私の眼にはあなたが映っていても


あなたの瞳には私は映らない


私はあなたの声は聞き分けることができるけど
 

あなたの耳には私の声は届かない

 

私なら遠くにいてもあなたに気付くけど
 

あなたは私とすれ違っても気付きもしない


私の人生にあなたはいても
 

あなたの人生に私はいない


私にとってあなたはこの世のすべてでも
 

あなたにとって私はこの世にはいないのも同じこと

 

それでもあなたが幸せなら
 

あなたが笑っていられるのなら
 

何も言うことはない
 

私は他に望むことはない

 

 

 

割れた空が夜を導いていく

 

闇に引きずり込んでいく


それはまるでこれまでの私



夜に割り込んできた太陽が


夜を沈めていく


それがこれからの私

 

 

 

この手にふれて

どんなときでも

何が起こっても


この手にふれていて

どんな災いが降りかかろうと

どんな不幸がおきようと


この手にふれて

この手を離さないで

この手のぬくもりを

ずっと感じていて 

 

 

(再掲)

 

 

 

降る雨は変わらずとも
 

同じ雨粒はない
 

降る雨は揺れ動き
 

雨筋は風次第
 

風が惑わす雨足を
 

避ける術を持ってしても濡れ鼠
 

かのように
 

人の愚かさも変わらず仕舞い
 

されど
 

雨はやがてあがってしまう



照る月は変わらずとも
 

眺める人の心を写し
 

邪な影を映し取る
 

僅かな隙を狙って忍び込み
 

寝首を掻くか
 

足下すくい
 

裏切り顔が仮面の下でほくそ笑む
 

かのように
 

人の狡さも変わらず仕舞い
 

月は満ち欠けを繰り返す



上る陽は変わらずとも
 

隠されていた影が姿を現し
 

己が身を形作る
 

躊躇うことがない光の線は帯となり
 

屈折は連なりとなる
 

見誤らせることなく
 

密かな嘘さえ露わにし
 

誰のでもない
 

自分の心は誤魔化せず
 

かのように
 

人の醜さも変わらず仕舞い
 

闇は足元から忍び寄る



沈む夕日は変わらずとも
 

昨日と変わらぬ日を憂い
 

足踏みの音は耳鳴りとなり
 

頭の奥で谺する
 

明日へ漕ぎ出す船はなく
 

暮れる途方に身をよじる
 

かのように
 

人の悲しみも変わらず仕舞い
 

されど
 

沈んだ太陽はやがて上り始める
 

 


肌寒い名のみの風が
 

運び来る
 

はじめの一歩の陽光は
 

遙か霞の花盛り

 

一雨ごとの蒸し暑さも
 

怯むことない太陽の
 

日差しも容赦を知らずして
 

ひとを丸ごと貫いて


ふと
 

振り返っても
 

深い緑も褪せていく
 

降る如く
 

振りまく如く枯れ葉舞い


平気な顔した雪雲たちが
 

平三(へいざ)の顔で
 

ひた走り
 

兵もろともに冬の将軍が
 

平定されず居座りて

 

星巡りの季節後(ご)の
 

仄(ほ)の言う言葉の徒然に
 

ほんのり漂う
 

頬うつ香り
 

穂の香り

 

 

 

 

星は笑う 人の少しの喜びを


星は笑う 人の深い悲しみを   


星は笑う 人の出会いを   


星は笑う 人の別れを   


星は笑う 人のそんな一喜一憂を   


星は今日も人の行方をそっと占う

 

 

 

(再掲)

 

飲めよ 歌えよ 若者よ
 

今宵限りの酒盛りだ
 

互いにグラスを傾けて
 

酔いつぶれるまで飲み明かそう

 

飲めよ 歌えよ 若者よ
 

心の憂さを吹き飛ばせ
 

たまらず涙が溢れても
 

今夜だけは許してやろう


飲めよ 歌えよ 若者よ
 

昔の恋の武勇伝
 

おまえたちにも聞かせてやろう

やがて朝日が昇ったら
 

街に中へ
 

胸を張って歩き出せ
 

晴れでも
 

雨でも
 

明日は明日の風が吹く

 

 

 

命半ばの兵どもが
 

逝く屍を乗り越えて
 

彼の地の果てに散っていく


異国に果てる者たちの
 

幾山を埋める墓標の列に
 

今日は貴方が居並んで
 

異国の土となりはてるのか


心をいずこに馳せようか
 

帰りを誰が待っていようが
 

野辺の送りは1人きり
 

野辺の送りは藪の中

 

 

 

人生はなかったことにはできない
 

何人たりとも
 

一秒たりとも
 

なかったことにはできない
 

たとえ他人が忘れているとしても
 

自分自身は覚えている
 

おのが身に刻まれている
 

せいぜいできることといえば
 

忘れたふりをするのが関の山


何をしたとしても
 

何をしなかったとしても
 

一秒後の自分に降りかかる
 

明日の自分に降りかかる
 

来週の自分に降りかかる
 

来月の自分に降りかかる
 

1年後の自分に降りかかる
 

10年後の自分に降りかかる
 

死ぬ間際まで降りかかる
 

報いはあっても
 

救いはない
 

そうであっても
 

人生はなかったことにはできない

 

 

 

キャタピラの列に

 

 

立ちはだかったその意思が踏み砕かれたとき


風を失った風車のように


時代が流れるのを止めてしまった