晴れ上がる空
 
 
満点の星空
 
 
流れる雲
 
 
ひとすじの影
 
 
二人を分かつ天の川
 
 
 
(再掲)
 
 
 
 
 
 
 
いらっしゃい
 
あら、お久しぶり
 
元気だったの?
 
はい、おしぼり
 
何になさいます?
 
ボトル?
 
まだあるわよ
 
ずいぶん顔を見ていない気がするけど
 
いつから顔を見せていなかったのかしら
 
もしかして良い人でもできたの?
 
あぁそう
 
そりゃ良かったじゃないの
 
まずは乾杯しましょう
 
大事にしてあげないとダメよ
 
 

いらっしゃい
 
あらお土産?
 
ありがとうございます
 
どこに行ってきたの?
 
誰と行ってきたのよ
 
あぁ出張
 
それはおつかれ様でした
 
今度は良い人と行ってくればいいわよ
 
仕事も良いけど
 
故郷には帰ってんの?
 
たまには親御さんに顔を見せに帰ってあげなさいよ
 
いくつになっても子どもは子どもなんだから
 
それに
 
親だっていつまでも元気じゃないのよ
 
あらやだ
 
お説教くさいことを
 
ごめんなさいね

 
 
いらっしゃい
 
あら今日は何だか元気がないわね
 
え?
 
別れたの?
 
それは残念だったわね
 
また良い人が見つかるわよ
 
縁がなかっただけよ
 
まだ若いんだし
 
ごめんなさいね
 
いつもしんみりしているのに
 
今日は歓迎会から流れてきたお客様が騒がしくて
 
本当にごめんなさいね
 
 

いらっしゃい
 
あら噂を聞いてくれたの?
 
そう、噂どおり終わりにするの
 
店じまい
 
今までご贔屓にしていただいて
 
ありがとうございました
 
今日は何にする?
 
何でもいいわよ
 
大盤振る舞いしちゃうんから
 
どうして店じまいするのかって?
 
歳には勝てないってこと
 
それにね
 
故郷にいる甥っ子がさぁ
 
漁師しているんだけどね
 
今度家を新しくするから
 
一緒に住もうって言ってくれててね
 
ずいぶん渋ったんだけど
 
もう部屋の用意もしたって言われてね
 
だから
 
ここら辺りが潮時かと思ったのよ
 
 
今さら受け取るわけにはいかない
 
助けてくださいと
 
叫んだ頃に
 
どこにもなかったその手を
 
それよりこの身を砕いてしまいたい
 
もしもその時
 
心が少しでも軋んだら
 
まだ生きている
 
血が通っているということか
 
 
守るためとはいえ
 
癒すためとはいえ
 
償うためとはいえ
 
もう言葉はいらない
 
取り繕うには遅すぎる
 
 
でも
 
このあふれる不安を
 
ふさいでしまえたら
 
名前を口にすることで
 
許されるのなら
 
どんなに楽だろう
 
 
もう何も許さない
 
もう何も残されていない
 
生まれてきたことを後悔することほど
 
生まれたことを恨むことほど
 
悲しいことはない
 
もう飽きた話題ではなく
 
次の事件が欲しい
 
あの頂戴した涙にももう飽きたんだ
 
何?
 
間違えた?
 
名前が違う?
 
写真が違う?
 
もうあの事件は終わったんだよ
 
 

悪に染めた手を見つけろ
 
手あかのついていない事件はないか
 
血みどろの奴はいないか
 
泥を飲んでいる奴はいないか
 
絵を撮ってこい
 
写真をよこせ
 
誰か話を聞いてこい
 
 
何?
 
謝れだぁ?
 
言っていないのに言ったことになっている?
 
またその話か
 
とっくに昔のことだ
 
ほっとけばいい
 
何をいまさら
 
 
次は何だ
 
次がどこだ
 
次は誰だ
 
選べ
 
選べ
 
選べ
 
人を選べ
 
命を選べ
 
読んで喜ぶ命を選べ
 
 
探せ
 
探せ
 
探せ
 
涙を探せ
 
悲劇を探せ
 
読んで泣かせる悲劇を探せ
 
 
 
巻き散る火の粉がどこから来るのか誰にもわからない
 
巻き散る火の粉が日に日に収まっていくとは限らない
 
巻き散る火の粉が見えるとは限らない
 
巻き散る火の粉が火元より冷めているとは限らない
 
 

降り注ぐ火の粉が熱いとは限らない
 
降り注ぐ火の粉がいつ止むのかは誰もわからない
 
降り注ぐ火の粉が止むのかさえ誰にもわからない
 
降り注ぐ火の粉が何を焼き尽くすのかもわからない
 
 

降り積む火の粉が静かだとは限らない
 
降り積む火の粉が何もせず消えるなどということはない
 
降り積む火の粉が何も侵さないとは限らない
 
降り積む火の粉の気配などあろうはずがない
 
 

降りかかる火の粉がいつ消えるのかなどわからない
 
もう誰にもわからない
 
そう
 
わからない
 
そんなことより
 
本当の怖さを誰も知らないこと
 
そして
 
何よりその火の粉が何を指すのか
 
誰にもけっしてわからないということ
 
 
 
突然の風にざわめく木々
驚く子どもたち
 
 
葉洩れ日と影の揺らぎに取り囲まれて
立ちすくむ子どもたち
 
 
恐る恐る見上げてみれば
連なる風のざわめきと歓声は
山の向こうにまで届きそうなくらい
 
 
過ぎ去った後は
何事もなかったかのように
走り去る子どもたち
 
 
 
いまか
 
いまかと
 
春を待ちわび
 
そっと吹く風に
 
春を尋ねる
 

 
緩んだ水に
 
ゆり起こされた春の辺で
 
身を焦がし
 
恋い慕う
 
 

時が連れ去る春を見送り
 
一雨ごとに
 
夏草模様
 
 
 
 
白い花よ
 
風に揺れることを知らずに咲いた花
 
それでも
 
惜しむことなく咲きなさい
 
 
 
黄色の花
 
目立つことなく埋もれるように咲いた花
 
それでも
 
臆することなく咲き誇れよ
 
 
 
紅色の花
 
思いもよらず雨に打たれても
 
それでも
 
頭を下げず咲き続けよ
 
 
 
紫の花
 
誰にも省られず咲いた花
 
それでも
 
そのまま咲き笑えよ
 
 
 
赤い花
 
いずれ散ることなど思わず咲いた花
 
それでも
 
今日を咲き生きよ
 
 

さよならも
 
ありがとうも
 
連れ去った
 
あの海は今日
 
素知らぬ顔をして
 
凪いでいる
 
 

やがて
 
風を受けてこの涙が乾いても
 
たとえ
 
堅い土を割って花が咲いても
 
いつも
 
忘れないでいる
 
いつまでも
 
 
 
 
 
 
※以前投稿したものの再掲です。
 
冷たく吹きつける風に
この身を任せれば
その時から僕は鳥になる
 
 
どこまでも高い空に
この身を任せれば
その時から僕は雲になる
 
 
止めどなく流れる河に
この身を委ねれば
その時から僕は魚になれる
 
 
果てしなく深い海に
この身を委ねれば
その時からもう戻っては来ない
 
 
記憶を失って
自由になりたい
自由になれるのなら
この命さえも
記憶を失ってでも
自由になりたい