ひとつひとつ


思い出した先から


とりとめもない話


昔の話


つぶやくように


ささやくように


誰もいない部屋で


グラスの酒だけが聞いている




あの頃流行った歌も口をつく


気に入っていたはずのフレーズを


いまはうろ覚えでくり返す


調子っぱずれのフレーズを


何度も繰り返す


グラスの氷だけが音を立てて


溶けていく




ぽつりぽつり


こぼれ落ちるような思い出話が


あっちこちに飛んだり


つなぎ合わせたり


一人で苦笑い


水滴だらけのグラスは


何も言わない





笑い合った日もあった


口をきかなかった日もあった


見つめ合った日もあった


不安な日もあった


楽しい日もあった


いろんなことを数えるように


思い出す


その思い出を語り合う人も


もうどこにもいない


忘れたくないけど


次第に薄れていく記憶に


写真だけが寄り添う


そばにはぬるくなった


酒がいてくれる夜