泣いて

泣いて

狂ったように泣いて

それでも明日は

もっと大きな夢を見ろ



泣いて

泣いて

血を吐くように泣いて

それでも明日は

少し大きく胸を張れ

 

 

 

 

廃墟は人の声を吸い込んでいく
 

どんな声でも吸い込んでいく
 

人の手で造られたのに
 

見捨てられた建物
 

久しぶりの人の声を懐かしんで
 

ここぞと言わんばなりに吸い込んでいく



ずっとここで待っていたんだよと言いたげな
 

見放された建物
 

靴音すらも漏らさずに
 

忘れられてしまったのかと少し拗ねて見せる
 

朽ち果てた建物
 

人の息遣いもひとつ残らずこぼさず



それはまるで迷子犬が
 

久しぶりに飼い主と再会したかのように
 

たとえその飼い主が遠くに捨てに行った犬だとしても
 

犬が健気に尾を振って
 

すり寄ってくるように

 

 

 

 

その命は


今、周りにいる人
 

昔、別れた人
 

これから出会う人
 

そして多くの人たちが支えている

 

幼かった頃
 

父が
 

母が
 

そして誰かが

 

こうして歩き始めたときに
 

支えてくれたように


 

そして


今、周りにいる人
 

昔、別れた人
 

これから出会う人
 

そして多くの人たちの
 

命の支えとなっている

 

やがて歩き始めた子どもの手を
 

ひいて歩くように
 

 

 

物静かな沈黙が何かを語り始めた

うめき声のように

けれど騒々しい

けれど忙しい

都会(まち)の人たちの耳には届かない

何も見ようともしない

足元から切り崩されているのに

誰も気づかない



終幕の列にいつのまにか居並んでいることに

人が気が付くのにはもう遅い

薄曇りの空を見上げ

「そのうち晴れるだろう」

とやり過ごしても

いつの間にか土砂降りの雨

何もかも押し流して

その後に残った者は

息遣いのない

大きな海ひとつ

 

 

 

 

どん どどん どどどんどん
 

どん どどん どんどこどん
 

どん どどん どどどんどん


太鼓を打ち
 

笛鳴らし
 

火は絶やさずに
 

思い思いに踊り出せ


 

男が囃せば
 

女が舞って
 

風が吹いたら
 

裸の汗もほとばしる

 

宵を忘れて
 

明けも忘れて
 

舞って回って一踊り


若い者ども
 

老いた者ども
 

女であっても
 

男たりとも
 

明日も今日もありはせぬ


腕は闇夜の宙を切り
 

足は軽やか
 

大地を鳴らし
 

酒をあおって
 

もう一踊り

 

お山の鬼も里に下り
 

空飛ぶ天女も軒の下
 

正邪諸とも
 

舞い踊れ

 

口に伝わる調べを唄い
 

太鼓も休まず
 

打って
 

打って打ちまくれ


狂ったように
 

浮かれたごとく
 

鈴触れ
 

唄え
 

鍋釜ともに打ち鳴らせ


どん どどん どどどんどん
 

どん どどん どんどこどん
 

どん どどん どどどんどん
 

 

 

 

これ見よがしに力を誇示するのであれば

ならば、

その力で花を咲かせてみよ



おのが勢いが世間に轟いているというのであれば

ならば、

その勢いであの雲を消してみよ



誰をもひれ伏す権威が自身にあるというなら

ならば、

その権威でこの風を消してみよ



誰をもうらやむ詩を持つというのであれば

ならば、

その詩で雪を積もらせてみよ



いずれも叶わぬのなら

塵ひとつにも敵わないことを憶えておけ

そんなことのために生きているとは

無駄なことだと知っておけ


 

いずれ焼かれた骸(むくろ)は土にも還れず

輪廻から外れる身の上であるのに

めでたい限りじゃ

哀れなヤツじゃ

 

 

 

この世界には誰もいない
 

彼も
 

彼女も
 

彼らも
 

彼女らも
 

あの人も
 

あの子も
 

あの人たちも
 

あの子らも
 

もういない
 

それが1人で生きていくということ
 

もう世界には誰もいない
 

もうこの世界には誰もいない

 

 

 

打ち鳴らす鐘の音は 
 

鼓動の再現 
 

生きていた 
 

そしてついえた 
 

命の再現 



盾となり 
 

礎となった甲斐があったかと問う声を 
 

かつての長靴(ちょうか)の音がかき消すように 
 

否もなく近づいてくる 
 

聞き漏らすまいと耳をすませども 
 

その声は日に日に細くなるばかり 

 

 

仰ぎ見る空に響くわずかな残響でさえ 
 

その眠りが安らかであれと願う祈り 
 

重なり続く余韻も 
 

同じ轍(わだち)を踏まないという誓い 
 

されどもそれと知らぬ者は同じ轍(てつ)とは気づかない 



それでもと 
 

なお打ち続ける鐘の音は 
 

鼓動の再現 
 

生きていた 
 

そしてついえた 
 

命の再現 
 

 

 

 

(再掲)

 

 

 

 

風を呼ぶ声は怒りの声
 

血は否応にあのことを憶えている
 

“忘れる”という誤魔化しを許さぬように
 

“流れる”ということを拒むように
 

風が呼ぶ怒りは“明日”を知らない



血と肉を分かつ者どもに
 

吹く風は荒く冷たい
 

大地に刻まれた文字は
 

頑なに歴史を刻んでいく
 

たとえ悲劇であろうが
 

たとえ道化であろうが


 

押さえつけられた力は
 

いつしか吹き出して止まず
 

かつてのわが身を省みることなく
 

その力を振りかざす
 

ヤツの歩んだ轍を践んで

 

 

 

 

晴れ上がった朝に
 

そぼ降る雨の昼下がりに
 

紅く輝く夕暮れ時に
 

今日も1日が終わろうとする夜に
 

誰もが深く寝静まった真夜中にも
 

あなたはもういない
 

どこにもいない



けれども
 

目を閉じればあの笑顔が
 

今年咲いた花に
 

何気ない言葉で綴られた手紙にも
 

あなたがそこで微笑んでいる
 

そう信じて



咲く花たちは彩り
 

青葉若葉から息吹があふれ出し
 

枯れ落ちた葉を踏み歩き
 

雪が景色を一変させ
 

そして季節が巡っても
 

もう泣かないとは言えなくても
 

悲しくないとは言えなくても
 

それでも少しずつ笑っていよう
 

今度あなたと会えるように
 

またいつかあなたと会った時に笑っていわれるように