少年は寂しかったから


だから
 

言ったんだ
 

「狼が来るぞ」って



少年は誰かに相手して欲しかった
 

だから
 

叫んだんだ
 

「狼が来るぞ」って



少年は誰かに褒めて欲しかっただけだった
 

ただそれだけで
 

「狼が来るぞ」って



誰も未来はわからないはずなのに
 

嘘つき呼ばわりされても
 

少年は叫び続けたんだ
 

「狼が来るぞ」って



そんなことを繰り返しているうちに
 

少年の言葉は
 

誰にも真に受けてもらえなくなった
 

「狼が来るぞ」って


 

でも
 

みんなも息をするように
 

だまし合いをしているのに
 

少年だけが責められる
 

「狼が来るぞ」って



いや
 

最初から誰もがわかっていたはずなんだ
 

なのに
 

その少年だけを責められるというのか
 

「狼が来るぞ」って


 

誰もその少年がそんなことを言い続けるのか
 

考えもしない
 

だから
 

少年は意地を張るように
 

「狼が来るぞ」って



誰にももう相手にされなくなっていても
 

少年にはその言葉しか持っていないから
 

そう言うしかないんだ
 

「狼が来るぞ」って



少年には他の言葉を教えてもらっていないから
 

だから
 

その言葉が頼りなんだ
 

「狼が来るぞ」って



だから
 

もう誰にも相手にされないとわかっていても
 

言い続けるしかないんだ
 

「狼が来るぞ」って



振り絞るように
 

今でも街に向かって言っている
 

「狼が来るぞ」って



今日も少年は街に向かって
 

小さくささやいている
 

「狼が来るぞ」って
 

寂しく
 

「狼が来るぞ」って
 

 

 

 

神が人間を造り給たのなら
 

なぜ人間は戦いをするように造られたのか
 

それは
 

どうせ人間
 

どうせ人生なんか暇だろうから
 

戦う仕掛けを仕組んだに違いない
 

脳内神経回路やホルモンを利用して
 

依存症になるように
 

仕込んだに違いない
 

だから
 

我々は何も悪くない

 

 

 

もう飽きた話題ではなく
 

次の事件が欲しい
 

あの頂戴した涙にももう飽きたんだ


何?
 

間違えた?
 

名前が違う?
 

写真が違う?
 

もうあの事件は終わったんだよ


 

悪に染めた手を見つけろ
 

手あかのついていない事件はないか
 

血みどろの奴はいないか
 

泥を飲んでいる奴はいないか

 

 

絵を撮ってこい
 

写真をよこせ
 

誰か話を聞いてこい



何?
 

謝れだぁ?
 

言っていないのに言ったことになっている?
 

またその話か
 

とっくに昔のことだ
 

ほっとけばいい
 

何をいまさら


 

次は何だ
 

次がどこだ
 

次は誰だ
 

選べ
 

選べ
 

選べ
 

人を選べ
 

命を選べ
 

読んで喜ぶ命を選べ

 



探せ
 

探せ
 

探せ
 

涙を探せ
 

悲劇を探せ
 

読んで泣かせる悲劇を探せ

 

 

 

(再掲)

 

 

 

 

罪人は苛まれていればいい

罪人はその罪に苛まれてさえいればいい

誰かに告げて楽になるなどあってはならない

ましてや話すことで許された気になってはならない



謝って済むと思うな

それで自分は気が済むだろう

楽になるだろう

忘れよう

忘れようと

必死にもがいて

何とか気持ちが落ち着いたふりができるまでになったのに

おのが都合で相手に思い出させて

波風を立てるだけ立てて

そんな償い面が許されると思うな



その罪により自らを責め

責めるが故に許せずにいればいい

許してもらえる相手などいない内なる身の中で

誰にも許されることのない無間地獄の底に身を置けばいい



神にすがるか?

仏にすがるか?

すがりたければ神にすがれ

すがりたければ仏にすがりつけ

罪の意識がそうさせたところで

償いにはほど遠い



どこにでも逃げたければ逃げるがいい

どこに逃げようが罪はいつも側にいる

いつも罪は身の内に必ずいる

自らの内に罪を抱えたまま

苛まれ続けたまま死んでいけばいい

ただそれで許されたと思うな

終わったと思うな

償いはそれでもまだ終わらない

指弾するお前も罪人だということを忘れるな

他者を罪人だと指弾しているお前も

誰かからすれば罪人なのだ

 

 

 


