ヘイヤハイヤ


ホイヤホイヤ

 

ハイヤハイヤ

 

 

北から来る子は

 

エェ~イヤサァ

 

北風小僧をとものうぉて

 

日暮れ小暮の帰り道

 

現(うつつ)の淵の守人の

 

童の唄のその先は

 

玄孫の眠る籠揺らす

 

ホォレ~ホイ

 

 

 

南の吾人は

 

ヨ~イヤサァ

 

わらしべ長者の気まぐれに

 

蔵持ち瓢箪鈴なりの

 

今太閤の御代なれば

 

多田羅の山が群れをなす

 

左団扇のお大尽なり

 

ハ~イヤサァ~

 

 


東の櫂は

 

ホ~トイナァ

 

投網打つ手の手捌きは

 

鎌鍬持って

 

狩人(かりびと)の

 

懐忍ばす幾銭に

 

青菜に塩の優るとも

 

朝餉の烟が今日も立つ

 

ホホホッホイ

 

 


西の鳥居の

 

ト~イヤサァ

 

盛られた酒が囃し立て

 

辻の土踏み舞う獅子の

 

揃うて鳴らした太鼓笛

 

柏打つ手が袖を振りゃ

 

稲穂を祝って踊りゃんせ

 

ハ~イノハイ

 

サ~イノサイ

 

 

 

 

はかりかねる相手の気持ちに苛立って


なじってしまった

 

裏切った

 

裏切られた

 

取った

 

取られた

 

そんなことではなかったのに

 

そんなつもりもないのに

 

何気なくの言葉を

 

取り違えられていく

 

言い訳はただの取り繕い

 

そんな風に思われてしまう

 

狂い始めた歯車は

 

閉じていく心

 

 

「おい」と言えば、


「はい」と答える

 

「たまには」と言われれば、

 

「あぁ」と答える

 

少し薄めなのがおまえは好きで

 

私は苦いくらいが丁度いい

 

 

おまえのつむじが曲がったときは

 

幾度も入れ直しては機嫌を取り

 

子どもたちの節目には

 

新しいのを買ってきて

 

子どもたちがいなくなった今の静けさにも

 

相変わらずの香りが漂い

 

たまの電話で

 

はしゃぐ孫の声を聞いた後では必ず

 

嬉しそうに入れに立つ

 

 

読みかけの本を置き

 

「なぁ」

 

編み物の手を止めて

 

「はい」

 

「そろそろお社の櫻、見頃じゃないか」

 

「そうですね」

 

毎年のような会話

 

2杯目を少し残し

 

杖と互いを頼りにしながらの足取りで

 

春の風を受け

 

ゆっくりと

 

二人して

 

 

 

 

愛おしく

 

狂おしく

 

そして乙女は潤しく

 

その瞳に恋をし

 

その口元には微笑みをあたたえ

 

けれど心は届かぬ想い

 

それでもなお想い絶やさず

 

 


まさか

 

まさかと

 

幾度も自分に問いかけた

 

切ないばかりに

 

鼓動は高鳴り

 

言い得ぬ想いがつのるばかりで

 

それでも

 

なお想い絶やさず

 

 

水をすごすと根腐れするから

 

でも、手を抜くとすぐに枯れてしまうと

 

難しいことを言い残して

 

今年もなんとか咲かせることができました

 

 

明日は休みだからと

 

またには差しつ差されつ

 

酌み交わした夜も

 

今は一人の夜長を持てあまし

 

読みかけの文庫本もそのままにして

 


休むの日を合わせて出掛けることも

 

頼んだ買い物を忘れてケンカすることも

 

傘を忘れて駅まで迎えに行くことも

 

観終わった映画のことを話しながら

 

手を繋いで帰る夜も

 

慣れない時間の分だけ

 

物足りなさが色濃くなっていく

 

 

いなくなった部屋は

 

それだけで広くなったけど

 

夜にはその世界が縮んでしまう

 

部屋中の電気を点けても

 

ただ濃縮されているだけで

 

一人の密度が増していく

 

 

 

あなたは誰かの子どもの顔を持ち

 

あなたは誰かの親の顔を持ち

 

あなたは誰かの妻・夫の顔を持ち

 

あなたは誰かの兄弟姉妹の顔を持ち

 

あなたは誰かの祖父母の顔を持ち

 

