。(公開市場である。)

                           完

 

*内地材(国産木材)の流通経路(但し1982年ごろ)          

付売*8

 

*外材(輸入木材)の流通経路(但し1982年ごろ)

 

*1・部落林(ぶらくりん):

町村の一部である部落(集落)住民が総有する林有地

*2・東濃(とうのう):

岐阜県南東部の地域を指し、美濃東部の意味。

*3・桧普請(ひのきぶしん):

日本の伝統的な建築技法であり、ヒノキ(桧)の木材を多く使って建物を建てること。

*4・外材(がいざい): 

外国から輸入する木材。

*5・内地材(ないちざい):

松 、 杉 、 桧 、 ヒバ など 針葉樹系の国産材のこと。

*6・米材(べいざい):

日本に輸入されるアメリカ,カナダ, アラスカ 産の木材。

*7・エゾ材(えぞざい):

エゾマツ、蝦夷松。エゾマツは名前の通り、蝦夷(現在の北海道)に主に分布。

*8・付売(つけうり):

木材問屋の一つ。 自らの危険負担で木材を買い付け、販売して利益をあげるもの。 客を呼び付けて売るところからいう。

 

最後まで、読んでいただきありがとうございました。

 

****************************

 

*********************************************

 

株式会社スズキ建築設計事務所

取締役・相談役 鈴木 明

©copyright

 

********************************************

********************************************

*参考・参照資料

・コトバンク

・木材博物館

・Wikipedia

*********************************************

株式会社スズキ建築設計事務所のURL:

http://www.suzuki-naturaldesign.com/


NPO 木の住まいを創る会

http://woodhome.jp/

 

株式会社スズキ建築設計事務所のブログ:

https://ameblo.jp/suzuki-naturaldesign/

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

*関連ブログ

40年前の国産材の運動の縁が、今に。

 

杉のみやざき杉のインナーウッドデッキ更新しました。暖かい季節に向けてワクワクです。

磨き丸太で、幼児用ワンちゃんテーブル付イスで、「木育(もくいく)」を!

土用の期間中に「地鎮祭」、「間日(まび)」を活用した。社長!!!

住宅建築で、プロとして忌み嫌われること、不吉なこと知っていますか・ その1