若芽もやがて枯れゆく


満ちた潮もやがては引いていく
 

死は生きた人生があったればこそ与えられる
 

ささやかな人生であったとしても
 

華やかな人生であったとしても
 

つましい人生であったとしても
 

惨めな人生であったとしても
 

生きていたからこそ死に迎え入れられる
 

罰ではなく
 

世の理(ことわり)として

 

 

では訊こう
 

死は
 

この世からの脱落か
 

あの世への解放か
 

訳知りの主なら容易かろう
 

重ねて訊こう
 

長生きは
 

この世の善行への褒美か
 

身の罪をさらに償えという戒めか
 

悟った主なら造作もなかろう

 

 

 

歌もいらない


花束もいらない
 

ケーキも
 

ロウソクもいらない
 

もちろん贈り物なんていらない
 

ただひと言
 

「おめでとう」
 

そう言って欲しいだけ
 

この言葉だけが
 

この生が許されたものにしてくれる
 

それだけなのに
 

でも叶わなかった
 

生まれたとき
 

「Welcome」
 

とこの世に迎え入れてくれるという話も嘘


誰も何も言ってはくれない
 

誰もこの世にいないかのように
 

誰も関心がない
 

誰もこの世に必要ないかのように
 

誰も気がついていないからじゃない
 

誰も生まれて来なくて良かったかのように
 

誰もその言葉を持っていない
 

誰もが言って欲しい言葉のはずなのに
 

どこにも、ない

 

 

 


さほどのことも
 

さにあらず
 

されども
 

さしたることなく
 

差し障りもなく



正直者が罪背負い
 

正気のご沙汰も金次第
 

性懲りもなく
 

したたか者だけ
 

凌げる世



統べる者
 

すり寄る者ども
 

すべからく
 

過ぎにし方へ
 

捨てられる



世間の
 

せせら笑いが
 

背に代える臓腹にもなく
 

急いてし損じ
 

せめぎ合い



粗忽者
 

誹りられようとも
 

素知らぬ顔して
 

その身を賭して
 

注いでみるまでのこと故

 

 


ねぇ、起きて


もうすぐ夜明けよ
 

もう一度行こうって話してた思い出の
 

あのレストランで食事するけれど
 

その後どうするのかまだ決めてないじゃない
 

ねぇ早く決めなきゃ
 

いつまで寝てるのよ
 

ねぇ、起きてよ
 

もうすぐ夜が明けるよ



 

ねぇ、起きてよ
 

もう夜が明けるわよ
 

最近思ったんだけど
 

あなたが珍しく買ってくれたあの洋服に
 

母の形見のブローチ着けると
 

いいじゃないかと思うの
 

ねぇ、あなたどう思う?
 

その服を着て
 

あの街を散策しましょうよ
 

ねぇ、起きて
 

もう夜が明けるよ




ねぇ、目を開けて
 

もう朝だよ
 

あの人を紹介してくれるんじゃなかったの
 

紹介もされないまま
 

1人で向き合わなきゃいけないの?
 

あなたの話を聞いてから
 

あなたと一緒に生きていこうと決めたのに
 

ねぇ、目を開けてよ
 

もうすっかり朝だよ

 

ねぇ
 

ねぇ、もう一度
 

目を開けて
 

せめて
 

もう一度だけでいいから...
 

ねぇ...
 

 

 

水に流すなら夜にしなさい
 

行方が見えない夜に
 

先が探せない夜に
 

行き先を目で追えない夜に
 

見えなくなるまで見送ることなく
 

きびすを返しなさい
 

後ろ髪を断ち切るように
 

未練を残さないように
 

背中を向けなさい
 

それで
 

何もかもなかったことにできる
 

それで
 

すべてなかったことにしなさい

 

 

 

海鳴りがあなたを探している
 

どこにいる
 

どこにいるかと
 

いたるところを探している
 

だけど
 

目の前の海は黙っている
 

それでも海鳴りは探している
 

探し続けている



 

海鳴りを借りてあなたが呼ぶ
 

ここにいる
 

ここにいるよと
 

だから
 

心配するなと言うように
 

だけど
 

目の前の海は黙っている
 

海鳴りだけが叫んでいる
 

叫び続けている



 

海鳴りに乗せて
 

あたなに届けと
 

ありがとう
 

幸せだったと
 

だけど
 

目の前の海は黙っている
 

それでも
 

何度も言い続ける
 

あなたに届けとばかりに




海鳴りがあなたを真似て
 

ありがとう
 

大丈夫だよと
 

いつまでも
 

忘れないというように
 

遠く離れた寂しさを
 

海鳴りだけが抱きしめる
 

凍えた肩を一人抱きしめくれる