部屋と鍵
今日、鍵をもらった。
新しい部屋を借りるたび、思うことがある。
白々しく開け放たれた、主のいない部屋。
いないのではなく、そもそも主を持たない部屋。
しばらくの間、俺が仮の住人。
住人ではあるけれど、主ではない。
そういう関係を、暗に語りかけてくる。
そのせいだろうか。
部屋を眺め、ベッドを見下ろし、床を見ていると
不意に悲しさがこみ上げてくる。
ここでは、ない。
早くここから出たい。
週が明けると、忙しくなる。
タオルをかけ、ティッシュやハンガーを用意して
いったん休みをとることにした。
日あたりだけは、とても良いこの部屋で。
かぼちゃの種
庭に出て、こっちに来いとみほが云った。
ほんの小さな土の一角に
かぼちゃの種が、植えてあった。
すごいでしょ、本当に芽が出たよ。
言葉もなく、俺はそれを見ていた。
驚いていたのだ。
かぼちゃの種を植えるという
とても小さな企みが
俺の想像を超えていた。
しかもそれは芽を出して
しっかり葉まで伸ばしていた。
あのかぼちゃはどうなっただろう。
そんなことを知らない俺は
自分のことしか、考えていなかったのだな。
頭のてっぺん
頭のてっぺんが、薄くなってきた。
まだ、はげてはいないけれど
俺も年をとったものだ。
目ざとくそれを見つけては
マッサージをしてくれるみほ。
いいんだよそれは
俺が遊び惚けてきた報いなのだし。
年をとれば、老いていく。
仕方のないことだ。
老いるにしても
ぼんやりのうのうと
腹をぶよぶよにしているつもりも、ない。
髪の毛が薄くなるのは
少しばかり寂しいけれど
年を重ねて、時間が過ぎていくその中で
俺の近くにみほがいてくれて
一緒の時間が増えれば増えるだけ
俺は報われるのに違いない。
年をとるとは、そういうことだ。