「元気だった」


「懐かしいね」


そんな言葉がとりあえずは行き交う同窓会


そのうち


「変わらないね」


という言葉が合図するかように昔を再現し始める


それとなく仲のいい雰囲気を醸し


どこか見下していた当時の空気を持ち出してくる


そのことに気がついていなかったとでも思っていたのか


それにしても


そんなに今の生活に不満なのか


今の自分は幸せではないのか


今よりまだ少しはマシだった昔に戻って


自分より「下」の人間がいることを確認したいのか


昔のように無邪気さを装って


値踏みしながら笑いつつ


どうマウントをとろうか


ここにいるみんなが手ぐすね引き合っている


やっぱり


来るんじゃなかった同窓会




再会の興奮も一通り鎮まると


探りさぐりで話題をさぐる


やがて行き着く先は


「もう時効」という言葉を


免罪符にした秘密の暴露


今日まで胸に秘していたけど


言いたくてウズウズして


今日ここに来た顔


ついに解放する優越感


誰にも言わない約束は錆び付いて


セピアに色褪せれば


思い出と名前を変えるとでも思っているのか


後暗いということではなくても


触れられたくないことは誰にでもあるのに


そんなことは気にはしない


冷やかされて


潮が引くようにすぐに醒めていく


その程度のことでも


黙っていられない


自分の欲が先走る同窓会


やっぱり


来るんじゃなかった同窓会




アイツ、来てねぇな


って来るわけないか


あんな醜いことされて


来ようと思う人間はいない


アイツが今日ここに来ないことは


すでにあの日に決まっていた


もしかしてアイツが来るかも、というわずかな期待も


奴らの胸の内には少しはあっただろう


忘れた素振りの奴らは


いつまでも声高にはしゃいでいる


そのうち


話すことに尽きかけたら


少し低いトーンで辺りをうかがうように


アイツのことを持ち出すに決まっている


今のところは


誰が口火を切るのか


牽制し合っているところか


笑いながら


うれしそうに


時間が罪を許したとでも思うような顔をして


いや、当時から罪だとは思わない奴ら

やっぱり


来るんじゃなかった同窓会なんか

同窓会なんか二度と来るもんか



 


玄関先で揺れる灯明が

こっちだよと

帰る家に導き

待っていたというように静かに揺れている

さっき打った水が乾きはじめるころ

少し離れた縁側から風鈴の音が聞こえ

立ち上る煙が一揺れ

ただいまと一揺れ



話し足りない時間がせわしく過ぎていく

わずかご滞在では

尽きぬ話は終わらない

蝋燭のように短くなる時間

止まらぬ時間が急かすように

風が風鈴を鳴らし

また来年と

灰だけを残して

灯明が燃え尽き...



 

 

想いは変わらない
 

でもなぜか不安もふきだまっていく
 

きっと
 

それはきっと
 

嘘だと
 

時に見えなくなる気持ちに
 

この身が凍り付きそうなりながらも
 

傾いていくものを支えたい
 

傾いていくものを支えて欲しい
 

離れるときの約束も
 

すれ違っていく時間も
 

変わっていく言い訳に見えてしまう
 

その言い訳が
 

差した魔も
 

見え透く嘘も隠そうとする
 

不穏な予感を打ち消して欲しいのに
 

問いかけにためらい
 

聞きたい答えに耳をふさぐ
 

2人にとってそれが幸せならって
 

他人の言葉だけが聞こえてくる
 

そんなはずがない未来だけが見えてくる

 

 

 

歯車が歯車として生きるためには

周りとは同じ凸凹で

周りと同じ速さで回らなければならない

できなければ捨てられる

そうならないように

同じ凸凹をなし

同じ速さで回る

そして

いつまでも同じでなければならない

捨てられないためにも



周りとかみ合わない歯車は

いつでも交換されてしまう

周りとの同じ速さで回れない歯車は

いつでもはじかれる

真っ直ぐ歩かないとはじかれる

周りと同じ歩調でなければつぶされる



歯車にもなれない自分は

周りと合わせられない自分は

どこに行けばいいのだろう

歯車にもなれない自分は...

