欲しいのは鳴かない花
 

自由に飛び回る鳥も
 

さえずりを止めない鳥などいらない
 

いつも吠えてばかりの犬も
 

飼い慣らすのも手間がかかる犬などいらない
 

うるさく飛び回る虫も
 

鳴き続ける蝉もいらない
 

気ままな猫などいらぬ
 

何でも囓るネズミもいらぬ
 

いつも牙をむく野獣などもってのほか



あっていいのは鳴かない花
 

ただ美しく黙って咲く花
 

何色の花でもいい
 

静かに咲く花であればいい
 

目障りならば切ってしまえばいい
 

邪魔なら根こそぎ刈ってしまえば消してしまえる
 

花が散り実がなればもげばいい
 

どんな水でも花は咲く
 

甘い水であろうと
 

苦い水であろうと
 

腐った水であろうと
 

花は咲く
 

どんな陽が照らそうが
 

花は咲く



都合のいいときに種をまき
 

適当に水を与えておけば
 

咲く花であればいい
 

季節が来れば
 

また静かに咲く花でいい
 

自由に操れる花であれば
 

それで十分だ
 

都合がいい花ばらば
 

この国一面
 

鳴かない花で覆い尽くせ

 


 

 

生まれたばかりの心が
 

足を取られて動けずにいる
 

囚われの身
 

篭の鳥
 

もう何かに縛られている



恨む心
 

妬む心
 

怯えた心
 

白い影に潜んでいる
 

震える声が木霊する
 

血に染まった風の香りが流れてくる

 

 

旅に出たその足が
 

知らずのうちに
 

どこかに向かおうとしている
 

昔 死ぬ前に燃やした恋
 

昔 死ぬ前の罪を償うため
 

昔 死ぬ前の恨みを晴らすため



いずれにしても
 

生まれる前から
 

囚われの身
 

身をよじり
 

傷ついても
 

囚われの身

 

 

折れそうな三日月が
 

見透かすように
 

傾いている

 

 

 

見えることだけが

真実じゃない

真実だけが

見えるわけじゃない



聞こえたことだけが

言いたいことじゃない

言いたいことだけが

聞こえるわけじゃない



書いてあることだけが

真実じゃない

真実だけが

書かれているわけじゃない

 

 

カノンの店でパンを買い
 

クレディのところでトマトを買おう
 

明日も晴れそうだとか
 

今年の冬は雪が多かったねと
 

言い合って
 

買い物を済ませて


毎日のハナたちの軒下会議は
 

もう今日は終わったようで
 

仲良く並んでイスに座ったまま
 

うたた寝している
 

うららかな日差しを足下に受けて

 

最近見ないと思ったら
 

ジュディは体調が良くないと
 

サトラのところで聞いたけど
 

心配したところで仕方がないのはわかっている
 

かといって
 

知らん顔もできないし

 

この前
 

花を持ってソワソワしたニコルを見かけたけど
 

アンドレはどうせ振られるさって
 

笑ってたけど
 

もしそういうことなら
 

上手くいって欲しいし
 

気になるなぁ

 

少し風が出てきた
 

今日は天気が良かったから
 

あの洗濯物飛ばないといいけど
 

ツバメは風に乗って気持ちよさそうに飛んでいる
 

今日はどこまで飛んでいくんだろう


そういえば
 

イザリは帰ったのだろうか
 

最近とんと噂は聞かなくなったし
 

便りくらいはあるとも聞かない
 

寂しい思いをしていないといいけど


はい、お帰り
 

いつも元気に挨拶ありがとう
 

今日はどんなことを学校で教わった?
 

寄り道しないで
 

ちゃんと家に帰るんだよ


そうそう
 

クインシーのところに待望の赤ん坊が生まれたって
 

ワンダーの喜びようったら
 

あぁお祝い
 

何がいいだろう
 

考えとかなきゃ



ささやかなそんな暮らしを
 

たわいもないそんな日常を
 

一瞬の爆風が引き裂いていった
 

燃える煙に巻かれて
 

微塵にも吹き飛んで
 

いってしまった
 

すべてを瓦礫にだけして

 

 

 

(再掲)

 

 

 

涙につつまれた教会
 

悲しみにくれるミサ
 

その悲しみがどんなにつらいものかは
 

知っているはずなのに
 

同じ思いをさせるために
 

送り出される人々



失われた者のために祈りを捧げたとき
 

彼は何と諭したのか
 

彼はどこへ導いたのか
 

誰しもの頭の中には
 

左の頬を差し出すことはなく
 

血祭りにあげる者の顔



懐の拳を問わないことが彼の教えか
 

知らぬ振りは彼の慈悲か
 

ためされているのも知らず
 

怒りに血迷う人たちは
 

振り上げた拳の行き場がなくなろうと
 

やめることも忘れてしまっている



すべての人が傷ついて終わる
 

その過ちに
 

その繰り返しに気が付くために
 

まだ何が足りないのか
 

まだ幾人の生命が必要だというのか
 

この時のために二度とするまいとの誓いは
 

どこで失ってしまったのか 
 

彼がそう教えたのか
 

そう導いたのか

 

