どん どどん どどどんどん
 

どん どどん どんどこどん
 

どん どどん どどどんどん


太鼓を打ち
 

笛鳴らし
 

火は絶やさずに
 

思い思いに踊り出せ


 

男が囃せば
 

女が舞って
 

風が吹いたら
 

裸の汗もほとばしる

 

宵を忘れて
 

明けも忘れて
 

舞って回って一踊り


若い者ども
 

老いた者ども
 

女であっても
 

男たりとも
 

明日も今日もありはせぬ


腕は闇夜の宙を切り
 

足は軽やか
 

大地を鳴らし
 

酒をあおって
 

もう一踊り

 

お山の鬼も里に下り
 

空飛ぶ天女も軒の下
 

正邪諸とも
 

舞い踊れ

 

口に伝わる調べを唄い
 

太鼓も休まず
 

打って
 

打って打ちまくれ


狂ったように
 

浮かれたごとく
 

鈴触れ
 

唄え
 

鍋釜ともに打ち鳴らせ


どん どどん どどどんどん
 

どん どどん どんどこどん
 

どん どどん どどどんどん
 

 

 

 

これ見よがしに力を誇示するのであれば

ならば、

その力で花を咲かせてみよ



おのが勢いが世間に轟いているというのであれば

ならば、

その勢いであの雲を消してみよ



誰をもひれ伏す権威が自身にあるというなら

ならば、

その権威でこの風を消してみよ



誰をもうらやむ詩を持つというのであれば

ならば、

その詩で雪を積もらせてみよ



いずれも叶わぬのなら

塵ひとつにも敵わないことを憶えておけ

そんなことのために生きているとは

無駄なことだと知っておけ


 

いずれ焼かれた骸(むくろ)は土にも還れず

輪廻から外れる身の上であるのに

めでたい限りじゃ

哀れなヤツじゃ

 

 

 

この世界には誰もいない
 

彼も
 

彼女も
 

彼らも
 

彼女らも
 

あの人も
 

あの子も
 

あの人たちも
 

あの子らも
 

もういない
 

それが1人で生きていくということ
 

もう世界には誰もいない
 

もうこの世界には誰もいない

 

 

 

打ち鳴らす鐘の音は 
 

鼓動の再現 
 

生きていた 
 

そしてついえた 
 

命の再現 



盾となり 
 

礎となった甲斐があったかと問う声を 
 

かつての長靴(ちょうか)の音がかき消すように 
 

否もなく近づいてくる 
 

聞き漏らすまいと耳をすませども 
 

その声は日に日に細くなるばかり 

 

 

仰ぎ見る空に響くわずかな残響でさえ 
 

その眠りが安らかであれと願う祈り 
 

重なり続く余韻も 
 

同じ轍(わだち)を踏まないという誓い 
 

されどもそれと知らぬ者は同じ轍(てつ)とは気づかない 



それでもと 
 

なお打ち続ける鐘の音は 
 

鼓動の再現 
 

生きていた 
 

そしてついえた 
 

命の再現 
 

 

 

 

(再掲)

 

 

 

 

風を呼ぶ声は怒りの声
 

血は否応にあのことを憶えている
 

“忘れる”という誤魔化しを許さぬように
 

“流れる”ということを拒むように
 

風が呼ぶ怒りは“明日”を知らない



血と肉を分かつ者どもに
 

吹く風は荒く冷たい
 

大地に刻まれた文字は
 

頑なに歴史を刻んでいく
 

たとえ悲劇であろうが
 

たとえ道化であろうが


 

押さえつけられた力は
 

いつしか吹き出して止まず
 

かつてのわが身を省みることなく
 

その力を振りかざす
 

ヤツの歩んだ轍を践んで

 

 

 

 

晴れ上がった朝に
 

そぼ降る雨の昼下がりに
 

紅く輝く夕暮れ時に
 

今日も1日が終わろうとする夜に
 

誰もが深く寝静まった真夜中にも
 

あなたはもういない
 

どこにもいない



けれども
 

目を閉じればあの笑顔が
 

今年咲いた花に
 

何気ない言葉で綴られた手紙にも
 

あなたがそこで微笑んでいる
 

そう信じて



咲く花たちは彩り
 

青葉若葉から息吹があふれ出し
 

枯れ落ちた葉を踏み歩き
 

雪が景色を一変させ
 

そして季節が巡っても
 

もう泣かないとは言えなくても
 

悲しくないとは言えなくても
 

それでも少しずつ笑っていよう
 

今度あなたと会えるように
 

またいつかあなたと会った時に笑っていわれるように

 

 

 

 
晴れ上がる空
 
 
満点の星空
 
 
流れる雲
 
 
ひとすじの影
 
 
二人を分かつ天の川
 
 
 
(再掲)
 
 
 
 
 
 
 
いらっしゃい
 
あら、お久しぶり
 
元気だったの?
 
