fly with the wind


●McCoy Tyner : Fly With The Wind


1976年に発売されたジャズピアニスト・マッコイタイナーのアルバム。
編成はピアノ・ベース・ドラム・フルートのカルテットに
ストリングスのセクションが加わっています。


1曲目のタイトル曲"Fly with the wind"と"Salvadore de Samba"の
コンビが最強です。美しいけれど危険でもある高山を撮影した
ジャケットの雰囲気と見事にマッチしていると思います。
僕はアナログ盤でこれを持っているのですが
この2曲が収められたA面だけしかほとんど聴いていません。



一般的なイメージとしてジャズピアノというと
軽快でオシャレなサウンドだと思われがちですが
この作品でそれを期待するとひどい目に遭います。


特にビリー・コブハムのドラムが凄まじい。
ひたすらスネアとシンバルとタムを『ドカンドカン』と叩いています。
誰だジャズドラムの音を『チンチキチンチキ…』とか言うやつは。


それとベースはロンカーター。
『ギャリギャリ』とした弦の音で怪しい雰囲気を生み出しています。
誰だジャズベースの音を『ボンボンボン…』とか言うやつは。


ストリングスもやばいです。
雪山の切り裂くような冷たさがが迫ってくるイメージが描けます。
フルートのヒューバート・ロウズも熱いソロで応えてます。
当然、マッコイタイナーも強いタッチで縦横無尽に暴れます。
誰だピアノやフルートやバイオリンが清楚なお嬢様の楽器だとか言うやつは。


ああ、「ジャズの流れるダイニングバー♪」とかいって
ゆるい有線かけて若い娘とイケメンを集めて喜んでる奴らの店に
このレコードを大音量で流してやりたいぜ!!


乱暴な言い方になりましたがそのくらいこのレコードが
クレイジーで最高なものだということでお許しください。

このモデルの女性はちょっと怖いです


●original love : eyes

今年の夏、自分がもっとも良く聴いたアルバムだったと思います。
1993年に発売されたオリジナルラブの3枚目になります。

クレジットによると当時は5人組みのバンドだったようですね。
このCDも手に入れてから長く愛聴しています。


最初のころは「サンシャイン ロマンス」「いつか見上げた空に」といった
爽快感のあるポップな曲や、「DEEPER」「砂の花」というメロウな曲を
好んで聴いていました。
(「DEEPER」という曲は宮田繁男さん作曲、吉田美奈子さん作詞ということで
今にすればオリジナルラブらしからぬ感じですね。でも超名曲です。)


ですが、いつの頃からか「JUDGEMENT」「LET'S GO!」「妖精愛」といった
ダークで意味深な感じの曲こそがこのCDの魅力だと
思えるようになってしまっていました。
他のミュージシャンの作品で、これらに似たような構成の曲は
ちょっと思いつきません。


あと「Wall Flower」というクールなラテンフレイバーの曲は
最初から今まで一貫してお気に入りです。
自分のかなり好きなべーシストの渡辺等さんが弾いているのも
高ポイントです。ものすごい仕事量の方なのですが
意外とオリジナルラブのレコーディングにはあまり参加していないのです。



これだけ奔放にさまざまな要素を取り入れたアルバムを
トータルで聴けるように仕上げることができたのは
メンバーの巧みなアレンジや、演奏者やスタッフの能力、
そして何より田島貴男さんの求心力が凄かったんだろうなと
いうことが想像できます。


自分の中のオリジナルラブの作品では、以前にレビュー した
4枚目のアルバム『風の歌を聴け』と並ぶツートップになります。


ただ悲しいことに、大きな声では言えないのですが
某黄色っぽい中古CDと本のチェーン店の250円コーナーに
この2枚は8割ぐらいの確率で置いてあります…。

そんな感じなので、もしまだ未聴のかたはこの2枚買ってしまってください。
我々サマーソフト の音楽を気に入ってくれている方なら
多分好きになってしまうと思いますよ。

こんばんは、御無沙汰してます。ギターの滝沢ゆきちです。

かれこれ・・年明け、1月以来のレビュー書き込みです汗
ヤバイですね・・もう少し定期的に書いていきたいものです。

さて、160回目のレビューですが、
やはり、少年期から現在に至る音楽生活の中で出会った大好きな音楽の偉人が数人いるのですが、
中でもスティービー・ワンダー、バートバカラック、トニーハッチ、セルジオ・メンデス、マリオ・カストロ・ネヴィス等は
特に好きな人達です。と言うことで、気まぐれですが今回は・・

