眠っているうちに
 

夢を見なさい
 

揺りかごは揺らしててあげる
 

ここでこうして寝顔を見ててあげる
 

怖い夢を見ないように子守唄を歌ってあげる
 

だから
 

眠っているうちに
 

夢を見なさい



眠っているうちに
 

夢を見なさい
 

揺りかごは揺らしててあげる
 

こうして寝顔を見ててあげる
 

兵士たちも今は休んでいる頃
 

あなたのような子供の写真を見ているはず
 

兵士たちが休息しているうちに
 

この静かなうちに
 

夢を見なさい



眠っているうちは
 

夢を見なさい
 

瓦礫に埋もれるように
 

時には爆裂音に揺れきしみ
 

きな臭い埃まみれていたら
 

夢のような世界は
 

この世で見せてあげられない
 

だからせめて
 

眠っているうちは
 

夢を見なさい



眠っているうちに
 

夢を見なさい
 

揺りかごは優しく揺らしてあげる
 

こうして寝顔を見ててあげる
 

側にいてあげられない代わりに
 

だからせめて
 

眠っているうちに
 

夢を見なさい
 

せめて
 

眠っているうちだけは



 


打ち鳴らす鐘の音は


鼓動の再現 
 

生きていた 
 

そしてついえた 
 

命の再現 



盾となり 
 

礎となった甲斐があったかと問う声を 
 

かつての長靴(ちょうか)の音がかき消すように 
 

否もなく近づいてくる 
 

聞き漏らすまいと耳をすませども 
 

その声は日に日に細くなるばかり 

 

 

仰ぎ見る空に響くわずかな残響でさえ 
 

その眠りが安らかであれと願う祈り 
 

重なり続く余韻も 
 

同じ轍(わだち)を踏まないという誓い 
 

されどもそれと知らぬ者は同じ轍(てつ)とは気づかない 



それでもと 
 

なお打ち続ける鐘の音は 
 

鼓動の再現 
 

生きていた 
 

そしてついえた 
 

命の再現 



(再掲)



 

 

月明けの夜が沈む時


それを合図に泥を飲め
 

清濁合わせた泥を飲め
 

闇夜のカラスが勧めるままに
 

寸分違わず飲み干せば
 

今宵限りは認めてやろう


 

浮世の情は美味かろう
 

取り繕いが身を覆い
 

上辺の笑みが引きつる前に
 

死に装束に身を固め
 

言いなり小僧の影を踏め
 

駄賃をねだる手は払え



月影の陰りのその隙に
 

正気の面を映すなら
 

這い出る修羅の果てなるを
 

見るともなしに
 

先行く悔いの正体が
 

隠したはずの裾を出す



騙した何のと難癖を
 

言い募っても
 

夜の消し炭
 

嘘は言わぬ代わりに
 

現の咎がことさらに
 

その聞いた気の口を慎め

 

 

 

費やした時間が体の中を駆けめぐり

流した汗が

君を勇者に変えていく

跳べ

跳んでいるうちは

君は夢でなくなる



かけられた声が

心を奮い立たせ

密かな涙が

君を強くする

舞え

舞っているうちは

それは夢でなくなる



たとえ砕け散っても

それは勝者への祝福

恥じることなく

悔いることなく

だから

今は

力の限り跳べ

思いのまま舞え

そして、

君は希望になる

 

 

 

 

晴れ上がる空


満点の星空


流れる雲


ひとすじの影


二人を分かつ天の川

 

 

 

(再掲)

 

たとえこの世で
 

どんな徳を積もうが
 

当のあなたは針の山
 

浮世の塵を何一つ
 

持って来れずに気付けども

 