はい、おしぼり
 
何になさいます?
 
ボトル?
 
まだあるわよ
 
ずいぶん顔を見ていない気がするけど
 
いつから顔を見せていなかったのかしら
 
もしかして良い人でもできたの?
 
あぁそう
 
そりゃ良かったじゃないの
 
まずは乾杯しましょう
 
大事にしてあげないとダメよ
 
 

いらっしゃい
 
あらお土産?
 
ありがとうございます
 
どこに行ってきたの?
 
誰と行ってきたのよ
 
あぁ出張
 
それはおつかれ様でした
 
今度は良い人と行ってくればいいわよ
 
仕事も良いけど
 
故郷には帰ってんの?
 
たまには親御さんに顔を見せに帰ってあげなさいよ
 
いくつになっても子どもは子どもなんだから
 
それに
 
親だっていつまでも元気じゃないのよ
 
あらやだ
 
お説教くさいことを
 
ごめんなさいね

 
 
いらっしゃい
 
あら今日は何だか元気がないわね
 
え?
 
別れたの?
 
それは残念だったわね
 
また良い人が見つかるわよ
 
縁がなかっただけよ
 
まだ若いんだし
 
ごめんなさいね
 
いつもしんみりしているのに
 
今日は歓迎会から流れてきたお客様が騒がしくて
 
本当にごめんなさいね
 
 

いらっしゃい
 
あら噂を聞いてくれたの?
 
そう、噂どおり終わりにするの
 
店じまい
 
今までご贔屓にしていただいて
 
ありがとうございました
 
今日は何にする?
 
何でもいいわよ
 
大盤振る舞いしちゃうんから
 
どうして店じまいするのかって?
 
歳には勝てないってこと
 
それにね
 
故郷にいる甥っ子がさぁ
 
漁師しているんだけどね
 
今度家を新しくするから
 
一緒に住もうって言ってくれててね
 
ずいぶん渋ったんだけど
 
もう部屋の用意もしたって言われてね
 
だから
 
ここら辺りが潮時かと思ったのよ
 
 
今さら受け取るわけにはいかない
 
助けてくださいと
 
叫んだ頃に
 
どこにもなかったその手を
 
それよりこの身を砕いてしまいたい
 
もしもその時
 
心が少しでも軋んだら
 
まだ生きている
 
血が通っているということか
 
 
守るためとはいえ
 
癒すためとはいえ
 
償うためとはいえ
 
もう言葉はいらない
 
取り繕うには遅すぎる
 
 
でも
 
このあふれる不安を
 
ふさいでしまえたら
 
名前を口にすることで
 
許されるのなら
 
どんなに楽だろう
 
 
もう何も許さない
 
もう何も残されていない
 
生まれてきたことを後悔することほど
 
生まれたことを恨むことほど
 
悲しいことはない
 
もう飽きた話題ではなく
 
次の事件が欲しい
 
あの頂戴した涙にももう飽きたんだ
 
何?
 
間違えた?
 
名前が違う?
 
写真が違う?
 
もうあの事件は終わったんだよ
 
 

悪に染めた手を見つけろ
 
手あかのついていない事件はないか
 
血みどろの奴はいないか
 
泥を飲んでいる奴はいないか
 
絵を撮ってこい
 
写真をよこせ
 
誰か話を聞いてこい
 
 
何?
 
謝れだぁ?
 
言っていないのに言ったことになっている?
 
またその話か
 
とっくに昔のことだ
 
ほっとけばいい
 
何をいまさら
 
 
次は何だ
 
次がどこだ
 
次は誰だ
 
選べ
 
選べ
 
選べ
 
人を選べ
 
命を選べ
 
読んで喜ぶ命を選べ
 
 
探せ
 
探せ
 
探せ
 
涙を探せ
 
悲劇を探せ
 
読んで泣かせる悲劇を探せ