線路沿いの道 -9ページ目

ひとつのこと

ひとつのことしかできない。


それは限りなく美しい。

あれもこれもできたからといって

なんにもならなければ

できないのと同じ。


どのみち、大したことをできないのだから

作りかけで終わるにしても

ひとつのものだけを追いかけるほうが

ずっとずっとマシだろう。


ひとつしかしないというのは

そのほかを全部捨てるという意味だ。

そのほかを知らなければ

たやすいことだけど。


そのほかを知っているから

あれこれと、迷う。


そしてすべて、失うのだろう。

もしも

みほのこころが届いていないなら

ここにもう、俺はいない。

独りで、どこまでも遠くへ行っただろう。


やり残したというほどのことも、ない。

がんばることも、努力も、学ぶことも、飽きてしまった。

果てがないし、終わりもない。

積み重ねる虚しさに、気が遠くなる。


だけどまた、ひとつを積み重ねることができるのかどうか

それを俺は、試そうとしている。

みほのところへ帰りたい、いや、そうではなく

これ以上みほを寂しくさせたくない。

そう思うからだ。


なにをすればいいのか、

ひとつひとつの行動には、迷いがある。

それでも、行き先には迷いがない。

このこころにも。


穏やかな午後を二人で過ごす毎日。

それだけをつくりたい。

帰り道

車を運転して道を走っている。

夕方。

ふと気がつくと、家に帰る道を走っている。


まだ帰れるわけではないのに。


俺が帰るのは、家ではない。

みほのところへ、帰るのだ。


帰る場所がある。

今は帰れなくても。


それだけでも、俺はまだ

本当の孤独なんかじゃない。


大丈夫。

姿はなくても

俺はみほをいつも見守るから。