誰もとりあう者はなし



たとえこの世で
 

どんな善人面をしてたとて
 

ここのお前は舌まで抜かれ
 

悪態つけずに
 

業火に灼かれて
 

叫び声も上げられぬ



たとえこの世で
 

いかな功を遂げようが
 

当のあなたは釜茹での
 

煮え立つ油とともに
 

身悶えしても
 

誰もとりあう者はなし



たとえこの世で
 

どんなに惜しまれようが
 

ここのお前は無間地獄に
 

身を落とし
 

尽きた命を悔いたとて
 

誰もとりあう鬼はなし



たとえこの世で
 

どんなに讃えられようとも
 

当のあなたは
 

煉獄の炎に身を焼かれ
 

その身もろとも灰にもなれず
 

誰もとりあう者はなし



たとえこの世で
 

権力であろうが
 

ここのお前は
 

十把一絡げの魍魎に落ち
 

苦し紛れの戯れ言と
 

誰もとりあう者はなし

 

 

 

毒を吐け
 

毒を吐け
 

腹に溜まった毒を吐け
 

良い子ぶらずに
 

毒を吐け



毒を飲め
 

毒を飲め
 

嫌われ者を叩き出せ
 

ためらうことなく
 

毒を飲め



毒を盛れ
 

毒を盛れ
 

裏切り者を炙り出せ
 

人目を盗んで
 

毒を盛れ



毒をくれ
 

毒をくれ
 

見たくもない世を生きるため
 

人目も気にせず
 

正気を保つ毒をくれ

 

 

 

カノンの店でパンを買い
 

クレディのところでトマトを買おう
 

明日も晴れそうだとか
 

今年の冬は雪が多かったねと
 

言い合って
 

買い物を済ませて



毎日のハナたちの軒下会議は
 

もう今日は終わったようで
 

仲良く並んでイスに座ったまま
 

うたた寝している
 

うららかな日差しを足下に受けて



最近見ないと思ったら
 

ジュディは体調が良くないと
 

サトラのところで聞いたけど
 

心配したところで仕方がないのはわかっている
 

かといって
 

知らん顔もできないし



この前
 

花を持ってソワソワしたニコルを見かけたけど
 

アンドレはどうせ振られるさって
 

笑ってたけど
 

もしそういうことなら
 

上手くいって欲しいし
 

気になるなぁ



少し風が出てきた
 

今日は天気が良かったから
 

あの洗濯物飛ばないといいけど
 

ツバメは風に乗って気持ちよさそうに飛んでいる
 

今日はどこまで飛んでいくんだろう

 

 

そういえば
 

イザリは帰ったのだろうか
 

最近とんと噂は聞かなくなったし
 

便りくらいはあるとも聞かない
 

寂しい思いをしていないといいけど


 

はい、お帰り
 

いつも元気に挨拶ありがとう
 

今日はどんなことを学校で教わった?
 

寄り道しないで
 

ちゃんと家に帰るんだよ


 

そうそう
 

クインシーのところに待望の赤ん坊が生まれたって
 

ワンダーの喜びようったら
 

あぁお祝い
 

何がいいだろう
 

考えとかなきゃ



ささやかなそんな暮らしを
 

たわいもないそんな日常を
 

一瞬の爆風が引き裂いていった
 

燃える煙に巻かれて
 

微塵にも吹き飛んで
 

いってしまった
 

すべてを瓦礫にだけして

 

 

 

たとえ雑踏が互いを掻き消しても

たとえ打ち付ける逆風が邪魔をしたとしても

ただ広がる海原に隔てられてその姿は見えなくても

ふいに届いた厳しくも優しい手紙を前にして

今言わなければ後悔しか残らない


それが
 

それだけが
 

今の自分にわかっていることなら
 

届かなくても
 

届きはしないとわかっていても
 

誰にはばかることもなく
 

叫び声にも似た声ででも言うしかない

ありがとうございます

 

 

 

さまよい歩く街も尽き
 

行き先探しては
 

次の街
 

ふと気付けば
 

プラットホームに立ちすくんで
 

最後の綱の番号は話し中



ためらいは
 

昨日の数だけ増えていく
 

期待を求めて
 

増えていく
 

それでも
 

誰もいない電話だけを傍らに
 

焦点合わぬ空(くう)を見つめている



呼ぶような声は
 

ビル風が起こした空耳
 

誰かを求める絵空耳
 

それでもまだ諦めず
 

ふと気付けば
 

見知らぬビルの上に佇み
 

下からの風に吹き上げられながら