「 セルジオメンデス&ブラジル’77 / ビンテージ’74 」をレビューさせて頂きます。



セルジオ・メンデス

音楽を聴いた事無い人でもこの名前の響きは知ってる人多いと思います。

とりあえず、セルジオメンデスさんの簡単な説明
ジャズピアニスト・アレンジャーとして活動していた彼が
まずはセルジオメンデス&ブラジル’65としてボサノバグループとして活動
そして1966年に従来のポップスをボサノバカバーがメインというサウンドスタイルで
セルジオメンデス&ブラジル’66としてデビュー
誰もがどこかで聴いた事あるであろうジョルジ・ベン(ベンジョール)作の
マシュ・ケ・ナダを収録しこれが大ヒット
(まぁ、ヒットしたから今のセルジオ・メンデスさんがいる訳ですが・・)



↑ジョルジ・ベンの曲で一番好きなタジ・マハールという曲のヤバイテイクが収録されてる作品です。
めちゃ早い&テンション高!?
当時を知らないのでどれだけヒットしたのかは正直分かりませんが、
数多く見かける再発盤を見る限り・・物凄く売れたのだと思います。。
ボサノバ界のスーパースターの誕生です。
最近では、ブラックアイドピースなどとコラボした作品出したりと今の若者にも大人気です
はい、簡単な説明終わりです。

さて、元々俺がセルジオメンデス聴き始めたのは
バートバカラックが大好きで、中学の頃たまたまセルジオメンデスのベスト盤に収録されていた
look of loveを聴きたくてその時に聴いたWaveのカバーがあまりにも美しくて
これを機にセルジオメンデス周辺を聴きはじめました。



↑このベスト盤、何度も何度も再発されてます。大人気!笑

このベスト盤は当時、まだ茅ヶ崎のダイクマがダイクマonlyだった頃に
ダイクマのCD屋さんで購入した記憶があります。
他には、名曲Pais TropicalやSo Many Stars・・
Going Out Of My Head(こちらは個人的にはメジャーにゾンビーズのモノの方が好みです)
良い曲たくさん、さすがベスト盤といった内容です。
色々聴いていくうちに色々な音楽家が繋がってきて
それがまた音楽を聴く楽しみに繋がったりもしました。
20歳の頃にブラジル盤やソフトロックの再発やCDへの世界初音源化ブームがやってきて
その頃に聴けるものは片っ端から聴きました。
この頃、後々バンド名サマーソフトの名前の由来になる
スティーヴィーワンダーのサマーソフトのカバーを
マリオ・カストロ・ネヴィスが収録している作品の事を知った記憶があります。
話は特にセルジオメンデスと関係ないですが・・
俺はスティーヴィーのモノよりもマリオ・カストロ・ネヴィスVerのサマーソフトの方が好みです。
まぁ、きっとこれはサウンド的にマリオ・カストロ・ネヴィスも
セルジオメンデス&ブラジル~同様にピアノ主体のトリオ等に
女性ボーカルを2名メインで歌わせるというスタイルが個人的に好みだからだと思います。



↑ファンタスティック・プラスティック・マシーンの
田中知之さんのセレクションコンピにこちらのサマーソフトが収録されて
サマーソフトという曲を知った人も多いと思います。

はい、では作品のレビューに移ります。
1974年の作品です。
「 セルジオメンデス&ブラジル’77 / ビンテージ’74 」
とりあえず、バンド名から・・・
セルジオメンデス&ほにゃらら・・の
ほにゃららは何度か変わってるのですが・・

あえて分けるなら
初期のブラジル’65&’66は、シンプルな編成でアコースティックなサウンドメイク
この時期の作品の方がジャケット等も彩度が強く個人的に好きです
この時期の作品で特にオススメは「ルック・アラウンド」、「スティルネス」でしょうか?

中期のブラジル’77は、時代の影響か、ブラスなどが入って派手になったかなぁ・・と
ボサノバ意外にもファンクやソウルの要素が入ってきてよりバンドサウンドが強調されてる気がします。
クラブミュージック好きな方はこの時期のセルジオメンデスの方が聴きやすいのではないでしょうか?
この時期の作品で特にオススメは「ラブ・ミュージック」、「ビンテージ’74」ですね~

