折口信夫:神性を拡張する復活の喜び (ミネルヴァ日本評伝選)
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火曜日。
午前中に「耳鼻科」の主任先生の診察があります。
二週間まえの鼻の奥と、現在の写真を見比べて、
こんなにきれいになっていますと証明してくれました。
こういうとき、僕の主治医の先生は、主任の横でおとなしく聞いている。
なので、この主任を、勝手に「指導教員の先生」と呼んでいます(笑)
それにしても放射線治療の効果はすごいですね。
でも、効果が表れると「副作用」も本格化する。
口の中が火傷状態になって、食事が一苦労です。塗り薬でなんとかサポート。
放射線治療の、まさしく「両義性」ですね(笑)
ところで僕の病名は「上咽頭がん」という、珍しいものですが、じつは、あの澁澤龍彦は「下咽頭がん」でした。これは最近読んだ磯崎純一『龍彦親王航海記』で知りました。
彼の場合は、「下」なので切除できたのですが、ともかく発見があまりに遅すぎた。
これは最初に通っていた町医者さんが、さっさと大きな病院での精密検査を勧めていれば、こんなにひどくなるまえに治療できたのかしれませんね。
僕の場合、近所の耳鼻科の先生が、即座に大病院につないでくれて、精密検査をしてもらえたので、なんとか、いまのところ治ります、という状態になりました。
もちろん、澁澤のときに比べて、圧倒的に進歩した医療技術も大きいでしょう。
しかし近所の耳鼻科が、専門病院にリンクしているというのは大きな、一番重要な進歩だと思います。
澁澤の場合も、もっとはやく専門病院に行っていれば、さらなる創作活動が展開できたはずです…。
ということで、「咽頭がん」をめぐる文学史的エピソード。
写真は、このところご無沙汰している僕の書斎の机回り。
折口信夫全集が積みあがっているのは、評伝選『折口信夫』を書いていたときですね。
なんか懐かしい風景…。
ついでに読んでる本のことなど。
入院と同時に読みだした夢野久作『ドグラ・マグラ』(創元推理文庫)。
後半のところは、ちょっと食傷気味になりそうでしたが、読了。
これって日本近代の「オカルトサイエンス」とか「オカルト知」の世界ですね。
そういう視点からの批評とかはあるのでしょうか。
これを読み終えて、いまは『犬神博士』を読みだしました。
僕的には、こっちのほうが面白いかも。
『ドグラ・マグラ』読んでいるといったら、知り合いの編集者の方が送ってくださった本。
鶴見俊輔『ドグラ・マグラの世界』講談社文芸文庫
僕の狭い知識では、なんで戦後民主主義者でしかない鶴見俊輔が「夢野久作」を論じるのか、なんて思っていたのですが、とんでもなかった。鶴見と夢久との密接な共振関係がやっとわかってきました。
送っていただき、ありがとうございました。
『幻想と怪奇』「黒魔術特集」1973年三月号・歳月社
荒俣宏と紀田順一郎が「編集責任」している、知られざる雑誌です。
これがあるので後の『幻想文学』も刊行されたのでした。
この特集号は、ブラヴァツキーやエリファス・レヴィ、アレイスター・クロウリーが書いた「小説」が載っているので古本屋で購入したもの。
まだ読んでなかった、グスタフ・マイリンク「レオンハルト師」(翻訳は種村季弘)、読みました。これぞ怪奇幻想小説の本領、とでもいうべき作品。家の血筋とともに伝統的な宗教者とは違う「宗教者」の世界へと誘ってくれる一篇でした。
それはそうと、雑誌の編集後記の文章も面白い。
このころ出たユイスマンスの『彼方』の訳注がいかにいいかげんかとか。
なんと「エリファ・レヴィ」(読み方も違う)を「不明」としているとか、などなど。
1970年代初頭では、こうしたオカルト系の文学や思想についての知識が、
まだまだ「未開拓」であったことがわかります。
こういうのは、刊行された雑誌を読まないと、つかめない「時代感覚」ですね。
そういえば73、4年ごろには、僕の友人たちは、シュタイナーの翻訳をする「神秘学研究会」を作ってましたね。ときどきFBにも登場する武邑光裕氏です。
そのころ僕は吉本主義者の政治小僧だったので、その研究会には加わっていなかったけれど、結局、何十年もたって、いまごろになってその世界にはまってきている…。
なんて話題は書くときりがないので、また後日に。
病室で「六月」を迎えました。
六月といえば、もっとも過ごしやすい、散歩やピクニックに最適な季節ですね。
その季節を病院で過ごすなんて、なんてもったいない。
まぁ、「六月」は、来年もある、ということで…。
放射線治療の効果も少しずつ、現れてきて、うれしい限りです。
でも、当時に、放射線による「副作用」も、ぼちぼち出始めているみたい。
口の中が、ぴりぴりと痛くなってくるのでした。まぁ、軽い火傷の症状なのだそうです。
昼間はほぼ校正仕事。人文書院の本に続いて、
次の某文庫の校正もまもなく到着します。
という感じで「仕事」しているほうが気もまぎれます。
看護師さんからも「在宅でできるお仕事なんですか」と。
まぁ、たしかに「在宅」ですね(笑)
夜は無料で見られる昔のテレビドラマ。『必殺仕事人』とか『燃えよ剣』とか。
前見たときはわからなかったけど、『燃えよ剣』のロケ現場って、
僕の散歩圏内が多い(笑)。それを探すのも楽しみだったり。