自身のレーベルT-Neckから

「3+3」(73年)や「Grand Slam」(81年)などの名盤を発表し一世を風靡し、

現在もなおヒップホップのサンプリングに引っ張りだこ、

後世に与えた影響も計り知れないIsley Brothersですが、

意外なことにあのMotownからも2枚アルバムを出していました。


このアルバムは、彼らがモータウンに在籍した

66年から69年までのヒット曲を集めたベスト盤。


「ヨソモノだった彼らは、レーベルから冷遇されていた」、

なんていう記述を事前に目にしていたので、(Isleysはオハイオ州シンシナティ出身)

どれ位良くないのだろう、と興味本位で聞いてみたのですが、

コレがなかなかどうして楽しめるアルバムで、

良い意味で期待を裏切られました。


“Stop in the name of love”のようにアタマに「?」マークが浮かぶカヴァーや、

「ここで入んないのかよ!」と、ツッコミどころを与えてくれるコーラスなどなど、笑いどころも多々ありますが、

まだまだ残っている若さが吉と出たのか、

ロナルドのヴォーカルとモータウンサウンドの相性は決して悪くないし、

当然ながら曲が素晴らしいものが多いので、非常に聴き応えのある作品になってます。

(曲のほとんどはH=D=Hが担当、Johnny BristolやNorman Whitfieldが手がけたものもあります)


ただ、まだisleysを聴いたこと無い人はmotown時代からは聴かないで下さい。

後のものを聴いてからのほうが、このアルバムを面白く聴けること必至です(笑)


今はコワモテで売ってる俳優のアイドル時代を覗き見する、

そんな感覚が味わえるアルバムです。

本人は恥ずかしいんだろうな~(笑)


それでは!

deodato



●DEODATO “PRELUDE”


1972年にブラジル出身のエウミール・デオダートが出したアルバム。
全てインストで構成されていて、フュージョン・クロスオーバーのジャンルに
含まれる作品だと思います。


邦題は「ツァラトゥストラはかく語りき」で、元はクラシック作品の
このタイトル曲(映画『2001年宇宙の旅』のテーマ曲でもある)を斬新に
ファンキーなフュージョン作品に仕上げヒットさせたことで
プロデューサー・アレンジャーとしての知名度があがったそうです。


個人的には3曲目「Carly & Carole」が最も気に入っています。
フルート+エレピ+暗めのボッサ+熱いドラムという組み合わせが

自分の中のツボにはいったのですが、曲の長さが3分台で集中して

サクっと聴けるところも良いですね。

ちなみにアルバム全部通しても30分くらいしかないので
かるく1日2回は聴けます。


あとはやはり、全編を通してグイグイと全体をプッシュしてスリリングなサウンドを
作っているロン・カーターとスタンリー・クラークという
「厳密には正確じゃないんだけど最強にかっこいい演奏をする2大巨頭」だと勝手に
僕が思っているベースのコンビが素晴らしい!

無機質になりがちなジャンルの音楽に、彼らのベースが生命を与えているといっても
大袈裟ではないと思います。最高だ。



ちなみにこの作品に続く73年の『DEODATO 2』というアルバムもまた凄いのですが
ジャケが顔面アップすぎてちょっと手元に置いておくのがためらわれるという
自分の中では残念な扱いになっています。こっち見るなって。


deodato2

ritenour


●LEE RITENOUR "Feel the night"

フュージョン系のギタリストとして真っ先に名前を挙げられるであろう、
キャプテンフィンガーの異名をもつ、リー・リトナーの1979年の作品です。


ブラスセクションのフレーズが印象的なタイトル曲「feel the night」、
ラテンなんだけどドラムのスティーブガッドが彼にしか出来ないであろう
強烈なリズムを放つ「Market place」の1、2曲目のコンビが秀逸です。