 

 

忘れないでおくれ
 

この唄は
 

いつか会える日のため
 

忘れないで、わが子よ
 

おまえを見つけるため
 

忘れないでおくれよ
 

子守唄があれば
 

見つけられるから
 

必ずや見つけだせるから
 

ねぇ、わが子よ


 

覚えておいで
 

この唄を
 

お前が大きくなって
 

見分けが付かなくなっていても
 

たとえ
 

この温もりを忘れてしまっていても
 

子守唄が覚えておいてくれる
 

だから
 

ちゃんと聴いておくれ
 

よく耳を澄まして
 

この唄を聴いておくれ



また会える日は
 

いつとは約束はできない
 

でも
 

この唄だけは
 

肌身離さず
 

身に付けておいで
 

子守唄は
 

お前とつなぐ糸なれば
 

たとえ遠く離れていても
 

空を超えて
 

会わせてくれる
 

どんな深い海が隔てても
 

切れることはない



子守唄があれば
 

この唄さえあれば
 

お前とつながっていると信じて生きてゆける
 

さぁ、もう一度唄ってあげるから
 

よくお聞き
 

もう一度聴かせてあげるから
 

どうか忘れないでおくれ
 

どうか、わが子よ
 

よく耳を澄まして
 

この唄を聴いておくれ
 

 

 

どんな理由があれば

息の根を止められてもいいですか?

誰に告げられたら

納得して死ねますか?


でも心配しないで下さい

今、あなたを殺す

いくつかの理由を

会議で決めているところだから

だから、何も心配しないで・・・

 

 

 

(再掲)

 


幾筋も舞上がる煙が淀みと化した空は 

もう怒りを静めたかのように 

穏やかに晴れ渡っている 

燃え崩れた街は黙って見上げている 



容赦のない冷たい風はいっそう身体を凍えさせ 

一度止まった時間は動けないまま 

ただ過ぎるのを待つように立ち尽くす 

それでも明日への空は明けていく 



あの時から続く空に 

打ち鳴らされる鐘の音が響き 

一つひとつはか細い灯りを点し 

あなたの元にこの祈りとともに導いていく 

忘れようのないあなたを 

空を見上げている 



(再掲)
 


「おめでとう」が飛び交い


「ありがとう」が行き交う


新年おめでとう ~ おめでとう
 

誕生日おめでとう ~ ありがとう
 

結婚おめでとう ~ ありがとう
 

進学おめでとう ~ ありがとう
 

就職おめでとう ~ ありがとう
 

開店おめでとう ~ ありがとう
 

退院おめでとう ~ ありがとう
 

昇進おめでとう ~ ありがとう
 

合格おめでとう ~ ありがとう
 

出産おめでとう ~ ありがとう
 

メリークリスマス ~ メリークリスマス
 

おめでとう ~ ありがとう

 

誰彼となく繰り返される
 

何気にやり取りがこれだけ溢れているのに
 

その中には入ることはない


何人のフォロワーがいても
 

何人フォローしていても
 

一瞬たりとも入れてはもらえない


どんな言葉をかけても
 

自分は埒外におり
 

どう呼びかけてみても
 

自分以外の世界の話

 

画面の中では人としてではなく
 

単なる数字
 

数字の「1」としてでしか存在し得ない

 

意味のない数字
 

置き換えのきく
 

誰であっても関係のない数字


誰にも気づいてさえもらえない
 

生身の人としては感じてはもらえず
 

ただ漂っていくだけの存在



今日も
 

明日も
 

その次の日も
 

毎日のように


「おめでとう」が飛び交い
 

「ありがとう」が行き交う

 

けれど
 

その輪の中には入ることはない
 

どんなときでも
 

よその人の言葉
 

いつなんどきでも
 

他人の言葉
 

見知らぬ世界の言葉

 

 

 

あんた
 

ねぇあんた
 

どう思ってんの
 

あたしの気持ち 
 

わかっているくせに
 

あたしはエェとこ一つもないし
 

好かれてる自信なんかあらへんけど
 

誰にも負けへんくらい


好きやねんで
 

あんた
 

ねぇあんた
 

どうなんよ
 

あんた
 

ちょっと聞いてんの



あんた
 

ねぇあんた
 

ほら見てみぃ
 

街の明かりがキレイやよぉ
 

キラキラしてて
 

星のようやね
 

あんたはわたしの話も聞かんと
 

2つ並んだ夜空の星を指さして
 

2人の星やって言いやった
 

あんた
 

ねぇあんた
 

あんた
 

意外とロマンチストやね
 

あんた
 

ねぇあんた
 

ホンマにキレイやね