笑い合えるヤツも
酒を酌み交わすヤツもい ない
泣きごと言えるヤツも
悩みを打ち明けてくるヤツもいない
元気かと気にかけてくれるヤツも
大丈夫かと気にするヤツもいない
メールなど送る相手もおらず
着信音もとっくに忘れて
誰かの声が聞きたいと思っても
電話をかける相手もおらず
何があっても
掛けてこない電話を見つけて
もういなくなっても気がつくヤツなどいない
と零すだけ
それが
自分が選び取った結果なら仕方がない
今まで歩んできた先がこれなら
諦めるしかない
自分を
この人生を
諦めるしかない
恋人たちは互いに絡め
知らぬふりをして
それぞれの下心と思惑を混じり顔で
男は優しさを含んで
女は愁いを含んで
夕暮れに人の波をぬって
サラリーマンは持ち切れないほどの疲労と
一握りの幸せを持って急ぎ足
夜のネオンが花開き
田舎者も
都会人も
思い思いの酒を酌み交わし
それぞれの思いを飲み込んでいく
厚化粧をまとった女は
2つの仮面を持つ男を連れ立って
今宵限りの恋人同士
恋のルールもお預けにして
東の闇の白みだし
酔いつぶれた男どもと
遊び疲れた女どもが
始発を待って
薄いベンチにうずくまっている
空の寒さと人の寒さを感じながらも
昼の孤独に立ち向かう
夜の顔を心の奥にしまい込んで
その時
神は微笑んでいたか?
その時
神は微笑んでいらしたか?
この愚か者め
何を見ていたのだ
笑っていただけたはず?
お前が笑いたかっただけじゃないのか
疑う心は
お前の内にしかない
彼らが奇跡を笑おうが
いつ神話を笑おうが
誰が神の言葉を焼き払おうが
信じて祈り続ける
その一点だけでいいはずではないのか
あの時
神は喜んでいらしたか?
あの時
神は手放しで喜んでいらしたか?
恩知らずめ
どこを見ていたのか
喜んでいただけたはず?
お前が喜びたかっただけじゃないのか
お前はよそ見をしていた
そうだな
神を見ず
神を感じず
彼らに捕らわれ
頭の中は膨れ上がり
怒りに満ち溢れていた
神によって試されているとも気が付かずに
神はお前を見捨てない
お前が神を見放すことはあっても
この恥知らずめが
神を見ず
神を感じず
よそ見をしていたくせに
何が信仰だ
何が救いだ
よそ見は神を信じていないもの同じことだぞ
灯り始めた街頭が2人を照らし
途絶えた会話は2人きり
ほどけたマフラーを直してくれたのをきっかけに
告げる思い
まなざしをまたちらつき始めた雪に移し
押し黙る時間を嫌がるように
雪が2人を包み降る
少し赤らめた面持ちで肯くと
うっすらと白くなった2人は寄り添い
その2人を包むかのように
静かに雪は降りしきる
ただ白く
降りしきる
(再掲)
かの砂漠にも
どの海原にも
奥深い森にも
地を裂くような大河にも
大樹の周りにも
空をつく峰にさえ
民はいる
風に
雨に
星に
月に
太陽に
畏敬におののきながらも崇めつつ
祈りを捧げ
濃密な空気を作り上げていく
織りなされる空気にくるまれて
民は生まれ
民は生き
歌い踊り酔い
そして
死んでいく
ある時は
言いようのない力にねじ伏せられようと
ある時は
嵐に見舞われようと
またある時は
時代に否応もなく引き裂かれようと
生き継いでいく
残される者には
もれ忘れることなく
知恵を
教えを
戒めを
掟を
ルーツを
引き渡して還っていく
されど
民を棄てた人々は
アスファルトとコンクリートの中に逃れ
空さえも閉じこんで
臆病にも
怯えて生きていく
時として
言い得ぬ力がこじ開けようとする
棄てたことを思い出させるように
咎を償わせるように
己が何者でもないのを忘れさせないように
また時に
我が者を許さぬように
誰が主が思い知らせるように
