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「入院する」までの経緯につきまして
SNSで「入院します」とか、情報流していて、具体的なことがわからないので、
よけい心配していますというご連絡をいただきました。申し訳ないです。
べつにもったいぶるほどのことでもないのですが…。じつはこんな経緯がありました。
昨年末ぐらいから耳の調子がおかしくて、なんか詰まった感じが続いて、
近所の耳鼻科にいったら、最初は、べつにどこも問題ないとか言われて、
しばらく鍼灸医とかに通っていました。
しかしぜんぜんよくならないので、ふたたび耳鼻科にいったら、
精密検査を受けてください、ということで大きい病院に繋いでもらいました。
そこで精密検査をしたら、鼻の奥にほうに「おでき」があって、それが詰まっている感じのもと、ということで、さらに「生体検査」やらMRIとかで調べたら、なんとそれは悪性腫瘍であった、ことが判明したのでした。
お医者さんは、残念ですが、これは悪性です…と。正式な病名は「上咽頭がん」。
けっこう稀なケースらしい。
ただし鼻の奥は直接、切除できないので、放射線治療と抗がん剤の併用の治療になること、けっこう時間がかかるので、ひと月半ほどの入院になること、ただし連休に入るから、入院は連休明けに…という感じで、どんどん話は進んだのでした。
その後、さらにPET(ペット)検査とかもして、いまのところほかには「飛んでいない」とかの結果も出て、一安心。(最初、ペットって、何?でしたが)
まぁ、それにしても、耳の不調から、よくここまで判明したものだと。考えようによっては、幸運だったともいえますね。というか、最近の医療技術の進歩はすごいと。
でも最初に結果がわかったときは、なんか現実感がなくなってしまい、自分と「現実の世界」とが分離されてしまった感覚でした。
なので、即座にメールとかで大学の休講や講演会の予定の変更、出版社のほうへの連絡、また研究会の仲間たちへの連絡などをして、なんとか「現実」との繋がりを回復させた、という思いでした。まぁ、病気という非日常的出来事を「日常」に戻した、という感覚ですね。
それはともかく最近の医療技術は進歩しているので、「完治」させることを前提に、治療計画を立ててくれるので、まぁ、これはもう専門家に任せるしかない、という気持ちです。
ということが、「入院する」ことまでの経緯です。
なんかあちこちに「伏線」をはっていた推理小説の謎解き、って感じ(笑)
ということで入院中は、読みたかった長編の「本格探偵小説」を読んでいようと思います。
なお、病院内はまだ「コロナ」を警戒していますので、
家族以外の面会はできないそうです。
病室はWi-Fi完備で、メールとかもふつうに出来ますので、FBでの「続報」も。
とくに「手術」するわけではないので、なんか時間を持て余しそうです。
『源氏物語』谷崎潤一郎訳の試み
土曜日。
午後、佛大O.L.C.講座、大津直子さんの
「『源氏物語』を再生する ―谷崎潤一郎の試み」
を見逃し配信で聴きました。
とっても面白かったです。旧訳から新訳への展開で、源氏物語の語りの口調が現代語訳に「再生」されていた、というのは「なるほど」と。
僕も、ずいぶん昔に、中公文庫の潤一郎訳の源氏物語を読みました。
たしかに「原文」がもつ、仮名文の文体へのこだわりを感じた記憶が。
なるほど玉上琢彌の「物語音読論」の反映もあったのか…、など、いろいろと勉強になりました。
戦前の旧訳の監修者は山田孝雄。谷崎の回想で、山田が皇后と臣下との「密通」は、「必ず削除すべきである」と襟を正して申し渡されたときの態度が「いかにも古への平田篤胤などに見るような国士の風があった」なんて書いています。
山田孝雄は『平田篤胤』という著書もあります。谷崎は、これを読んだのでしようか…。
というエピソードは、僕の『折口信夫』(ミネルヴァ評伝選)でも引用してあります。大好きな谷崎潤一郎が、自分の本に登場してきて、とても嬉しかった。
折口もまた、近代における、「源氏読み」の重要なひとりです。
近代における「源氏読み」の諸相については、折口信夫論の続きで書きたいところですね。
写真は、谷崎と玉上とが打ち合わせをした「花見小路吉初」です。
谷崎源氏も飾られた部屋。
なぜここに行ったかというと、ここで重森三果さんの新内の演奏会があったからでした。昨年の二月のこと。