灯り始めた街頭が2人を照らし
途絶えた会話は2人きり
ほどけたマフラーを直してくれたのをきっかけに
告げる思い
まなざしをまたちらつき始めた雪に移し
押し黙る時間を嫌がるように
雪が2人を包み降る
少し赤らめた面持ちで肯くと
うっすらと白くなった2人は寄り添い
その2人を包むかのように
静かに雪は降りしきる
ただ白く
降りしきる
(再掲)
灯り始めた街頭が2人を照らし
途絶えた会話は2人きり
ほどけたマフラーを直してくれたのをきっかけに
告げる思い
まなざしをまたちらつき始めた雪に移し
押し黙る時間を嫌がるように
雪が2人を包み降る
少し赤らめた面持ちで肯くと
うっすらと白くなった2人は寄り添い
その2人を包むかのように
静かに雪は降りしきる
ただ白く
降りしきる
(再掲)
かの砂漠にも
どの海原にも
奥深い森にも
地を裂くような大河にも
大樹の周りにも
空をつく峰にさえ
民はいる
風に
雨に
星に
月に
太陽に
畏敬におののきながらも崇めつつ
祈りを捧げ
濃密な空気を作り上げていく
織りなされる空気にくるまれて
民は生まれ
民は生き
歌い踊り酔い
そして
死んでいく
ある時は
言いようのない力にねじ伏せられようと
ある時は
嵐に見舞われようと
またある時は
時代に否応もなく引き裂かれようと
生き継いでいく
残される者には
もれ忘れることなく
知恵を
教えを
戒めを
掟を
ルーツを
引き渡して還っていく
されど
民を棄てた人々は
アスファルトとコンクリートの中に逃れ
空さえも閉じこんで
臆病にも
怯えて生きていく
時として
言い得ぬ力がこじ開けようとする
棄てたことを思い出させるように
咎を償わせるように
己が何者でもないのを忘れさせないように
また時に
我が者を許さぬように
誰が主が思い知らせるように
幾筋も舞上がる煙が淀みと化した空は
もう怒りを静めたかのように
穏やかに晴れ渡っている
燃え崩れた街は黙って見上げている
容赦のない冷たい風はいっそう身体を凍えさせ
一度止まった時間は動けないまま
ただ過ぎるのを待つように立ち尽くす
それでも明日への空は明けていく
あの時から続く空に
打ち鳴らされる鐘の音が響き
一つひとつはか細い灯りを点し
あなたの元にこの祈りとともに導いていく
忘れようのないあなたを
空を
見上げている
傾き始めた夕日が2人を写し
途絶えた会話は2人きり
ほどけたマフラーを直してくれたのをきっかけに
思いを告げる
少し戸惑ったような目を
ちらつき始めた雪に移し
押し黙る時間を嫌がるように
雪が2人を包み降る
少し赤らめた面持ちで肯くと
うっすらと白くなった2人は寄り添い
その2人を包むかのように
静かに雪は降りしきる
ただ白く
降りしきる
雲一つない空に
身の置きどころもなく
所在なげに月だけが浮かんで
そのせいで星のない夜空
白い息だけがかまいに行くけど
すぐに消えちまう
こんな日くらい
気を利かせて
雪でも降れば
ちょっとは格好もつくってものを
昨日とおんなじように
何にもない
ただ寒いだけの夜かよ
去年の今頃何してたなんて思い出せないし
どうせロクなことはなかったろうよ
来年の今頃何してるかなんて
明日のこともわからねぇのに
わかるはずねぇだろう
どうせロクなもんじゃねぇだろうさ
何度なおしても
ほどけてばかりのマフラーには
ちょっと苛立つけど
捨てる気にはなれないよ
まだあいつの温もりを手放したくないんだ
ただ寒いだけの夜は
地元のツレに電話しようかと思ったけどやめた
噂じゃ結婚したとか
ガキができたとか
デカいこと言って出てきたのに
ここでオイラ
こんなところでオイラ
何してるんだろう
世間の水はそんなに甘くないと親父
何を夢みたいなこととお袋が
バァちゃんは黙って背中丸めて
ゴメンよ
ほんとにゴメンよ
でもまだ帰れない
ただ寒いだけの夜も
ほんとむかつくよな
どいつもこいつも
世間のヤツらみんな
特にあのオヤジには
でも・・・
でもわかっているんだ
本当にむかつくのは
このオイラだってことは
なりたかった自分になれた人はどれくらいいるんだろう
何者にもなれず
ましてなりたい自分になれなかったヤツ
あぁはなりたくはなかったのに成り下がってしまったヤツ
オイラはどうなろうとしているんだろう
ただ寒いだけの夜に
一人ぽっちの帰り夜道は
ヘッドフォンからあの唄が流れてくるだけで
寂しくなんかないよ
たとえ涙がこぼれても
歯を食いしばれば大丈夫だよ
誰にも気にするヤツもいないし
誰にもわかんないし
浮かれ騒ぐヤツらなんかに
見えるはずないし
寒いだけの夜に
ただ寒いだけの夜に
(再掲)
そこを何で覆っても
わずかな隙間からでも
芽を出すのが
木の芽なら
たとえ芽を摘んだとしても
芽を出すのは止めらない
どんなに風が吹こうが
そこに何を作ろうが
割ってでも
蕾になるのが
花の命なら
たとえ花を散らせたとしても
花はまた咲き始める
どんな嵐にまみえようが
どこを囲うとも
お構いなしに
蔓を延ばすのが
草の定めなら
たとえ蔓を切ったとしても
蔓は延ばし続ける
どんな炎が地をなめようが
庭に続く野にも
林の奥の園にも
黄色い花咲くその峰にも
誰に断ることなく芽吹き
花は自由に咲く
心ない巨人に
たとえ踏みにじられたとして
顔のない赤い巨人も
根絶やすことはできない
嵐にリンゴの実は落ちても
また息吹を吹き返し
芽を出し
いずれの日にか
きっと
必ず
花は咲き
実をつけ
この地を覆い尽くす
その日を願って
廃墟は人の声を吸い込んでいく
どんな声でも吸い込んでいく
人の手で造られたのに
見捨てられた建物
久しぶりの人の声を懐かしんで
ここぞと言わんばなりに吸い込んでいく
ずっとここで待っていたんだよと言いたげな
見放された建物
靴音すらも漏らさずに
忘れられてしまったのかと少し拗ねて見せる
朽ち果てた建物
人の息遣いもひとつ残らずこぼさず
それはまるで迷子犬が
久しぶりに飼い主と再会したかのように
たとえその飼い主が遠くに捨てに行った犬だとしても
犬が健気に尾を振って
すり寄ってくるように
その命は
今、周りにいる人
昔、別れた人
これから出会う人
そして多くの人たちが支えている
幼かった頃
父が
母が
そして誰かが
こうして歩き始めたときに
支えてくれたように
そして
今、周りにいる人
昔、別れた人
これから出会う人
そして多くの人たちの
命の支えとなっている
やがて歩き始めた子どもの手を
ひいて歩くように
物静かな沈黙が何かを語り始めた
うめき声のように
けれど騒々しい
けれど忙しい
都会(まち)の人たちの耳には届かない
何も見ようともしない
足元から切り崩されているのに
誰も気づかない
終幕の列にいつのまにか居並んでいることに
人が気が付くのにはもう遅い
薄曇りの空を見上げ
「そのうち晴れるだろう」
とやり過ごしても
いつの間にか土砂降りの雨
何もかも押し流して
その後に残った者は
息遣いのない
大きな海ひとつ