誰にも意味がなくても


これは彼の言葉
 

誰も相手にしなくても
 

僕には意味のある言葉



何気ない
 

寡黙なアイツの無器用な言葉
 

知らぬ間にこぼれた
 

胸に宿る思いを知らされた言葉



誰も気がつかなかった
 

これは彼女らの言葉
 

誰もが素通りした
 

手を伸ばせばそこにあった言葉



やっと出逢えたから
 

せっかくたどり着いた
 

だから
 

あの言葉を手放すことはできない


 

君には必要のなかった言葉
 

閉ざされた心には届くはずのなかった言葉
 

静かに君の横で
 

黙っていればよかった言葉



誰の胸に届くことがなくても
 

これが私の言葉
 

誰かのためでない
 

これが私の中の言葉



 

 

誰に伝わることがなくても
 

これがあの人の言葉
 

喧騒のなかでも
 

私には伝わった言葉



誰もが忘れている
 

これが昔の人の言葉
 

速い流れのなかででも
 

忘れてはいけなかった言葉



口数の多い人の
 

これが今際の際の言葉
 

寂しさが聞こえた
 

これが最期まで言えなかった言葉



やっとたどり着いたから
 

せっかく巡り会えたから
 

だから
 

あの言葉はもう忘れない



ずっとずっと前に
 

あなたから言われた言葉
 

やっといま意味がわかった言葉
 

ここにはもういないあなたの言葉



誰の胸に響かなくても
 

これが僕の言葉
 

誰かのためでない
 

これが僕が言いたい言葉

 

 


雪が降る

雪が降る

あなたと私をくるんで雪が降る

2人を包むように雪が降る

まるで囃し立てるように雪が降る



雪よ 降れ

雪よ 走れ

2人を包んで降りしきる

ただ吐く息の温もりだけがここにあるだけ

もうどこにいるのかも解らなくても



散るように降る雪が

風と手を取り合って踊ってる

風の軌跡をたどって宙を舞い

地を転げるように踊ってる



雪が舞う

雪が舞う

あなたと私の周りに雪が舞う

2人を誘うように雪が舞う

まるで2人を離れないように雪が舞う


 

 

夢見たっていいじゃない


夢だっていいじゃない


だって


見てるときはちょっとだけ幸せな気分になれる


嫌なことを少しだけ忘れていられる


夢見たっていいじゃない


夢だっていいじゃない



なにさ


別に誰に迷惑をかけているわけじゃなし


誰かの邪魔をするわけじゃないし


だから


夢見たっていいじゃない


夢ぐらいいいじゃない




夢見たっていいじゃない


夢だっていいじゃない



でもね


夢見ているうちに


もしかすると叶うかもしれないじゃない


夢見たっていいじゃない


夢だっていいじゃない


やってごらん


目をこうしてつぶると


いつも少しだけ幸せな気分になれるの


だから


夢見たっていいじゃない


夢ぐらいいいじゃない




夢見たっていいじゃない


夢だっていいじゃない


いまは


何を夢見ているのかは教えてあげない


もし叶ったら真っ先に教えてあげる



夢見たっていいじゃない


夢だっていいじゃない


そういうあんただって


幸せそうな寝顔をしていることがあるのよ


何、赤い顔しているの


だから


夢見たっていいじゃない


あんたと一緒に


夢ぐらい見たっていいじゃない

 



 


幾筋も舞上がる煙が淀みと化した空は 

もう怒りを静めたかのように 

穏やかに晴れ渡っている 

燃え崩れた街は黙って見上げている 



容赦のない冷たい風はいっそう身体を凍えさせ 

一度止まった時間は動けないまま 

ただ過ぎるのを待つように立ち尽くす 

それでも明日への空は明けていく 



あの時から続く空に 

打ち鳴らされる鐘の音が響き 

一つひとつはか細い灯りを点し 

あなたの元にこの祈りとともに導いていく 

忘れようのないあなたを 

空を見上げている 

 

 