この後、
個人名義のセルジオメンデス、セルジオメンデス&ニューブラジル’77、
~ブラジル’86、ブラジル’88など何度も名義変えて作品出してます。

個人名義では、
セルジオメンデス名義の作品「セルジオメンデス」に収録されている
Davyが個人的にとても好みです。秀逸、とりあえず、どの作品もお洒落です。

さて、それで・・このビンテージ’74のレビューに入る訳ですが・・
この作品との出会いはJR茅ヶ崎駅の商店街エメロードに昔からあるリズムボックスという
中古CD屋さんで出会いました。20代前半の頃ですね。。
その当時、バンドを組んでいた友人にセルメンのIf You Really Love Meの方が
タッキーはスティーヴィーのより好きだと思うよ!と言われて
まだ未聴だったこの作品をリズムボックスでたまたま発見・即購入といった感じで・・
聴き始めて・・やはり、こちらの方が俺の好みだ!・・とはまり
とりあえず、ヘビーローテーション。
その後しばらくしてクレジットなど調べて誰かゲストとか演奏してるのかな?と
デビュー盤だけ大好きなリーリトナーがSuperstitionでギターで参加。
アントニオ・カルロス・ジョビンが自作曲のDouble Rainbow、The Waters Of Marchでギターで参加。
なんだか豪華ですね。まぁ、俺はギタリストあまり好きではないのですが・・
基本的に俺は鍵盤奏者や鍵盤弾きながら歌う人の方が好きです。。っと
サウンド的には初期のサウンドに近いかもしれないです。

では、いくつか好みの曲紹介です。

アルバムの初めはスティーヴィーワンダーの名曲
「Don't You Worry 'Bout A Thing」で始まります
これが、ストリングス&ブラスアレンジやパーカッションのアレンジが無駄が無く気持ち良いです。
本家よりも優しく聴き易いのは・・
オリジナルの録音がはっちゃけ過ぎてるせいでしょうか?綺麗にまとまってます。

次にTr.2:「This Masquerade」
これは、A&Mな感じの(まぁ、前作ラブ・ミュージックの時点でレコード会社はA&Mではなくて
ベルレコードに移籍してるのですが)アレンジでバートバカラック好きな俺にはとてもツボでした。
ソフトロック好きな人にはオリジナルよりもこちらの方が聴きやすいと思います。

そして、Tr.3:「The Waters Of March」
こちらも本当に名曲です。こんな曲描けたら・・
ジョビンの淡々としたギターがたまらなく気持ち良いです。
メロディを際立たせるアレンジ、素晴らしいと思います。

Tr.6:「VOCE ABUSOU」
とても心地良いボサノバです。
終わりに向けて曲を盛り上げていく様がいかにもセルメン!って感じのアレンジで好きです
良いメロディです。本当に良い曲
そして、アルバム最後を締めくくるのにふさわしい名曲

Tr.10:「If You Really Love Me」
この曲はスティーヴィー同様大好きなシリータ・ライトとの共作ですね
まず、メロディーもですが構成がたまらなく好きです。
で、こちらもセルメンVerの方がオリジナルよりも聴きやすいです。。
まぁ、心に響く度数はスティービーの方が断然上ですが・・

カフェ・ミュージックや部屋でのBGMとして音楽聴きたい人にはセルジオ・メンデス、
特にオススメです。まだ未聴の方は是非聴いてみて下さい!