あなたは誰かの孫の顔を持ち

 

あなたは誰かのおじ・おばの顔を持ち

 

あなたは誰かのおい・めいの顔を持ち

 

あなたは誰かのいとこの顔を持ち

 

あなたは誰かの家族の顔を持ち

 

あなたは誰かの隣人の顔を持ち

 

あなたは誰かの客の顔を持ち

 

あなたは誰かの店員の顔を持ち

 

あなたは誰かの上司の顔を持ち

 

あなたは誰かの部下の顔を持ち

 

あなたは誰かの同僚の顔を持ち

 

あなたは誰かの同級生の顔を持ち

 

あなたは誰かの友人の顔を持ち

 

あなたは誰かの通りすがりの顔を持ち

 

あなたは誰かの他人の顔を持つ

 

そんなあなたは誰ですか?

 

酔い知れぬ心抱えて

 

2人して酒酌み交わす夜がある

 

涙を流せば

 

話が止まり

 

愚痴をこぼせば

 

何も終わらず

 

ただ2人向き合いながら

 

酔いに任せたウダ話

 

どちらが話でなし

 

どっちが聞くでなし

 

やっぱり愚痴が出てしまう

 

 

何を為す

 

何を為さざる

 

この一生

 

何も為さねば

 

何の命ぞ

 

来し方を思い悩んで

 

悔いたとて

 

行く末だけが変えられるのみ

 

 

 

無言で乗り込む人たちは

 

無口のままですれ違い

 

レールを刻む音に合わせるように

 

同じように揺れていても

 

明日を思っている人

 

今日を悩んでいる人

 

昨日を悔やんでいる人

 

それぞれ違う想いを抱えている

 

何も語らず

 

何も聞かず

 

隣の男が誰であれ

 

向かいの女が誰であれ

 

知らない世界の物語

 

駅ごとに

 

みんな違う幸せに向かって歩いていく

 

 

雲一つない空に

 

身の置きどころもなく

 

所在なげに月だけが浮かんで

 

そのせいで星のない夜空

 

白い息だけがかまいに行くけど

 

すぐに消えちまう

 

 

こんな日くらい

 

気を利かせて

 

雪でも降れば

 

ちょっとは格好もつくってものを

 

昨日とおんなじように

 

何にもない

 

ただ寒いだけの夜かよ

 

 

 

去年の今頃何してたなんて思い出せないし

 

どうせロクなことはなかったろうよ

 

来年の今頃何してるかなんて

 

明日のこともわからないのに

 

わかるはずないだろう

 

どうせロクなもんじゃないだろうさ

 

 

何度なおしても

 

ほどけてばかりのマフラーに

 

ちょっと苛立つけど

 

捨てる気にはなれない

 

まだあいつの温もりを手放したくないんだ

 

ただ寒いだけの夜に

 

 


地元のツレに電話しようかと思ったけどやめた

 

噂じゃ結婚したとか

 

子どもができたとか

 

デカいこと言って出てきたのに

 

ここでオイラ

 

こんなところでオイラ

 

何してるんだろう

 

 

世間の水はそんなに甘くないと親父

 

何を夢みたいなこととお袋が

 

バァちゃんは黙って背中丸めて

 

ゴメンよ

 

ほんとにゴメン

 

でもまだ帰れない

 

ただ寒いだけの夜に

 

 


ほんとむかつくよな

 

どいつもこいつも

 

世間のヤツらみんな

 

特にあのオヤジには

 

でも・・・

 

でもわかっているんだ

 

本当にむかつくのは

 

このオイラだってこと

 

 

なりたかった自分になれた人はどれくらいいるんだろう

 

何者にもなれず

 

ましてなりたい自分になれなかったヤツ

 

あぁはなりたくはなかったのに成り下がってしまったヤツ

 

オイラはどうなろうとしているんだろう

 

ただ寒いだけの夜に

 

 

 

一人ぽっちの帰り夜道は

 

ヘッドフォンからあの唄が流れてくるだけで

 

寂しくなんかない

 

たとえ涙がこぼれても

 

歯を食いしばれば大丈夫だよ

 

誰にも気にするヤツもいないし

 

誰にもわかんないし

 

浮かれ騒ぐヤツらなんかに

 

見えるはずないし

 

寒いだけの夜に

 

ただ寒いだけの夜に