バスは走る
 

停留所に止まったり
 

止まらずに通過しながら
 

不規則にバスは走る
 

降車ボタンが押されていなくても


停留所で待っている人がいれば
 

バスは止まる
 

そんな風に不規則にバスは走る



足元に置いてある荷物が


足の置き場を狭くする


本当に必要な荷物かと問われれば


わからない


ただ用意してくるようにと


書かれてあったから


カバンに詰め込んだだけの荷物


家には他のすべてを置いてきた




バスのエンジン音の中


どの人もバスの揺れにあわせて


連れ立つ人がいれば何かの話をし


一人であれば


黙って外かスマホに目を向ける


揺れながら


それぞれの目的の停留所に


たどり着くのを待っている


うつろな窓の外の風景は流れていく



バスは


停留所で止まり


信号でも止まり


それでも


終点に向かって走る


でも


足元の荷物を抱えて


途中の病院前の停留所で降りる


帰りのバスに乗るかどうかは


今はわからない


その不安を1人抱えて


バスは走る


わが身の動悸とは関係なく


バスは走る

 

不規則にバスは走る

 

 

 

色あせた写真が

何か言いたげに見える

同じ若いという時を

生まれてくる時の違いを

羨(うらや)んでいるようにも

憐れんでいるようにも

見えもする


鳥は名前などなくても飛べる


鳥はどう呼ばれているかも知らずに飛んでいける


名前がないと可哀想といい
 

人だけが名付けて喜んでいる
 

人が指さし名を呼んでも
 

鳥は知らずに飛び去っていく



花は名前などなくても咲ける
 

花はどう呼ばれているかも知らずに咲いている
 

名前がないと可哀想といい
 

人だけが名付けて満足している
 

人は手を延べその名を呼んで
 

花は知らずに摘まれていく



魚は名前などなくても泳げゆける
 

魚はどう呼ばれているかも知らずに泳いでいる
 

名前がないと可哀想といい
 

人だけが名付けて喜んでいる
 

人が釣り糸を垂れても
 

魚は知らずに泳いでいく




 

 

日は昇り


日は沈み


そして1日は繰り返す



花は咲き、そして散り


陽は照り、ときに陰り


雨は降り、次第にあがり


雪が積み、やがて解ける


そうして1年はめぐりくる



何気ないこの繰り返しの中に


誰かの生まれ日がある


皆でこぞって祈り


皆でこぞって祝い


そして


夜は静かに眠りにつこう

 

 

 


誰にも意味がなくても


これは彼の言葉
 

誰も相手にしなくても
 

僕には意味のある言葉



何気ない
 

寡黙なアイツの無器用な言葉
 

知らぬ間にこぼれた
 

胸に宿る思いを知らされた言葉



誰も気がつかなかった
 

これは彼女らの言葉
 

誰もが素通りした
 

手を伸ばせばそこにあった言葉



やっと出逢えたから
 

せっかくたどり着いた
 

だから
 

あの言葉を手放すことはできない


 

君には必要のなかった言葉
 

閉ざされた心には届くはずのなかった言葉
 

静かに君の横で
 

黙っていればよかった言葉



誰の胸に届くことがなくても
 

これが私の言葉
 

誰かのためでない
 

これが私の中の言葉



 

 

誰に伝わることがなくても
 

これがあの人の言葉
 

喧騒のなかでも
 

私には伝わった言葉



誰もが忘れている
 

これが昔の人の言葉
 

速い流れのなかででも
 

忘れてはいけなかった言葉



口数の多い人の
 

これが今際の際の言葉
 

寂しさが聞こえた
 

これが最期まで言えなかった言葉



やっとたどり着いたから
 

せっかく巡り会えたから
 

だから
 

あの言葉はもう忘れない



ずっとずっと前に
 

あなたから言われた言葉
 

やっといま意味がわかった言葉
 

ここにはもういないあなたの言葉



誰の胸に響かなくても
 

これが僕の言葉
 

誰かのためでない
 

これが僕が言いたい言葉

 

 


雪が降る

雪が降る

あなたと私をくるんで雪が降る

2人を包むように雪が降る

まるで囃し立てるように雪が降る



雪よ 降れ

雪よ 走れ

2人を包んで降りしきる

ただ吐く息の温もりだけがここにあるだけ

もうどこにいるのかも解らなくても



散るように降る雪が

風と手を取り合って踊ってる

風の軌跡をたどって宙を舞い

地を転げるように踊ってる



雪が舞う

雪が舞う

あなたと私の周りに雪が舞う

2人を誘うように雪が舞う

まるで2人を離れないように雪が舞う


 