このアルバムはリトナーのほかの作品と比べてもギターサウンドが骨太で
ベースとドラムと程よく分離していて、全体的にゴツゴツとした印象があり
聴いていて楽しいです。曲もキャッチーな部分が多いですし。


フュージョンのギタリストのアルバムというと繊細だがどこか軽薄さ
が感じられる、という先入観があると思います。
おそらく彼らは何でもやっちゃうし何でも上手く出来てしまうからで
逆にそのことが不信感を抱かせてしまうんだと思います。
「頑固一徹の職人」タイプのほうが日本人には好まれやすいし
何でも屋の人をフェイバリットには挙げづらい、という事情もあります。


リーリトナーもほんとうに色々なジャンルやっている人で
聴いてみると(失礼だけど)イマイチなアルバムも結構ありますが
この作品のようにかなり楽しめる物もやはりあるので、先入観で判断しないで
いろいろ聴かないといけないよなあ、と改めて思いました。


さてリー・リトナーといえば杏里さんと結婚したと報じられ
よく話題になっていたのですが、今回このレビューを書くために少し調べていたら
どうも今年になって破局してしまっていたらしく、少し残念な気分になりました。


inside out


●Chick Corea “inside out”

1990年にジャズ・フュージョン系のピアニスト、チックコリアが
『チックコリア・エレクトリックバンド』名義で出した一枚。
彼の作品群の中ではそこまで高い評価を得ていないようで
若干マイナーな存在です。


エレクトリックバンドといえば、
チックコリアの考えるアルバムコンセプトを表現するために
シンセのサウンドをウニョーンと鳴らして(などと軽率に言うと怒られそうだが)
ひたすら雰囲気作りをしている曲というかシーンにアルバム1枚の中で
多くの時間を割いていてちょっと聴きづらいという印象が
自分の中ではありました。


しかしこのアルバムは他の作品と比べると5人のメンバーのソロが多く
『パワー勝負』に出てる感じがしてかなり楽しめます。
しかも彼らのソロはそのあふれるパワーとスピードの中に
確実に知性というか余裕が感じられます。
まさに神々の祭典!


…演奏の凄さって言葉を重ねても安っぽくなるだけですね。
聴けば判りますなんて言ったら、ディスクレビューとしては実も蓋もないし。
難しいところです。

airto


●Airto “Free”

1971年にパーカッション奏者、アイアート・モレイラのソロ名義で出された
ラテン・フュージョン系サウンドのアルバムです。
とはいっても実際は『ラテン・フュージョン』という言葉から想像するよりも
タイトルの通りフリーな感じです。


なによりジャケットが、ヒゲのおっさんが重力から自由になって
空中浮遊しているというフリーっぷりです。どうみても合成ですが。


さて内容ですが、メンバーがチックコリアの『リターン・トゥ・フォーエバー』
(カモメのジャケのやつ)とほぼ同じで、発売された年も1年しか差が無いので
そちらが好きな人にはまずお勧めできます。


そもそもこのアルバムの1曲目にもチックコリア作曲の
「リターン・トゥ・フォーエバー」が収録されています。
もちろんチック本人が演奏にも参加しているし、フルート・ソプラノサックスの
ジョー・ファレルやボーカル(嫁)のフローラ・ピュリムも参加しています。


あと特筆すべきはピアノのキース・ジャレットが参加している
4曲目の「Lucky Southern」の明るくキャッチーな出来栄えです。
ちょっとモヤモヤするB面始めの3曲目「Free」の次だから特にスカっとするのですが
まさに光がさしたようにがらり雰囲気が変わります。
そしてラストの5曲目「Creek」のテクニカルながらもコミカルなフレーズで
疾走感・快感を与えつつ幕を閉じるという絶妙な並びです。
曲順は重要ですね。


しかしこのアルバム、そんなナイスな曲順になっているにも関わらず
ジャケの裏に書いてある曲順が完全に間違えています。
こんなとこまでフリーです。わざとでしょうか。