さほどのことも
 

さにあらず
 

されども
 

さしたることなく
 

差し障りもなく



正直者が罪背負い
 

正気のご沙汰も金次第
 

性懲りもなく
 

したたか者だけ
 

凌げる世



統べる者
 

すり寄る者ども
 

すべからく
 

過ぎにし方へ
 

捨てられる



世間の
 

せせら笑いが
 

背に代える臓腹にもなく
 

急いてし損じ
 

せめぎ合い



粗忽者
 

誹りられようとも
 

素知らぬ顔して
 

その身を賭して
 

注いでみるまでのこと故

 

 


ねぇ、起きて


もうすぐ夜明けよ
 

もう一度行こうって話してた思い出の
 

あのレストランで食事するけれど
 

その後どうするのかまだ決めてないじゃない
 

ねぇ早く決めなきゃ
 

いつまで寝てるのよ
 

ねぇ、起きてよ
 

もうすぐ夜が明けるよ



 

ねぇ、起きてよ
 

もう夜が明けるわよ
 

最近思ったんだけど
 

あなたが珍しく買ってくれたあの洋服に
 

母の形見のブローチ着けると
 

いいじゃないかと思うの
 

ねぇ、あなたどう思う?
 

その服を着て
 

あの街を散策しましょうよ
 

ねぇ、起きて
 

もう夜が明けるよ




ねぇ、目を開けて
 

もう朝だよ
 

あの人を紹介してくれるんじゃなかったの
 

紹介もされないまま
 

1人で向き合わなきゃいけないの?
 

あなたの話を聞いてから
 

あなたと一緒に生きていこうと決めたのに
 

ねぇ、目を開けてよ
 

もうすっかり朝だよ

 

ねぇ
 

ねぇ、もう一度
 

目を開けて
 

せめて
 

もう一度だけでいいから...
 

ねぇ...
 

 

 

水に流すなら夜にしなさい
 

行方が見えない夜に
 

先が探せない夜に
 

行き先を目で追えない夜に
 

見えなくなるまで見送ることなく
 

きびすを返しなさい
 

後ろ髪を断ち切るように
 

未練を残さないように
 

背中を向けなさい
 

それで
 

何もかもなかったことにできる
 

それで
 

すべてなかったことにしなさい

 

 

 

海鳴りがあなたを探している
 

どこにいる
 

どこにいるかと
 

いたるところを探している
 

だけど
 

目の前の海は黙っている
 

それでも海鳴りは探している
 

探し続けている



 

海鳴りを借りてあなたが呼ぶ
 

ここにいる
 

ここにいるよと
 

だから
 

心配するなと言うように
 

だけど
 

目の前の海は黙っている
 

海鳴りだけが叫んでいる
 

叫び続けている



 

海鳴りに乗せて
 

あたなに届けと
 

ありがとう
 

幸せだったと
 

だけど
 

目の前の海は黙っている
 

それでも
 

何度も言い続ける
 

あなたに届けとばかりに




海鳴りがあなたを真似て
 

ありがとう
 

大丈夫だよと
 

いつまでも
 

忘れないというように
 

遠く離れた寂しさを
 

海鳴りだけが抱きしめる
 

凍えた肩を一人抱きしめくれる

 

 

 

費やした時間が体の中を駆けめぐり


流した汗が


君を勇者に変えていく

 

跳べ


跳んでいるうちは


君は夢でなくなる




かけられた声が


心を奮い立たせ


密かな涙が


君を強くする


舞え


舞っているうちは


それは夢でなくなる




たとえ砕け散っても


それは勝者への祝福


恥じることなく

 

悔いることなく


だから


今は


力の限り跳べ

 

思いのまま舞え

 

そして

 

君は希望になる

 

 