 

 



 

 

バスは走る
 

停留所に止まったり
 

止まらずに通過しながら
 

不規則にバスは走る
 

降車ボタンが押されていなくても


停留所で待っている人がいれば
 

バスは止まる
 

そんな風に不規則にバスは走る



足元に置いてある荷物が


足の置き場を狭くする


本当に必要な荷物かと問われれば


わからない


ただ用意してくるようにと


書かれてあったから


カバンに詰め込んだだけの荷物


家には他のすべてを置いてきた




バスのエンジン音の中


どの人もバスの揺れにあわせて


連れ立つ人がいれば何かの話をし


一人であれば


黙って外かスマホに目を向ける


揺れながら


それぞれの目的の停留所に


たどり着くのを待っている


うつろな窓の外の風景は流れていく



バスは


停留所で止まり


信号でも止まり


それでも


終点に向かって走る


でも


足元の荷物を抱えて


途中の病院前の停留所で降りる


帰りのバスに乗るかどうかは


今はわからない


その不安を1人抱えて


バスは走る


わが身の動悸とは関係なく


バスは走る

 

不規則にバスは走る

 

 

 

色あせた写真が

何か言いたげに見える

同じ若いという時を

生まれてくる時の違いを

羨(うらや)んでいるようにも

憐れんでいるようにも

見えもする


鳥は名前などなくても飛べる


鳥はどう呼ばれているかも知らずに飛んでいける


名前がないと可哀想といい
 

人だけが名付けて喜んでいる
 

人が指さし名を呼んでも
 

鳥は知らずに飛び去っていく



花は名前などなくても咲ける
 

花はどう呼ばれているかも知らずに咲いている
 

名前がないと可哀想といい
 

人だけが名付けて満足している
 

人は手を延べその名を呼んで
 

花は知らずに摘まれていく



魚は名前などなくても泳げゆける
 

魚はどう呼ばれているかも知らずに泳いでいる
 

名前がないと可哀想といい
 

人だけが名付けて喜んでいる
 

人が釣り糸を垂れても
 

魚は知らずに泳いでいく




 

 

日は昇り


日は沈み


そして1日は繰り返す



花は咲き、そして散り


陽は照り、ときに陰り


雨は降り、次第にあがり


雪が積み、やがて解ける


そうして1年はめぐりくる



何気ないこの繰り返しの中に


誰かの生まれ日がある


皆でこぞって祈り


皆でこぞって祝い


そして


夜は静かに眠りにつこう

 

 

 


誰にも意味がなくても


これは彼の言葉
 

誰も相手にしなくても
 

僕には意味のある言葉



何気ない
 

寡黙なアイツの無器用な言葉
 

知らぬ間にこぼれた
 

胸に宿る思いを知らされた言葉



誰も気がつかなかった
 

これは彼女らの言葉
 

誰もが素通りした
 

手を伸ばせばそこにあった言葉



やっと出逢えたから
 

せっかくたどり着いた
 

だから
 

あの言葉を手放すことはできない


 

君には必要のなかった言葉
 

閉ざされた心には届くはずのなかった言葉
 

静かに君の横で
 

黙っていればよかった言葉



誰の胸に届くことがなくても
 

これが私の言葉
 

誰かのためでない
 

これが私の中の言葉



 

 

誰に伝わることがなくても
 

これがあの人の言葉
 

喧騒のなかでも
 

私には伝わった言葉



誰もが忘れている
 

これが昔の人の言葉
 

速い流れのなかででも
 

忘れてはいけなかった言葉



口数の多い人の
 

これが今際の際の言葉
 

寂しさが聞こえた
 

これが最期まで言えなかった言葉



やっとたどり着いたから
 

せっかく巡り会えたから
 

だから
 

あの言葉はもう忘れない



ずっとずっと前に
 

あなたから言われた言葉
 

やっといま意味がわかった言葉
 

ここにはもういないあなたの言葉



誰の胸に響かなくても
 

これが僕の言葉
 

誰かのためでない
 

これが僕が言いたい言葉

 

 


雪が降る

雪が降る

あなたと私をくるんで雪が降る

2人を包むように雪が降る

まるで囃し立てるように雪が降る



雪よ 降れ

雪よ 走れ

2人を包んで降りしきる

ただ吐く息の温もりだけがここにあるだけ

もうどこにいるのかも解らなくても



散るように降る雪が

風と手を取り合って踊ってる

風の軌跡をたどって宙を舞い

地を転げるように踊ってる



雪が舞う

雪が舞う

あなたと私の周りに雪が舞う

2人を誘うように雪が舞う

まるで2人を離れないように雪が舞う