●Herbie Hancock / RIVER : the joni letters
昨年2007年9月に発売された新しいCDです。
邦題は『ジョニ・ミッチェルへのオマージュ』。その名のとおり
ピアニスト、ハービー・ハンコックによるジョニ・ミッチェルの楽曲のカヴァー集です。
ジョニミッチェル本人をはじめ、ノラ・ジョーンズやコリーヌ・ベイリー・レイなど
人気ヴォーカリストがゲストとして参加。
演奏もデイヴ・ホランド(bass)とヴィニー・カリウタ(drums)の最強コンビに
ハービーとは長い付き合いのウェイン・ショーター(ts,ss)も参加しています。
歌ものでのウェインショーターの演奏は素晴らしいですね。
彼特有のへろへろとした音色でありながら、どっしりとした存在感もある。
ジョニミッチェルの楽曲の独特な雰囲気にベストマッチだと思います。
さてこの作品は2008年のグラミー賞で「年間最優秀アルバム賞」と
「最優秀コンテンポリー・ジャズ・アルバム賞」を受賞しています。
なのでこんなマイナーなディスクレビューであらためて紹介しなくても
どのレコード店でもプッシュされて売れまくっていることでしょう。
本当に演奏もサウンドも上質で、聴けば聴くほどいいレコードで
演奏家としてみても大いに参考になります。
しかし個人的には不満が残る部分はあります。
やはりハービー・ハンコックといえば“処女航海”や“speak like a child”のように
60年代に出された他のジャズコンボの作品群とは明らかに異なる雰囲気を生みだしたり
“ヘッドハンターズ”や“フューチャー・ショック”のように「なんだそりゃー!」と
衝撃を与えてくれるレコードを作る革命的な人というイメージがあります。
もちろん僕はリアルタイムでこれらのレコードを経験していないので
現代の色々なレビュー等をもとに遡っていって身につけたイメージに過ぎないのですが。
それらの今でも語り継がれる彼のレコードたちと比べてしまうと
この作品はインパクトが低いかもなあ、と思ってしまうのです。
ハービーハンコックがお馴染みの強力なミュージシャンと人気のボーカルを呼んで
作ったジョニミッチェルのカヴァー集なんて、素晴らしいに決まってるじゃないですか。
そりゃグラミー賞もとれますよ。
想像して期待していた通りの素晴らしいレコードなんですが
その期待のもっとはるか上をいって欲しかったと思ってしまいます。
まあ、単なる外野からの言いがかりなんですけどね。
例えるなら
『小笠原とラミレスとイスンヨプを集めてクリンナップ打たせてたら
勝てるに決まってるじゃねーか!どうせなら130勝くらいしろよ!』
などと言ってるのと同じことなのです。