幾筋も舞上がる煙が淀みと化した空は
もう怒りを静めたかのように
穏やかに晴れ渡っている
燃え崩れた街は黙って見上げている
容赦のない冷たい風はいっそう身体を凍えさせ
一度止まった時間は動けないまま
ただ過ぎるのを待つように立ち尽くす
それでも明日への空は明けていく
あの時から続く空に
打ち鳴らされる鐘の音が響き
一つひとつはか細い灯りを点し
あなたの元にこの祈りとともに導いていく
忘れようのないあなたを
空を
見上げている
傾き始めた夕日が2人を写し
途絶えた会話は2人きり
ほどけたマフラーを直してくれたのをきっかけに
思いを告げる
少し戸惑ったような目を
ちらつき始めた雪に移し
押し黙る時間を嫌がるように
雪が2人を包み降る
少し赤らめた面持ちで肯くと
うっすらと白くなった2人は寄り添い
その2人を包むかのように
静かに雪は降りしきる
ただ白く
降りしきる
雲一つない空に
身の置きどころもなく
所在なげに月だけが浮かんで
そのせいで星のない夜空
白い息だけがかまいに行くけど
すぐに消えちまう
こんな日くらい
気を利かせて
雪でも降れば
ちょっとは格好もつくってものを
昨日とおんなじように
何にもない
ただ寒いだけの夜かよ
去年の今頃何してたなんて思い出せないし
どうせロクなことはなかったろうよ
来年の今頃何してるかなんて
明日のこともわからねぇのに
わかるはずねぇだろう
どうせロクなもんじゃねぇだろうさ
何度なおしても
ほどけてばかりのマフラーには
ちょっと苛立つけど
捨てる気にはなれないよ
まだあいつの温もりを手放したくないんだ
ただ寒いだけの夜は
地元のツレに電話しようかと思ったけどやめた
噂じゃ結婚したとか
ガキができたとか
デカいこと言って出てきたのに
ここでオイラ
こんなところでオイラ
何してるんだろう
世間の水はそんなに甘くないと親父
何を夢みたいなこととお袋が
バァちゃんは黙って背中丸めて
ゴメンよ
ほんとにゴメンよ
でもまだ帰れない
ただ寒いだけの夜も
ほんとむかつくよな
どいつもこいつも
世間のヤツらみんな
特にあのオヤジには
でも・・・
でもわかっているんだ
本当にむかつくのは
このオイラだってことは
なりたかった自分になれた人はどれくらいいるんだろう
何者にもなれず
ましてなりたい自分になれなかったヤツ
あぁはなりたくはなかったのに成り下がってしまったヤツ
オイラはどうなろうとしているんだろう
ただ寒いだけの夜に
一人ぽっちの帰り夜道は
ヘッドフォンからあの唄が流れてくるだけで
寂しくなんかないよ
たとえ涙がこぼれても
歯を食いしばれば大丈夫だよ
誰にも気にするヤツもいないし
誰にもわかんないし
浮かれ騒ぐヤツらなんかに
見えるはずないし
寒いだけの夜に
ただ寒いだけの夜に
(再掲)
そこを何で覆っても
わずかな隙間からでも
芽を出すのが
木の芽なら
たとえ芽を摘んだとしても
芽を出すのは止めらない
どんなに風が吹こうが
そこに何を作ろうが
割ってでも
蕾になるのが
花の命なら
たとえ花を散らせたとしても
花はまた咲き始める
どんな嵐にまみえようが
どこを囲うとも
お構いなしに
蔓を延ばすのが
草の定めなら
たとえ蔓を切ったとしても
蔓は延ばし続ける
どんな炎が地をなめようが
庭に続く野にも
林の奥の園にも
黄色い花咲くその峰にも
誰に断ることなく芽吹き
花は自由に咲く
心ない巨人に
たとえ踏みにじられたとして
顔のない赤い巨人も
根絶やすことはできない
嵐にリンゴの実は落ちても
また息吹を吹き返し
芽を出し
いずれの日にか
きっと
必ず
花は咲き
実をつけ
この地を覆い尽くす
その日を願って