雲一つない空に
 

身の置きどころもなく
 

所在なげに月だけが浮かんで
 

そのせいで星のない夜空
 

白い息だけがかまいに行くけど
 

すぐに消えちまう


こんな日くらい
 

気を利かせて
 

雪でも降れば
 

ちょっとは格好もつくってものを
 

昨日とおんなじように
 

何にもない
 

ただ寒いだけの夜かよ




去年の今頃何してたなんて思い出せないし
 

どうせロクなことはなかったろうよ
 

来年の今頃何してるかなんて
 

明日のこともわからねぇのに
 

わかるはずねぇだろう
 

どうせロクなもんじゃねぇだろうさ


何度なおしても


ほどけてばかりのマフラーには
 

ちょっと苛立つけど
 

捨てる気にはなれないよ
 

まだあいつの温もりを手放したくないんだ
 

ただ寒いだけの夜は




地元のツレに電話しようかと思ったけどやめた


噂じゃ結婚したとか
 

ガキができたとか
 

デカいこと言って出てきたのに
 

ここでオイラ
 

こんなところでオイラ
 

何してるんだろう


世間の水はそんなに甘くないと親父
 

何を夢みたいなこととお袋が
 

バァちゃんは黙って背中丸めて
 

ゴメンよ
 

ほんとにゴメンよ
 

でもまだ帰れない
 

ただ寒いだけの夜も




ほんとむかつくよな
 

どいつもこいつも
 

世間のヤツらみんな
 

特にあのオヤジには
 

でも・・・
 

でもわかっているんだ
 

本当にむかつくのは
 

このオイラだってことは


なりたかった自分になれた人はどれくらいいるんだろう
 

何者にもなれず
 

ましてなりたい自分になれなかったヤツ
 

あぁはなりたくはなかったのに成り下がってしまったヤツ
 

オイラはどうなろうとしているんだろう
 

ただ寒いだけの夜に




一人ぽっちの帰り夜道は
 

ヘッドフォンからあの唄が流れてくるだけで
 

寂しくなんかないよ
 

たとえ涙がこぼれても
 

歯を食いしばれば大丈夫だよ
 

誰にも気にするヤツもいないし
 

誰にもわかんないし
 

浮かれ騒ぐヤツらなんかに
 

見えるはずないし
 

寒いだけの夜に
 

ただ寒いだけの夜に

 

 

 

(再掲)

 

 

 


なだらかな丘を越えて

はるか彼方まで

十字架の列が築かれていく



流れてくる弾は冷たく

かけがえがないと例えられる生命が

いとも容易く費やされていく



どこからともなく迫り

容赦なく降り注ぐ襲来に

否応なく刈り取られていく



あとには

息づかいのない荒れた空が残されていく

怒りを超えた

諦めにも似た

そんな空が残っていく

 

 

 

 

百年前にそこに誰が売られていったのか知っていますか

二百年前にそこで誰が命を落としたのか知っていますか

三百年前にそこで誰が望まれずに生まれたのか知っていますか

四百年前にそこで誰が言葉の綾が解いたのか知っていますか

五百年前にそこで誰が寝首を掻かれたのか知っていますか

六百年前にそこで誰が風をはらんだ蹄の音をさせたのか知っていますか

七百年前にそこで誰が屍を晒していたのか知っていますか

八百年前にそこで誰が種を植えたのか知っていますか

九百年前にそこで誰が諍い合ったのか知っていますか

千年前にそこで誰が佇んでいたのか知っていますか

もっと前に誰が永遠を求めて消えてしまったのか知っていますか

それよりももっと前に誰が生け贄の天女を見殺しにしたのか知っていますか

そんなこともう誰も知る人もいない

誰もいなかったわけでもないのに

あなたがいなかったことには変わりがなくても

もう誰も何も知る人はいなくなってしまった

生きていたことすら知っていた人もいなくなった



九十年前にそこで誰が嗤われていたのか誰も覚えていない

八十年前にそこで誰が灯を消したのか誰も覚えていない

七十年前にそこで誰が悲痛な叫びをあげていたのか誰も覚えていない

六十年前にそこで誰が喜び合ったのか誰も覚えていない

五十年前にそこで誰が違う言葉の唄を歌っていたのか誰も覚えていない

四十年前にそこで誰が声を出さずに泣いていたのか誰も覚えていない

三十年前にそこで誰が祈っていたのか誰も覚えていない

二十年前にそこで誰が苦しんでいたのか誰も覚えていない

十年前にそこで誰が荒んでいたのか誰も覚えていない

半年前にそこで誰が恋をしたのかも誰も覚えてはいない

ほんの半月前にそこで誰とすれ違ったのかも誰も覚えてはいない

そんなこともう誰も覚えていない

今の時間まで続いているはずなのに

誰かがいたはずだけれど

もう誰も何も覚えていない

そこにいたことすら誰も覚えていない

 

 

 

さぁ呑め
 

いぃいから呑め
 

浮世の憂さを忘れたいんだろう
 

あれだけ垂れていたではないか愚痴の数々
 

ならば
 

何をためらうことがある
 

ほら呑め
 

なかったことにしたいんだろう
 

ならこの酒を空ければいいことだ
 

なぁ
 

昨日の現実
 

今日の怒り
 

明日の後悔
 

酔えばなかったことにできるんだ
 

言わずとも顔にきっちり書いている
 

だったら呑むしかあるまい



まぁそうは言えど
 

消えてなくならなかった現実
 

なかったことにはならなかった怒り
 

ないことにできなかった後悔
 

そんなものが
 

酒が醒めたあとには残っているだと?
 

そんな蘊蓄はどこかへ置いておけ
 

構うもんか
 

そんなものは
 

すっかり酒が醒める前に
 

また呑んで酔えばいい
 

呑んで迎えにいけばいいんだ
 

また呑めば
 

そうすれば先の先に送られる
 

その間は
 

消えてなくなる
 

忘れていられる
 

だから
 

今は呑め
 

お前にはもう呑むしか道は残されていまい
 

なぁ、そうだろう?

 

 

 

青い空は見ている


あなたが何をしようと


青い空は見ている


あなたが何をされようと


青い空は見ている


たとえ屋根が覆っていても


青い空はいつも見つめている




青い空は聞いている


あなたが泣いているのを


青い空は聞いている


あなたの嘆きを


青い空は聞いている


たとえ曇っていても


青い空はいつも耳をそばだてている




青い空は感じている


降り注ぐ絶望を


青い空は感じている


湧き上がる歓喜を


青い空は感じている


たとえ夜であろうと


青い空はいつもそばにいる


青い空はいつもあなたのそばにいる
 

 

 

人は言葉を覚えたら

次に嘘を覚える

そして

やがて

嘘かどうかわからなくなって息を引き取る