大人になってしまうと、

人は、子供の頃に好きだったものを

極端に美化して思い出すことが多い。

そして、音楽、映画、食べ物、遊び、何でもいいのだが、

成長(退化?)してしまった感性で

再び体験してみると見事に期待はずれ、

ガックリとしてしまうことも、これまた同じように、多い。

せっかく郷愁に浸ろうとしているのに、

なかなかにテンションを下げてくれる、寂しい出来事である。


しかし、中には幸運な人間もいて

何年経っても、どれだけ色々な経験をしても、

決して色褪せない、所謂エヴァーグリーンなものを

子供時代に経験していたりする。

僕もその幸運な人間の一人、

小学生の頃に一生飽きないであろう

ステキなものに出会えた。


その中の一つが、BOΦWY の音楽だ。


BOΦWY のことは、13歳ほど年上の姉から教わった。

その前に好きだったWANDSやDEENより

男臭いカッコ良さがこのバンド にはあるような気がして、

夢中で聴きまくった。

「渇いてるのに入れないで~、ナイーヴなんて知らないで~♪」

なんて、意味もわからず、人前で得意げに歌っていた。

今思うと、それを母や父が

どんな思いで聴いていたのか気になる。

まぁ、ひょっとしたら何にも気になんてしてなかったのかも知れない。


当時、小遣いなんてそんなにもらっていなかったはずだが、

なんとかやりくりして、出ていたアルバムは全部手に入れた。

最初の三枚は荒削りな感じがしてあまり好きじゃない曲もあったが、

それ以外は、どの曲もどの曲も、最高にカッコ良いと思った。

大体の曲は歌詞も全部空で歌えるようになり、

小学校の遠足のバスでアカペラでカラオケを披露した記憶がある。

付き添いの大学生のお姉さん二人が、かなり感心してくれたが

3曲目位からは辟易とした表情をしていたのが、当時は不思議だった。


ところが、そんなBOΦWY時代も

中学二年位に訪れた「絶対洋楽主義」によって、

あえなく終焉を迎えることとなる。

なんだか邦楽を聴くことが無性に恥ずかしく思えて

持っていたアルバム、全部を叩き割って、捨てた。

もったいない気もしないではないが、

自分では意外とこのエピソード、気に入っている。

なんだか、「ワカゲノイタリ」な感じがして良いでしょ。


その後、BOΦWY のことはほとんど思い出すことなく過ごす事となるのだが、

ひょんなことから、つい最近このバンドのことを思い出し、

「TSUTAYAも半額キャンペーンをやっていることだし、洒落でもう一回聴いてみるかー」と

冷やかし半分で聴いてみたら・・・・。


正直カッコ良すぎてビビリました。


あんまりにも良いんで、聴きまくっていたら

気づいたらmixiミュージックのリストが、BOΦWY ばかりになってた位です。

山下達郎もSummer Softもぶっちぎって、堂々の2位です。

もうすぐSteely Danも追い抜くことでしょう。

まぁ、かなりどうでも良いことですが・・・。


こういうのは、えてして「思い出補正」(ベースマン、S藤君の発言)、

がかかっていて、冷静に判断できなくなってることが多いのですが、

僕の場合、そんなことはなさそうです。

だって、またハマってから一ヶ月位経ってるんですもの。


リアルタイムで聴いていた人、

リアルタイムじゃないけど聴いてた人、

まだ全然聴いたこと無い人、

良かったらもう一度、もしくは一度聴いてみてください。

日本で一番カッコ良いロックバンドの一つですよ。


そんなわけで、今回のお勧め盤は

BOΦWY でJust A Hero(1986)。

マッチョでゴージャス、それでいてポップなアルバム。

氷室京介の意味のわからないバブリーな詞や

布袋の巧みすぎるギターのアレンジがたまりません。



motownといえば、やはり全盛期の60年代が素晴らしい。

なんてったって役者が揃いも揃っていた。

デトロイトでは、数え切れない数のアーティスト達が

小さなAスタジオの中で、自らの才能を所狭しと開花させていたに違いない。

僕は、そんな時代を生きられた人たちが、心から羨ましい。


ただ、一つだけ悔やまれる点がある。

当たり前だが、録音が古いのだ。

Motown創始者のBerry Gordy氏は、ミックスマニアでもあったので、

当時としてはハイエンドな音響機材を使っていたと聞くが、

40年という時間の流れとテクノロジーの変化の前では、

当然ながら、到底太刀打ちできるものではない。


それでも、曲の素晴らしさ、パフォーマンスのニュアンスなどは

残されている当時の音源でも十分に伝わってくるのだが、

やはりもっと良い音で聴ければ、もっと感動するのではないか、

そう欲張ってしまうのが人間の悲しい性である。


そんな僕と同じような欲張りな人にオススメなのが、

今回紹介するMichael McDonaldのその名もずばり“Motown”(2003年)。

Mr.Blue-Eyed-Soulの異名を持つ彼が、

motownのヒットナンバーを思い入れたっぷりにカヴァーしているアルバムである。

(しかし、Marvin GayeとDiana Rossのデュエットがあるとは言え、

フィリーソウルの名曲“You Are Everything”をねじ込んでいるのは頂けない気が・・・。)


「オリジナルをなぞるような作品にはしたくなかった」

そのような内容のMcDonald氏の発言をライナーノーツで見たが、

その割には、一部を除き、オリジナルのアレンジを出来るだけ尊重しつつ

ところどころに現代風なアレンジを展開している。

アブラの乗り切ったヴォーカルにより、

キャッチーであることを一番の売りにしたモータウンヒッツが、

一切バブルガムな匂いがしない、所謂AORなっているのが興味深い。


自身が思い入れが深くて入れた、と書いていた

Temptationsの“Since I Lost My Baby”や

かなり原曲に近いアレンジで臨んでいるMarvin Gaye“I Want You”等が

原曲の素晴らしさに全く及ばない、残念な出来に終わっているが、

StevieのSigned, Sealed, Delivered I'm Yoursは

オープニングナンバーにしただけあって、見事な出来だし、

Ain't Nothing Like the Real Thing BabyとAin't No Mountain High Enoughの

Marvin Gaye&Tammi Terrelの大名曲は、

オリジナルバージョンに引けを取らないくらい完成度が高い。

全体を通して、非常に良く出来ていて

何度でも聴きかえしたくなるアルバムである。


ここだけの話だが、僕個人としては

Michael McDonaldという人は、歌唱力に比べて

作曲の能力がどうも追いついていない印象があるので、

大ヒット曲のカヴァー集のこのアルバムは、

他のどのオリジナルアルバムより安心して聴ける。


そういう意味では、この作品は、僕にとって

motownのヒット曲とMichael McDonaldの歌唱力が、

お互いの弱点を上手いこと補い合っているということか。


そう思うと、なんだかお得なアルバムである。