 

夢見たっていいじゃない


夢だっていいじゃない


だって


見てるときはちょっとだけ幸せな気分になれる


嫌なことを少しだけ忘れていられる


夢見たっていいじゃない


夢だっていいじゃない



なにさ


別に誰に迷惑をかけているわけじゃなし


誰かの邪魔をするわけじゃないし


だから


夢見たっていいじゃない


夢ぐらいいいじゃない




夢見たっていいじゃない


夢だっていいじゃない



でもね


夢見ているうちに


もしかすると叶うかもしれないじゃない


夢見たっていいじゃない


夢だっていいじゃない


やってごらん


目をこうしてつぶると


いつも少しだけ幸せな気分になれるの


だから


夢見たっていいじゃない


夢ぐらいいいじゃない




夢見たっていいじゃない


夢だっていいじゃない


いまは


何を夢見ているのかは教えてあげない


もし叶ったら真っ先に教えてあげる



夢見たっていいじゃない


夢だっていいじゃない


そういうあんただって


幸せそうな寝顔をしていることがあるのよ


何、赤い顔しているの


だから


夢見たっていいじゃない


あんたと一緒に


夢ぐらい見たっていいじゃない

 



 


幾筋も舞上がる煙が淀みと化した空は 

もう怒りを静めたかのように 

穏やかに晴れ渡っている 

燃え崩れた街は黙って見上げている 



容赦のない冷たい風はいっそう身体を凍えさせ 

一度止まった時間は動けないまま 

ただ過ぎるのを待つように立ち尽くす 

それでも明日への空は明けていく 



あの時から続く空に 

打ち鳴らされる鐘の音が響き 

一つひとつはか細い灯りを点し 

あなたの元にこの祈りとともに導いていく 

忘れようのないあなたを 

空を見上げている 

 

 

雲一つない空に
 

身の置きどころもなく
 

所在なげに月だけが浮かんで
 

そのせいで星のない夜空
 

白い息だけがかまいに行くけど
 

すぐに消えちまう


こんな日くらい
 

気を利かせて
 

雪でも降れば
 

ちょっとは格好もつくってものを
 

昨日とおんなじように
 

何にもない
 

ただ寒いだけの夜かよ




去年の今頃何してたなんて思い出せないし
 

どうせロクなことはなかったろうよ
 

来年の今頃何してるかなんて
 

明日のこともわからねぇのに
 

わかるはずねぇだろう
 

どうせロクなもんじゃねぇだろうさ


何度なおしても


ほどけてばかりのマフラーには
 

ちょっと苛立つけど
 

捨てる気にはなれないよ
 

まだあいつの温もりを手放したくないんだ
 

ただ寒いだけの夜は




地元のツレに電話しようかと思ったけどやめた


噂じゃ結婚したとか
 

ガキができたとか
 

デカいこと言って出てきたのに
 

ここでオイラ
 

こんなところでオイラ
 

何してるんだろう


世間の水はそんなに甘くないと親父
 

何を夢みたいなこととお袋が
 

バァちゃんは黙って背中丸めて
 

ゴメンよ
 

ほんとにゴメンよ
 

でもまだ帰れない
 

ただ寒いだけの夜も




ほんとむかつくよな
 

どいつもこいつも
 

世間のヤツらみんな
 

特にあのオヤジには
 

でも・・・
 

でもわかっているんだ
 

本当にむかつくのは
 

このオイラだってことは


なりたかった自分になれた人はどれくらいいるんだろう
 

何者にもなれず
 

ましてなりたい自分になれなかったヤツ
 

あぁはなりたくはなかったのに成り下がってしまったヤツ
 

オイラはどうなろうとしているんだろう
 

ただ寒いだけの夜に




一人ぽっちの帰り夜道は
 

ヘッドフォンからあの唄が流れてくるだけで
 

寂しくなんかないよ
 

たとえ涙がこぼれても
 

歯を食いしばれば大丈夫だよ
 

誰にも気にするヤツもいないし
 

誰にもわかんないし
 

浮かれ騒ぐヤツらなんかに
 

見えるはずないし
 

寒いだけの夜に
 

ただ寒いだけの夜に

 

 

 

(再掲)

 

 

 


なだらかな丘を越えて

はるか彼方まで

十字架の列が築かれていく



流れてくる弾は冷たく

かけがえがないと例えられる生命が

いとも容易く費やされていく



どこからともなく迫り

容赦なく降り注ぐ襲来に

否応なく刈り取られていく



あとには

息づかいのない荒れた空が残されていく

怒りを超えた

諦めにも似た

そんな空が残っていく