一陣の風を受けて胸が騒ぎ


雲は肩越しに連れられて

 

月をやり過ごす

 

 

散っていく枯れ葉が後を追い

 

手招く水面は波立つことを繰り返し

 

凍えた殺気に怯え出す

 

 

叫びにも似た鳴き声は

 

怒りを叩き起こして

 

臆病な羽音だけが逃げていく

 

 

黒い雲は影を嫌い

 

月明かりを盗んでいく

 

研ぎ澄まされた刃だけが照らし出され

 

奴の居場所を指し示す

 

 

宵闇に紛れ

 

漕ぎ出す波が導く通り

 

奴の喉を掻き切れ

 

 

夜陰に乗じ

 

足音を沈め

 

奴の寝首を掻け

 

 

悲鳴は雷鳴が掻き消すだろう

 

血は波が隠してくれる

 

寝言はいずれ地獄で聞いてやれ

 

 

 

 

孤独に身を落としてしまえば

 

誰の目にも止まらないでいられる

 

ただ孤独でありさえすれば

 

誰も傷つけないでいられる

 

そう自分に言い聞かせて

 

明日の風に立ち向かおう

 

 

 

誰ともかかわらなければ

 

誰からも自由でいられる

 

もう誰ともかかわらなければ

 

心にしまってあるナイフを出さずに済む

 

いや、そんなナイフさえいらなくなる

 

ムリにでも

 

自分の心にフタをしよう

 

 

 

生まれついた習い性のように

 

孤独の仮面をつけていればいい

 

口を閉ざし

 

心を閉ざしていれば

 

偽りでも

 

嫌でもやがて板に付いてくる

 

 

 

お前など誰も見ていない

 

いないのも同然なんだよ

 

でも嘆くなかれ

 

だから自由でいられる

 

悲しむなかれ

 

だからこそ誰の目を気にすることなく生きられる

 

誰の評価に怯えることなく

 

生きていくことができる

 

 

 

 

泣いて

 

泣いて

 

狂ったように泣いて

 

それでも明日は

 

もっと大きな夢を見ろ

 

 

 

泣いて

 

泣いて

 

血を吐くように泣いて

 

それでも明日は

 

少し大きく胸を張れ

 

 

 

 

生まれても

 

掃除って何かわからないうちに

 

母さんが掃除をしてくれたし

 

 

学校に行っても

 

掃除の仕方を教えてくれなかったし

 

母さんは先生がするものだって

 

 

就職しても

 

掃除は入っている業者がするし

 

そんなこと俺の仕事じゃないし

 

 

結婚しても

 

家事が嫁さんがするもんだって母さんが言うし

 

そんなこと俺の役目じゃないし

 

 

歳を取ったら身体がいうことをきかなくなってきたし

 

ヘルパーさんに頼めばいいって勧められたし

 

 

とうとう死んでしまっても

 

家財一切

 

家族がどうにかするだろうし

 

骨も家族が拾うだろうし

 

 

 

 

現在は偶然が織りなし

 

 

過去は罪が燃え

 

 

未来ははかなく

 

 

三次元とは

 

 

不可思議で

 

 

一番悲しく

 

 

歪んで見える

 

 

 

 

もっと大きな声で

 

 

君の罪と絶望を叫びあげろ

 

 

この荒野のただ中で

 

 


少し小さな声で

 

 

君の想いと夢を語り出せ

 

 

この夜が明けるまで

 

 

 

あいうべき子が痩せていく

 

あいうべき子の目が臆病なまでに怯えている

 

あいうべき子らがすさんでいく

 

あいうべき子らがいともたやすく手放されている

 

何の断りもなく

 

何の理(ことわり)かも知らず

 


あいうべき人が蝕まれている

 

あいうべき人がなす術もなく立ちすくんでいる

 

あいうべき人らが否もなく刈られていく

 

あいうべき人らが爆風にまかれて焼かれていく

 

何の因果か

 

何を含んだ因果なのかを誰もかわらないまま

 

 

今日はあなたはどこにいますか

 

昨日はあなたはどこにいましたか

 

明日はあなたはどこにいるのですか

 

 

やっと探し当てたと思ったから

 

心ならずも合わせてみても

 

合わぬ歯車軋み出す

 

 

やっと見つけたと思ったら

 

先の人が盗み取られてはと

 

小突き回して

 

上げ足取られ

 

 

なじられて

 

はじかれて

 

それでもなお

 

しがみついても

 

これでもかと肘打ちくらい

 

気力も尽きて落ちていく

 

 

また当て所なく

 

探し歩いて

 

疲れ果て

 

知らず知らずに

 

自分の意味を疑い出す

 

そして次第に

 

自分のことが軽く見えてくる

 

 

幼い頃は

 

与えてもらえた居場所でも

 

探し当てることができない不甲斐なさが

 

自分を蔑み

 

足取りを重くする

 

 

それでも

 

それでもと探しあぐねて

 

途方に暮れて

 

尽くす手立ても失って

 

焦る心が

 

自分の中に巣を作り

 

厚くなった殻に閉じこもる

 

 

何もスポットライトに当たりたいわけでも

 

万客の賞賛が欲しいわけでもない

 

ただ居ていい場所が欲しいだけ

 

泣いていい場所が

 

笑ってもいい場所が欲しかっただけなのに

 

 

 

黙って頭(こうべ)を垂れていればと言いたげに
居並んだ盾の向こう側から打ち放たれる礫(つぶて)

 

何も考えずに従ってさえいればと苦々しいばかりに
力を笠に着た者どもの容赦ない放水

 

されど
もがれようとする腕を差し出す者はいない
塞(ふさ)がれるのに抗わない者もいない

 

ならば
為す術もなく
ただ黙して巻かれるわけにはいかない

 

ためらわず振り下ろされる鉄槌に
立ち向かう者たち
幾度打ち払われようとも
立ち向かい
燃える眼差しはひるまない

 

それでも震えているのは
楯突く恐れか
あまりの怒りからか

 

割れたガラスは何を写す
しゃがれた声は何を叫ぶ
重ねた水たまりはいつ乾く

 

盾とした傘がなぎ倒されようと
ひ弱な傘が譲れぬ礎(いしずえ)
このか弱い傘がこれからの標(しるべ)

 

今や分岐に立っている
いや
分岐に立たされている

 

 

 

アスファルトの上にその身を晒して

 

力尽きて朽ち果てようとしている蝉の亡骸は

 

決して土に還ることはない

 

人の行いをその小さな身体に背負わされたようにして

 

そうして土に還れぬ命を人は費やしている

 

 


降る雨も

 

積もる雪も

 

土に還り

 

地中を巡ることはもうない

 

コンクリートに囲まれた水路を真っ直ぐ流される

 

曲がることは許されない

 

魚が遡ることも許されない

 

水路をひたすら海に吐き出される

 

ただ一時の抗い(あらがい)が氾濫であるように

 

 

 

空を切り取るように伸びていくビル群

 

他人と群がることを嫌いながら

 

群れなすビル群

 

思わぬビル風にうまく乗り

 

鳥はその上の空を目指す

 

飛べるはずの空だった空間の塊を目もくれず

 

 

 

あらゆるものが戻ることを拒むのが街

 

何かしらの意味がないと生きられない人間が作り上げた街

 

そんな街を

 

物言わぬ風だけが走っていく

 

何か言いたげに頬を打つ