あいうべき子が痩せていく
あいうべき子の目が臆病なまでに怯えている
あいうべき子らがすさんでいく
あいうべき子らがいともたやすく手放されている
何の断りもなく
何の理(ことわり)かも知らず
あいうべき人が蝕まれている
あいうべき人がなす術もなく立ちすくんでいる
あいうべき人らが否もなく刈られていく
あいうべき人らが爆風にまかれて焼かれていく
何の因果か
何を含んだ因果なのかを誰もかわらないまま
あいうべき子が痩せていく
あいうべき子の目が臆病なまでに怯えている
あいうべき子らがすさんでいく
あいうべき子らがいともたやすく手放されている
何の断りもなく
何の理(ことわり)かも知らず
あいうべき人が蝕まれている
あいうべき人がなす術もなく立ちすくんでいる
あいうべき人らが否もなく刈られていく
あいうべき人らが爆風にまかれて焼かれていく
何の因果か
何を含んだ因果なのかを誰もかわらないまま
今日はあなたはどこにいますか
昨日はあなたはどこにいましたか
明日はあなたはどこにいるのですか
やっと探し当てたと思ったから
心ならずも合わせてみても
合わぬ歯車軋み出す
やっと見つけたと思ったら
先の人が盗み取られてはと
小突き回して
上げ足取られ
なじられて
はじかれて
それでもなお
しがみついても
これでもかと肘打ちくらい
気力も尽きて落ちていく
また当て所なく
探し歩いて
疲れ果て
知らず知らずに
自分の意味を疑い出す
そして次第に
自分のことが軽く見えてくる
幼い頃は
与えてもらえた居場所でも
探し当てることができない不甲斐なさが
自分を蔑み
足取りを重くする
それでも
それでもと探しあぐねて
途方に暮れて
尽くす手立ても失って
焦る心が
自分の中に巣を作り
厚くなった殻に閉じこもる
何もスポットライトに当たりたいわけでも
万客の賞賛が欲しいわけでもない
ただ居ていい場所が欲しいだけ
泣いていい場所が
笑ってもいい場所が欲しかっただけなのに
黙って頭(こうべ)を垂れていればと言いたげに
居並んだ盾の向こう側から打ち放たれる礫(つぶて)
何も考えずに従ってさえいればと苦々しいばかりに
力を笠に着た者どもの容赦ない放水
されど
もがれようとする腕を差し出す者はいない
塞(ふさ)がれるのに抗わない者もいない
ならば
為す術もなく
ただ黙して巻かれるわけにはいかない
ためらわず振り下ろされる鉄槌に
立ち向かう者たち
幾度打ち払われようとも
立ち向かい
燃える眼差しはひるまない
それでも震えているのは
楯突く恐れか
あまりの怒りからか
割れたガラスは何を写す
しゃがれた声は何を叫ぶ
重ねた水たまりはいつ乾く
盾とした傘がなぎ倒されようと
ひ弱な傘が譲れぬ礎(いしずえ)
このか弱い傘がこれからの標(しるべ)
今や分岐に立っている
いや
分岐に立たされている
アスファルトの上にその身を晒して
力尽きて朽ち果てようとしている蝉の亡骸は
決して土に還ることはない
人の行いをその小さな身体に背負わされたようにして
そうして土に還れぬ命を人は費やしている
降る雨も
積もる雪も
土に還り
地中を巡ることはもうない
コンクリートに囲まれた水路を真っ直ぐ流される
曲がることは許されない
魚が遡ることも許されない
水路をひたすら海に吐き出される
ただ一時の抗い(あらがい)が氾濫であるように
空を切り取るように伸びていくビル群
他人と群がることを嫌いながら
群れなすビル群
思わぬビル風にうまく乗り
鳥はその上の空を目指す
飛べるはずの空だった空間の塊を目もくれず
あらゆるものが戻ることを拒むのが街
何かしらの意味がないと生きられない人間が作り上げた街
そんな街を
物言わぬ風だけが走っていく
何か言いたげに頬を打つ
思っていても
言葉にできないことはある
思っていることを
すべて言葉にできるわけではない
世を捨てた詠み人知らずの詩(うた)が笑ってる
言葉にできることだけが言いたいことではない
言葉にしたから
必ずしも言いたいこととは限らない
諍いの
買った言葉と
売った言葉が
いともたやすくすれ違う
いつも使っているから
間違えないわけではない
同じ言葉でも人により同じ意味とは限らない
頑なな言葉が
身を寄せ合ってうずくまる
言葉にしたからといって
伝わるとは限らない
伝わったからといって
心に届くとは限らない
宛先不明の手紙が今日もどこかで泣いている
崩れ落ちる階段から
足を踏み外さないように
駆け上がるので精一杯
そんな一生しか送れないかもしれない
手首から噴き出る血潮が
生命の鼓動を物語る
この手がもし翼にでも変わったら
この苦しみから逃れられるのに