あのときはゴメン


でも
 

君といたあの時
 

どうしても踊りたくなったんだ
 

踊れもしないのに
 

笑っちゃうよね
 

だから
 

周りのみんなは笑っていた
 

全部僕の責任だ
 

君は何も悪くない
 

でも聞いてくれ
 

君に恥をかかせようとしたわけじゃない
 

ただ
 

あの時は本当に君と一緒にいられることが
 

うれしくて
 

うれしくて
 

仕方がなかったんだ
 

あの時のお詫びに
 

この花束を受け取ってほしい




花束を君になんて
 

何をいまさらだと思うだろう
 

今まで何も見ていなかった
 

見ようとしていなかったのかもしれない
 

それは
 

何も思っていなかったのも同じだと
 

今になって思う
 

下手な言いつくろいならいくらでもある
 

仕事が忙しかった
 

一緒にいることに安心しきっていた
 

でもそれもこれもみんな
 

理由にもならない愚かな言い訳だ
 

君がいることが
 

君が側にいてくれていることが
 

当たり前だと思ってしまっていた
 

もしまだ間に合うのなら
 

この花束を受け取ってほしい




やっとあなたは戻ってきた
 

でも
 

こんな姿になって
 

戻ってくるなんて思わなかった
 

いえ
 

絶対ないとは思ってはいなかったわ
 

それを口にすると
 

本当になるのではないかと
 

たまらなく不安で
 

とても不安で仕方なかったけど
 

だから
 

無事に帰ってくることだけを毎日祈っていた
 

やっとあなたは私のもとに帰ってきてくれた
 

できたら
 

あなたをもう一度
 

この腕で抱きしめたかった
 

今はせめて墓標に
 

この花束を
 

「おかえりなさい、あなた」

 

 

 

霧の中に佇む国
 

霧にまみれた国
 

霧にむせぶ国
 

霧が起きる原理は知っている
 

けれど誰もが諦めている
 

何もかも覆う尽くす霧に
 

あまりの霧に行方が見えない




霧の中に佇む島
 

霧にまみれた島
 

霧にむせぶ島
 

霧が起きる摂理は知っている
 

けさど誰も何もしようとしない
 

何もかも見えなくする霧に
 

あまりの霧に海との境が見えない



 

霧の中に佇む街
 

霧にまみれた街
 

霧にむせぶ街
 

霧が起きる道理は知っている
 

けれど誰にもどうすることもできない
 

何もかも包み込む霧に
 

あまりの霧に罪が見えない




霧の中に佇む家
 

霧にまみれた家
 

霧にむせぶ家
 

霧が起きる理由はわかっている
 

でも誰もどうしていいのかわからない
 

誰の口も塞ぐ霧に
 

あまりの霧にあなたの心が見えない




霧の中に佇む人
 

霧にまみれた人
 

霧にむせぶ人
 

霧が起きる訳は知っている
 

けれど誰にも気がつかれることはない
 

人々を惑わせる霧に
 

あまりの霧に自分がまったく見えない

 

 

 

 

さまよい歩く街も尽き
 

行き先探しては
 

次の街
 

ふと気付けば
 

プラットホームに立ちすくんで
 

最後の綱の番号は話し中



ためらいは
 

昨日の数だけ増えていく
 

期待を求めて
 

増えていく
 

それでも
 

誰もいない電話だけを傍らに
 

焦点合わぬ空(くう)を見つめている



呼ぶような声は
 

ビル風が起こした空耳
 

誰かを求める絵空耳
 

それでもまだ諦めず
 

ふと気付けば
 

見知らぬビルの上に佇み
 

下からの風に吹き上げられながら

 

 

 

(再掲)

 

 


ひとつひとつ


思い出した先から


とりとめもない話


昔の話


つぶやくように


ささやくように


誰もいない部屋で


グラスの酒だけが聞いている




あの頃流行った歌も口をつく


気に入っていたはずのフレーズを


いまはうろ覚えでくり返す


調子っぱずれのフレーズを


何度も繰り返す


グラスの氷だけが音を立てて


溶けていく




ぽつりぽつり


こぼれ落ちるような思い出話が


あっちこちに飛んだり


つなぎ合わせたり


一人で苦笑い


水滴だらけのグラスは


何も言わない





笑い合った日もあった


口をきかなかった日もあった


見つめ合った日もあった


不安な日もあった


楽しい日もあった


いろんなことを数えるように


思い出す


その思い出を語り合う人も


もうどこにもいない


忘れたくないけど


次第に薄れていく記憶に


写真だけが寄り添う


そばにはぬるくなった


酒がいてくれる夜

 

 

 

朝露が朝日に照られて輝いていても

その朝日は朝露を消していく

誰にも気づかれることがなかった朝露が

何事もなかったようにいなくなる

それでも

朝露を照らしていた太陽は昇っていく

照らされていた露は消えても


我関せずに太陽は昇っていく